外国人技能実習生と司法修習生との比較


目次
1 外国人技能実習生の場合
2 司法修習生の場合
3 外国人技能実習生は労働者として雇用保険被保険者となること
4 アジア諸国の外国人労働者受入れ制度の概要
5 関連記事その他

1 外国人技能実習生の場合
(1) 外国人技能実習生は,入国直後の原則2か月間の講習期間が過ぎると,雇用関係の下,労働関係法令等が適用されます(外国人技能実習機構HPの「技能実習制度の仕組み(新制度の内容を含む。)参照)から,賃金があります。
(2) 男女雇用機会均等法の適用もありますから,妊娠した場合でも解雇されることはありません。
(3) 公益財団法人国際研修協力機構(略称は「JITCO」です。)HPの「研修生・技能実習生の講習手当・研修手当・賃金情報について」によれば,平成21年度の調査では,技能実習生の全業種平均給与額は14.3万円でした。

2 司法修習生の場合
(1)   司法修習生は,1年の修習期間中,労働者ではない点で労働関係法令等が適用されませんから,賃金はありません。
(2)   妊娠した場合,導入修習,集合修習といったそれぞれの修習単位について半分までの欠席しか認められていません(民間労働者の場合,産後6週間の女性の就業が禁止されていることにつき労働基準法65条2項ただし書参照)。
    そのため,いったん罷免された上で,次年度の司法修習生として再採用される必要があります。
(3) 65期ないし70期の司法修習生は無給ですし,71期以降の司法修習生の修習給付金は13万5000円です。
(4) 平成29年11月1日施行の改正裁判所法68条1項は,最高裁判所は,司法修習生に成績不良,心身の故障その他のその修習を継続することが困難である事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは,最高裁判所の定めるところにより,その司法修習生を罷免できることが明記しました。
    また,同法68条2項は,司法修習生に品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由として最高裁判所の定める事由があるときは,最高裁判所の定めるところにより,その司法修習生を罷免し,その修習の停止を命じ,又は戒告できることを明記しました。

3 外国人技能実習生は労働者として雇用保険被保険者となること
・ 雇用保険に関する業務取扱要領20352(2)「労働者の特性・状況を考慮して判断する場合」には「 外国人技能実習生」として以下の記載があります(リンク先の25頁)。
    諸外国の青壮年労働者が、我が国の産業職業上の技術・技能・知識を習得し、母国の経済発展と産業育成の担い手となるよう、日本の民間企業等に技能実習生(在留資格「技能実習 1 号イ」、「技能実習 1 号ロ」、「技能実習 2 号イ」及び「技能実習 2 号ロ」の活動に従事する者)として受け入れられ、技能等の修得をする活動を行う場合には、受入先の事業主と雇用関係にあるので、被保険者となる。
    ただし、入国当初に雇用契約に基づかない講習(座学(見学を含む)により実施され、実習実施期間の工場の生産ライン等商品を生産するための施設における機械操作教育や安全衛生教育は含まれない。)が行われる場合には、当該講習期間中は受入先の事業主と雇用関係にないので、被保険者とならない。

4 アジア諸国の外国人労働者受入れ制度の概要

(1) 首相官邸HPの「アジア諸国の外国人労働者受入れ制度の概要」にあるとおりです。
(2) リンク先3頁には以下の記載がありますから,シンガポールの外国人家事労働者は,平成29年司法試験論文式試験(公法系)第1問で出てきた「特定労務外国人」に近いです。
   シンガポールでは、外国人の家事労働者や介護労働者等に対する人権侵害や暴力などが深刻な社会問題となっており、外国人家事労働者の自殺者も多いと言われている。また、妊娠検査を義務づけ、妊娠した労働者の強制退去、シンガポール人との結婚を認めないなど、制度自体も人権上問題が多いとの批判が強い。


5 関連記事その他
(1) 技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議は,令和5年11月30日,法務大臣に対し,最終報告書概要)を提出しました。
(2)ア 厚生労働省HPの「外国人技能実習制度について」「外国人技能実習制度について」(技能実習法・主務省令等の周知資料)が載っています。
イ 技能実習生が技能実習1号から技能実習2号,技能実習2号から技能実習3号に移行するためには,技能検定に合格する必要があります(厚生労働省HPの「技能実習生等向け技能検定の概要」参照)。
ウ 技能実習3号は,平成29年11月1日施行の技能実習法に基づいて創設された制度です。
(3)ア 公益財団法人国際研修協力機構(略称は「JITCO」です。)HP「外国人技能実習制度とは」には以下の記載があります。
    外国人技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転することによって、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として1993年に創設された制度です。
    2017年11月、「外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行され、新たな技能実習制度がスタートしました。
(中略)
    受け入れる方式には、企業単独型と団体監理型の2つのタイプがあります。
    2021年末では企業単独型の受入れが1.4%、団体監理型の受入れが98.6%(技能実習での在留者数ベース)となっています。
イ JITCO HPに「送出し国・送出機関とは」が載っています。
(4)ア 認可法人としての外国人技能実習機構(略称は「OTIT」です。)は平成29年1月25日に設立登記され,同年3月1日,東京都港区に事務所を開設しましたところ,PR TIMESの「【技能実習生 受入企業様向け】「監査事前チェックシート」 Excelデータを無料配信」には以下の記載があります。
    技能実習生を受け入れている企業様では、2~3年の間に漏れなく外国人技能実習機構の監査が行われます。
    監査は、技能実習機構の職員による「予告なしの受入れ事業所訪問」にはじまり、「技能実習計画に沿って正しく実習が行われているか」「労働基準法に則って運用されているか」など細かくチェックされます。
イ 厚生労働省HPに「監理団体による監査のためのチェックリスト」が載っています。
(5) 厚生労働省HPの「外国人技能実習制度における養成講習について」には以下の記載があります。
    技能実習制度においては、監理団体において監理事業を行う事業所ごとに選任することとされている監理責任者、監理団体が監理事業を適切に運営するために設置することとされている指定外部役員又は外部監査人、実習実施者において技能実習を行わせる事業所ごとに選任することとされている技能実習責任者については、いずれも3年ごとに、主務大臣が適当と認めて告示した機関(養成講習機関)によって実施される講習(養成講習)を受講していただく必要があります。
(6)ア 21世紀マンパワー事業協同組合HPに「外国人技能実習生受け入れの流れ」が載っています。
イ 協同組合ビジネスナビHPの「外国人技能実習制度について」には,技能実習生を受け入れるための要件が書いてあります。
(7)ア 監理団体は,団体監理型実習実施者等から受領する監理費を除いて,いかなる名義でも手数料又は報酬を受けてはならないことになりません(技能実習法28条)から,例えば,外国の送出機関からキックバックなどの利益を得ることはできません。
    また,監理団体と取次送出機関との間で,技能実習生が失踪した場合等技能実習に係る契約の不履行について,違約金を定める契約を結ぶことも認められません(技能実習法施行規則52条5号)。
イ デイリー新潮HPに「「拡大する仲介産業」「高額手数料」の背景に潜むベトナム「実習生ビジネス」」が載っています。
ウ 最高裁令和6年4月16日判決は, 外国人の技能実習に係る監理団体の指導員が事業場外で従事した業務につき、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例です。
(8) JITCO HPの「在留資格「特定技能」とは」には以下の記載があります。
    特定技能制度は、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。2018年に可決・成立した改正出入国管理法により在留資格「特定技能」が創設され、2019年4月から受入れが可能となりました。
(9) 二弁フロンティア2022年12月号「入管法改正問題の現在地」が載っています。
(10) 以下の記事も参照して下さい。
・ 業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較
・ 民間労働者と司法修習生との比較


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