◯本記事は,人工知能(AI)が公開資料及び裁判官名簿データに基づいて作成したキャリア分析である。職歴は名簿データから復元したものであり,級組の定義その他に推測を含む部分には,その旨を明記している。
目次
第1 本記事の目的と分析の枠組み
1 本記事の目的
本記事は,現職の裁判官のうち,司法修習51期以下であり,かつ報酬上の級組が最上位グループ(本記事にいう「S1」)に位置する12人を取り上げ,その職歴を分析するものである。
ここでいう12人は,任官後おおむね25年前後で報酬の最上位段階に到達している点で,同世代の中でも昇進が際立って早い裁判官である。
本記事は,これらの裁判官がいかなる職歴を経てその地位に至ったのかを,公開資料及び裁判官名簿データから跡づけ,そこに見られる人事の型を整理することを目的とする。
2 分析対象の画定
(1) 「51期以下」の意味
本記事にいう「51期以下」とは,司法修習の期の数字が51以上である者,すなわち51期,53期,55期,57期,58期及び60期を指す。
法曹界においては,期の数字が大きいほど後輩であり,「以下」とは後輩側を意味するのが通例だからである。
したがって本記事は,51期から60期までの,比較的若い現職裁判官を対象とする。
(2) 「級組S1」の意味
「級組」とは,裁判官の報酬の号別区分を整理した分類である。
本記事の基礎とした名簿データでは,これをA1,S1,S2,S3等の符号で区分しており,S1はそのうち判事の報酬として最上位グループに対応すると解される。
もっとも,この符号と報酬の号との正確な対応関係はデータ作成元の定義によるため,本記事ではS1を「判事の報酬として到達し得る最上位段階」と推測的に位置づけたうえで論ずる(推測を含む。詳細は後記第1の3(1))。
(3) 対象12人の一覧
本記事が分析の対象とする12人は,次のとおりである(期の若い順。生年月日及び出身大学を併記する。出身大学が公開資料から確認できないものは「未確認」とした。)。
- 福島直之裁判官(51期,昭和50年1月16日生,東京大学)
- 清藤健一裁判官(51期,昭和46年5月1日生,東京大学)
- 一場康宏裁判官(51期,昭和48年1月20日生,出身大学未確認)
- 馬場俊宏裁判官(53期,昭和51年1月7日生,出身大学未確認)
- 石井芳明裁判官(53期,昭和50年9月30日生,出身大学未確認)
- 横山浩典裁判官(55期,昭和54年1月27日生,出身大学未確認)
- 長田雅之裁判官(55期,昭和52年4月26日生,京都大学)
- 吉岡大地裁判官(55期,昭和51年12月7日生,出身大学未確認)
- 真鍋浩之裁判官(57期,昭和54年6月3日生,出身大学未確認)
- 川瀬孝史裁判官(58期,昭和55年10月19日生,早稲田大学)
- 中村修輔裁判官(58期,昭和53年7月17日生,出身大学未確認)
- 遠藤謙太郎裁判官(60期,昭和56年12月2日生,京都大学)
3 法的枠組み
(1) 裁判官の報酬等に関する法律と級組
裁判官の報酬は,裁判官の報酬等に関する法律(昭和23年法律第75号)第1条により,別表に定める額が支給される。
同法の別表は,最高裁判所長官,最高裁判所判事,高等裁判所長官,判事1号から8号まで,判事補1号から12号まで,及び簡易裁判所判事の各区分について,報酬月額を定めている。
このうち判事の区分では1号が最上位である。
以上を前提とすると,本記事にいう級組S1は,論理的には次のように位置づけられる。すなわち,
ア 裁判官の報酬は同法別表により号別に定まる(大前提)。
イ 判事の号は1号が最上位である(小前提)。
ウ 名簿データの級組S1は判事の報酬区分の最上位グループに対応すると解される(推測・要確認)。
エ したがって,級組S1は判事として到達し得る最上位の報酬段階を意味する。
このうちウは推測であり,符号の正確な定義はデータ作成元の定義によることに留意を要する。
(2) 裁判所法上の任命と身分保障
下級裁判所の裁判官は,裁判所法(昭和22年法律第59号)第40条第1項により,最高裁判所の指名した者の名簿によって,内閣が任命する。
また裁判官は,同法第48条により,公の弾劾,国民の審査,及び心身の故障による職務不能の裁判による場合を除き,その意思に反して免官,転官,転所,職務の停止又は報酬の減額をされることはない。
報酬の減額が禁止される結果,級組という報酬上の段階は,いったん到達すれば原則として下がらない。
それゆえ,若くして級組S1に到達したという事実は,その裁判官の経歴上の到達点を端的に示す指標となる。
(3) 最高裁判所事務総局の人事ルート
最高裁判所は,裁判所法第80条に基づき,司法行政事務を行う。
その実務を担うのが最高裁判所事務総局であり,総務局,人事局,経理局,民事局,刑事局,家庭局等の各局が置かれている。
本記事の12人に共通するのは,任官後早い段階で事務総局の「局付」に配置され,その後,各局の課長,参事官,さらには局長等の中枢ポストを歴任している点である。
以下では,この点を意識しながら,各裁判官の職歴を順に検討する。
第2 12人のキャリア分析
1 福島直之裁判官(51期)
(1) 選定理由
福島裁判官は,昭和50年1月16日生まれであり,本記事執筆時点で満51歳である。
平成11年に51期として任官し,任官から約27年で級組S1に到達している。
出身大学は東京大学である。
50代前半で報酬の最上位段階に到達している点で同期の中でも昇進が早く,かつ刑事局の課長を続けて務めた刑事系の中核であることから,本記事の対象として選定した。
(2) 職歴の概要
- H11.4.11~H15.1.31 東京地裁判事補
- H15.2.1~H15.3.31 最高裁人事局付
- H15.4.1~H17.3.31 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課(企画係長・課長補佐)
- H17.4.1~H20.3.31 那覇地家裁判事補
- H20.4.1~H22.3.31 最高裁総務局付
- H22.4.1~H23.3.31 東京高裁第6刑事部判事
- H23.4.1~H26.3.31 大阪地裁第6刑事部判事
- H26.4.1~H28.3.31 最高裁刑事局第二課長
- H28.4.1~H30.12.24 最高裁刑事局第一課長
- H30.12.25~R1.8.1 東京高裁第4刑事部判事
- R1.8.2~R4.8.1 最高裁人事局総務課長
- R4.8.2~R4.10.13 東京高裁判事
- R4.10.14~R6.3.25 千葉地裁第2刑事部判事
- R6.3.25~R8.3.31 最高裁秘書課長
- R8.4.1~ 東京地裁刑事第17部部総括(現職・最新発令)
(3) キャリアの特徴
福島裁判官は,刑事局第二課長から第一課長へと連続して就任し,刑事局の中枢を担った後,人事局総務課長及び秘書課長という官房系の要職を経ている。
刑事実務と司法行政の双方に通じた経歴であり,地裁刑事部の部総括として現場に戻った点も,将来の幹部裁判官としての布石と読める。
2 清藤健一裁判官(51期)
(1) 選定理由
清藤裁判官は,昭和46年5月1日生まれであり,本記事執筆時点で満55歳である。
平成11年に51期として任官し,出身大学は東京大学である。
総務局の課長から参事官,審議官を経て,現に最高裁判所総務局長という事務総局の筆頭局の長に就いている。
12人の中でも到達点が最も高い1人であり,かつ司法のデジタル化を担当した点に特色があることから選定した。
(2) 職歴の概要
- H11.4.11~H13.3.31 東京地裁判事補
- H13.4.1~H16.3.31 札幌地家裁判事補
- H16.4.1~H19.9.30 最高裁人事局付
- H19.10.1~H21.4.10 東京地裁・名古屋地裁判事補
- H21.4.11~H23.3.31 名古屋地裁判事
- H23.4.1~H25.7.16 東京高裁民事第16部判事
- H25.7.17~H29.8.19 最高裁総務局第二課長・第一課長
- H29.8.20~H30.9.30 東京高裁第24民事部判事
- H30.10.1~R2.3.31 東京地裁第36民事部判事(労働部)
- R2.4.1~R6.3.31 最高裁総務局参事官・審議官兼情報政策課長
- R6.4.1~R7.1.14 最高裁デジタル審議官
- R7.1.15~R7.7.14 東京地裁民事第36部部総括
- R7.7.15~ 最高裁総務局長(現職)
(3) キャリアの特徴
清藤裁判官は,総務局の第二課長・第一課長を経て,参事官,情報政策課長,デジタル審議官と,司法行政の情報化・デジタル化の中心を歩んでいる。
民事訴訟手続のIT化が進む時期に総務局長へ就任しており,制度設計の中核を担う立場にあるといえる。
3 一場康宏裁判官(51期)
(1) 選定理由
一場裁判官は,昭和48年1月20日生まれであり,本記事執筆時点で満53歳である。
平成11年に51期として任官した。出身大学は公開資料から確認できなかった。
経理局の主計課長及び総務課長という財務系の要職と,司法研修所の民事裁判教官・事務局長を歴任しており,行政と教育の双方を経た点で特色があることから選定した。
(2) 職歴の概要
- H11.4.11~H13.3.31 東京地裁判事補
- H13.4.1~H16.6.30 法務省民事局付
- H16.7.1~H17.3.31 東京地裁判事補
- H17.4.1~H20.7.15 熊本地家裁判事補
- H20.7.16~H22.6.30 最高裁総務局付
- H22.7.1~H25.3.31 東京高裁第20民事部判事
- H25.4.1~H26.3.31 千葉家地裁松戸支部判事
- H26.4.1~H31.3.31 最高裁経理局主計課長・総務課長
- H31.4.1~R2.3.31 東京高裁第21民事部判事
- R2.4.1~R2.9.30 司法研修所民事裁判教官
- R2.10.1~R5.9.26 司法研修所事務局長
- R5.9.27~R6.3.31 東京高裁判事
- R6.4.1~ 東京地裁民事第34部部総括(現職)
(3) キャリアの特徴
一場裁判官は,経理局で予算実務の中枢を担った後,司法研修所で次世代の裁判官の育成に当たっている。
財務,教育及び民事裁判の現場を横断する経歴であり,組織運営の幅広い経験を備えた裁判官である。
4 馬場俊宏裁判官(53期)
(1) 選定理由
馬場裁判官は,昭和51年1月7日生まれであり,本記事執筆時点で満50歳である。
平成12年に53期として任官した。出身大学は公開資料から確認できなかった。
50歳という若さで級組S1に到達しており,人事局の参事官から任用課長という裁判官人事の中枢を長く担った点から選定した。
(2) 職歴の概要
- H12.10.18~H17.3.31 東京地裁判事補
- H17.4.1~H17.6.30 最高裁総務局付
- H17.7.1~H19.6.30 外務省総合外交政策局国連政策課(国際平和協力室事務官)
- H19.7.1~H22.3.31 広島地家裁判事補
- H22.4.1~H24.3.31 最高裁総務局付
- H24.4.1~H25.3.31 東京地裁判事
- H25.4.1~H27.3.31 大阪地裁第5民事部判事
- H27.4.1~R3.8.1 最高裁人事局参事官・任用課長
- R3.8.2~R6.5.6 大阪高裁第13民事部判事
- R6.5.7~ 最高裁参事官(現職)
(3) キャリアの特徴
馬場裁判官は,外務省への出向で国際的な業務を経験した後,人事局参事官から任用課長へと進み,裁判官の任用実務の中心を担った。
50歳で級組S1に到達した点は,12人の中でも特に早く,今後の動向が注目される裁判官である。
5 石井芳明裁判官(53期)
(1) 選定理由
石井裁判官は,昭和50年9月30日生まれであり,本記事執筆時点で満50歳である。
平成12年に53期として任官した。出身大学は公開資料から確認できなかった。
家庭局及び総務局の課長を経て,現に司法研修所事務局長に就いており,50歳で級組S1に到達している点から選定した。
(2) 職歴の概要
- H12.10.18~H18.2.28 横浜地裁・青森地家裁判事補
- H18.3.1~H18.3.31 最高裁総務局付
- H18.4.1~H20.6.30 総務省総合通信基盤局(消費者行政課課長補佐)
- H20.7.1~H22.3.31 東京地裁判事補
- H22.4.1~H24.3.31 最高裁民事局付
- H24.4.1~H27.3.31 盛岡地家裁判事
- H27.4.1~H30.3.31 最高裁家庭局第二課長
- H30.4.1~H30.12.24 東京高裁第16民事部判事
- H30.12.25~R4.8.7 最高裁総務局参事官・第一課長
- R4.8.8~R5.8.1 東京高裁第10民事部判事
- R5.8.2~R5.9.26 司法研修所民事裁判教官
- R5.9.27~ 司法研修所事務局長(現職)
(3) キャリアの特徴
石井裁判官は,家庭局,民事局,総務局と複数の局を横断し,総務省への出向も経験している。
現職の司法研修所事務局長は,前記一場裁判官と同様,裁判官養成の中核を担う役職である。
6 横山浩典裁判官(55期)
(1) 選定理由
横山裁判官は,昭和54年1月27日生まれであり,本記事執筆時点で満47歳である。
平成14年に55期として任官した。出身大学は公開資料から確認できなかった。
40代で級組S1に到達しており,刑事局第一課長から高裁・地裁の刑事部を経て,現に高松高裁事務局長に就いている刑事系の中核であることから選定した。
(2) 職歴の概要
- H14.10.16~H19.3.31 東京地裁判事補
- H19.4.1~H21.6.30 最高裁総務局付,外務省(国際平和協力室事務官)
- H21.7.1~H24.3.31 東京地裁・盛岡地家裁判事補
- H24.4.1~H27.3.31 最高裁広報課付,東京地裁判事
- H27.4.1~H30.3.31 高松地家裁判事
- H30.4.1~H30.6.30 東京地裁刑事第6部判事
- H30.7.1~R3.3.31 最高裁総務局第二課長
- R3.4.1~R3.12.9 東京地裁刑事第4部判事
- R3.12.10~R6.12.22 最高裁刑事局第一課長
- R6.12.23~R7.3.31 高松高裁第1部判事(刑事)
- R7.4.1~R7.9.18 高松地裁刑事部総括
- R7.9.19~ 高松高裁事務局長(現職)
(3) キャリアの特徴
横山裁判官は,総務局及び刑事局の課長を歴任した後,高裁判事,地裁刑事部総括を経て,高裁の事務局長に就いている。
40代での級組S1到達は12人の中でも早い部類であり,刑事系の幹部候補として歩を進めている。
7 長田雅之裁判官(55期)
(1) 選定理由
長田裁判官は,昭和52年4月26日生まれであり,本記事執筆時点で満49歳である。
平成14年に55期として任官し,出身大学は京都大学である。
在中国大使館での勤務を経た国際派であり,人事局参事官,総務局第一課長を経て,現にデジタル分野の参事官に就いている点から選定した。
(2) 職歴の概要
- H14.10.16~H19.12.12 大阪地裁・東京地裁判事補
- H19.12.13~H20.3.31 最高裁家庭局付
- H20.4.1~H22.5.15 在中華人民共和国日本国大使館二等書記官
- H22.5.16~H26.2.28 札幌地家裁・東京地裁判事補
- H26.3.1~H29.1.29 最高裁人事局付
- H29.1.30~H29.7.27 東京高裁第11民事部判事
- H29.7.28~R2.3.31 最高裁人事局参事官
- R2.4.1~R4.8.7 大阪高裁第4民事部・大阪地裁第13民事部判事
- R4.8.8~R6.8.4 最高裁総務局第一課長
- R6.8.5~R7.1.14 東京高裁第1民事部判事
- R7.1.15~ 最高裁デジタル審議官付参事官兼総務局参事官(現職)
(3) キャリアの特徴
長田裁判官は,在外公館での勤務という国際的な経験を持ち,人事局及び総務局の中枢を歩んでいる。
現職はデジタル分野の参事官であり,前記清藤裁判官と同じく司法のデジタル化の実務に関わる立場にある。
8 吉岡大地裁判官(55期)
(1) 選定理由
吉岡裁判官は,昭和51年12月7日生まれであり,本記事執筆時点で満49歳である。
平成14年に55期として任官した。出身大学は公開資料から確認できなかった。
労働部での勤務経験を持ち,総務局参事官から第一課長へ進んでいる民事系の中核であることから選定した。
(2) 職歴の概要
- H14.10.16~H19.7.9 東京地裁判事補
- H19.7.10~H22.3.31 福井地家裁判事補
- H22.4.1~H26.3.31 最高裁人事局付
- H26.4.1~H29.3.31 名古屋地裁第1民事部判事(労働部)
- H29.4.1~H29.12.19 東京高裁第12民事部判事
- H29.12.20~R3.3.31 最高裁総務局参事官
- R3.4.1~R5.3.31 東京高裁第19民事部判事
- R5.4.1~R6.8.4 東京地裁民事第12部判事
- R6.8.5~ 最高裁総務局第一課長(現職)
(3) キャリアの特徴
吉岡裁判官は,人事局付,総務局参事官を経て,総務局第一課長に就いている。
労働事件を扱う部での経験を持つ民事系の裁判官であり,事務総局の中枢で実務を担っている。
9 真鍋浩之裁判官(57期)
(1) 選定理由
真鍋裁判官は,昭和54年6月3日生まれであり,本記事執筆時点で満47歳である。
平成16年に57期として任官した。出身大学は公開資料から確認できなかった。
財務省及び法務省への出向を経験し,経理局の主計課長から総務課長へと進んでいる点から選定した。
(2) 職歴の概要
- H16.10.16~H22.3.31 東京地裁判事補
- H22.4.1~H22.6.30 最高裁家庭局付
- H22.7.1~H24.6.30 財務省国際局開発政策課課長補佐
- H24.7.1~H27.3.31 東京地裁・旭川地家裁判事補・判事
- H27.4.1~H29.3.31 最高裁人事局付
- H29.4.1~H30.3.23 東京地裁民事第39部判事
- H30.3.24~R2.3.31 法務省大臣官房(国際課付)
- R2.4.1~R3.1.20 東京高裁第23民事部判事
- R3.1.21~R6.1.21 最高裁経理局主計課長
- R6.1.22~R7.1.15 東京高裁第20民事部判事
- R7.1.16~ 最高裁経理局総務課長(現職)
(3) キャリアの特徴
真鍋裁判官は,財務省及び法務省への出向で行政実務を経験した後,経理局で予算と組織運営の中枢を担っている。
40代後半で級組S1に到達しており,財務系の幹部候補として歩を進めている。
10 川瀬孝史裁判官(58期)
(1) 選定理由
川瀬裁判官は,昭和55年10月19日生まれであり,本記事執筆時点で満45歳である。
平成17年に58期として任官し,出身大学は早稲田大学である。
12人の中でも特に若く,総務局第二課長を経て,現に刑事局第一課長に就いている刑事系の中核であることから選定した。
(2) 職歴の概要
- H17.10.16~H23.3.31 東京地裁判事補
- H23.4.1~H26.3.31 宮崎家地裁延岡支部判事補
- H26.4.1~H28.7.31 最高裁総務局付
- H28.8.1~H29.3.31 東京高裁第3刑事部・第2刑事部判事
- H29.4.1~R2.3.31 福岡地裁第4刑事部判事
- R2.4.1~R3.3.31 東京高裁第4刑事部判事
- R3.4.1~R5.7.23 最高裁総務局第二課長
- R5.7.24~R6.12.22 東京地裁刑事第13部判事
- R6.12.23~ 最高裁刑事局第一課長(現職)
(3) キャリアの特徴
川瀬裁判官は,総務局第二課長を経て刑事局第一課長に就いており,刑事系の中枢を担っている。
45歳での級組S1到達は12人の中で最も若い部類に属し,今後のキャリアが特に注目される裁判官である。
11 中村修輔裁判官(58期)
(1) 選定理由
中村裁判官は,昭和53年7月17日生まれであり,本記事執筆時点で満47歳である。
平成17年に58期として任官した。出身大学は公開資料から確認できなかった。
人事局参事官から任用課長へと進み,裁判官の任用実務の要を担っている点から選定した。
(2) 職歴の概要
- H17.10.16~H22.3.31 大阪地裁判事補
- H22.4.1~H24.3.31 横浜地家裁横須賀支部判事補
- H24.4.1~H26.3.31 最高裁総務局付
- H26.4.1~H27.3.31 東京地裁判事補
- H27.4.1~H27.10.15 福井地家裁判事補
- H27.10.16~H30.3.31 福井地家裁判事
- H30.4.1~R4.3.31 京都地裁第7民事部判事
- R4.4.1~R4.8.1 東京地裁民事第21部判事(執行部)
- R4.8.2~R6.8.8 最高裁人事局参事官
- R6.8.9~ 最高裁人事局任用課長(現職)
(3) キャリアの特徴
中村裁判官は,総務局付を経た後,人事局参事官から任用課長へと進んでいる。
民事執行を扱う部での経験を持ち,現に裁判官人事の任用実務の中心を担う立場にある。
12 遠藤謙太郎裁判官(60期)
(1) 選定理由
遠藤裁判官は,昭和56年12月2日生まれであり,本記事執筆時点で満44歳である。
平成20年に60期として任官し,出身大学は京都大学である。
12人の中で最も若い期であり,かつ44歳という若さで級組S1に到達している点で際立っていることから選定した。
(2) 職歴の概要
- H20.1.16~H22.3.31 京都地裁判事補
- H22.4.1~H25.3.31 京都地家裁判事補
- H25.4.1~H28.3.31 山口家地裁周南支部判事補
- H28.4.1~H30.3.31 最高裁総務局付
- H30.4.1~R4.4.4 大阪地裁第8民事部判事
- R4.4.5~R5.7.23 司法研修所民事裁判教官
- R5.7.24~ 最高裁総務局第二課長(現職)
(3) キャリアの特徴
遠藤裁判官は,総務局付,司法研修所民事裁判教官を経て,総務局第二課長に就いている。
12人の中で最も若い期かつ最年少でありながら級組S1に到達しており,将来の司法行政を担う有力な人材の1人といえる。
第3 12人に共通するキャリアパターンの分析
1 最高裁判所事務総局中枢への集中
12人に共通する最も顕著な特徴は,任官後の早い段階で最高裁判所事務総局の「局付」に配置され,その後,各局の課長,参事官,さらには局長等の中枢ポストを歴任している点である。
総務局,人事局,経理局,刑事局,家庭局のいずれかの中枢を経験しており,地方の裁判所での勤務と事務総局での勤務を交互に繰り返す型が共通して見られる。
これは,裁判の実務能力と司法行政の能力の双方を備えた人材を計画的に育成する人事の現れと読むことができる。
2 民事系と刑事系の分化
12人は,担当する分野によって民事系と刑事系に大きく分かれる。
清藤,一場,馬場,石井,長田,吉岡,中村及び遠藤の各裁判官は,総務局,人事局,経理局又は民事系の課を中心に歩んでいる。
これに対し,福島,横山及び川瀬の各裁判官は,刑事局の課長を務めるなど刑事系の中枢を歩んでいる。
いずれの系統でも,事務総局の課長級を経験することが幹部候補としての重要な節目となっている。
3 他省庁出向及び在外勤務の意義
12人のうち複数が,法務省,外務省,厚生労働省,財務省,総務省への出向,又は在外公館での勤務を経験している。
福島裁判官の厚生労働省,馬場裁判官及び横山裁判官の外務省,真鍋裁判官の財務省,石井裁判官の総務省,長田裁判官の在中国大使館での勤務が,その例である。
こうした経験は,裁判所内部にとどまらない広い視野を養うものであり,幹部裁判官に求められる素養の一部となっていると考えられる。
4 級組S1到達が意味するもの
(1) 報酬上の位置づけ
前記第1の3(1)のとおり,級組S1は判事の報酬として最上位グループに対応すると解される(推測を含む。)。
裁判官の報酬は裁判官の報酬等に関する法律第1条及び別表により定まり,裁判所法第48条により減額が禁止される。
したがって,51期以下という比較的若い段階でS1に到達したという事実は,報酬上の到達点に早期に達したことを客観的に示す指標となる。
(2) 将来の昇進可能性
本記事の12人は,いずれも事務総局の中枢を歩む現職裁判官であり,将来の高等裁判所長官や所長等の幹部ポストを担う有力な候補と位置づけられる。
もっとも,本記事は職歴という客観的な事実の分析にとどまるものであり,個々の裁判官の能力や具体的な将来の人事を予断するものではない。
今後の人事の推移は,公表される裁判官名簿等によって確認されることになる。
第4 結語
本記事は,現職の裁判官のうち51期以下であって級組S1に位置する12人を取り上げ,その職歴を分析した。
12人に共通するのは,最高裁判所事務総局の中枢を計画的に歩み,民事系又は刑事系の課長級を経験している点である。
これらの裁判官の動向は,今後の日本の司法行政の方向を考えるうえで参考になるものといえる。
なお,本記事の職歴は裁判官名簿データから復元したものであり,級組の定義その他に推測を含む部分があることを,あらためて付言する。