日弁連と信託協会の協議会合意書(平成6年2月22日付)

目次
第1 日弁連と信託協会の協議会合意書(平成6年2月22日付)
第2 合意成立までの経緯

第1 日弁連と信託協会の協議会合意書(平成6年2月22日付)

・ 日弁連と信託協会の協議会合意書(平成6年2月22日付)の本文は以下のとおりです(自由と正義1994年5月号87頁及び88頁)。

    日本弁護士連合会と社団法人信託協会とは、現在信託銀行各社が行なっている下記の相続関連業務について、拡大する国民の需要と弁護士・信託銀行双方の社会的役割を認識しつつ、相続関連業務の適正かつ健全な発展のために慎重に検討を重ねた結果、以下のとおり意見の一致をみたので、相互に確認する。双方は今後とも広く国民の期待に応えるべく、相互に協力を惜しまないこととする。

第一 遺言書作成に関する相談業務

1 信託銀行は、遺言による信託の引受および遺言執行者に就任する可能性のある事案において、遺言書の作成に通常必要とされる事項につき顧客の相談に応じる。
2 信託銀行は、顧客の財産に関して本人と推定相続人その他の者との間で現に法的紛争があり、または法的紛争を生じる蓋然性が極めて高いと認められる場合には、相談に応じない。

第二 遺産整理業務

1 信託銀行は、顧客の求めに応じて、相続人が遺産整理および分割協議を進めるために必要な知識・情報等の判断材料を提供し、相続人の総意に沿った分割協議のための参考案を提示したり、相続人全員の意見が一致した場合に分割協議の文書化に協力したりする。
2 信託銀行は、分割協議がまとまらないときは、当該遺産整理業務を打ち切るものとし、分割協議を成立させるために、信託銀行が遺産分割案を作成・提示したり、調停工作に関与・助力したりすることは避ける。
3 信託銀行は、相続債権・債務について、示談交渉を伴う取立・履行を行なわない。

第三 遺言執行業務

1 信託銀行は、財産に関する遺言の執行業務を行なう。 同一の遺言書に財産に関する事項と身分行為に関する事項とが併記されている事案においては、信託銀行は、両者を分離して処理することができるとなった時点で、財産に関する事項を執行する。
2 信託銀行は、財産に関する遺言書であっても、遺言執行者就任前にすでに法的紛争が生じており、遺言執行業務を遂行することが著しく困難と認められる場合には、遺言執行者に就任しない。

第四 広告・宣伝

信託銀行は、相続または遺言に関してすべての相談に応じるという趣旨の広告・宣伝を行なうことを避ける。

第五 情報連絡会の設置

    この確認事項にかかる弁護士・信託銀行双方の業務に関し適正な推進を図るため、日本弁護士連合会と社団法人信託協会とは、年1回程度の情報連絡会を開催し、意見および情報の交換を行ない、併せてこの確認事項を適正に運営するための協議を行なう。

以   上

第2 合意成立までの経緯

自由と正義1994年5月号86頁及び87頁によれば,以下のとおりです。

1.発端と初期の対応(昭和58年〜59年)

昭和58(1983)年1月30日
日本経済新聞にて、信託銀行による「遺言執行」業務の急増が報じられる。

昭和58(1983)年3月
日弁連執行部から業務対策委員会に対し、「非弁行為(弁護士法違反)の疑い」および「職域拡充上の問題」について諮問がなされる。

昭和59(1984)年11月17日
業務対策委員会が会長に答申。当時は実施銀行が1社のみだったこともあり、将来を危惧しつつも基本的には容認するニュアンスの内容であった。

2.情勢の変化と再検討(昭和61年〜63年)

情勢の変化
金融情勢の変化により、信託銀行各社が軒並み相続関連業務に進出。広告宣伝が激化したことで、各地の弁護士会から再検討を求める声が上がる。

昭和61(1986)年9月
日弁連会長から業務対策委員会へ再度諮問。陣容を強化しての調査が始まる。

昭和63(1988)年10月19日
日弁連理事会にて、新しい意見書が承認される。ここでは「信託銀行の業務には弁護士法第72条(非弁行為)や第74条に抵触するものがある」という厳しい見解が示された。

3.長期間にわたる協議(平成元年〜5年)

平成元(1989)年6月
「日弁連と信託協会の協議会」が設置され、第1回協議会を開催。

平成元(1989)年7月
実務的な検討を行うための「ワーキンググループ」が発足。

約4年半の交渉
ワーキンググループ会合は18回、さらに少人数の準備会談は十数回に及んだ。法律論(非弁かどうか)で争うと平行線になるため、最終的には「実務面でのガイドライン策定」に重点が置かれた。

4.合意成立と発効(平成6年)

平成6(1994)年1月21日
日弁連理事会に合意案が付議される。

平成6(1994)年2月10日
日弁連理事会にて合意案が承認。

平成6(1994)年2月22日
両組織の代表者(日弁連・吉川副会長、信託協会・来栖業務委員長)により合意書に調印。

平成6(1994)年3月17日
信託協会側の理事会でも承認。双方の承認が出そろったこの日をもって、合意内容が正式に発効した。