第1 保護観察制度の位置付け
1 保護観察の目的
保護観察は,犯罪をした者又は非行のある少年を施設に収容せず,又は施設から仮に釈放した後に,社会の中で指導監督と自立のための支援を行う制度である。単に行動を監視する制度ではなく,再犯・再非行に結び付く要因と改善更生に役立つ事情の双方を把握し,対象者が社会の一員として自立できるようにする社会内処遇である(更生保護法49条)。
指導監督には,対象者との接触と行状把握,遵守事項を守らせるための指示,専門的処遇,民間団体等による専門的援助につなぐ措置,被害回復・軽減に誠実に努めるようにする指示が含まれる。他方,補導援護には,住居,医療,就職,教養訓練,生活環境,社会生活への適応等に関する支援が含まれるため,規制と支援を組み合わせた制度である。
2 制度を理解する際の注意点
保護観察の対象者,期間及び違反時の措置は,家庭裁判所の保護処分,少年院からの仮退院,拘禁刑からの仮釈放,刑の執行猶予という入口ごとに異なる。したがって,「保護観察になれば一律に何年間である」と考えることはできない。
また,令和5年12月1日施行の改正により,民間団体等による専門的援助,被害回復・軽減に関する指導,勾留中の被疑者に対する生活環境の調整,更生緊急保護の拡充等が実施された。さらに,令和7年6月1日には懲役・禁錮を一本化した拘禁刑が施行され,令和7年12月10日には保護司制度等を改める令和7年法律第82号が公布されているため,施行済みの制度と未施行の将来改正を区別する必要がある。
第2 保護観察の対象者と期間
1 現行法上の四類型
更生保護法48条が定める保護観察対象者は,次の四類型である。
| 類型 | 保護観察に付される入口 | 原則的な期間 |
|---|---|---|
| ①保護観察処分少年 | 家庭裁判所が少年法上の保護処分として保護観察に付する場合 | 原則として20歳まで。ただし,20歳までが2年未満なら2年間。特定少年については6月又は2年 |
| ②少年院仮退院者 | 地方更生保護委員会が少年院からの仮退院を許す場合 | 仮退院中から退院又は保護処分の終了まで |
| ③仮釈放者 | 地方更生保護委員会が拘禁刑からの仮釈放を許す場合 | 仮釈放の日から残刑期間が満了するまで |
| ④保護観察付執行猶予者 | 裁判所が刑の全部又は一部の執行猶予に保護観察を付する場合 | 保護観察が付された執行猶予の期間中 |
婦人補導院制度は令和6年4月1日に廃止されたため,婦人補導院仮退院者は現在の保護観察対象者には含まれない。過去の資料に五類型と書かれている場合は,資料の基準時を確認する必要がある。
2 保護観察処分少年
(1) 17歳以下の少年等
家庭裁判所は,審判の結果,保護処分が必要であると認めるときは,少年を保護観察所の保護観察に付することができる(少年法24条1項1号)。この場合の保護観察期間は原則として20歳までであるが,決定時から20歳までが2年に満たないときは2年間となる(更生保護法66条)。
家庭裁判所から短期処遇が相当である旨の処遇勧告がある場合,保護観察所では短期保護観察又は交通短期保護観察として処遇することがある。これらは法定期間そのものを一律に短縮する別個の保護処分ではなく,良好な経過を踏まえて早期の解除等を目指す処遇上の区分として理解すべきである。
(2) 18歳・19歳の特定少年
18歳・19歳の特定少年について,家庭裁判所は,犯情の軽重を考慮して,6月の保護観察,2年の保護観察又は少年院送致のいずれかを選択する(少年法64条1項)。2年の保護観察では,決定と同時に1年以下の収容可能期間が定められ,遵守事項違反の程度が重く,少年院で処遇しなければ改善更生を図れない場合には,家庭裁判所がその範囲内で少年院収容を決定することがある(少年法64条2項・66条,更生保護法68条の2)。
6月の保護観察と2年の保護観察では,違反時に少年院収容を可能とする仕組みの有無が異なる。単に期間の長短だけで区別されているものではない。
3 少年院仮退院者
地方更生保護委員会は,少年院在院者について,処遇の最高段階に達し,仮に退院させることが改善更生のために相当であると認めるときなどに,仮退院を許すことができる。少年院仮退院者は,仮退院中,保護観察に付される。
仮退院者が遵守事項を守らなかった場合,地方更生保護委員会は,保護観察所長の申出により,家庭裁判所へ少年院への戻し収容を申請できる。戻し収容は違反だけで自動的に生ずるものではなく,申出,地方更生保護委員会の判断及び家庭裁判所の決定という手続を経る(更生保護法71条・72条)。
4 仮釈放者
拘禁刑に処せられた者に改悛の状があるときは,有期刑では刑期の3分の1,無期刑では10年を経過した後,行政官庁の処分により仮釈放を許すことができる(刑法28条)。仮釈放者は,原則として残刑期間が満了するまで保護観察を受ける。
刑の一部の執行猶予を言い渡された者が執行すべき部分の拘禁刑から仮釈放された場合には,仮釈放中の保護観察に続き,猶予期間中の保護観察が行われることがある。両者は法的な根拠と期間が異なるため,連続する一つの期間として曖昧に扱わない方がよい。
仮釈放中に遵守事項を守らなかったことは,仮釈放を取り消すことができる事由の一つである(刑法29条1項4号)。もっとも,違反の事実だけで直ちに取消しとなるのではなく,保護観察所長の申出を受けた地方更生保護委員会が,取消しの相当性を審理して決定する。
5 保護観察付執行猶予者
刑の全部の執行猶予については,刑法25条1項による執行猶予では裁判所が猶予期間中の保護観察を付することができ,同条2項による再度の執行猶予では猶予期間中の保護観察が必要となる(刑法25条の2)。刑の一部の執行猶予についても,裁判所が猶予期間中の保護観察を付することがあり,薬物使用等の罪に関する一部執行猶予では原則として保護観察に付される。
令和6年の刑の全部執行猶予確定人員に占める保護観察付執行猶予者の比率は4.9%であった。刑の全部の執行猶予に保護観察が常に付くわけではない。
保護観察付執行猶予者が遵守事項を守らず,その情状が重いときは,執行猶予の裁量的取消事由となる。保護観察所長が検察官に申出をし,検察官の請求を受けた裁判所が取消しを判断するのであり,保護観察所が単独で刑を執行するものではない。
第3 保護観察を担う機関と担当者
1 地方更生保護委員会と保護観察所
全国8か所の地方更生保護委員会は,仮釈放・仮退院の許否,仮釈放の取消し等を合議体で判断する。全国50か所の保護観察所は,保護観察の実施,生活環境の調整,更生緊急保護,犯罪被害者等施策,保護司等の民間協力者に関する事務などを担う。
居住地を移す場合には,管轄する保護観察所が変わり得る。保護観察対象者には,住居の届出,届出住居への居住,転居又は7日以上の旅行についての事前許可という一般遵守事項があるため,自己判断で住居を移さないことが重要である。
2 保護観察官と保護司
保護観察官は,心理学,教育学,社会学その他の更生保護に関する専門的知識に基づき,保護観察,調査,生活環境の調整等を行う国家公務員である。保護司は,法務大臣から委嘱され,地方更生保護委員会又は保護観察所長の指揮監督を受けて職務を行う非常勤の国家公務員である(保護司法)。
更生保護法61条は,保護観察所長が保護観察対象者を担当する保護観察官又は保護司を指名するものと定める。他方,実務では,保護観察官が処遇方針や専門的処遇を担い,地域事情を知る保護司が継続的な面接や生活上の助言を担うなど,両者が連携する場合が多い。
令和7年1月1日現在,保護司は全国882保護区に4万6043人おり,法定定数5万2500人に対する充足率は87.7%であった。「約5万人」という説明だけでは,担い手の減少という現在の制度課題を表しにくい。
3 社会復帰調整官との違い
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対する医療観察制度では,保護観察所に置かれる社会復帰調整官が,生活環境の調査・調整,精神保健観察等を担う。これは更生保護法上の保護観察とは異なる制度であり,社会復帰調整官を通常の保護観察対象者の担当者と説明するのは正確でない(医療観察法)。
第4 保護観察の進め方
1 開始時のアセスメントと実施計画
保護観察では,犯罪・非行に結び付く要因だけでなく,家族関係,就労・就学,住居,交友関係,依存の問題,本人の強みや支援資源など,改善更生に役立つ事情も把握する。法務省は,犯罪性の進度,問題飲酒,薬物依存,性犯罪,暴力,家族関係,学校・仕事,生活基盤という領域を用いるケース・フォーミュレーションの手法を運用している。
把握した事情に応じて,面接頻度,指導内容,必要な専門的処遇,医療・福祉・就労支援等との連携を組み立てる。令和7年6月からは,刑の全部執行猶予により保護観察に付された者についても,開始後3か月を原則として重点的に働き掛ける期間とし,変化し得る再犯リスク等を継続的に把握する運用が始まっている。
2 一般遵守事項
一般遵守事項は,すべての保護観察対象者が守らなければならない共通の事項であり,更生保護法50条に定められている。その中心は次のとおりである。
① 再び犯罪をせず,又は非行をなくすように健全な生活態度を保つこと。
② 保護観察官又は保護司の呼出し・訪問に応じて面接を受け,生活実態や指導に必要な行動状況の申告・資料提示を求められたときはこれに応じるなど,指導監督を誠実に受けること。
③ 保護観察に付されたときは,速やかに住居を定め,管轄する保護観察所長に届け出ること。
④ 届け出た住居又は法令により特定・許可された住居に居住すること。
⑤ 転居又は7日以上の旅行をするときは,原則として事前に保護観察所長の許可を受けること。
3 特別遵守事項と生活行動指針
特別遵守事項は,個々の対象者の改善更生に特に必要な範囲で具体的に定められる。犯罪・非行に結び付く交際や場所への出入り等を避けること,就労・通学等を継続すること,生活上の重要事項を事前申告すること,専門的処遇を受けること,指定場所に宿泊して指導監督を受けること,社会貢献活動を行うこと,基準に適合する専門的援助を受けることなどが対象となり得る。
生活行動指針は,対象者が健全な生活態度を保つために必要な生活・行動の指針である。遵守事項と違って,その不遵守がそれだけで仮釈放取消し等の法定要件になるものではないが,指導監督ではその実行を促し,経過を確認する。
4 指導監督の五つの方法
現行の更生保護法57条1項は,指導監督の方法を次の五つに分けている。
① 面接その他の方法で対象者との接触を保ち,その行状を把握すること。
② 遵守事項を守り,生活行動指針に即して生活・行動するように必要な指示その他の措置をとること。
③ 特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を実施すること。
④ 更生保護事業者その他の適当な者が行う,法務大臣の基準に適合する専門的援助を受けるように必要な指示その他の措置をとること。
⑤ 原因となった犯罪又は触法行為の被害者等について,被害の回復又は軽減に誠実に努めるように必要な指示その他の措置をとること。
令和5年12月1日より前の条文は主として①から③までを掲げていた。古い解説を読む際には,④の専門的援助と⑤の被害回復・軽減に関する指導が加わる前の説明でないかを確認する必要がある。
5 補導援護の七つの方法
補導援護は,対象者の自助の責任を踏まえつつ,自立した生活を営めるようにするための支援である。更生保護法58条は,①適切な住居等の確保と帰住,②医療・療養,③職業補導・就職,④教養訓練,⑤生活環境の改善・調整,⑥社会生活に適応するための生活指導,⑦健全な社会生活のために必要な助言その他の措置を掲げる。
保護観察所だけですべての支援を提供するのではなく,ハローワーク,地方公共団体,福祉・医療機関,更生保護施設,自立準備ホーム,協力雇用主,依存症回復支援団体等と連携する。必要な支援につながることと,遵守事項を守ることは,社会生活を安定させる車の両輪である。
6 専門的処遇・専門的援助等
保護観察所は,性犯罪,薬物再乱用,暴力,飲酒運転という四種の専門的処遇プログラムを実施している。認知行動療法等の知見を基礎として,問題行動につながる考え方や状況を検討し,再発を避ける具体的な方法を身に付けることを目指す。
令和5年12月施行の改正は,民間団体等が行う専門的援助を制度に組み込んだ。令和6年には,窃盗症及びギャンブル等依存に関する援助が法務大臣の基準に適合する援助として認定され,保護観察所の指示等により利用できる枠組みが運用されている。
規制薬物等への依存がある対象者については,医療又は回復支援との緊密な連携を確保し,必要な受診・援助を受けるように指示することができる。令和6年には簡易薬物検出検査が5739件実施され,令和6年度の薬物依存回復訓練は44施設へ委託され,実人員370人に実施された。
第5 良好措置と不良措置
1 保護観察の解除・一時解除・仮解除
保護観察処分少年について,保護観察所長は,保護観察を続ける必要がなくなったと認めるときは保護観察を解除する。改善更生に役立つと認めるときは,期間を定めて一時的に解除することもでき,必要が生じれば一時解除を取り消す(更生保護法69条・70条)。
保護観察付執行猶予者についても,健全な生活態度を保ち,保護観察を仮に解除しても自立・改善更生できると認めるときは,保護観察所長が保護観察を仮に解除できる。もっとも,仮解除中も執行猶予期間そのものが終わるわけではなく,必要が生じれば仮解除が取り消される(刑法25条の2第2項・27条の3第2項,更生保護法81条)。
2 遵守事項違反時の措置
遵守事項違反時の措置は対象者の類型ごとに異なる。主な制度は,①保護観察処分少年への警告と家庭裁判所への保護処分申請,②特定保護観察処分少年についての少年院収容申請,③少年院仮退院者についての戻し収容申請,④仮釈放者についての仮釈放取消しの申出,⑤保護観察付執行猶予者についての執行猶予取消しの申出である。
いずれも,面接を一度欠席したことなどから直ちに収容や刑の執行へ移るという単純な仕組みではない。違反の内容・程度,それまでの経過,改善更生の見込み等を踏まえ,法定の要件と手続に従って判断されるが,連絡を断つことは状況を悪化させるため,遵守が困難な事情が生じた段階で担当者に相談することが重要である。
第6 犯罪被害者等に関する制度
1 仮釈放等の審理における意見等聴取
被害者等は,仮釈放又は少年院からの仮退院の審理について,地方更生保護委員会に対し,仮釈放・仮退院に関する意見と被害に関する心情を述べることができる。地方更生保護委員会は,聴取した意見等を審理で考慮し,保護観察上の特別遵守事項を定める際にも必要な考慮をする。
この審理段階の意見等聴取と,保護観察開始後に保護観察所が行う心情等聴取・伝達は,根拠条文と目的が異なる。両者を一つの制度として説明しない方が分かりやすい。
2 保護観察中の心情等聴取・伝達
保護観察所長は,被害者等から申出があったとき,現在の心情,被害の現状,生活状況,保護観察対象者の生活・行動に関する意見を聴取する(更生保護法65条1項)。聴取した心情等は,被害者等の申出により,保護観察対象者の改善更生を妨げるおそれがあるなど相当でない事情がない限り,対象者へ伝達される(同条2項)。
被害者等の居住地を管轄する別の保護観察所に,申出の受理と聴取事務を嘱託することもできる(同条3項)。なお,心情等を聴取しただけで当然に対象者へ伝達されるのではなく,伝達には別途の申出と相当性の判断が必要である。
3 被害回復・軽減に関する指導
令和5年12月施行の改正により,被害回復・軽減に誠実に努めるようにする指導が,指導監督の方法として明記された。保護観察所長は,仮釈放等の審理で通知された被害者等の意見や,保護観察中に聴取した心情等があるときは,この指導を行うに当たりその内容を踏まえる。
法務省は,被害の実情を理解し,謝罪や被害弁償等に向けた行動を考えさせる「しょく罪指導プログラム」を運用している。令和6年の修了者は1726人であり,法テラスと連携した被害弁償等の法的支援手続の処理件数は令和6年度までに32件とされるが,具体的な謝罪・接触・弁償は,被害者等の意向と安全に配慮し,担当者や弁護士と相談して進めるべきである。
第7 施設内処遇から地域生活への接続
1 生活環境の調整
保護観察所長は,拘禁刑を執行するため収容されている者等について,釈放後の住居,就業先その他の生活環境を調整する。少年院在院者についても,少年院長等からの通告又は申出を受け,仮退院後の生活環境を調整する。
令和5年12月施行の更生保護法83条の2は,勾留中の被疑者についても,改善更生と円滑な社会復帰のため必要があるときに,釈放後の生活環境を調整する仕組みを設けた。判決確定後又は施設からの釈放直前だけでなく,刑事手続の入口に近い段階から,福祉的支援等へ接続できる場合がある。
2 更生緊急保護の対象と内容
更生緊急保護は,拘禁刑の執行を終わった者,拘禁刑の執行猶予を言い渡された者,起訴猶予者等について,親族や公共の衛生福祉機関等から必要な保護を受けられず,放置すると改善更生を妨げるおそれがある場合に,本人の申出に基づいて保護観察所長が行う緊急の保護である(更生保護法85条・86条)。保護観察そのものではなく,対象も保護観察対象者に限られない。
保護の内容には,①宿泊場所への帰住援助,②医療・療養の援助,③職業補導・就職援助,④教養訓練の援助,⑤生活環境の改善・調整,⑥生活指導,⑦金品の給貸与,⑧宿泊場所の供与,⑨その他健全な社会生活に必要な援助がある。自立準備ホームその他の適当な者に保護を委託する場合もある。
3 更生緊急保護の期間と申出
更生緊急保護は,原則として刑の執行を終わった日等から6月を超えない範囲で行う。もっとも,金品の給貸与又は宿泊場所の供与等はさらに6月を超えない範囲で,他の必要な援助はさらに1年6月を超えない範囲で,それぞれ延長できる場合がある。
事件事務規程78条は,検察官が被疑者を釈放する際,更生緊急保護の制度と申出手続を教示する必要があると認めるときは,説明書を示すなどして教示するものと定める。検察官が更生緊急保護の必要を認めるとき,又は本人が希望するときは,説明書を交付するとともに,保護カードへ所定事項を記入して本人に交付する。
同規程148条は,拘禁刑について刑の全部の執行猶予判決を受けた者と,罰金・科料の宣告又は略式命令を受けた者について,78条の教示等を準用する。これらは検察庁における教示・交付手続を定めた規定であり,更生緊急保護の実施を決定する規定ではない。
申出手続の書式と説明については,釈放された人の更生緊急保護の申出手続に関する説明書(事件事務規程様式第121号)及び更生緊急保護の保護カード(同規程様式第122号)も参照できる。
4 刑執行終了者等への援助と地域援助
令和5年12月施行の更生保護法88条の2は,刑の執行を終えた者等について,改善更生に必要な限度で,継続的な援助を行える制度を整えた。同法88条の3は,地域の関係機関・民間団体が行う援助が円滑・効果的に実施されるよう,保護観察所長が情報提供,助言等を行う仕組みを定めている。
更生緊急保護,刑執行終了者等への援助及び保護観察は,対象者,開始要件,期間が異なる。社会復帰支援という共通点だけで同じ制度と扱わないことが重要である。
第8 保護観察の実施状況
1 令和6年の開始人員と年末人員
令和7年版犯罪白書による令和6年の成人の保護観察開始人員と同年末現在人員は,次のとおりである。
| 成人の類型 | 令和6年開始人員 | 令和6年末現在人員 |
|---|---|---|
| 刑の全部が実刑である者の仮釈放 | 8894人 | 3288人 |
| 刑の一部執行猶予者の仮釈放 | 554人 | 163人 |
| 刑の全部執行猶予による保護観察 | 1496人 | 5510人 |
| 刑の一部執行猶予による保護観察 | 673人 | 1503人 |
少年については,令和6年の開始人員が保護観察処分少年1万731人,少年院仮退院者1630人であった。開始人員は1年間に新たに保護観察を開始した人数であり,年末現在人員は特定時点で保護観察中の人数であるため,両者を合算して総数と表示すべきではない。
2 住居・就労・社会参加等の支援
令和6年度には,更生保護就労支援事業が全国28の保護観察所で実施され,就職活動支援が2177件,職場定着支援が1132件行われた。この事業では,就労支援のノウハウや企業ネットワークを有する民間事業者が保護観察所から委託を受け,施設在所中から就職・定着までの支援を行う。
住居がない者等については,更生保護施設,自立準備ホーム等への宿泊委託のほか,福祉・医療への接続が行われる。地域社会の利益に寄与する社会貢献活動は,令和7年3月末時点で2035か所の活動場所が登録され,令和6年度に343回,延べ579人の参加を得て実施された。
第9 令和7年法律第82号による将来改正
1 公布済みであるが主要部分は未施行であること
更生保護制度の充実を図るための保護司法等の一部を改正する法律(令和7年法律第82号)は,令和7年12月10日に公布された。主要部分は公布の日から1年以内の政令で定める日から施行される仕組みであり,令和8年8月11日現在,法務省の公式ページは「施行予定」と表示している。
したがって,次に述べる改正内容を現行制度として扱うことはできない。公開又は更新の直前には,施行日政令の有無を改めて確認する必要がある。
2 改正の主な内容
改正法は,保護司の使命・委嘱条件を見直し,任期を2年から3年に延長するほか,更生保護サポートセンターを法定化し,保護観察所長による保護司会等への支援,国による面接場所の確保等の安全確保措置,地方公共団体の協力等を定める。保護司が区域外でも職務を行える仕組みも整え,安全な面接場所を選びやすくする。
事業主については,労働者が保護司の職務を行うための休暇を取得しやすい環境整備その他の必要な措置を講ずる努力義務と,保護司であること,保護司になろうとしたこと,又は保護司であったこと等を理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止が新設される。企業の就業規則,休暇制度及び管理職向け運用にも関係する改正であるが,適用開始時期は施行日を確認して判断すべきである。
さらに,保護観察所長の公務所等への照会権,保護観察付執行猶予者の開始時に少年鑑別所長へ鑑別を求める仕組み,労役場留置者を生活環境の調整及び更生緊急保護の対象に加える改正等が予定されている。
第10 関連資料
1 仮釈放に関する記事
仮釈放の要件,審理及び期間については,仮釈放を参照されたい。地方更生保護委員会が用いる判断枠組みについては,仮釈放に関する公式の許可基準に資料を掲載している。
2 家庭裁判所と保護観察所の連携
家庭裁判所が6月の保護観察を選択する際の実務上の連携については,6月の保護観察に関する保護観察所との連携等について(令和4年3月3日付け最高裁判所家庭局第一課長事務連絡)を参照されたい。
第11 出典・参考資料
1 法令・改正法
⑤ 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年法律第110号)
⑥ 法務省「刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)」
⑦ 法務省「更生保護制度の充実を図るための保護司法等の一部を改正する法律(令和7年法律第82号)」
2 公的資料・統計
① 法務省『令和7年版犯罪白書』「成人の保護観察対象者」
② 法務省『令和7年版犯罪白書』「保護観察対象者に対する処遇」
③ 法務省『令和7年版犯罪白書』「保護司」
④ 法務省『令和7年版犯罪白書』「少年の保護観察」
⑤ 法務省「事件事務規程」(令和8年3月23日最終改正)
⑥ 法務省『令和6年版犯罪白書』「婦人補導院制度」
3 制度案内
① 法務省「保護観察」
② 法務省「更生保護に関する法令・訓令・通達等」
③ 法務省「更生保護の組織・職員」
④ 法務省「保護司になるには」
⑤ 裁判所「少年事件Q&A」