(AI作成)法律書デジタル図書館をめぐる著作権侵害訴訟に関する専門的見解


本ブログ記事は主としてAIで作成したものです。

第1 はじめに
第2 本件訴訟の概要と背景
第3 争点ごとの判断
争点1:被告図書館は、著作権法第31条が保護の対象とする「図書館等」に実質的に該当するか。
争点2:被告図書館の事業は、同条が要件とする「営利を目的としない事業」と言えるか。
争点3:被告図書館のサービスは、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当しないか。
争点4:被告図書館は、「特定図書館等」として求められる適正な運用体制を具備しているか。
第4 総括
第5 参照資料
第6 AIによるファクトチェック結果

* 文化庁HPの「著作権法の一部を改正する法律 御説明資料(条文入り)」7頁ないし14頁に「② 図書館等による図書館資料のメール送信等」(令和5年6月1日施行部分)に関する解説が載っています。

第1 はじめに

2025年10月15日、株式会社有斐閣、第一法規株式会社、株式会社商事法務をはじめとする著作権者・出版権者は、一般社団法人法律書デジタル図書館(以下「被告図書館」といいます。)に対し、著作権及び出版権の侵害を理由として、サービスの差止めと損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起しました。

本件は、令和3年の著作権法改正によって創設された「図書館等公衆送信サービス」の制度趣旨や適用範囲の解釈が問われる、我が国で初めての本格的な司法判断の機会となるものです。

本稿では、図書館実務にも精通した公平中立な著作権法の専門家として、公開されている資料に基づき、本件訴訟における主要な争点を整理し、双方の主張を比較検討した上で、法的な論点について専門的な論評を行います。

第2 本件訴訟の概要と背景

本件訴訟の根底には、令和3年改正著作権法で認められた図書館等による著作物の一部分の公衆送信(いわゆるメール送信やFAX送信)を可能とする権利制限規定(著作権法第31条第2項)の解釈があります。この制度は、利用者の調査研究を支援するため、図書館に来館せずとも資料の一部を入手できるという利便性の向上を目的としていますが、同時に、著作権者や出版社の経済的利益を不当に害することのないよう、厳格な要件が課されています。

原告である出版社側は、被告図書館のサービスが、この制度の要件を満たしておらず、単に「図書館」を名乗ることで、権利者の許諾なく大量の法律専門書を電子的に送信する違法な事業であると主張しています。

一方、被告図書館側は、自らのサービスが著作権法に基づき適法に運営されているものであり、著作権侵害は一切存在しないと反論しています。

以下、本件訴訟における主要な4つの争点について、双方の主張を整理し、専門的な見地から論評を加えます。


争点1:被告図書館は、著作権法第31条が保護の対象とする「図書館等」に実質的に該当するか。

1 争点の内容

著作権法第31条が定める複製・公衆送信の権利制限規定は、その主体を「図書館等」に限定しています。これは、図書館が有する公共的・非営利的な奉仕機能に着目した例外規定だからです。
したがって、被告図書館が形式的に「図書館」を名乗っているだけでなく、その実態においても法が想定する「図書館等」としての公共性を備えているかが、本件の根本的な争点となります。

2 原告側(出版社等)の主張

原告側のプレスリリースからは、被告図書館が「図書館等公衆送信制度」を適用されるためだけに「図書館」という形式を整えたに過ぎず、その実態は公共的な図書館とはかけ離れたものである、という主張が読み取れます。

具体的には、「図書館の公共的使命とはかけ離れた」「同制度を悪用し」といった表現から、被告が図書館法に定める「私立図書館」としての形式を整えているとしても、その設立経緯や事業内容が、国民の知る権利に応えるという図書館本来の公共的使命とは相容れないものであると問題提起しているものと考えられます。特に、後述する営利企業との一体性が、その公共性を欠くことの大きな根拠となると予想されます。

3 被告側(法律書デジタル図書館)の主張

被告図書館は、プレスリリースにおいて、自らが「図書館法2条が定める『私立図書館』として開館し、法律の専門図書館として利用者の調査・研究を支援している」と明確に主張しています。

また、「2万冊を超える法律専門書・雑誌を蔵書資料として備え、蔵書閲覧の他」「公衆送信サービス等を提供しています」と述べており、図書館としての物的設備(蔵書)や基本的なサービス(閲覧)を備えていることを強調し、法的な「図書館」の定義を満たしていると反論しています。

4 AI専門家としての論評

本争点における判断の鍵は、形式的な適法性だけでなく、実質的な公共性の具備にあると考えられます。

被告図書館が主張するように、図書館法上の「私立図書館」としての届出を行い、一定数の蔵書を保有し、閲覧スペースを提供していれば、形式的な要件は満たしていると評価されるかもしれません。著作権法施行令第1条の3は、権利制限の対象となる図書館等を列挙しており、その中には図書館法に定める図書館が含まれています。

しかしながら、著作権法第31条の制度趣旨は、文化審議会の報告書にもある通り、「図書館等の果たすべき公共的奉仕機能」に着目したものです。したがって、裁判所は、単に形式的な要件を満たしているか否かにとどまらず、被告図書館の設立目的、運営実態、事業の性格などを総合的に勘案し、公共的奉仕機能を担う主体としてふさわしいかを実質的に判断するでしょう。

この点において、原告側が指摘するであろう、特定の営利企業(株式会社サピエンス社)との密接な関係は、被告図書館の公共性を判断する上で極めて重要な要素となります。もし、被告図書館の存在が、特定の営利企業の事業を補完し、その利益を増大させることを主たる目的としていると認定されれば、たとえ形式上は図書館であっても、著作権法第31条が想定する「図書館等」には該当しない、と判断される可能性は十分にあります。

結論として、被告図書館が物理的な施設や蔵書を備えているという主張は一定の根拠を持つものの、その設立経緯や事業全体の構造から「公共的奉仕機能」という実質を欠くと判断された場合、原告側の主張に説得力があると評価されるでしょう。


争点2:被告図書館の事業は、同条が要件とする「営利を目的としない事業」と言えるか。

1 争点の内容

著作権法第31条に基づく複製・公衆送信サービスは、「営利を目的としない事業として」行われることが厳格に求められています。
これは、権利者に経済的損失を与えかねない例外的な行為を認める以上、それが利益追求の手段として用いられることを防ぐための重要な要件です。

2 原告側(出版社等)の主張

原告側は、被告図書館の事業が実質的に営利目的であると強く主張しています。その根拠として、以下の点を挙げています。

  • 被告図書館の代表者である高田龍太郎氏は、株式会社サピエンス社(以下「サピエンス社」といいます。)の代表者も兼務している。
  • 被告図書館は、サピエンス社からの資金拠出により設立された。
  • 被告図書館のサービスと、サピエンス社が提供するサービス「LION BOLT」は酷似しており、実質的に連携している。
  • 当初「LION BOLT Prime」と称して計画されていたサービスが、出版社からの警告を受けて中止を表明した後、形式を変えて被告図書館のサービスとして開始された経緯がある。

これらの事実から、原告側は、被告図書館が一般社団法人という非営利法人の形式をとりながらも、その実態はサピエンス社の営利活動と一体であり、著作権法の権利制限規定を営利事業のために悪用している、と結論付けています。

3 被告側(法律書デジタル図書館)の主張

被告側のプレスリリースには、この点に関する直接的な反論は詳述されていません。しかし、被告が「一般社団法人」として設立されている事実を強調し、提供するサービス自体から直接的な利益を上げていない、あるいは会費等が実費弁償的な範囲にとどまる、といった主張を行うことが予想されます。

また、サピエンス社との関係については、現在は被告単独で実施するサービスであり、形式的には分離されていると主張するものと考えられます。

4 AI専門家としての論評

本争点においては、事業の形式ではなく、その実質的な性格と構造が問われます。

「営利を目的としない」という要件は、単に当該事業から直接利益を上げていないというだけでは足りず、事業全体の構造が利益追求を目的としていないことが求められます。判例上も、間接的にでも特定の営利事業者の利益に貢献するような活動は、営利目的と判断される傾向にあります。

原告側が指摘する、①代表者の同一性、②設立資金の出所、③事業内容の類似性と連携性、④サービス開始に至る経緯、という4つの点は、被告図書館の事業がサピエンス社の営利事業と不可分の一体をなしていることを強く示唆するものです。

特に、サピエンス社という営利企業が資金を拠出して非営利法人である被告図書館を設立し、両法人の代表者が同一人物であり、かつ両者が類似のサービスを提供しているという構造は、被告図書館の活動がサピエンス社の事業価値を高め、間接的にその利益に貢献することを目的としている、と評価される可能性が極めて高いと言わざるを得ません。

仮に被告図書館が会費を徴収している場合、その金額が図書館の維持運営に必要な実費を大幅に超えるものであれば、それ自体が営利性を帯びることになります。そうでなくとも、被告図書館のサービスがサピエンス社の営利サービスへの顧客誘引として機能しているならば、事業全体として営利性を否定することは困難でしょう。

結論として、被告側が形式的な非営利性を主張したとしても、原告側が挙げる具体的な事実関係が証明された場合、裁判所は事業の実態を重視し、「営利を目的としない事業」という要件を欠くと判断する公算が大きく、原告側の主張に強い説得力が認められます。


争点3:被告図書館のサービスは、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当しないか。

1 争点の内容

令和3年改正法では、公衆送信サービスを認めるにあたり、権利者保護の観点から極めて重要なセーフガード規定が設けられました。それが著作権法第31条第2項のただし書です。
これは、たとえ他の要件をすべて満たしていても、「当該著作物の種類及び用途並びに当該特定図書館等が行う公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には、公衆送信を行うことができない、とするものです。

2 原告側(出版社等)の主張

原告側は、被告図書館のサービスがまさにこの「ただし書」に該当し、違法であると主張しています。その論拠は以下の通りです。

  • 被告図書館が扱う法律専門書は、まさに電子書籍やデータベースといった形で、出版社が正規の商業的利用市場を形成・拡大しようとしている分野である。
  • 被告のサービスは、極めて多数の法律文献を網羅的に対象とし、「検索後即時に送信する」という高い利便性を有している。
  • このようなサービスは、利用者が正規の電子書籍等を購入・利用する必要性を低下させ、出版社のビジネスと直接競合(カニバリゼーション)する。
  • 結果として、著作権者の正当な利益が不当に害されるだけでなく、専門書の出版文化そのものの存立を危うくする。

すなわち、被告のサービスは、図書館による公共的な資料提供という補完的な役割を逸脱し、正規市場を代替・破壊するものである、というのが原告側の核心的な主張です。

3 被告側(法律書デジタル図書館)の主張

被告側は、この点についても直接の反論をプレスリリースで示していませんが、訴訟においては、以下のような主張を展開すると考えられます。

  • サービスは、著作権法及び関係者協議会が定めたガイドラインに準拠し、「著作物の一部分」の提供に限定されている。
  • 利用目的も「調査研究の用」に限定しており、正規の市場で書籍全体を購入する需要とは競合しない。
  • 被告図書館のサービスは、むしろ入手が困難になった過去の文献へのアクセスを保障するものであり、公共の利益に資する。

これらの主張を通じて、自らのサービスは限定的であり、著作権者の利益を「不当に」害するレベルには至らないと反論することが予想されます。

4 AI専門家としての論評

この「ただし書」の解釈と適用は、本件訴訟の最大の核心であり、今後の図書館等公衆送信サービスのあり方を方向付ける極めて重要な判断となります。

文化庁の解説資料や文化審議会の報告書によれば、この規定は、特に電子配信サービスなどの正規の市場と競合する事態を想定して設けられたものです。判断にあたっては、「著作物の種類・用途」と「公衆送信の態様」が総合的に考慮されます。

本件をこの基準に照らすと、原告側の主張に強い説得力があると考えられます。

  • 著作物の種類・用途: 被告が対象とする法律専門書は、高価であり、かつ部分的な参照・引用のニーズが高いという特性があります。まさに、出版社がチャプター単位での販売やデータベースサービスといった電子的な市場を開拓しようとしている分野であり、正規市場との競合が生じやすい「種類」の著作物です。
  • 公衆送信の態様: 原告側が主張するように、多数の文献を網羅し、「検索後即時に送信」するというサービス態様は、利用者の利便性が非常に高い反面、正規市場への代替性が極めて高いと言えます。利用者は、必要な部分を即座に入手できるため、電子書籍を購入したり、有料データベースを契約したりするインセンティブが著しく削がれる可能性があります。

文化審議会の報告書では、権利者の利益を不当に害する場合の例として、まさに「電子配信されている高額な新刊本で一章単位でも有償提供されているものを、その配信開始と同時に図書館等からも一章単位で公衆送信する場合」が念頭に置かれていました。被告図書館のサービスは、これに類似する、あるいはそれ以上に市場への影響が大きい態様であると評価される可能性が高いでしょう。

被告側が主張するであろう「一部分」の提供という点も、法律専門書においては、一つの判例評釈や論文がそれ自体で独立した価値を持つことが多く、「一部分」であっても利用者の需要を十分に満たし、正規の購入を不要にしてしまう効果を持ち得ます。

したがって、被告図書館のサービスモデルは、図書館による補完的な資料提供という制度の趣旨を逸脱し、正規市場と正面から競合するものであると判断され、「著作権者の利益を不当に害する」場合に該当する可能性が極めて高いと考えられます。


争点4:被告図書館は、「特定図書館等」として求められる適正な運用体制を具備しているか。

1 争点の内容

公衆送信サービスを実施できるのは、法第31条第1項に定める「図書館等」の中でも、さらに同条第3項の厳格な要件を満たした「特定図書館等」に限られます。
これには、責任者の設置、職員への研修、利用者情報の適切な管理、データの目的外利用を防止・抑止するための措置などが含まれます。
これは、電子データが容易に複製・拡散され得るというリスクに対応し、制度の適正な運用を担保するための重要な要件です。

2 原告側(出版社等)の主張

原告側は、被告の「制度を悪用」しているという主張の中に、これらの適正な運用体制が実質的に具備されていないという批判を含んでいると考えられます。

形式的には責任者を置き、内部規程を作成しているとしても、その実態が伴っておらず、特にデータの不正拡散を防止するための実効的な管理体制が構築されているかについて、強い疑問を呈しているものと推察されます。争点2で指摘したサピエンス社との一体性も、独立したガバナンスや適切な利用者情報管理が機能しているのかという疑念につながります。

3 被告側(法律書デジタル図書館)の主張

被告図書館は、プレスリリースで「一般社団法人図書等公衆送信補償金管理協会(SARLIB) に登録の上、著作権法31条3項が定める『特定図書館等』として」サービスを提供していると主張しています。

SARLIBへの登録は、特定図書館等としての要件を満たしていることを自己申告し、受理されたことを意味します。また、「著作権法に精通した複数の弁護士や研究者に相談し、さらには、文化庁著作権課や SARLIBにも適宜説明や協議を行った上で、法的懸念がないよう、慎重に準備を進めてまいりました」と述べており、専門家の助言や関係機関との対話を経て、適法な運用体制を構築したと強く主張しています。

4 AI専門家としての論評

本争点は、被告図書館の内部的な運用体制という、外部からは見えにくい事実関係の認定が中心となります。

被告側が主張するSARLIBへの登録は、自らが特定図書館等の要件を満たしていると認識し、手続きを踏んだことを示すものではありますが、それ自体が要件充足を法的に確定させるものではありません。訴訟においては、SARLIBへの登録の有無にかかわらず、法が定める各要件(責任者の実質的な権限、研修の内容と実効性、利用者情報の管理体制、データの拡散防止措置の具体的内容と有効性など)を実質的に満たしているかが、証拠に基づいて厳格に審査されます。

「図書館等における複製及び公衆送信ガイドライン」では、これらの要件について、利用規約に定めるべき事項や、送信する電子ファイルに講じるべき措置(利用者IDの挿入等)など、具体的な指針が示されています。被告図書館がこれらのガイドラインを遵守しているかが一つの基準となります。

しかし、より本質的には、これらの措置が単なる形式的な具備にとどまらず、制度趣旨に照らして実効的に機能しているかが問われます。例えば、利用者情報の管理について、サピエンス社の営利事業と個人情報が共有されるようなことがあれば、適切な管理とは言えません。また、外部事業者に事務処理を委託している場合、ガイドラインが求めるように、図書館等が当該事業者に対して十分な監督権限を有し、法令遵守を徹底させているかが問われます。

被告側は専門家や関係機関への相談を挙げていますが、最終的な法的責任は被告図書館自身が負うものであり、それらの相談をもって適法性が保証されるわけではありません。

結論として、本争点は具体的な事実認定に委ねられる部分が大きいですが、他の争点、特にサピエンス社との一体性が認定された場合、特定図書館等として求められる独立したガバナンスや厳格な情報管理体制が実質的に機能しているのかについて、裁判所は強い疑念を抱く可能性があります。形式的な体制整備の主張だけでは、原告側の懸念を払拭するのは容易ではないでしょう。


第4 総括

本件訴訟は、デジタル・ネットワーク時代における知のアクセスと、それを支える創作・出版文化の維持という、二つの重要な価値の調和点をどこに見出すべきかという、現代社会が直面する根源的な問いを司法の場で問うものです。

これまでの分析を踏まえると、被告図書館の事業モデルは、著作権法第31条が定める「図書館等」「営利を目的としない事業」「著作権者の利益を不当に害しない」といった複数の重要な要件において、その適合性に重大な疑義があると言わざるを得ません。特に、特定の営利企業との一体性、そして正規の商業市場との直接的な競合という点は、図書館等公衆送信サービスという制度の趣旨から逸脱していると判断される可能性が高いと考えられます。

もちろん、最終的な判断は、法廷で提示される具体的な証拠に基づき、裁判所によって下されます。しかし、本件が、単なる一事業者と出版社の間の紛争にとどまらず、令和3年改正法の理念を社会に正しく根付かせるための試金石となることは間違いありません。

この訴訟を通じて、図書館による公共的な情報提供の重要性を再認識すると同時に、その活動が、新たな知を生み出す著作者や出版社の持続可能な経済的基盤を損なうものであってはならない、という原則が確認されることが期待されます。そして、出版社側もまた、利用者のデジタル環境における利便性向上のニーズに真摯に向き合い、より魅力的なサービスの開発を加速させることが、出版文化の未来にとって不可欠であると言えるでしょう。

本件の司法判断は、今後の図書館サービス、出版ビジネス、そして我が国の知のインフラ全体のあり方に、大きな影響を与えるものと確信しています。

第5 AIの参照資料

第6 AIによるファクトチェック結果

公平中立な専門家として,ご提示いただいた文書「法律書デジタル図書館をめぐる著作権侵害訴訟に関する専門的見解」について,著作権法及び関連制度に関する事実関係の記述を対象にファクトチェックを実施しました。

検証は,文書の記述と,根拠として提供された5つのPDF資料(文化庁作成の解説資料,文化審議会報告書,関係者協議会ガイドライン,及び訴訟当事者のプレスリリース)との照合によって行いました。以下にその結果をテーブル形式で示します。

なお,本ファクトチェックは,文書に記載された法制度等に関する客観的な事実の正確性を検証するものであり,文書全体の論評や意見の妥当性を評価するものではありません。また,訴訟の具体的な経緯や当事者間の主張内容そのものは検証の対象から除外し,あくまでその背景となる著作権制度に関する記述を対象としています。

番号検証事実結果判断根拠
1令和3年の著作権法改正によって「図書館等公衆送信サービス」が創設された。真実文化庁資料は,令和3年改正法が「図書館等が著作物等の公衆送信等を行うことができるようにするための規定を整備する」ものであると解説している。審議会報告書及びガイドラインも,この制度が令和3年改正によるものであると言及している。
2図書館等公衆送信サービスは,著作権法第31条第2項に規定されている。真実文化庁資料の条文解説において,新法第31条第2項として「各図書館等による図書館資料の公衆送信」の規定が詳細に説明されている。ガイドラインも法第31条第2項に基づくサービスであると明記している。
3図書館等公衆送信サービスは,図書館等による著作物の一部分の公衆送信を可能とする権利制限規定である。真実文化庁資料では,新法第31条第2項の対象が原則として「公表された著作物の一部分」であると解説されている。審議会報告書及びガイドラインも,同様の記載をしている。
4ここでいう公衆送信には,メール送信やFAX送信が含まれる。真実文化庁資料では,公衆送信の具体例として「メールやFAXなどで送信」することが挙げられている。審議会報告書でも「FAXやメール等による送信」と言及されている。
5この制度の目的は,利用者の調査研究を支援することである。真実新法第31条第2項の条文には,サービスの目的が「その調査研究の用に供するため」と明記されている。文化庁資料,審議会報告書,ガイドラインのいずれにおいても,この目的が繰り返し強調されている。
6この制度は,利用者が図書館に来館せずとも資料の一部を入手できる利便性の向上を目的の一つとしている。真実審議会報告書は,制度創設の背景として「遠隔地から資料のコピーを入手しようとする場合」の課題を挙げ,デジタル・ネットワーク技術の活用による利便性向上を求めている。文化庁資料も同様の趣旨を解説している。
7制度の適用には,著作権者や出版社の経済的利益を不当に害することのないよう,厳格な要件が課されている。真実文化庁資料及び審議会報告書は,権利者保護の観点から,送信主体の限定,ただし書による利用制限,補償金制度の導入といった厳格な要件を設けていることを詳細に説明している。
8著作権法第31条が定める権利制限規定は,その主体を「図書館等」に限定している。真実著作権法第31条第1項の条文において,主体が「国立国会図書館及び図書,記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(図書館等)」と定義されている。
9この権利制限は,図書館が有する公共的・非営利的な奉仕機能に着目した例外規定である。真実文化庁資料は,法第31条が「図書館等の果たすべき公共的奉仕機能に着目した権利制限規定」であると解説している。審議会報告書も同様の趣旨を述べている。
10権利制限の対象となる「図書館等」の具体的な範囲は,著作権法施行令第1条の3に定められている。真実文化庁資料は,政令で定める図書館等として施行令第1条の3を引用し,その内容を解説している。審議会報告書の付属資料にも,同条文が掲載されている。
11著作権法施行令で定められた「図書館等」には,図書館法に定める図書館が含まれる。真実著作権法施行令第1条の3第1項第1号には「図書館法第二条第一項の図書館」が明記されている。審議会報告書の付属資料でも確認できる。
12図書館等における複製・公衆送信サービスは,「営利を目的としない事業として」行われることが要件である。真実著作権法第31条第1項及び第2項の条文に「その営利を目的としない事業として」と明確に規定されている。文化庁資料,審議会報告書,ガイドラインのすべてがこの要件に言及している。
13公衆送信サービスを認めるにあたり,権利者保護の観点からセーフガード規定として著作権法第31条第2項にただし書が設けられた。真実文化庁資料は,新法第31条第2項の解説において「著作権者の利益を不当に害することとなる場合の制限」としてただし書の存在と趣旨を説明している。審議会報告書では,このただし書の導入経緯が詳細に議論されている。
14このただし書は,「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には公衆送信ができないとするものである。真実新法第31条第2項の条文に「ただし,…著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。」と規定されている。文化庁資料及び審議会報告書も条文を引用して解説している。
15「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当するか否かは,「当該著作物の種類及び用途並びに当該特定図書館等が行う公衆送信の態様」に照らして判断される。真実新法第31条第2項のただし書の条文に,判断要素として「当該著作物の種類…及び用途並びに当該特定図書館等が行う公衆送信の態様に照らし」と明記されている。文化庁資料もこの点を解説している。
16ただし書の規定は,特に電子配信サービスなど正規の市場と競合する事態を想定して設けられた。真実審議会報告書は「正規の電子出版等をはじめとする市場,権利者の利益に大きな影響を与え得ることとなる」と指摘し,市場との競合回避をただし書導入の主たる理由として挙げている。文化庁資料も同様の趣旨を説明している。
17文化審議会の報告書では,権利者の利益を不当に害する場合の例として,「電子配信されている高額な新刊本で一章単位でも有償提供されているものを,その配信開始と同時に図書館等からも一章単位で公衆送信する場合」が念頭に置かれていた。真実文化庁資料及び審議会報告書(文化庁資料の引用元)で,まさにこの例が挙げられ,正規の電子配信サービスと競合する事態として解説されている。
18公衆送信サービスを実施できるのは,「図書館等」の中でも,さらに厳格な要件を満たした「特定図書館等」に限られる。真実新法第31条第2項の条文において,行為主体が「特定図書館等」と規定されている。文化庁資料は,「特定図書館等」の要件について詳細に解説している。
19「特定図書館等」の要件は,著作権法第31条第3項に定められている。真実文化庁資料において,新法第31条第3項が「特定図書館等」の定義規定であることが示され,その内容が解説されている。
20「特定図書館等」の要件には,責任者の設置が含まれる。真実新法第31条第3項第1号に「公衆送信に関する業務を適正に実施するための責任者が置かれていること」と規定されている。
21「特定図書館等」の要件には,職員への研修が含まれる。真実新法第31条第3項第2号に「業務に従事する職員に対し,当該業務を適正に実施するための研修を行っていること」と規定されている。
22「特定図書館等」の要件には,利用者情報の適切な管理が含まれる。真実新法第31条第3項第3号に「利用者情報を適切に管理するために必要な措置を講じていること」と規定されている。
23「特定図書館等」の要件には,データの目的外利用を防止・抑止するための措置が含まれる。真実新法第31条第3項第4号に「目的以外の目的のために利用されることを防止し,又は抑止するために必要な措置」を講じることが規定されている。
24公衆送信サービスの利用者は,受け取ったデータを調査研究の用に供するために必要と認められる限度で複製(プリントアウト等)することができる。真実新法第31条第4項に「その調査研究の用に供するために必要と認められる限度において,当該著作物を複製することができる」と規定されている。文化庁資料もこの点を解説している。
25公衆送信サービスを行う場合,特定図書館等の設置者は著作権者に補償金を支払わなければならない。真実新法第31条第5項に「相当な額の補償金を当該著作物の著作権者に支払わなければならない」と規定されている。
26補償金制度は,サービスの実施に伴って権利者が受ける不利益を補償する観点から導入された。真実文化庁資料は「公衆送信サービスの実施に伴って権利者が受ける不利益を補償するという観点から」補償金制度が設けられたと解説している。審議会報告書でも同様の議論がなされている。
27補償金の支払先には,電子出版権を有する出版権者も含まれると解されている。真実審議会報告書は,補償金の受領者として「著作権者と出版権者(法第80条第1項第2号に規定する電子出版権を有する者をいい,登録がなされているかどうかは問わない)の双方を位置づけることが適当である」と提言している。
28補償金の管理・分配は,文化庁長官が指定する単一の指定管理団体(SARLIB)が一元的に行う。真実新法第104条の10の2第1項で,補償金を受ける権利は「指定管理団体」によってのみ行使できるとされている。被告図書館のプレスリリース及びガイドラインで,その団体がSARLIBであることが示されている。
29国立国会図書館は,絶版等の理由で入手困難な資料(絶版等資料)を,一定の要件下で個人の利用者にもインターネット送信できる。真実文化庁資料は,新法第31条第6項から第11項の改正概要として「国立国会図書館による絶版等資料の個人向けのインターネット送信」が可能になったと解説している。
30図書館は,資料の保存のために必要がある場合,著作物を複製することができる。真実著作権法第31条第1項第2号に「図書館資料の保存のため必要がある場合」の複製が認められている。
31図書館は,他の図書館等の求めに応じ,絶版等資料の複製物を提供することができる。真実著作権法第31条第1項第3号に「他の図書館等の求めに応じ,絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合」が規定されている。
32図書館等公衆送信サービスで全部の送信が可能な著作物として,「国等の周知目的資料」が法律で例示されている。真実新法第31条第2項の条文で,「国若しくは地方公共団体の機関…が一般に周知させることを目的として作成し,その著作の名義の下に公表する広報資料,調査統計資料,報告書その他これらに類する著作物」が全部送信可能なものとして挙げられている。
33「発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物」は,全部の複製・公衆送信が可能となる場合がある。真実新法第31条第1項第1号及び第2項では,全部利用が可能な著作物として政令で定めるものの中に,「発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物」が含まれることが想定されている。
34「一部分」の解釈について,審議会報告書では「少なくとも半分を超えないものを意味する」との過去の解釈が示されている。真実審議会報告書の注釈67において,「著作権審議会第4小委員会(複写複製関係)報告書(昭和51年9月)」で示された「少なくとも半分を超えないものを意味する」との解釈が紹介されている。
35ガイドラインでは,「一部分」の範囲を「各著作物の2分の1を超えない範囲」と定めている。真実ガイドラインの「5 (3)『一部分』の意義」の項目に,「複写サービス,公衆送信サービスともに,各著作物の2分の1を超えない範囲とします」と明記されている。
36複写サービスにおいては,館内に設置されたコイン式コピー機を利用者自らが操作することも,一定の条件下で許容される。真実ガイドラインの「3 (3)利用者自らの行為」において,「司書又はこれに相当する職員が随時管理監督することができる場合にのみ許容されるものです」と記載されている。
37図書館等が契約しているオンラインの電子ジャーナル等は,公衆送信サービスの対象外である。真実ガイドラインの「2 (3)電子ジャーナル等の取り扱い」において,「複写サービス及び公衆送信サービスの対象外です」と明記されている。
38ガイドラインでは,公衆送信の対象外となる資料として,SARLIBが指定したものや,楽譜,地図,写真集,画集などを例示している。真実ガイドラインの「7 (2)対象外となる資料」の項目に,これらの資料が具体的に列挙されている。
39ガイドラインは,送信データに利用者IDやデータ作成館名などを挿入するよう求めている。真実ガイドラインの「8 (2)送信する電子ファイルに対して講じる措置」において,「全頁ヘッダー部分に利用者 ID…を挿入する」「全頁フッター部分にデータ作成館名,データ作成日を挿入する」と定めている。
40「特定図書館等」の責任者は,館長または館長が指名する職員が務める。真実ガイドラインの「9 (1)責任者」において,「責任者は,図書館等の館長または公衆送信に関する業務の適正な実施に責任を持つ職員のうちから館長が指名する者とします」と規定されている。
41著作権法第31条の権利制限は,利用者が複数回に分けて申請し,結果的に著作物全体を入手するような脱法行為を許容するものではない。真実審議会報告書は「複数回に分けて申請して全文を取得するなどの脱法行為が行われることを懸念する意見」に言及し,図書館等による慎重な精査を求めている。
42公立図書館は,図書館法第17条により,入館料や資料の利用に対する対価を徴収してはならないとされている(無料公開の原則)。真実審議会報告書の付属資料に図書館法第17条の条文が掲載されており,「いかなる対価をも徴収してはならない」と規定されている。
43公衆送信サービスの補償金を利用者に転嫁することは,図書館法の無料公開の原則に反しないと解されている。真実審議会報告書は,補償金が複写サービスの印刷代等と同様に「実費」として捉えられることなどから,「特段の問題は生じないものと考えられる」と述べている。
44令和3年改正法は,放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化も内容としている。真実文化庁資料の冒頭で,改正法の主な内容として「図書館等の権利制限規定の見直し」と並んで「放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化」が挙げられている。
45令和3年改正法による図書館等公衆送信サービスの施行日は,公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日とされた。真実文化庁資料の「3.施行期日」の項目で,図書館等による図書館資料の公衆送信に関する規定の施行日が「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日」と記載されている。
46権利制限規定の対象となる「図書館資料」とは,図書館等が所蔵する図書,記録その他の資料をいう。真実著作権法第31条第1項に,「図書館等の図書,記録その他の資料(…「図書館資料」という。)」と定義されている。
47寄贈された資料であっても,図書館等に所有権があれば「図書館資料」としてサービスの対象となる。真実ガイドラインの「2 (4)寄贈・寄託資料の取り扱い」に,「図書館等にその処分権限がある(所有権がある)寄贈資料は,『図書館資料』に含まれるため,…対象となります」と記載されている。
48サービスの利用申込みにあたり,図書館等は利用者から利用目的を記載した申請書の提出を求めることが推奨されている。真実ガイドラインの「4 制度目的による限定」に,「図書館等はサービスの実施にあたり,利用者に利用目的を記載した申請書の提出を求めるなど…確認することが求められます」とある。
49著作物の単位は,書籍であれば一冊ごと,新聞・雑誌であれば号ごとに判断されるのが原則である。真実ガイドラインの「5 (2)著作物の単位」に,書籍は「書籍一冊ごとに」,新聞・雑誌は「号ごとに」判断する旨が記載されている。
50俳句は1句,短歌は1首をもって一つの著作物として扱われる。真実ガイドラインの「5 (2)〔著作物のジャンルごとの判断基準〕」に,「俳句は1句,短歌は1首をもって,一つの著作物として扱う」と明記されている。
51補償金の要否判断にあたり,発行年が古い著作物については,著作権保護期間が満了しているかどうかの調査が推奨されている。真実ガイドラインの「11 著作権保護期間に関する補償金の要否判断について」に,1967年以前に発行された資料について,主たる著作者の没年を調査する基準が示されている。
52図書館等は,外部事業者に複製や送信の事務処理を委託することができる。真実ガイドラインの「3 (2)外部事業者への委託」において,「事務処理の全部または一部を,図書館等は外部事業者に委託することが可能です」と記載されている。ただし,図書館等の監督下で行う必要がある。

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