◯本ブログ記事は専らAIで作成したものです。
◯以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情
・ (AI作成)平成21年度から令和6年度までの最高裁民事破棄判決の分析
第1 はじめに——本記事の目的と対象
1 本記事が対象とする資料と期間
本記事は,最高裁判所調査官らが判例時報誌に継続的に公表してきた「許可抗告事件の実情」を主たる素材とし,平成21年度から令和6年度までの16年間にわたる許可抗告事件の動向を,統計・許可の在り方・分野別の到達点の3つの観点から分析するものである。
許可抗告は,日常の弁護士業務では上告受理申立てほど頻繁には登場しない。しかし,保全・執行・家事・会社非訟といった決定手続の中で法令解釈上の重要な争点に直面したとき,その争点を最高裁判所の判断に付す唯一の正規の経路となる。
したがって,その運用の実情を体系的に把握しておくことは,決定手続を扱う弁護士にとって確かな実益がある。
2 許可抗告制度の意義
(1) 民事訴訟法337条の仕組み
許可抗告とは,高等裁判所の決定及び命令に対し,その高等裁判所が「法令の解釈に関する重要な事項を含む」と認めて抗告を許可した場合に限り,最高裁判所への抗告を認める制度である(民事訴訟法337条)。
ここで決定的に重要なのは,受理の可否を判断する主体である。
上告受理の申立て(民事訴訟法318条1項)では最高裁判所自らが受理するか否かを判断するのに対し,許可抗告では,抗告を受理する門を開くか否かを判断するのは,原裁判をした高等裁判所自身である(民事訴訟法337条2項)。
そして,高等裁判所は,抗告を許可する場合において,抗告の理由中に重要でないと認めるものがあるときは,これを排除することができる(民事訴訟法337条6項が同法318条3項を準用する)。
この制度が主として目的とするのは,個別事件の救済そのものではなく,決定手続における法令解釈の統一である。
それゆえ,抗告許可の申立ての理由には,事案の当てはめに対する不服ではなく,「法令の解釈に関する重要な事項」を的確に示すことが求められる。
(2) 制度の沿革と合憲性
許可抗告は,平成8年に制定された現行民事訴訟法によって新たに設けられ,平成10年1月1日から施行された比較的新しい制度である。
それ以前は,高等裁判所の決定・命令に対して最高裁判所に不服を申し立てる方法は,憲法違反等を理由とする特別抗告(民事訴訟法336条)に限られていた。
許可抗告は,決定手続における重要な法律問題についても判断の統一を図りつつ,最高裁判所の負担の過重を避けるという要請を,高等裁判所の許可判断を介在させることによって調和させたものである。
この制度の合憲性については,最高裁判所平成10年7月13日第三小法廷決定(集民189号111頁)が,抗告許可の申立ての対象とされる裁判に法令の解釈に関する重要な事項が含まれるか否かの判断を高等裁判所にさせることとしている民事訴訟法337条の規定は憲法31条及び32条に違反しない,と判示して,これを是認している。
3 弁護士にとっての実務的意義
許可抗告の実情を知ることには,2つの実務的な意義がある。
第1に,自らが抗告許可の申立てをする側に立ったとき,どのような主張であれば「重要な法令解釈事項」として許可・登載に至りやすいかを見通せることである。
第2に,相手方が申立てをした側に立ったとき,その申立てが本来許可に値するものかどうかを冷静に評価できることである。
第2 統計から見た平成21年度から令和6年度までの動向
1 決定件数と判例集登載割合の推移
(1) 一覧表
まず,各年度の報告に掲げられた決定件数と,そのうち最高裁判所民事判例集又は裁判集民事に登載された件数及びその割合を一覧にする。
「登載割合」は,決定に至った許可抗告事件のうち,先例的価値を認められて判例集に登載された割合であり,実質的な判断を得て先例化する度合いの目安となる。
| 年度 | 決定件数 | 判例集登載 | 登載割合 |
|---|---|---|---|
| 平成21 | 51 | 5 | 10% |
| 平成22 | 43 | 6 | 14% |
| 平成23 | 60 | 8 | 13% |
| 平成24 | 60 | 6 | 10% |
| 平成25 | 44 | 9 | 20% |
| 平成26 | 37 | 6 | 16% |
| 平成27 | 38 | 19 | 50% |
| 平成28 | 52 | 18 | 35% |
| 平成29 | 30 | 2 | 7% |
| 令和元 | 19 | 4 | 21% |
| 令和2 | 42 | 6 | 14% |
| 令和3 | 32 | 7 | 22% |
| 令和4 | 16 | 6 | 38% |
| 令和5 | 19 | 6 | 47% |
| 令和6 | 29 | 3 | 10% |
各数値は「許可抗告事件の実情」各年度の「はじめに」に掲げられた表に基づく。
資料により年度の表記(「年度」と「年」)や母数の取り方に差異があり得るため,個別の件数を厳密に用いる場合には原資料の該当年度を確認されたい。
(2) 数値の読み方
登載割合は,年度により7%から50%までと大きく変動している。
ここから読み取るべき最も重要な点は,抗告が高等裁判所で許可されたとしても,その多くは棄却され,あるいは事案限りの判断にとどまって先例化しない,という実情である。
平成27年度(50%)及び平成28年度(35%)が突出して高いのは,この時期に会社法上の株式価格決定や渉外的な家事事件など,まとまった重要論点群が集中的に判断されたことによる。
他方,平成29年度(7%)のように低い年は,事案の当てはめや裁量判断が争われたにとどまり,新たな法命題を立てる必要のない事件が多かったことを示している。
2 新受件数の趨勢
新受件数を見ると,平成20年代の前半は,おおむね45件から60件台という高い水準にあった。
平成23年度の61件は,この16年間で最多に近い水準である。
ところが,平成27年度(29件)を1つの境として新受は減少に転じ,平成29年度(15件)以降は,令和2年度(47件)に一時的な増加が見られたものを除き,おおむね20件台の低い水準で推移している。
令和6年度は表面上増加しているが,これは最高裁判所に直接抗告許可の申立てがされ高等裁判所に移送されたものを含む数字であり,これを除いた実質は微増にとどまる。
3 実務への示唆
件数は減少傾向にある一方,1件当たりの重みはむしろ増しているというのが近年の特徴である。
母数が絞られた分だけ,真に法令解釈上の重要問題を含む事件の占める比重が高まっている。
したがって,抗告許可を申し立てる際には,その主張が「単なる当てはめの不服」に見えないよう,法令解釈上の重要事項を正面から立てることが,従来にも増して重要になっている。
第3 抗告許可の相当性——何が許可に値するか
1 制度趣旨からの帰結
許可抗告制度が法令解釈の統一を主目的とする以上,許可に値するのは,当該事件の解決を超えて一般的な意義を持つ法令解釈上の問題を含む場合である。
この観点から,「許可抗告事件の実情」における調査官の解説には,許可が相当でないと評価されやすい類型が繰り返し示されている。
以下は,これらの解説に示された一般論を整理したものである。
2 許可が相当でないと評価されやすい類型
(1) 明確な法令解釈への単純な当てはめ
法令解釈それ自体が既に明確である場合において,個別事件における事実認定や要件への単純な当てはめは,通常,法令の解釈に関する重要な事項とはいえない。
特に,下級裁判所での事例の集積や要件の類型化が十分でない段階で,個別事案の要件該当性の争いを法律審である最高裁判所に持ち込むことは,相当でないことが多い。
(2) 結論に影響しない論点
論点それ自体は重要であっても,当該事案の結論に影響しない論点は,許可に値しない。
とりわけ,原決定の傍論や付言部分のみを非難する主張は,結論に影響しない説示を非難するものとして採用されない。
(3) 移送・文書提出命令等の附随的決定
移送や文書提出命令などの附随的な決定については,抗告に伴い本案の手続が事実上進行できなくなるという副作用が生じ得ることに留意が必要である。
本案の審理を止めてまで附随的決定を最高裁判所で争うことが相当かどうかは,慎重に検討されるべきものである。
(4) 事実審の合理的裁量に属する事項
面会交流の許否及び方法,子の監護に関する処分,婚姻費用・養育費の算定方式の選択,非上場株式の評価方法の選択などは,いずれの考え方によっても事実審の合理的裁量の範囲内にとどまり得る。
このような裁量に属する事項は,そもそも法令解釈に関する重要な事項の問題となりにくい。
3 逆に不許可が相当でない場合
他方で,原決定が法令解釈に関する重要な事項の判断を含み,最高裁判所がその当否を判断するのが相当な事案であるにもかかわらず,高等裁判所が抗告を許可しないことは,制度の趣旨を没却しかねない。
高等裁判所の許可判断は,濫りに許可しない方向のみならず,重要な問題を的確に拾い上げる方向でも規律されるべきものである。
4 「原審の判断は正当として是認することができる」の意味
許可抗告の棄却決定には,「所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができる」という定型的な表現がしばしば用いられる。
この表現による棄却は,多くの場合,一般的な判断枠組みを新たに示すことなく,本件事情の下では原審の結論を維持できるとだけ述べた事案限りの判断である。
したがって,この型の決定を書面に引用する際には,その射程を当該事案限りに厳格に管理し,一般命題として援用しないよう注意を要する。
第4 分野別に見た到達点
以下では,この16年間に判例集に登載された主要な最高裁判所の判断を分野別に紹介する。
言及する各決定には,裁判所ウェブサイトの裁判例情報へのリンクを付した。
1 文書提出命令
許可抗告事件において最も頻出するテーマは,一貫して文書提出命令である。
争点は,民事訴訟法220条各号に定める提出義務及び除外事由の解釈に集約される。
(1) 自己利用文書
民事訴訟法220条4号ニは,専ら文書の所持者の利用に供するための文書(いわゆる自己利用文書)を提出義務の除外事由とする。
最高裁判所平成16年11月26日第二小法廷決定(民集58巻8号2393頁)は,破綻した保険会社の保険管理人が,監督官庁の命令の実行として弁護士及び公認会計士を委員とする調査委員会を設置し,同委員会から提出を受けた調査報告書について,民事訴訟法220条4号ニ所定の自己利用文書には当たらない,と判示した。
この決定は,外部の専門家によって作成され,行政上の命令の実行として提出を受けた文書が,専ら内部の利用に供するための文書とはいえない場合があることを示すものであり,実務上の当てはめの指針となっている。
(2) 公務員の職務上の秘密に関する文書
民事訴訟法220条4号ロは,公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるものを,提出義務の除外事由とする。
最高裁判所平成17年10月14日第三小法廷決定(民集59巻8号2265頁)は,同号ロにいう「公務員の職務上の秘密」には,公務員が職務を遂行する上で知ることができた私人の秘密であって,それが本案事件において公にされることにより,私人との信頼関係が損なわれ,公務の公正かつ円滑な運営に支障を来すこととなるものも含まれる,と判示した。
さらに同決定は,「その提出により公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」があるというためには,文書の性格から生ずる抽象的なおそれでは足りず,その文書の記載内容からみておそれの存在することが具体的に認められることが必要である,とした。
この具体的なおそれの要求は,公務秘密文書の該当性判断における基本的な枠組みとして機能している。
(3) 刑事事件関係書類と刑訴法47条
刑事事件に関する書類は,訴訟に関する書類として,原則として公判の開廷前には公にしてはならないとされ(刑事訴訟法47条本文),その公開の可否は,同条ただし書の下で当該書類を保管する者の裁量的判断に委ねられる。
民事訴訟における文書提出命令との関係では,この保管者の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものといえるかが問題となる。
最高裁判所令和6年10月16日第二小法廷決定(集民271号147頁)は,逮捕・勾留・起訴の後に無罪判決を受けた者が国に対して国家賠償を求める本案訴訟において,共犯とされた者の取調べの状況を録音・録画した記録媒体のうち,その刑事事件の公判で取り調べられなかった部分について文書提出命令が申し立てられた事案で,一定の事情の下では,刑事訴訟法47条に基づき提出を拒否した国の判断は裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものというべきである,と判示した。
刑事事件関係書類のうち公判で取り調べられなかった取調べの録音・録画について文書提出命令が認められた事例として,実務上参考になる。
2 民事執行——差押禁止債権
(1) 性質上の差押禁止
差押えを禁止する明文の規定がない給付請求権であっても,その給付の性質上,強制執行の対象とすることができない場合があるかが,しばしば争われる。
最高裁判所令和6年10月23日第三小法廷決定(民集78巻5号1353頁)は,文化功労者年金法に基づく年金の支給を受ける権利について,これに対しては強制執行をすることができる,と判示した。
その理由は,同法その他の法令に強制執行をすることができない旨を定めた規定が存在せず,国が文化功労者として決定することにより年金を受ける権利が認められることで顕彰の目的は達せられるのであって,現実に年金を受領しなければその目的が達せられないとはいえない,というものである。
性質上の差押禁止債権の範囲を画する上で理論的に重要な判断である。
3 会社法——非上場株式等の価格算定
(1) 評価方法の選択と裁量
非上場株式の価格算定においては,配当還元法,収益還元法,ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(DCF法),時価純資産法など,複数の評価方法が存在する。
いずれの評価方法を用いるかは,基本的に裁判所の合理的裁量に委ねられており,1つの評価方法を単独で採用したからといって直ちに裁量の逸脱となるものではない。
(2) 非流動性ディスカウント
争点となりやすいのは,非上場会社の株式には市場性がないことを理由とする減価,すなわち非流動性ディスカウントを適用してよいかである。
この点については,用いられる評価方法によって結論が分かれる。
まず,会社法785条1項に基づく株式買取請求において,裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合について,最高裁判所平成27年3月26日第一小法廷決定(民集69巻2号365頁)は,非流動性ディスカウントを行うことはできない,と判示した。
次に,会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格の決定において,DCF法によって算定された評価額について,最高裁判所令和5年5月24日第三小法廷決定(集民270号113頁)は,その評価額の算定過程において市場性がないことが考慮されていることがうかがわれないなど判示の事情の下においては,その評価額から非流動性ディスカウントを行うことができる,と判示した。
両決定を対照すると,算定の過程で既に市場性の欠如が織り込まれているかどうかが,非流動性ディスカウントを重ねて適用してよいかを分ける鍵であることが読み取れる。
(3) スクイーズアウトにおける取得価格
株式の相当数を保有する株主が公開買付けを行い,その後に対象会社の株式を全部取得条項付種類株式として全部を取得する取引において,取得価格をどう定めるかも問題となる。
最高裁判所平成28年7月1日第一小法廷決定(民集70巻6号1445頁)は,独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど利益相反関係による意思決定過程の恣意性を排除するための措置が講じられ,一般に公正と認められる手続により公開買付けが行われた場合には,公開買付けに応募しなかった株主の取得価格を公開買付価格と同額とすることが相当である旨を判示した。
4 家事事件
家事事件は,許可抗告事件の中で最も件数の多い分野である。
その多くは事実審の合理的裁量に属し,先例的判断に至るものは限られるが,枠組みのレベルで押さえるべき到達点がある。
(1) 婚姻費用・養育費の算定
婚姻費用及び養育費の算定は,標準的な算定方式への当てはめを基本とする。
権利者が義務者との間の子以外の子をも扶養する場合の修正の要否など,算定方式の運用上の選択は,いずれの考え方によっても事実審の合理的裁量の範囲内にとどまり得る。
また,父母間の養育費に関する合意は,子自身が有する扶養請求権を当然に拘束するものではない点にも留意を要する。
(2) 監護者の指定・面会交流と申立適格
父母以外の第三者,例えば祖父母が,民法766条を類推適用して子の監護者の指定や面会交流を申し立てることができるかについては,これを否定する下級裁判所の判断が集積している。
子の監護に関する処分の審判を申し立てることができる主体は,父母又は同条にいう協議をすべき者であって,第三者はこれに含まれないと解されているためである。
また,面会交流の許否及びその方法は,具体的事案に応じた事実審の合理的裁量に委ねられており,子の意向や心理的な安定を重視して,直接的な交流ではなく間接的な交流を認める判断も許容される。
子の福祉に配慮した個別的判断が求められる領域であり,一般的な命題として先例化しにくい。
(3) 遺産分割と特別受益
共同相続人の一部を死亡保険金の受取人とする生命保険金請求権が,特別受益として持戻しの対象となるかも,繰り返し問題となる。
最高裁判所平成16年10月29日第二小法廷決定(民集58巻7号1979頁)は,死亡保険金請求権は民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないとしつつ,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,各相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいと評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる,と判示した。
この特段の事情の有無は,まさに事案ごとの総合考慮に委ねられるため,個別事件では認定・評価の問題に帰着することが多い。
5 その他——医療法人の社員総会招集
会社以外の法人の機関に関する規律の解釈も問題となる。
最高裁判所令和6年3月27日第三小法廷決定(民集78巻1号252頁)は,社団たる医療法人の社員が,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律37条2項を類推適用して,裁判所の許可を得て社員総会を招集することはできない,と判示した。
医療法は,理事長が一定割合以上の社員から臨時社員総会の招集を請求された場合について定めを置きつつ,理事長がこれに応じない場合について一般社団法人及び一般財団法人に関する法律37条2項を準用しておらず,他方で都道府県知事による監督など同法にない規律を設けている。
こうした立法の状況から,類推適用は相当でないと判断されたものである。
第5 弁護士が抗告許可の申立てを行う際の実務的視点
1 「重要な法令解釈事項」を正面に立てる
ここまでの分析から導かれる最も基本的な視点は,抗告許可の申立てにおいては,法令解釈に関する重要な事項を正面から立てる必要がある,ということである。
自らの主張が,明確な法令解釈への単純な当てはめの争いや,事実審の裁量判断への不服にとどまっていないかを,申立ての前に確かめることが有益である。
もしそのように見えるのであれば,どの法令のどの条文の解釈が,個別事件を超えてなぜ重要なのかを,理由書の中で明確に示すよう組み立て直すべきである。
2 附随的決定における留意
移送や文書提出命令などの附随的決定について抗告許可を求める場合には,本案の手続との関係に留意する必要がある。
抗告により本案の審理が事実上止まることの当否も含めて,その争点を今この段階で最高裁判所に付すことが相当かを検討することが望ましい。
3 引用判例の射程管理
本記事で紹介した各決定を書面で引用する際には,その射程を正確に把握することが重要である。
「所論の点に関する原審の判断は正当として是認することができる」という型の棄却決定は,事案限りの判断であることが多く,一般命題として援用すると射程を誤るおそれがある。
各決定を引用する前に,裁判所ウェブサイトの裁判例情報で事件番号・裁判年月日・裁判要旨を確認し,当該決定が示した命題の範囲を見極めることを勧めたい。
第6 むすび
平成21年度から令和6年度までの許可抗告事件の実情を概観すると,件数は減少傾向にある一方で,一件ごとの法的な重みは増しているという姿が浮かび上がる。
この制度の要諦は,個別事案の不服と法令解釈上の重要問題とを峻別することに尽きる。
抗告許可を申し立てる場面でも,相手方の申立てを評価する場面でも,本記事で整理した許可の相当性の基準と分野別の到達点が,一つの見取り図として役立つことを期待している。
もっとも,個別の決定を実際に援用する際には,必ず原典に当たり,その射程を確かめることが不可欠である。
第7 本記事で新たに調査・付加した事項及びその出典
本記事では,基礎とした資料の内容に加えて,以下の事項を新たに調査して付加した。
1 制度の沿革に関する記述
許可抗告が平成8年制定の現行民事訴訟法により新設され平成10年1月1日に施行されたこと,及びそれ以前は最高裁判所への抗告が特別抗告に限られていたことは,一般に公表されている解説(Wikibooks「民事訴訟法/不服申立て」,関西大学・栗田隆「民事訴訟法/上訴」の各解説等)を参照して付加した。
2 制度の合憲性に関する判例
民事訴訟法337条の合憲性を認めた最高裁判所平成10年7月13日第三小法廷決定(集民189号111頁)は,裁判所ウェブサイトの裁判例情報(https://www.courts.go.jp/hanrei/63008/detail2/index.html)で内容を確認して付加した。
3 言及した各最高裁判所決定の事件番号・裁判年月日・判例集・裁判要旨及びリンク
本記事が言及した各最高裁判所決定については,いずれも裁判所ウェブサイトの裁判例情報で事件番号・裁判年月日・判例集の巻号頁・裁判要旨を確認した上で,本文中に同ウェブサイトの詳細ページへのリンクを設定した。
この確認の過程で,一部の決定について,基礎資料における引用が実際の裁判要旨と対応していない可能性が判明したため,本記事では裁判所ウェブサイトに掲載された裁判要旨に即して各決定の内容を記載している。
出典(裁判所ウェブサイト 裁判例情報)
- 最高裁判所平成10年7月13日第三小法廷決定(集民189号111頁)
- 最高裁判所平成16年10月29日第二小法廷決定(民集58巻7号1979頁)
- 最高裁判所平成16年11月26日第二小法廷決定(民集58巻8号2393頁)
- 最高裁判所平成17年10月14日第三小法廷決定(民集59巻8号2265頁)
- 最高裁判所平成27年3月26日第一小法廷決定(民集69巻2号365頁)
- 最高裁判所平成28年7月1日第一小法廷決定(民集70巻6号1445頁)
- 最高裁判所令和5年5月24日第三小法廷決定(集民270号113頁)
- 最高裁判所令和6年3月27日第三小法廷決定(民集78巻1号252頁)
- 最高裁判所令和6年10月16日第二小法廷決定(集民271号147頁)
- 最高裁判所令和6年10月23日第三小法廷決定(民集78巻5号1353頁)