宗教法人の解散命令


目次第1 総論第2 宗教法人法81条1項所定の解散事由第3 宗教法人「オウム真理教」に対する解散命令及び破産宣告

1 最高裁平成8年1月30日決定の判示内容
2 オウム真理教に対する解散命令
3 オウム真理教の始まりから破産宣告に至るまでの経緯
第3の2 宗教法人「明覚寺」に対する解散命令
第4 宗教法人の解散命令の効果
第5 宗教法人法81条と同趣旨とされた旧商法58条
1 最高裁平成8年1月30日決定の判示内容
2 旧商法58条の条文
3 会社法824条の条文
4 その他
第5の2 宗教法人に対する報告徴収・質問権
1 宗教法人法78条の2の条文
2 報告徴収・質問権を行使する際の一般的な基準
第6 霊感商法
第7 全国霊感商法対策弁護士連絡会
第8 オウム真理教に対する破防法に基づく解散指定処分の請求,及び団体規制法に基づく観察処分
1 オウム真理教に対する破防法に基づく解散指定処分の請求
2 オウム真理教に対する団体規制法に基づく観察処分
第9 宗教法人法の条文
1条(この法律の目的)
43条(解散の事由)
85条(解釈規定)
第10 関連記事その他

第1 総論
1 宗教法人の解散命令は宗教法人法81条1項に基づく制度です。
2 法令違反等を理由に解散を命じられた宗教法人の事例はオウム真理教及び明覚寺だけですから,その意味での宗教法人の解散命令は2件ということになります(ヤフーニュースの「かつて解散になった宗教法人「法の華」「明覚寺」 ――その背景と統一教会との共通点」参照)。
3 宗教上の行為の自由はもとより最大限に尊重すべきものですが,絶対無制限のものではありません(最高裁平成8年1月30日決定。なお,先例として,最高裁大法廷昭和38年5月15日判決)。

第2 宗教法人法81条1項所定の解散事由 
1 宗教法人の解散命令について定める宗教法人法81条1項は以下のとおりです。
    裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。
二 第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと。
三 当該宗教法人が第二条第一号に掲げる宗教団体である場合には、礼拝の施設が滅失し、やむを得ない事由がないのにその滅失後二年以上にわたつてその施設を備えないこと。
四 一年以上にわたつて代表役員及びその代務者を欠いていること。
五 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証に関する認証書を交付した日から一年を経過している場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていることが判明したこと。
2 最高裁平成8年1月30日決定によって支持された東京高裁平成7年12月19日決定は下記の判示をしていますし,明覚寺に対する解散命令を出した和歌山地裁平成14年1月24日決定(判例体系に掲載)も同趣旨の判示をしています。
    同法(山中注:宗教法人法)八一条一項一号及び二号前段所定の宗教法人に対する解散命令制度が設けられた理由及びその目的に照らすと、右規定にいう「宗教法人について」の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(一号)、「二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」(二号前段)とは、宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえるうえ、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって、しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、又は宗教法人法二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為をいうものと解するのが相当である。
3(1) 最高裁平成9年7月11日判決は以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
    我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補てんして、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり(最高裁昭和六三年(オ)第一七四九号平成五年三月二四日大法廷判決・民集四七巻四号三〇三九頁参照)、加害者に対する制裁や、将来における同様の行為の抑止、すなわち一般予防を目的とするものではない。
    もっとも、加害者に対して損害賠償義務を課することによって、結果的に加害者に対する制裁ないし一般予防の効果を生ずることがあるとしても、それは被害者が被った不利益を回復するために加害者に対し損害賠償義務を負わせたことの反射的、副次的な効果にすぎず、加害者に対する制裁及び一般予防を本来的な目的とする懲罰的損害賠償の制度とは本質的に異なるというべきである。我が国においては・加害者に対して制裁を科し、将来の同様の行為を抑止することは、刑事上又は行政上の制裁にゆだねられているのである。
    そうしてみると、不法行為の当事者間において、被害者が加害者から、実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一般予防を目的とする賠償金の支払を受け得るとすることは、右に見た我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相いれないものであると認められる。
(2) 民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分(以下「懲罰的損害賠償部分」といいます。)が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合,その弁済が上記外国裁判所の強制執行手続においてされたものであっても,これが懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとして上記判決についての執行判決をすることはできません(最高裁令和3年5月25日判決)。

第3 宗教法人「オウム真理教」に対する解散命令及び破産宣告1 最高裁平成8年1月30日決定の判示内容

・ 大量殺人を目的として計画的,組織的にサリンを生成した宗教法人について,宗教法人法81条1項1号及び2号前段に規定する事由があるとしてされた解散命令は,専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし,宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではなく,右宗教法人の行為に対処するには,その法人格を失わせることが必要かつ適切であり,他方,解散命令によって宗教団体やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても,その支障は解散命令に伴う間接的で事実上のものにとどまるなどといった事情の下においては,必要でやむを得ない法的規制であり,憲法20条1項に違反しません(オウム真理教に対する解散命令事件に関する最高裁平成8年1月30日決定)。
2 オウム真理教に対する解散命令
・ 平成8年版の犯罪白書の「1 宗教法人解散命令」には以下の記載があります。
    検察官(東京地方検察庁検事正)及び東京都知事は,平成7年6月30日,それぞれ東京地方裁判所に対し,教団に対する宗教法人の解散命令を申し立てた。申立の理由は,教団によるサリンの生成企図という殺人予備行為が,同法81条1項1号(法令に違反して,著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと)及び2号前段(同法2条に規定する宗教団体の,目的を著しく逸脱した行為をしたこと)所定の解散命令事由に該当するとするものである。
    東京地方裁判所は,平成7年10月30日,申立人両名の申立を理由があるものと認め,教団を解散する旨の決定を下した。これに対する教団の東京高等裁判所への抗告が棄却された(7年12月19日)ことにより,同決定は確定し,続く最高裁判所への特別抗告も棄却された(8年1月30日)。これまで,休眠状態の宗教法人に対して,同法81条1項2号後段及び4号を理由として解散を命じた事例はあるが,法令違反・目的逸脱行為を理由に解散を命じたのは,本決定が初めてである。解散命令により,清算人が裁判所によって選任され,教団は清算手続に入った。
3 オウム真理教の始まりから破産宣告に至るまでの経緯
(1) 東京地裁令和2年9月29日判決(判例秘書に掲載)は,オウム真理教の破産宣告に至るまでの経緯について以下のとおり判示しています。
ア 昭和59年2月頃,E(山中注:麻原彰晃こと松本智津夫)を教祖・創始者として,「オウム神仙の会」が活動を開始し,昭和62年7月頃,「オウム真理教」にその名称を変更し,Eの説くオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的として活動を続けた。「オウム真理教」は,平成元年8月25日,東京都知事から宗教法人法に基づく規則の認証を受けて,同月29日,宗教法人「オウム真理教」(代表役員「E」)の設立の登記がされた(以上につき,乙B2の1・2)。
イ オウム真理教の構成員らは,平成6年6月27日,長野県松本市内でサリンを散布し,8名を殺害するとともに,143名にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下「松本サリン事件」という。)を敢行し,平成7年3月20日,東京都内を走行中の地下鉄電車5本内でサリンを散布し,12名を殺害するとともに,3000名を超える者にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下「地下鉄サリン事件」といい,松本サリン事件と併せて「両サリン事件」という。)を敢行した(乙B2の1~3,3の1)。オウム真理教の構成員らは,両サリン事件を含め,多数の殺人等の犯罪行為を敢行した(乙3の2)。
ウ 宗教法人「オウム真理教」については,平成7年12月19日,宗教法人法に基づく解散命令が確定し,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた(乙B4の1)。
(2) オウム真理教に対する解散命令は,東京高裁平成7年12月19日決定がオウム真理教に告知された時点で確定したものとして取り扱われています。

第3の2 宗教法人「明覚寺」に対する解散命令

1 戸渡速志 文化庁文化部宗務課長は,平成13年6月20日の宗教法人審議会(第141回)において以下の答弁をしています。
 宗教法人「明覚寺」の解散命令請求の状況についてでございます。
 この宗教法人「明覚寺」と申しますのは、和歌山県に主たる事務所を持っておりました、単立の宗教法人でございますが、この明覚寺系列の名古屋別院であります満願寺というところを中心といたしまして、全国にわたって霊視商法詐欺事件を行ったということで、これまでに代表役員らを含む11人が詐欺罪で起訴されて、既に8名に有罪判決が出されて確定していると。ただ、現代表役員、それから前代表役員ら中心人物3名は、現在控訴をしておりまして、名古屋高裁で審理中という状況の事案でございます。
 民事の関係につきましては、既に平成11年4月の時点で、明覚寺側は和解金約11億円を支払いまして、被害者等とはすべて和解が成立しているということで、民事上の争いはない状況になってございます。
 この法人につきましては、現代表役員の西川らは、まだ控訴をして争っているわけではございますけれども、平成11年7月の地裁段階の判決におきまして、多数の明覚寺所属の僧侶らによって、組織的・計画的かつ継続的に実行された大規模な詐欺事案と認定されていること、さらに、同判決の中で、宗教法人が宗教活動の名のもとに組織を挙げて行った大規模な詐欺事案として全国的に強い関心を呼び、宗教活動や宗教法人のあり方などを改めて問い直す契機となるなど、社会に与えた影響も大きいといった指摘もなされているということを踏まえまして、文化庁では解散命令を請求する事由に該当するということから、平成11年12月16日に解散命令の請求、申立てを和歌山地方裁判所に行ったわけでございます。
 その後、先方からの意見書の提出等ございまして、現在もまだ和歌山地方裁判所でこの審理が継続しているという状況にあるわけでございますけれども、文化庁といたしましては、既にこの解散命令請求事由に該当するということについては審理を尽くしているので、できるだけ早急に決定をお願いしたいということで、裁判所のほうにお願いをしているところでございますし、この6月中には、最終的な主張をまとめた書面でございます第二準備書面というもの、及びそれに関連する証拠書類等を提出いたしまして、早期の結審と解散命令の決定というものを裁判所に求めていくという方向で進めてまいりたいと思っているところでございます。
2 宗教法人「明覚寺」に対する解散命令の経過は以下のとおりです(平成13年10月18日の宗教法人審議会(第142回)及び平成14年6月18日の宗教法人審議会(第143回)における鬼澤佳弘 文化庁文化部宗務課長の答弁,及び平成15年3月3日の宗教法人審議会(第144回)における秋葉正嗣 文化庁文化部宗務課長の答弁参照)。
平成11年12月16日,文化庁が和歌山地裁に明覚寺の解散命令を請求した。
平成13年9月28日,明覚寺が任意解散の認証申請をした。
平成14年1月24日,和歌山地裁が解散命令を出した。
平成14年1月31日,明覚寺が大阪高裁に対して即時抗告をした。
平成14年9月27日,大阪高裁が即時抗告を棄却した。
平成14年10月4日,明覚寺が最高裁判所にに対して特別抗告をした。
(日付不明)最高裁が特別抗告を棄却した。
3 和歌山地裁平成14年1月24日決定は判例秘書に載っているものの,大阪高裁平成14年9月27日決定は判例秘書に載っていません。

第4 宗教法人の解散命令の効果

1 最高裁平成8年1月30日決定は以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
    解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、これを新たに結成することが妨げられるわけではなく、また、宗教上の行為を行い、その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。
すなわち、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止
したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。
    もっとも、宗教法人の解
散命令が確定したときはその清算手続が行われ(法四九条二項、五一条)、その結果、宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されることになるから(法五〇条参照)、これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る。
のように、宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。
2 文化庁HPの「解説 宗教法人制度の概要と宗務行政の現状」には,「団体で宗教活動を行う際に法人格を取得するかどうかも自由です。当然,法人格を持たない団体(任意団体)のままでも,宗教活動を行うことができます。」と書いてあります。

第5 宗教法人法81条と同趣旨とされた旧商法58条
1 最高裁平成8年1月30日決定の判示内容

・ 最高裁平成8年1月30日決定は以下の判示をしています。
    法八一条(山中注:宗教法人法81条)に規定する宗教法人の解散命令の制度も、法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為(同条一項一号)や宗教団体の目的を著しく逸脱した行為(同項二号前段)があった場合、あるいは、宗教法人ないし宗教団体としての実体を欠くに至ったような場合(同項二号後段、三号から五号まで)には、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切あるいは不必要となるところから、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わしめることが可能となるようにしたものであり、会社の解散命令(商法五八条)(山中注:現在の会社法824条)と同趣旨のものであると解される。
2 旧商法58条の条文
① 裁判所ハ左ノ場合ニ於テ公益ヲ維持スル為会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノト認ムルトキハ法務総裁又ハ株主、債権者其ノ他ノ利害関係人ノ請求ニ依リ会社ノ解散ヲ命ズルコトヲ得
 一 会社ノ設立ガ不法ノ目的ヲ以テ為サレタルトキ
 二 会社ガ正当ノ事由ナクシテ其ノ成立後一年内ニ開業ヲ為サズ又ハ一年以上営業ヲ休止シタルトキ
 三 会社ノ業務ヲ執行スル社員又ハ取締役ガ法務総裁ヨリ書面ニ依ル警告ヲ受ケタルニ拘ラズ法令若ハ定款ニ定ムル会社ノ権限ヲ踰越シ若ハ濫用スル行為又ハ刑罰法令ニ違反スル行為ヲ継続又ハ反覆シタルトキ
② 前項ノ請求アリタル場合ニ於テハ裁判所ハ解散ノ命令前ト雖モ法務総裁若ハ株主、債権者其ノ他ノ利害関係人ノ請求ニ依リ又ハ職権ヲ以テ管理人ノ選任其ノ他会社財産ノ保全ニ必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
3 会社法824条の条文
① 裁判所は、次に掲げる場合において、公益を確保するため会社の存立を許すことができないと認めるときは、法務大臣又は株主、社員、債権者その他の利害関係人の申立てにより、会社の解散を命ずることができる。
一 会社の設立が不法な目的に基づいてされたとき。
二 会社が正当な理由がないのにその成立の日から一年以内にその事業を開始せず、又は引き続き一年以上その事業を休止したとき。
三 業務執行取締役、執行役又は業務を執行する社員が、法令若しくは定款で定める会社の権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反覆して当該行為をしたとき。
② 株主、社員、債権者その他の利害関係人が前項の申立てをしたときは、裁判所は、会社の申立てにより、同項の申立てをした者に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。
③ 会社は、前項の規定による申立てをするには、第一項の申立てが悪意によるものであることを疎明しなければならない。
④ 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第七十五条第五項及び第七項並びに第七十六条から第八十条までの規定は、第二項の規定により第一項の申立てについて立てるべき担保について準用する。
4 その他
(1) 新基本法コンメンタール会社法3(575条~979条)361頁には以下の記載があります。
    以上の事由(山中注:会社法824条1項各号の事由)があり、かつ裁判所がその裁量により公益を確保するため会社の存立を許すことができないと判断した場合に初めて解散命令に至る。ただし、法人格を剥奪する以外の方法により公益が確保できる場合、例えば、業務執行取締役等の解任、損害賠償、刑罰、営業停止、免許の取消し等の代替措置で足りる場合には解散命令は発し得ない。
(2) 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律261条1項各号が定める解散命令事由は,会社法824条1項各号と同趣旨のものになっています(消費者庁HPの「法人の解散命令等に関する規定」参照)。
ウ 消費者庁HPに「会社法上の会社解散命令について」が載っています。

第5の2 宗教法人に対する報告徴収・質問権1 宗教法人法78条の2(報告及び質問)の条文① 所轄庁は、宗教法人について次の各号の一に該当する疑いがあると認めるときは、この法律を施行するため必要な限度において、当該宗教法人の業務又は事業の管理運営に関する事項に関し、当該宗教法人に対し報告を求め、又は当該職員に当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に対し質問させることができる。この場合において、当該職員が質問するために当該宗教法人の施設に立ち入るときは、当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者の同意を得なければならない。一 当該宗教法人が行う公益事業以外の事業について第六条第二項の規定に違反する事実があること。二 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証をした場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていること。三 当該宗教法人について第八十一条第一項第一号から第四号までの一に該当する事由があること。② 前項の規定により報告を求め、又は当該職員に質問させようとする場合においては、所轄庁は、当該所轄庁が文部科学大臣であるときはあらかじめ宗教法人審議会に諮問してその意見を聞き、当該所轄庁が都道府県知事であるときはあらかじめ文部科学大臣を通じて宗教法人審議会の意見を聞かなければならない。③ 前項の場合においては、文部科学大臣は、報告を求め、又は当該職員に質問させる事項及び理由を宗教法人審議会に示して、その意見を聞かなければならない。④ 所轄庁は、第一項の規定により報告を求め、又は当該職員に質問させる場合には、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。⑤ 第一項の規定により質問する当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に提示しなければならない。⑥ 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。2 報告徴収・質問権を行使する際の一般的な基


・ 宗教法人法第78条の2に基づく報告徴収・質問権の行使について(令和4年11月8日付の宗教法人制度の運用等に関する調査研究協力者会議の報告書)には,「第2 報告徴収・質問権を行使する際の一般的な基準 」として以下の記載があります。
〇 所轄庁である文部科学大臣としては、個別の宗教法人について解散命令請求を検討するに当たっては、報告徴収・質問権を行使して把握した事実関係等を踏まえ、その個別事案に応じて、行為の組織性、悪質性、継続性等が認められるか否かを判断していくこととなる。
    報告徴収・質問権を行使するに当たって、所轄庁が宗教法人法に定める解散命令事由に該当するような事態についての「疑い」があると判断するためには、行為の組織性、悪質性、継続性等を把握する上で、その端緒となる事実がなければならない。その判断は、以下のとおり行うことが妥当である。
1 「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」に該当する疑いがある場合(法第81条第1項第1号関係)
〇 「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」に該当する「疑い」があるか否かの判断については、以下(1)及び(2)により行うことが妥当である。
(1)「疑い」を判断する根拠
    「疑い」とは様々な水準のものが想定されるが、風評等によらず、客観的な資料、根拠に基づいて判断することが相当である。
    したがって、風評や一方当事者の言い分のみで判断するのではなく
・ 公的機関において当該法人に属する者による法令違反や当該法人の法的責任を認める判断があること
・ 公的機関に対し、当該法人に属する者による法令違反に関する情報が寄せられており、それらに具体的な資料か根拠があると認められるものが含まれていること
・ それらと同様に疑いを認めるだけの客観的な資料、根拠があること のいずれかに該当する場合に「疑い」を判断することが妥当である。
(2)「著しく公共の福祉を害する」という要件との関連性
「著しく公共の福祉を害する」という要件に該当する「疑い」も必要であることから、偶発性の法令違反や、一回性の法令違反により直ちに「疑い」があるとすることは相当ではない。
    そのため、
・ 当該法人に属する者による同様の行為が相当数繰り返されている
・ 当該法人に属する者の行為による被害が重大である
    など、法令違反による広範な被害や重大な影響が生じている「疑い」があると認められることが必要である。
2 「第2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」に該当する「疑い」がある場合(法第81条第1項第2号前段)
〇 「第2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」に該当する「疑い」があるか否かの判断については、宗教法人法第78条の2第4項の規定の趣旨に特に留意して、以下(1)及び(2)により行うことが妥当である。
(1)「疑い」を判断する根拠
    この疑いについても、客観的な資料によることとし、一方当事者からの申告のみによるのではなく、客観的な資料、根拠により「疑い」があると判断することが妥当である。
(2)「著しく逸脱した行為」という要件との関連性
「著しく逸脱した行為」という規定になっていることから、目的の範囲を超えた行為があったとしても、その行為により直ちに要件に該当するわけではなく、その程度が問題となる。
    そのため、「著しく逸脱」したものか否かの判断は、
・ 目的の範囲を超えた行為による結果、影響の内容及び程度
・ 目的の範囲を超えた行為を行った動機・理由
・ 同様の目的の範囲外の行為の反復性、継続性の程度 などを総合的に判断することとなる。
    したがって、このような観点で、「著しく逸脱」したものである「疑い」があると認められることが必要である。

6 霊感商法
1 霊感商法とは,「先祖のたたりで不幸になる」「これを購入すれば不幸から免れる」などと,人の不幸や不安につけ込み,高額な壺や数珠,印鑑などを買わせるほか,高額な祈とう料やお布施名目の金品を要求することをいいます(群馬県HPの「霊感商法・関連商法」参照)。
2 Wikipediaの「霊感商法」には以下の記載があります。
    「この商品を買えば幸運を招く」と謳って商品を売る商法はかねてから「開運商法」などと呼ばれていたが、1980年代に世界基督教統一神霊協会(統一教会/統一協会)の信者らによるこの種の商法が問題となった際に、日本共産党機関誌である『しんぶん赤旗』が「霊感商法」という言葉で報じ、以後この呼称が広く使われるようになった。
3(1) 令和元年6月15日施行の改正消費者契約法4条3項6号は,「当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。」があった場合を契約取消事由としています。
(2) 消費者庁HPに「消費者契約法の一部を改正する法律(平成30年法律第54号)」が載っています。
4(1) 消費者庁の霊感商法等の悪質商法への対策検討会は,令和4年8月29日に第1回会議を開催しました。
(2) 第3回 霊感商法等の悪質商法への対策検討会(2022年9月15日)「【資料1】第2回検討会における主な指摘事項」には以下の記載があります。
     2018 年改正で入った霊感商法の取消権がこれまで使われた裁判例が見当たらない。霊感商法対策として効果的な法律になっていないということを改善する立法事実かと思う。このためには、狭過ぎる要件を広げ、様々な専門家の方が提起していた無知や脆弱性を殊更に利用するような場合という要件をここに持ち込んでいくことを検討すべき。
5(1) 文化庁HPの「解説 宗教法人制度の概要と宗務行政の現状」には以下の記載があります。
    認証(山中注:宗教団体が宗教法人となるために必要となる所轄庁の認証)のほかに所轄庁に与えられている権限として,認証後1年以内の認証の取消し(宗教法人法第80条),公益事業以外の事業の停止命令(同法第79条),裁判所への解散命令の請求(同法第81条),報告徴収・質問権(同法第78条の2)等があります。これらの権限には厳格な要件があり,宗教法人審議会に諮問をしてその意見を聞く必要があるなど,慎重さが求められています。
     なお,所轄庁の権限は,これらの法定事項に限られています。信教の自由や政教分離といった憲法上の要請があるため,所轄庁には,宗教法人の業務や財務に関する包括的な監督権限はありませんし,宗教上の事項については,いかなる形においても調停や干渉をすることはできません。
(2) 宗教法人に対する報告徴収・質問権は,平成7年の宗教法人法改正により創設されたものです。
6 参議院議員小西洋之君提出消費者契約法の霊感商法等による消費者契約の取消権の解釈(旧統一教会による被害への適用)に関する質問に対する答弁書(令和4年10月14日付)には以下の記載があります。
① お尋ねについては、御指摘の「旧統一教会を巡る献金事案」及び「旧統一教会に限らない宗教活動の献金等」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、一般論として、宗教団体に対する寄附や献金は贈与等の契約に当たり得るものと考えられ、消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第一項に規定する「消費者」と同条第二項に規定する「事業者」との間で贈与等の契約が締結される場合には同条第三項に規定する「消費者契約」に該当するものと考えられる。
② 御指摘の「旧統一教会を巡る献金事案」の具体的な範囲及び勧誘行為の内容が必ずしも明らかではないため、消費者契約法第四条の規定が適用されるか否かの解釈を示すことは困難であるが、宗教団体に対する寄附や献金に関するトラブルへの対応方法については、令和四年九月三十日に「「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議」において策定された「お悩みの解決のヒントとなるQ&A」を法務省のホームページに掲載すること等により周知を図っている。
    引き続き、消費生活相談への対応や消費者教育の取組強化による被害の未然防止・救済等に必要な対策を講じてまいりたい。
③ 御指摘の「宗教活動に伴う献金等に関して、不法行為責任を認めた判例・裁判例」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、宗教団体に対する寄附や献金に関するトラブルへの対応方法については、令和四年九月三十日に「「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議」において策定された「お悩みの解決のヒントとなるQ&A」を法務省のホームページに掲載すること等により周知を図っている。 

第7 全国霊感商法対策弁護士連絡会

1 全国霊感商法対策弁護士連絡会(略称は「全国弁連」)は,かつての世界基督教統一神霊協会(略称は「統一協会」又は「統一教会」),現在の世界平和統一家庭連合(略称は「家庭連合」)による「霊感商法被害の根絶」と「被害者の救済」を目的として昭和62年5月,全国の約300名の弁護士が賛同して結成された会です。
2 全国霊感商法対策弁護士連絡会が発表した,「安倍晋三 元首相 銃撃事件に対する声明」(令和4年7月12日付)には以下の記載があります。
    山上被疑者が、安倍晋三元首相を死に至らしめた今般の卑劣極まりない行為は、いかなる理由があろうとも決して許されないことです。当会は、安倍元首相のご冥福を心からお祈り申し上げます。
(中略)
    安倍元首相が、統一協会やそのダミー組織のひとつである天宙平和連合(UPF)などのイベントにメッセージを発信することを繰り返し、特に昨年9月12日の「神統一韓国のためのTHINK TANK2022希望前進大会」(UPFのWEB集会)でビデオメッセージを主催者に送り、その中で文鮮明教祖(2012年死去)の後継の教祖韓鶴子氏に「敬意を表します」と述べたことは、統一協会のために人生や家庭を崩壊あるいは崩壊の危機に追い込まれた人々にとってたいへんな衝撃でしたし、当会としても厳重な抗議をしてきたところです。
3 刑裁サイ太のゴ3ネタブログ「統一教会に関する判例をたくさん調べてみた」(2022年8月26日付)が載っています。

第8 オウム真理教に対する破防法に基づく解散指定処分の請求,及び団体規制法に基づく観察処分
1 オウム真理教に対する破防法に基づく解散指定処分の請求

(1) 公安審査委員会は,公安調査庁長官が行った,破壊活動防止法11条に基づくオウム真理教に対する解散の指定を求める旨の処分請求(平成8年7月11日付)を平成9年1月31日付で棄却しましたところ,当該決定は平成9年2月4日付の官報特別号外に掲載されています(破壊活動防止法24条3項)。
(2) 日弁連HPに載ってある「オウム真理教に対する破防法棄却決定の検討報告書」(平成11年12月付の日弁連の文書)には「決定が本件請求を棄却したことは、当然であり正当である。本決定に至るまでには相当な圧力が公安審査委員会にあったであろうことは想像に難くないだけに、当然の結論とは言え、圧力に屈することなく棄却決定をなしたことは評価すべきである。」と書いてあります。
(3) Wikipediaに「オウム真理教破壊活動防止法問題」が載っています。
2 オウム真理教に対する団体規制法に基づく観察処分
・ 法務省HPの「公安審査委員会」には以下の記載があります。
     公安調査庁長官から,オウム真理教に対して,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律第5条の観察処分を求める旨の請求がなされ,平成12年1月28日,当委員会は「被請求団体を,3年間,公安調査庁長官の観察に付する。」旨の決定を行い,同決定については,平成15年1月23日,平成18年1月23日,平成21年1月23日,平成24年1月23日,平成27年1月23日,平成30年1月22日及び令和3年1月6日に,それぞれ3年間,処分の期間を更新する旨の決定を行いました。

第9 宗教法人法の条文
1条(この法律の目的)
① この法律は、宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とする。
② 憲法で保障された信教の自由は、すべての国政において尊重されなければならない。従つて、この法律のいかなる規定も、個人、集団又は団体が、その保障された自由に基いて、教義をひろめ、儀式行事を行い、その他宗教上の行為を行うことを制限するものと解釈してはならない。
43条(解散の事由)
① 宗教法人は、任意に解散することができる。
② 宗教法人は、前項の場合のほか、次に掲げる事由によつて解散する。
一 規則で定める解散事由の発生
二 合併(合併後存続する宗教法人における当該合併を除く。)
三 破産手続開始の決定
四 第八十条第一項の規定による所轄庁の認証の取消し
五 第八十一条第一項の規定による裁判所の解散命令
六 宗教団体を包括する宗教法人にあつては、その包括する宗教団体の欠亡
③ 宗教法人は、前項第三号に掲げる事由に因つて解散したときは、遅滞なくその旨を所轄庁に届け出なければならない。
85条(解釈規定)
この法律のいかなる規定も、文部科学大臣、都道府県知事及び裁判所に対し、宗教団体における信仰、規律、慣習等宗教上の事項についていかなる形においても調停し、若しくは干渉する権限を与え、又は宗教上の役職員の任免その他の進退を勧告し、誘導し、若しくはこれに干渉する権限を与えるものと解釈してはならない。

第10 関連記事その他

1 霊感商法で問題となった法の華三法行の場合,平成13年3月29日に破産宣告を受けて解散しました。
2 平成8年版の犯罪白書の「1 宗教法人解散命令」には以下の記載があります。
    宗教法人法(昭和26年法律第126号)は,宗教団体が,礼拝の施設その他の財産を所有し,これを維持運用し,その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため,宗教団体に法律上の能力を与えることを目的(1条)として昭和26年に制定された。その特色としては,宗教法人制度が信教の自由と政教分離の原則に密接にかかわるものであり,国による関与が最小限にとどめられるべきとの考えから,所轄庁の権限が民法の法人の主務官庁に比べて限られていることが挙げられる。宗教法人に対しては,法人税,地方税などでの優遇措置がある。 
3(1) 愛知県HPの「宗教法人の解散について」に,宗教法人の任意解散認証について概説されています。
(2) 会社解散・清算手続代行サポートHP「宗教法人の解散」が載っています。
4(1) 最高裁平成8年3月8日判決は,信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否した市立高等専門学校の学生に対する原級留置処分及び退学処分が裁量権の範囲を超える違法なものであるとされた事例です。
(2) 最高裁平成12年2月29日判決は 宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有している患者に対して医師がほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで手術を施行して輸血をした場合において右医師の不法行為責任が認められた事例です。
5(1) 消費者庁HPに「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等
に関する法律・逐条解説」(令和5年2月1日付)が載っています。
(2) ジュリスト2023年6月号に「【特集】霊感商法と被害者救済-新法の提起するもの」が載っています。
6 大阪地裁令和6年2月28日判決(担当裁判官は49期の横田典子53期の田辺暁志及び69期の立仙早矢)は,令和4年12月20日付で大阪府議会がした「旧統一教会等の悪質な活動とは一線を画する決議」と題する決議が、行政事件訴訟法3条2項にいう処分に当たらないとされた事例です。
7 最高裁令和6年7月11日判決は,①宗教法人とその信者との間において締結された不起訴の合意が公序良俗に反し無効であるとされた事例であり,②宗教法人の信者らによる献金の勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例です。
8 以下の記事も参照してください。
・ 国葬儀
・ 故安倍晋三国葬儀


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