司法修習生による取調べ修習の合法性

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0(1) この記載は,「修習生って何だろう-司法試験に受かったら」(21世紀の司法修習を見つめる会)77頁ないし80頁の記載に基づいて書いています。
   なお,相島六原則とは,「取調べ修習は違法ではないか」という疑問に対し,当時の相島一之司法研修所長が昭和38年度の司法修習生指導担当者協議会で示した,検察修習中の司法修習生による取調べ修習を合法とするための六原則をいいます。
(2) 日弁連HPの「司法修習終了時点から見た司法修習生の実務修習について」8頁に,相島六原則の説明があります。
(3) 「取調べ」も参照して下さい。

1 司法修習生による取調べ修習の違法説の根拠
① 取調べの主体について定めた刑事訴訟法198条1項は,「司法修習生」を主体としてあげていない。
   そのため,司法修習生による取調べは,同法197条1項ただし書が定める強制処分法定主義に違反する。
② 憲法31条の法定手続原則は,特に刑事手続においては厳格に解釈・運用されるべきである。司法修習生による取調べは法律上の明文の根拠を欠く以上,同原則違反で違憲である。
③ 取調べは被疑者に対して自己に不利益な供述まで求めるという点で,被疑者の人格の深いところまで立ち入るものであるところ,修習目的による取調べは,被疑者の人格を修習の道具として扱うものであり,人格の尊厳を趣旨とする憲法13条に違反する。

2 司法修習生による取調べ修習の合法説の根拠
① 被疑者の同意がある以上,許される。
② 将来の法曹を養成するという公益目的のためには取調べ修習は不可欠であり,それ故これを認める必要がある。
   医師のインターン制度と同じである。
③ 相島六原則を守れば,人権侵害のおそれは少ない。

3 相島六原則
① 指導検察官が,あらかじめ個々の事件ごとに事案の概要,問題点,発問要領等を説明指導すること。
② 被疑者の呼び出しは,指導検察官の責任と名において行い,修習のみを目的とする不必要な呼び出しはしないこと。
③ 指導検察官は,司法修習生の身分を説明し,被疑者の自由な意思に基づく承諾を得ること。
④ 指導検察官があらかじめ黙秘権を告知すること。
⑤ 司法修習生の被疑者に対する質問については,指導検察官が同室し,指導監督を行うこと。
⑥ 司法修習生が作成した調書はそのまま流用することなく,指導検察官があらためて取調べを行い,調書を作成すること。

4 違法説から合法説への反論
① 被疑者と検察官の力関係,司法修習生というものについての一般人の理解からして,自由かつ真摯な同意とはいえない。
   法定手続原則は同意によって放棄できるものではない。
② 公益目的であっても個人の人格を踏みにじることは許されない。
   医師のインターン制度と取調べという権力の行使を同視することはできない。
③ 相島六原則を守ることは不可能である(現実に守られたという例はほとんどない。)。
   拘束時間が長くなることは明白である。
   大部屋で一斉にやらざるを得ず,プライバシー侵害が著しい。

5 「検察修習」も参照して下さい。