弁護士の社会保険

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目次
1 弁護士の雇用保険
2 東京都弁護士国民健康保険組合
3 労働保険及び社会保険への加入状況の調査方法
4 社会保険への事後的な加入手続
5 国民健康保険の保険料(保険税)の限度額の推移等
6 国民年金保険料の月額及び国民年金の月額
7 士業等の節税ツール
8 関連記事

1 弁護士の雇用保険
(1) 弁護士の労働者性については,東弁リブラ2005年4月号「私って労働者?-勤務弁護士の労働者性について-」が参考になります。
(2) 平成25年2月1日以降,公認会計士,税理士,弁護士,社会保険労務士,弁理士等の資格を持つ人は,法律の規定に基づき,名簿や登録簿等に登録している場合であっても,開業や事務所に勤務している事実がないことが確認でき,要件を満たしていれば,雇用保険の受給資格決定を受けることができます(厚生労働省HPの「公認会計士,税理士などの資格を持つ方の失業給付の取扱いが変更になります。」参照)。
(3) 雇用保険を受給するためには以下の条件を満たしている必要があります。
① 雇用保険の被保険者期間(=労働者として事業所に勤務していた期間)が原則として,離職日以前2年間に12ヶ月以上あること。
② 就職したいという積極的な意思と,いつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり,積極的に求職活動を行っているにもかかわらず,就職できない状態(失業の状態)にあること。
(4) 平成18年度の労働保険審査会の裁決例4には,雇用保険法に関して以下の記述があるため,労働基準法の労働者に該当しなくても,雇用保険の被保険者資格を認められることがあります。
   法第4条第1項は、「この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であ」る旨規定し、また、同項の「適用事業」については、法第5条第1項において、「この法律においては、労働者が雇用される事業を適用事業とする。」と規定している。また、法における「雇用関係」とは、民法第623条の規定による雇用関係のみならず、労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に労働を提供し、その提供した労働の対償として事業主から賃金、給料その他これらに準ずるものの支払を受けている関係(以下「実質的な雇用関係」という。)をも含むものであると解される。 したがって、かかる意味での雇用関係が終了したと認められる場合に、被保険者資格を喪失したと言い得るものである。

2 東京都弁護士国民健康保険組合
(1)ア 令和元年7月現在,以下の二つの条件を満たす人は,東京都弁護士国民健康保険組合に加入できます(東京都弁護士国民健康保険組合HP「加入資格・加入手続について」参照)。
① 東京弁護士会,第一東京弁護士会,第二東京弁護士会,神奈川県弁護士会,千葉県弁護士会及び埼玉弁護士会に所属する弁護士及び外国法事務弁護士並びにその法律事務所に勤務し業務に従事する者
② 東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県,茨城県の一部(取手市,土浦市,つくば市,水戸市及び神栖市),静岡県の一部(三島市,浜松市,静岡市,熱海市,富士市,駿東郡長泉町及び田方郡函南町),山梨県北杜市,群馬県高崎市,愛知県刈谷市,京都府京都市,新潟県長岡市,長野県下高井郡山ノ内町,沖縄県島尻郡与那原町,大阪府大阪市及び栃木県宇都宮市に住所を有する方
イ 神奈川県弁護士会,千葉県弁護士会及び埼玉弁護士会に所属する弁護士等が東京都弁護士国民健康保険組合に加入できるようになったのは平成元年です(関弁連50周年記念誌29頁)。
(2)ア 東京都弁護士国民健康保険組合に加入している人が弁護士法人に勤務する場合,年金事務所に対し,14日以内に健康保険被保険者適用除外申請書をすることで,協会けんぽに加入せず,引き続き東京都弁護士国民健康保険組合への加入を続けることができます(日本年金機構HPの「健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険の資格取得及び配偶者等の手続き」参照)。
イ 東京都弁護士国民健康保険の保険料は所得金額と関係がありません(東京都弁護士国民健康保険組合HPの「保険料について」参照)。
   そのため,一定の所得を超えた場合,協会けんぽの健康保険料よりも健康保険料が安くなりますものの,標準報酬月額の3分の2の金額を最大で1年6月間支給してくれる傷病手当金制度(協会けんぽHPの「病気やケガで会社を休んだとき」参照)はありません。
(3) 東弁リブラ2013年7月号「弁護士会の福利厚生第6回 東京都弁護士国民健康保険組合のご案内」によれば,東京都弁護士国民健康保険組合の場合,①傷病手当金,②出産手当金及び③育児休業期間中の保険料免除措置がないと書いてあります。
(4) 既存の健保組合がその地区・組合員を拡大することは,事務量の増大という点を除けば,財政基盤の強化,危険の分散というメリットがあるものの,健保組合の新設・拡大を認めた場合,働き盛りの人たち,高収入の人たちが市町村国保を脱退する結果,市町村国保には高齢者・低所得者層だけが残ることとなり,市町村国保の財政基盤が弱くなるという意見があります(関弁連50周年記念誌29頁及び30頁参照)。

3 労働保険及び社会保険への加入状況の調査方法
(1)ア   弁護士法人である法律事務所は,社会保険の強制適用事業所に該当します(健康保険法3条3項2号,厚生年金保険法6条2項)。
イ 社会保険への加入資格については,日本年金機構HPの「社会保険の加入についてのご案内」が分かりやすいです。
(2) 厚生労働省HPの「労働保険適用事業場検索」を利用すれば,労働保険(労災保険及び雇用保険)に加入しているかどうかが分かります。
   適用事業場検索が作動しない場合,「ツール」→「インターネットオプション」→「プライバシー」→「ポップアップブロックを有効にする」のチェックを外す,により作動することがあります。
(3)ア 日本年金機構HPの「厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システム」を利用すれば,社会保険(厚生年金保険及び健康保険)に加入しているかどうかが分かります。
イ 健康保険の給付の手続や相談等は,平成20年10月1日設立の全国健康保険協会(協会けんぽ)(従前の政府管掌健康保険(政管健保)です。)の各都道府県支部で行い,健康保険の加入や保険料の納付の手続は,日本年金機構の年金事務所で行っています(日本年金機構HPの「健康保険(協会けんぽ)の事務と手続等」参照)。

4 社会保険への事後的な加入手続
(1)   弁護士法人の場合
   弁護士法人において社会保険への加入手続をしてもらっていなかった場合であっても,勤務弁護士に労働者としての実態があるのであれば,以下のとおり事後的に社会保険に加入できます。
① 労災保険については労基署の職権による成立手続及び労災保険料の認定手続(労災保険法31条1項1号参照)を経ること
② 雇用保険についてはハローワークの職権による被保険者資格の確認(雇用保険法8条及び9条)を経ること
③ 健康保険については年金事務所の職権による確認(健康保険法39条・51条1項)を経ること
④ 厚生年金については年金事務所の職権による確認(厚生年金保険法18条2項)を経ること
(2) 個人経営の法律事務所の場合
ア   個人経営の法律事務所は,社会保険の強制適用事業所(健康保険法3条3項1号,厚生年金保険法6条1項1号)に該当しませんから,常時5人以上の従業員を使用している場合であっても,社会保険が適用されません。
   そのため,勤務弁護士に労働者としての実態があるとしても,社会保険に加入することはできません。
イ 個人経営の法律事務所は,従業員の2分の1以上の同意を得られる場合,任意適用申請をすることで社会保険適用事業所になることはできます(健康保険法31条1項及び2項,厚生年金保険法6条3項及び4項。日本年金機構HPの「任意適用申請の手続き」参照)。

5 国民健康保険の保険料(保険税)の限度額の推移等
(1)ア 昭和36年度に確立された国民健康保険の保険料(保険税)の限度額の推移は以下のとおりです。
昭和46年度~: 8万円
昭和49年度~:12万円
昭和51年度 :15万円
昭和52年度 :17万円
昭和53年度 :19万円
昭和54年度 :22万円
昭和55年度 :24万円
昭和56年度 :26万円
昭和57年度 :27万円
昭和58年度 :28万円
昭和59年度~:35万円
昭和61年度 :37万円
昭和62年度 :39万円
昭和63年度~:40万円
平成 3年度 :44万円
平成 4年度 :46万円
平成 5年度~:50万円
平成 7年度~:52万円
平成 9年度~:53万円(平成11年度までは全部,医療分)
平成12年度~:60万円(医療分が53万円,介護分が7万円)
平成15年度~:61万円(医療分が53万円,介護分が8万円)
平成18年度 :62万円(医療分が53万円,介護分が9万円)
平成19年度 :65万円(医療分が56万円,介護分が9万円)
平成20年度 :68万円(医療分が47万円,支援金分が12万円,介護分が9万円)
平成21年度 :69万円(医療分が47万円,支援金分が12万円,介護分が10万円)
平成22年度 :73万円(医療分が50万円,支援金分が13万円,介護分が10万円)
平成23年度~:77万円(医療分が51万円,支援金分が14万円,介護分が12万円)
平成26年度 :81万円(医療分が51万円,支援金分が16万円,介護分が14万円)
平成27年度 :85万円(医療分が52万円,支援金分が17万円,介護分が16万円)
平成28年度~:89万円(医療分が54万円,支援金分が19万円,介護分が16万円)
平成30年度~:93万円(医療分が58万円,支援金分が19万円,介護分が16万円)
イ 限度額の法的根拠は,国民健康保険料につき国民健康保険法76条・国民健康保険法施行令29条の7であり,国民健康保険税につき地方税法703条の4・地方税法施行令56条の88の2です。
ウ 国民健康保険につき,国民健康保険法76条1項では,保険料方式が本則であり,保険税方式が例外であるものの,市町村保険者の大多数が保険税方式を採用しています。
   ただし,大阪府内においては,9割以上の保険者が保険料方式を採用しています(大阪府HPの「国民健康保険における保険料と保険税の現状等について」参照)。
(2)ア 厚生労働省HPの「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」(平成29年11月8日付)に,平成5年度から平成27年度までの国民健康保険料(税)賦課(課税)限度額の推移が載っています。
イ 鳥取県HPに「国民健康保険制度の沿革」が載っています。
(3) 平成30年4月1日から,国民健康保険の運営主体が都道府県となりました(帯広市HPの「国民健康保険の都道府県単位化について」参照)。
(4) 大阪市HPの「大阪市国民健康保険運営協議会」に,国民健康保険制度の概要,大阪市国民健康保険事業の特徴,大阪市国民健康保険事業の特徴が載っています。

6 国民年金保険料の月額及び国民年金の月額
(1) 国民年金保険料の月額の推移
ア 国民年金保険料の月額は以下のとおり推移しています。
平成10年度~:1万3300円
平成17年度:1万3580円
平成18年度:1万3860円
平成19年度:1万4100円
平成20年度:1万4410円
平成21年度:1万4660円
平成22年度:1万5100円
平成23年度:1万5020円
平成24年度:1万4980円
平成25年度:1万5040円
平成26年度:1万5250円
平成27年度:1万5590円
平成28年度:1万6260円
平成29年度:1万6490円
平成30年度:1万6340円
平成31年度:1万6410円
イ 日本年金機構HPに「国民年金保険料の変遷」及び「国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?」が載っています。
(2) 老齢基礎年金の支給額の推移
ア 老齢基礎年金の支給額の推移は以下のとおりです。
平成16年 4月~:79万4500円
平成18年 4月~:79万2100円
平成23年 4月~:78万8900円
平成24年 4月~:78万6500円
平成25年10月~:77万8500円
平成26年 4月~:77万2800円
平成27年 4月~:78万 100円
平成29年 4月~:77万9300円
イ 次年度の老齢基礎年金の支給額は,毎年1月下旬の金曜日に厚生労働省HPで発表されています。
(3) シニアガイドHP「実際に支給されている国民年金の平均月額は5万5千円、厚生年金は14万7千円」(平成30年12月22日付)が載っています。

7 士業等の節税ツール
   弁護士社長の実務ブログ「弁護士を含めた士業の節税方法(社会保険等編)」によれば,士業等の節税ツールとして選択できる社会保険は以下のとおりとなっています。
① 国民年金基金(所得控除)
② 小規模企業共済(所得控除)
③ 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)(経費の増額)
④ 個人形確定拠出年金(iDeCo)(所得控除)

8 関連記事
① 日本弁護士国民年金基金
② 個人型確定拠出年金(iDeCo)