◯本ブログ記事は,更正決定等に伴い国費を支出する場合の基本的な考え方等について(令和3年7月28日付の最高裁判所総務局第一課長等の事務連絡)をAIで解説したものです。
◯「(AI作成)書記官等の事務処理の誤りに伴い国費を支出する場合の裁判所の考え方」も参照してください。
目次
第1 はじめに―更正決定と費用負担の原則
1 更正決定制度の意義と実務上の重要性
2 費用負担に関する原則的な考え方
(1) 利用者負担の原則
(2) 原則論の修正が必要となる背景
第2 国費支出が認められるための具体的要件
1 自庁限りで判断可能な類型の設定
2 要件ア:明白な誤りと後続手続への支障
(1) 「明白な誤り」の意義
(2) 後続手続への具体的な影響
3 要件イ:裁判所側の帰責性と当事者の無過失
(1) 裁判所職員の責めに帰すべき事由の判断
(2) 当事者の落ち度の有無
第3 国費支出の対象となる費用の範囲
1 送達に関する費用
2 証明書等の交付手数料
3 郵送費用等の実費
(1) 申請に要する郵送費用
(2) 交付に要する郵送費用
4 支出額の算定における注意点(差額算定の論理)
第4 具体的な国費支出の手続と方法
1 事後的補填(当事者が既に負担している場合)
(1) 金銭賠償による償還
(2) 郵便切手による補填
2 事前支出(当事者が未負担の場合)
(1) 裁判庁費による郵便切手等の使用
(2) 手数料の事前措置
第5 最高裁への意見照会を要する類型と事件進行
1 自庁判断類型以外の場合の対応
2 事件進行への影響に関する留意事項
(1) 事件進行不停止の原則
(2) 予納不足時の対応
第6 弁護士として留意すべき実務上のポイント
1 裁判所への申し出と説明
2 クライアントへの説明
3 証拠資料の保存と提示
第7 おわりに
第1 はじめに―更正決定と費用負担の原則
1 更正決定制度の意義と実務上の重要性
民事訴訟法第257条第1項は,「判決に計算違い,誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは,裁判所は,申立てにより又は職権で,いつでも更正決定をすることができる」と定めています。判決書は国家の裁判権の行使を公証する厳格な文書であり,その記載内容には一点の疑義も許されません。しかし,膨大な事件処理の中では,当事者の氏名の誤記や住所の転記ミス,利息計算の過誤などの「明白な誤り」が不可避的に生じることがあります。
このような誤りを放置すれば,強制執行手続や登記手続において却下事由となり,当事者の権利実現が著しく阻害されます。更正決定は,判決の同一性を維持しつつ,その記載を実態に合致させるための不可欠な手続です。
2 費用負担に関する原則的な考え方
(1) 利用者負担の原則
更正決定の手続に要する費用,とりわけ決定正本の送達費用については,民事訴訟法等の法令に基づく手続である以上,当事者が予納した郵便切手や保管金を用いるのが原則です。これは,司法サービスの受益者がそのコストを負担するという「利用者負担の原則」に基づいています。
(2) 原則論の修正が必要となる背景
しかし,明白な誤りがもっぱら裁判所側の不注意によって生じた場合まで,当事者にその修正費用を負担させることは,公平の観点から疑問が生じます。弁護士としても,クライアントに対して「裁判所が間違えたのに,なぜ追加の切手代をこちらが払わなければならないのか」という正当な不満に対し,合理的な説明を行う必要があります。
このような背景を受け,令和3年7月28日付の事務連絡により,一定の要件を満たす場合には国費によって費用を賄うという実務上の運用基準が明確化されました。
第2 国費支出が認められるための具体的要件
1 自庁限りで判断可能な類型の設定
本事務連絡では,各裁判所が上級庁に諮ることなく,自らの判断で国費支出を決定できる「自庁判断類型」を定めています。これは,迅速な事件処理と適正な費用負担を両立させるための仕組みです。
2 要件ア:明白な誤りと後続手続への支障
(1) 「明白な誤り」の意義
国費支出が認められるための第一の要件は,判決書等の当事者表示や主文に「計算違い,誤記その他これらに類する明白な誤り」が存在することです。これは,実質的な判断の変更を伴わない,形式的かつ客観的な誤りを指します。
(2) 後続手続への具体的な影響
単に誤りがあるだけでなく,更正決定を行わなければ,以下の手続を行うことができないと見込まれることが必要です。
ア 強制執行手続
イ 登記手続
ウ 供託手続
エ 戸籍の届出
オ 年金分割等の行政手続
これらの手続は厳格な一致を求めるため,一文字の誤りであっても手続が停滞します。この「実務上の必要性」が国費支出の正当化根拠となります。
3 要件イ:裁判所側の帰責性と当事者の無過失
(1) 裁判所職員の責めに帰すべき事由の判断
第二の要件は,その誤りが「もっぱら裁判所職員の責めに帰すべき事由」によるものであることです。例えば,当事者が提出した正しい訴状の記載を,書記官や裁判官が判決書に転記する際に誤った場合などがこれに該当します。
(2) 当事者の落ち度の有無
同時に,当事者側に何ら落ち度がないことが求められます。もし,当事者が提出した準備書面や申立書の段階ですでに記載が間違っており,裁判所がそれをそのまま引用してしまったような場合には,この要件を満たさない可能性が高まります。弁護士としては,提出書類の正確性を期すことが,巡り巡ってクライアントの費用負担を軽減することにもつながります。
第3 国費支出の対象となる費用の範囲
1 送達に関する費用
最も代表的なのは,更正決定正本の送達費用です。通常,判決書正本とは別に送達されるため,特別送達に要する切手代が必要となりますが,これが国費支出の対象となります。
2 証明書等の交付手数料
更正決定に伴い,以下の証明書が必要となる場合があります。
ア 更正決定正本の送達証明書
イ 更正決定の確定証明書
これらの交付手数料(収入印紙代)についても,要件を満たせば国費から支出されます。
3 郵送費用等の実費
(1) 申請に要する郵送費用
証明書の交付を郵送で申請する場合に要する郵送代(往信分)も対象に含まれます。
(2) 交付に要する郵送費用
作成された証明書を裁判所から当事者へ郵送するための費用(返信分)も同様です。
4 支出額の算定における注意点(差額算定の論理)
実務上注意が必要なのは,「差額」の考え方です。仮に更正決定が行われなくても生じていたはずの費用は,国費の対象になりません。
例えば,更正決定正本を判決書正本と同封して送達する場合,本来の送達料が1,089円で,同封により1,099円になったとすれば,差額の10円のみが国費支出の対象となります。この点は,全額が戻ってくるわけではないという点で,クライアントへの説明に際して留意すべき点です。
第4 具体的な国費支出の手続と方法
1 事後的補填(当事者が既に負担している場合)
(1) 金銭賠償による償還
当事者が既に切手や保管金を使用して送達を受けた場合,原則として「賠償償還及払戻金」という費目から,現金(振込等)による賠償が行われます。
(2) 郵便切手による補填
当事者が郵便切手による現物補填を希望する場合,裁判所が購入した切手を当事者の予納郵便切手管理袋に補充し,それを返還する方法が取られます。これは切手管理の実務に即した柔軟な対応と言えます。
2 事前支出(当事者が未負担の場合)
(1) 裁判庁費による郵便切手等の使用
送達前であれば,当事者の切手を使わず,裁判所が保有する「裁判庁費」で購入した切手を用いて送達を行います。また,後納郵便制度を利用して裁判所が直接郵便局に支払う方法も選択されます。
(2) 手数料の事前措置
証明書の交付手数料についても,裁判所が用意した収入印紙を貼付するなどの措置が講じられます。これにより,当事者は最初から費用を負担することなく手続を終えることができます。
第5 最高裁への意見照会を要する類型と事件進行
1 自庁判断類型以外の場合の対応
前述の要件(明白な誤り,裁判所側の全過失)に該当するか疑義がある事案や,特殊な事情がある場合には,各裁判所は最高裁判所事務総局(広報課等)に対して意見を求めることとなっています。この場合,判断までに時間を要することが予想されます。
2 事件進行への影響に関する留意事項
(1) 事件進行不停止の原則
極めて重要な実務上のルールとして,「国費支出の検討を理由として事件の進行を止めてはならない」という原則があります。国が費用を出すかどうかの内部的な検討は,更正決定の発出や送達という司法手続のスピードを犠牲にしてはならないという趣旨です。
(2) 予納不足時の対応
もし,予納切手の残額が少なく,検討に時間がかかるようであれば,一旦当事者に追納を求めた上で手続を進めることもあり得ます。この場合,検討の結果「国費支出相当」と判断されれば,事後的に還付や賠償の手続が取られることになります。
第6 弁護士として留意すべき実務上のポイント
1 裁判所への申し出と説明
判決書等に誤りを発見した際,単に更正決定を申し立てるだけでなく,「本件の誤りは裁判所の資料転記ミスに基づくものであり,後続の登記手続に支障があるため,令和3年7月28日付事務連絡に基づく国費支出を検討いただきたい」旨を付言することが有効です。
2 クライアントへの説明
裁判所側のミスであるにもかかわらず費用が発生することへの不信感を払拭するため,本運用の存在を説明し,可能な限り負担をゼロまたは最小限に抑えるよう努めている姿勢を示すことが,信頼関係の維持に寄与します。
3 証拠資料の保存と提示
「当事者に落ち度がないこと」を証明するため,提出済みの正しい訴状の控えや,証拠資料との整合性を改めて示せるよう準備しておくことが望ましいです。
第7 おわりに
更正決定に伴う国費支出の運用は,司法行政の適正化と国民の司法アクセスを向上させるための重要な一歩です。弁護士としてこの運用を熟知しておくことは,手続の円滑化のみならず,依頼者の利益保護という観点からも極めて意義深いものです。
今後も,裁判所実務の細やかな変化に注視し,より質の高い法的サービスの提供に努めてまいりましょう。