平成28年度概算要求(増員関係)に関する最高裁の説明

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1 最高裁が作成した平成27年8月31日付の「全司法本部との応答メモ」にある記載を,以下のとおり抜粋します(全司法とは,全司法労働組合のことです。)。

(1) 平成28年度概算要求(増員関係)について
   国家公務員の定員について,政府は,平成26年7月25日,業務改革を推進して定員の合理化に強力に取り組むこと等を内容とする「国家公務員の総人件費に関する基本方針」を閣議決定し,同日,毎年2%(5年10%)以上を合理化すること等を内容とする「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」を閣議決定しており,国の財政状況が逼迫している中,既存業務の増大への対応は定員の再配置により対処する方針を明確にするなど,増員を取り巻く情勢は非常に厳しい状況になっている。
他方,司法制度改革については,法制度の枠組みが完成し,裁判員制度をはじめとして実施・運用の段階に入っているところ,裁判所としては,これらの制度改革をより実効性のあるものとするため,引き続き種々の見直しを行うとともに,裁判所の人的態勢についても国民の負託に応えていく裁判を実現するための充実強化を図っていく必要がある。具体的には,社会経済情勢の変化等を背景として個々の事件がより一層複雑困難化している民事訴訟事件の審理を充実させるとともに,家事事件について,平成25年1月に施行された家事事件手続法の趣旨に沿った適正な手続を実現するとともに,引き続き増加する成年後見関係事件に適切に対応するためには,裁判部門の処理態勢を更に強化する必要がある。
そこで,平成28年度は,極めて厳しい財政状況の下ではあるが,裁判官(判事)32人,書記官39人,合計71人の増員要求を行うとともに,速記官から書記官へ5人の振替要求を行った。
   なお,平成28年度については,先に述べた閣議決定を踏まえた協力要請を受けて,裁判所では,定員合理化計画に協力するため,71人の定員削減を予定している。

(2) 質疑応答部分
(増員要求数)
① 裁判官の増員要求数を昨年と同じ判事32人としたのはなぜか。
→ 現在の事件動向を踏まえた上で,より一層複雑困難化する事件に適切に対処するとともに,今後の裁判部門の充実強化という観点から検討した結果,判事32人の増員を要求することとしたものである。

② 裁判官の増員要求数は昨年と同じであるのに,書記官の振替を含めた増員要求数は昨年よりも1人減ったのはなぜか。
→ 書記官は,裁判所の基幹官職として,適正迅速な裁判を実現していく中で重要な役割を果たしていると認識しており,これまでも事件動向等を踏まえながら,必要な人員の確保に努めてきたものである。具体的には,平成9年からの15年間で振替を含めて2600人を超える大幅な増員を行ったほか,平成24年度に80人,平成25年度に48人,平成26年度に44人,平成27年度に39人の増員をして,繁忙庁を中心に配置し,必要な体制整備を行ってきたところであり,平成28年度については,書記官44人を増員すれば,現有人員の有効活用と併せて,より適正かつ迅速な事件処理を行っていけると判断したものである。

③ 司法制度改革審議会で大幅に増員すべきである旨意見されたのであるから,更に大幅な増員要求を行うべきである。
→ 司法制度改革審議会において,裁判官については大幅な増員,裁判所書記官等の裁判所職員については,その質,能力の向上を一層推し進めるとともに,その適正な増加を図っていく必要があると意見されたことはそのとおりであるが,これまでも繰り返し説明しているとおり,国家財政は極めて厳しく,行政省庁は既存業務の増大への対応を定員の再配置により対処するよう求められている状況にある。国家公務員の定員を巡る情勢は,これまでにない極めて厳しいものであり,人員増に対する風当たりはますます強くなっている。
さらに,書記官については,財政当局から,ここ数年にわたる定員振替による増員効果を指摘されており,事件数の動向の上でも,成年後見関係事件を除いて各種事件で減少又は横ばいとなっているものの,司法制度改革審議会において意見を述べた裁判部門の充実強化に向けた必要な人員の確保という観点を踏まえた要求を行うこととしたものである。

④ 東日本大震災からの復興においては法的紛争が増加すると思われるが,これに対応するための増員要求はしないのか。
→ 復興に関連して様々な法的紛争が提起されることを想定し,これらの紛争を適切に解決できるよう人的態勢を整備しておく必要があると考えており,平成24年4月に,被害の大きかった沿岸部に所在する庁を中心に書記官等の増配置を行ったところである。一方,阪神淡路大震災の経験を踏まえると,震災に伴う法的紛争の増加は一時期に集中し,一定期間経過後には収束に向かうと予想されることから,今回の増員を含めて,現有人員を有効活用することにより,震災による法的紛争の増加に対応することとし,震災を理由とした増員要求を行わないこととしたものである。

⑤ 成年後見関係事件の増加が著しいにもかかわらず,なぜ,家裁調査官の増員を要求しないのか。
→   家事事件は,後見関係事件が引き続き増加傾向にあるものの,少年事件については長期的に見た場合,減少傾向が続いており,平成26年の新受事件数は,近年のピークであった昭和58年に比べて約6分の1程度まで減少しており,家事,少年の事件全体を通じても,平成26年の新受件数の合計は,近年のピークであった昭和59年のそれを約7万件下回っている状況にある。これだけの減少は,財政当局との折衝に当たってかなり大きなインパクトを持つものと言わざるを得ない。その上,家裁調査官については,平成12年度から平成16年度まで毎年5人ずつ増員するとともに,平成15年度から平成18年度まで合計43人の事務官からの振替を行い,平成21年度については,5人の増員を行っており,平成28年度においては,現有人員の有効活用をすることによって,家事事件の適正迅速な処理を図ることができると判断したものである。

⑥ 増員の理由として家庭事件の処理の充実強化を挙げているが,なぜ,家裁調査官ではなく,書記官の増員を要求することになるのか。
→ 大幅な事件増加が続いている成年後見関係事件の処理については,本人の意向聴取等,家裁調査官が担うべき分野については,これまで家裁調査官の増員等によって態勢を整備し,併せて,効率的な事務処理を工夫することにより,事件数が増加する中でも適正な調査が行われるよう努めてきたところである。他方,成年後見関係事件の適正な処理のためには,家裁調査官が行う調査のみならず,書記官による法的な要件の審査,所定の手続の履践,事件関係者に制度を理解させるための説明が必要不可欠である。また,後見等監督事件の適正な処理のためには,後見人等から提出された財産目録,後見監督人から提出された報告書の精査等の事務をはじめ,後見人等や関係職種との連絡・調整などの役割を書記官が担っていくことが求められている。そのため,成年後見関係事件を中心として,家庭事件を適正迅速に処理するためには,書記官の増員が必要であると判断したものである。

⑦ 後見等監督事件は,性質上,長期的に係属することが予想される事件であり,事務量は将来に向けて増加する一方であるが,将来の事務処理態勢についてどう考えているのか。
→ 後見等監督事件については,これまでも,事務処理の合理化や各庁における運用の改善が図られてきたところであるが,後見等監督事件の性質上,長期的に係属し,その事務量が将来に向けて増加することが予想される状況を考えると,今後も事務処理の在り方について,引き続き検討するとともに,家事事件全体の事件動向や事件処理状況等を踏まえながら,適正な人員配置に努めていきたい。

(速記官の振替)
⑧ 速記官の書記官への振替要求を5人にしたのはなぜか。
→ これまで緩やかに録音反訳方式に移行し,速記官として働き続けることを希望する職員の任用等に支障を生じない範囲内で,速記官から書記官への振替要求をしてきたところであるが,平成28年度期首における速記官の現在院見込みを踏まえた上で,振替要求数を検討した結果である。

⑨ 今後も速記官から書記官への振替を要求していくのか。
→ これまで説明してきているとおり,緩やかに録音反訳方式に移行していくという当局の方針に変更はないが,次年度以降の振替要求数についても,期首における速記官の現在院見込み等を踏まえて検討していくことになる。

⑩ 書記官任用研修が終了したのになぜ振替を続けるのか。
→ 速記官から書記官への転官数のみが振替数の要因となるものではなく,振替数については,期首における速記官の現在員見込み等を踏まえて検討していくため,書記官任用研修が終了したからといって,振替が終わることにはならない。

⑪ 書記官任用研修終了後の対応について検討状況を明らかにしてもらいたい。
→ 平成21年度の書記官任用研修の意向調査で同研修の参加を希望しながら,家庭の事情等で平成21年度の研修に参加できなかった者に対して,同人らの事情を踏まえて何らかの対応がとれないか検討しているところであるが,書記官資格付与といった重要な問題であることから,検討のためにはある程度まとまった時間が必要と考えており,まだ検討状況を示せる段階にはない。

(事務官の振替)
⑫ 事務官から書記官への振替要求を行わなかったのはなぜか。
→ 平成24年4月の資料課組織の見直しに伴い,資料課に配置されていた定員については,その一部を書記官に振り替えたほか,事務局を含む繁忙庁の繁忙部署に行こうさせたところであるが,移行後においても,事務処理の簡素化,効率化という観点から更なる事務処理態勢の見直しを図りつつ,裁判部の充実強化という観点から,平成24年から3年にわたって30人を書記官に振り替えてきており,現在の事務官の職場状況等も踏まえ,今年度も振替要求を行わないこととしたものである。

⑬ 今後も事務官から書記官への振替は行わないのか。
→ 今後の事務官から書記官への振替については,事務処理の簡素化,効率化という観点から事務処理態勢の見直しを不断に図りながら,事務官の職場状況等を踏まえて検討していくことになる。

(その他)
⑭   なぜ政府の協力要請に裁判所が応じるのか。
→ 裁判所は行政機関ではないので,政府の定員合理化計画に直ちに拘束されるものではない。しかし,国家公務員の定員を巡る情勢が厳しさを増す中で,引き続き裁判部の充実・強化を図っていくためには,政府からの協力要請を踏まえて,国家の一機関として,他の行政官庁と同様に,事務の効率化等必要な内部努力を行い,定員合理化に協力することは必要と考えている。こうした考えに基づき,事務局部門に限って,従前から削減計画に協力しているものである。
今後も,司法行政部門について,裁判部門に影響を及ぼすことなく,事務の簡素化,合理化を行うことができる範囲に限って協力していくことになる。

⑮   合理化対象を事務局部門に限定し,裁判部門を除外しているのはなぜか。
→ 裁判所の使命は,適正迅速な裁判を実現することにある。その責務を直接担っている裁判部門については,事件数の動向や事件の難易等を踏まえた上で,上記の使命を果たすために必要な人員の確保を図っていく必要があり,本来的に計画的な人員削減になじまない。

⑯ 政府からの協力要請については,いつどのような形でなされたのか。
→ 平成26年7月25日に内閣官房長官から最高裁判所事務総長に宛てて,書面で協力要請がされた。内容は同日「国家公務員の総人件費に関する基本方針」及び「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」が閣議決定されたので,協力してもらいたいというものである。

⑰ 裁判所の合理化数はどのようにして決めたのか。
→ 内閣からの協力要請を受け,行政府省における削減合理化目標数,合理化率などを見ながら,国家公務員の定員を巡る情勢が厳しさを増す中で,引き続き裁判部の充実・強化を図っていくことについて国民の理解を得るという観点に立ちつつ,事務の効率化等による削減可能数を考慮して,自主的に決めたものである。

⑱ 合理化数がここ数年の65人程度から昨年度と同様の71人としているのはなぜか。
→ 閣議決定においては,業務改革を推進して定員の合理化に強力に取り組むことや毎年2%(5年10%)以上を合理化すること,また,既存業務の増大への対応は定員の再配置により対処する方針を明確にしているところであり,先に述べたような事情を総合考慮すると,昨年同様の合理化協力は不可避と判断したものである。

⑲ 仕事と生活の調和を図り,子育てや介護をしながら活躍できる職場造りをするために,本省を対象として試行的に産前産後休暇や育児時間等の取得実態に応じた定員上の措置(以下「別枠定員」という。)を行うために,今年度,要求を行わなかったのはなぜか。
→ 行政府省においては,別枠定員の措置について,前年度に配置した定員の使用状況や各府省における産前・産後休暇等の取得実態等を踏まえて取組の推進を図ることとし,必要な措置の内容について,予算編成過程における具体化を図るとされている。裁判所において別枠定員の増員要求を行うかどうかについても,本年度,最高裁に配置した別枠定員の活用状況や,行政府省において,今後予算編成の過程で具体化される必要な措置の内容を踏まえつつ,検討を行う必要があると考えており,今回の概算要求においては,別枠定員の要求を行うことを見送ることとしたが,今後,行政府省の動向や最高裁における取組の実績等を踏まえて,検討していくことになる。

2 司法制度改革審議会意見書は,平成13年6月12日に発表されました。
また,内閣官房の内閣人事局HPにある「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」(平成26年7月25日閣議決定)によれば,毎年2%(5年で10%)以上,定員を合理化することになっています。