保護観察制度

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1 総論
(1) 平成20年6月1日施行の更生保護法(平成19年6月15日法律第88号)は,①昭和24年7月1日施行の犯罪者予防更生法(昭和24年5月31日法律第142号)及び②昭和29年7月1日施行の執行猶予者保護観察法(昭和29年4月1日法律第58号)を整理・統合して新たな法律としたものです。
   その上で,①保護観察における遵守事項を整理して充実させるとともに,②保護観察の実施状況に応じて特別遵守事項の変更ができることとするほか,③受刑者等の社会復帰のための環境調整の措置を一層充実させ,あわせて④仮釈放の審理において犯罪被害者等の意見を聴取する制度等を整備するものです。
(2) 更生保護制度は,犯罪をした者及び非行のある少年がこれを繰り返さないように,社会内において必要な監督や支援等を行い,改善更生させようとするものであり,「社会内処遇」ともいわれます。

(3) 保護観察は,保護観察対象者の居住地(住居がないか,又は明らかでないときは,現在地又は明らかである最後の居住地若しくは所在地)を管轄する保護観察所がつかさどります(更生保護法60条)。

2 法務省保護局等
(1) 法務省保護局では,①矯正施設に収容されている人の仮釈放等に関する事務,及び②仮釈放になった人,保護観察付き執行猶予になった人,保護観察に付された少年等の保護観察に関する事務を行うほか,③恩赦,④犯罪予防活動,⑤犯罪被害者等施策に関する事務等を行っています。
   このような仕事を「更生保護」と呼んでおり,直接的な仕事は,①高等裁判所の管轄区域ごとに全国8か所に設置されている「地方更生保護委員会」,及び②地方裁判所の管轄区域ごとに全国50か所に設置されている「保護観察所」で行っています。
   また,これらの仕事と併せ,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障害者の社会復帰の促進を目的とする「医療観察制度」に基づく地域社会における処遇等に関する事務を行っています。
(2) 近畿地方には,近畿地方更生保護委員会(〒540-0008 大阪市中央区大手前4丁目1番76号 大阪合同庁舎第4号館(6階))及び2府4県で6カ所の保護観察所があります。
(3) 大阪保護観察所は,大阪合同庁舎第4号館(5階)にあります。
3 保護観察官,保護司及び社会復帰調整官
(1) 地方更生保護委員会の事務局及び保護観察所には,保護観察官が置かれています。
   保護観察官は,医学,心理学,教育学,社会学その他の更生保護に関する専門的知識に基づき,保護観察,調査,生活環境の調整その他犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に関する事務に従事しています(更生保護法31条)。
(2) 保護司は,保護観察官で十分でないところを補い,地方更生保護委員会又は保護観察所の長の指揮監督を受けて,保護司法(昭和25年5月25日法律第204号。同日施行)の定めるところに従い,それぞれ地方更生保護委員会又は保護観察所の所掌事務に従事しています。
(3) 現実の更生保護は,常勤の国家公務員である保護観察官(約1100名)及び民間篤志家である保護司(約5万人)を中心に,更生保護施設といった関係機関の協力(更生保護法61条2項参照)の下に,官民協働体制で実施されています。

(4) 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年7月16日法律第110号。平成17年7月15日施行)(=医療観察法)20条に基づき,保護観察所には,精神保健福祉士の有資格者など同法の対象となる人の社会復帰を促進するために必要な知識及び経験を有する「社会復帰調整官」が置かれています。

4 保護観察対象者
(1) 保護観察は,犯罪をした人又は非行のある少年が,実社会の中でその健全な一員として更生するように,国の責任において指導監督及び補導援護を行うもので,以下の人が保護観察対象者となります(①ないし④につき更生保護法48条,⑤につき売春防止法26条1項)。
① 保護観察処分少年
→ 家庭裁判所で保護観察に付された少年です。
② 少年院仮退院者
→ 少年院からの仮退院を許された少年です。
③ 仮釈放者
→ 刑事施設からの仮釈放を許された人です。
④ 保護観察付執行猶予者
→ 裁判所で刑の執行を猶予され,保護観察に付された人です。
⑤ 婦人補導院仮退院者
→ 婦人補導院からの仮退院を許された人です。

(2) 初の執行猶予者に対する保護観察は任意的である(刑法25条の2第1項前段)のに対し,再度の執行猶予者に対する保護観察は必要的です(刑法25条の2第1項後段)。

5 保護観察の内容
(1) 保護観察は,保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として,①指導監督及び②補導援護を行うことにより実施されます(更生保護法49条1項)。
(2) 保護観察における指導監督は,以下に掲げる方法により行われます(更生保護法57条)。
① 面接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち、その行状を把握すること。
② 保護観察対象者が一般遵守事項(更生保護法50条)及び特別遵守事項(更生保護法51条)を遵守し,並びに生活行動指針(更生保護法56条)に即して生活し,及び行動するよう,必要な指示その他の措置をとること。
③ 特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を実施すること。
(3) 保護観察における補導援護は,保護観察対象者が自立した生活を営むことができるようにするため,その自助の責任を踏まえつつ,以下に掲げる方法によって行われます(更生保護法58条)。
① 適切な住居その他の宿泊場所を得ること及び当該宿泊場所に帰住することを助けること。
② 医療及び療養を受けることを助けること。
③ 職業を補導し、及び就職を助けること。
④ 教養訓練の手段を得ることを助けること。
⑤ 生活環境を改善し,及び調整すること。
⑥ 社会生活に適応させるために必要な生活指導を行うこと。
⑦ 前各号に掲げるもののほか,保護観察対象者が健全な社会生活を営むために必要な助言その他の措置をとること。
(4) 保護観察における指導監督及び補導援護は,保護観察対象者の特性,とるべき措置の内容その他の事情を勘案し,保護観察官及び保護司が実施しています(更生保護法61条1項)。

(5) 保護観察所の長は,保護観察付執行猶予の判決を受け,その裁判が確定するまでの者について,保護観察を円滑に開始するため必要があると認めるときは,その者の同意を得て,その者の家族その他の関係人を訪問して協力を求めることその他の方法により,その者の住居、就業先その他の生活環境の調整を行うことができます(更生保護法83条)。

6 被害者等の心情等の聴取及び伝達(心情等伝達制度)
(1) 保護観察所の長は,保護観察対象者について,被害者等から,被害に関する心情,被害者等の置かれている状況又は保護観察対象者の生活若しくは行動に関する意見(心情等)の伝達の申出があったときは,当該心情等を聴取し,当該保護観察対象者に伝達するものとされています(更生保護法65条1項本文)。
   保護観察所の長は,被害者等の居住地を管轄する他の保護観察所の長に対し,申出の受理及び心情等の聴取に関する事務を嘱託することができます(更生保護法65条2項)。
(2) 以下のような場合,被害者等の心情等の聴取及び伝達を要しないこととされています(更生保護法65条1項ただし書参照)。
① 保護観察対象者が心情不安定な状態にあり,被害者等の心情等を伝達すると更に混乱させるおそれがある場合
② 暴力団同士の抗争事件のように被害者とされている者が実質的には被害者といえない場合