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(AI作成)令和6年改正・裁判所の特別保存制度の全体像|4つの基準と選定委員会・第三者委員会

◯本ブログ記事は,特別保存ガイドブック(令和6年1月10日付で最高裁判所事務総局総務局及び家庭局が作成した文書)の解説記事であり,専らAIで作成したものです。
◯令和7年11月より,オンラインで特別保存の要望及び保存期間延長の要望ができるようになりました(裁判所HPの「オンラインによる特別保存の要望について」及び「オンラインによる保存期間延長の要望について」参照)。

最高裁判所事務総局の総務局・家庭局が令和6年1月10日付けで作成した「特別保存ガイドブック(第1版)」を、情報公開請求により入手した。
これは、裁判所が保管する事件記録のうち「歴史的・社会的意義を有する記録」を廃棄せずに残す“特別保存”という制度について、その実務を全国の裁判所職員向けに解説した内部文書である。
本記事では、市民や弁護士が実際に使える「要望」の手続を中心に、この文書の内容を整理して紹介する。

第1 特別保存制度と本ガイドブックの位置づけ

裁判所の事件記録には保存期間が定められており、期間が満了すれば原則として廃棄される。
その例外として、歴史的・社会的に重要な記録を恒久的に残すのが「特別保存」の仕組みである。

1 「規則」「本通達」「ガイドブック」の三層構造

本ガイドブックは、それ単独で制度を定めているものではなく、上位の「規則」と「通達」を現場向けに補完する三層構造の一番下に位置する。

同ガイドブック1頁によれば、まず「事件記録等の特別保存に関する規則」(以下「規則」)が、記録を保存する意義を組織的に共有するための基本理念と、常設の第三者委員会の設置を定め、国民共有の財産である「歴史的・社会的意義を有する記録」を適切に特別保存に付す基本的な仕組みを構築したとされている。
その運用通達である令和6年1月10日付け事務総長通達「事件記録等の特別保存に関する規則の運用について」(以下「本通達」)が、特別保存に付する認定を行う事件の各基準や認定プロセスといった具体的な運用の細目を定めている。
そして本ガイドブック自体は、事務を担当する職員向けに本通達の解釈を示し補完するために作成された、と説明されている。

同ガイドブック1頁によれば、この本通達の発出により、これまで各庁がそれぞれ定めていた運用要領は廃止となる。

名称役割
規則事件記録等の特別保存に関する規則基本理念と常設の第三者委員会の設置を定め、「歴史的・社会的意義を有する記録」を特別保存に付す基本的な仕組みを構築する。
通達令和6年1月10日付け事務総長通達(本通達)規則の運用通達。特別保存に付する認定を行う事件の各基準や認定プロセスといった運用の細目を定める。
ガイドブック特別保存ガイドブック(第1版)事務を担当する職員向けに本通達の解釈を示し補完する。本記事が紹介している文書。

2 令和6年見直しの背景——調査報告書

今回の全国一律化は、突然行われたものではなく、直前の調査報告書での指摘を受けたものである。

同ガイドブック1頁によれば、本通達は、従来「2項特別保存」と呼ばれていた枠組みに関する部分に、これまで各庁の運用要領で定められていた各基準(「判例集登載」「日刊紙2紙掲載」「事件担当部申出」「要望」)の運用に関する部分を加えたものである。
そのうえで、令和5年5月に公表された「裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書」(以下「調査報告書」)における指摘事項、すなわち「庁ごとに区々となっていた基準や認定プロセスを可能な限り全国一律のものとなるよう見直すことが相当」との指摘を踏まえ、整理・見直しを行った内容だと説明されている。

(当方整理)この見直しは、社会的に重要な事件の記録が各裁判所で廃棄されていたことが問題化し、その検証として上記の調査報告書がまとめられたという経緯を背景としているものと考えられる。
本ガイドブック自体は個別の廃棄事例を挙げてはいないが、「庁ごとに区々」であった従来の運用を、常設の第三者委員会を伴う全国統一の仕組みへ改めたことが、今回の改革の核心である。

3 施行日・適用範囲と旧Q&Aの失効

制度の切替え時期と、参照してはならない旧資料についても明記されている。

同ガイドブック6頁によれば、本通達の施行日は令和6年1月30日である。
また同2頁によれば、令和4年5月20日に総務局第三課が発出した「事件記録等の特別保存と廃棄に関するQ&A」は、今回の見直し前の取扱いが記載されているため参照しないよう求められており、新しいQ&Aの発出は当時なお検討中とされている。

なお、通達で別紙となっている少年調査記録に関する部分は、本ガイドブックでも別紙として整理されている(本記事の第5で扱う)。

第2 特別保存の対象事件と四つの基準

どのような事件の記録が特別保存の対象になるのか。
その入口は、通達が掲げる七つの事件類型と、それを現場で拾い上げるための四つの基準である。

1 認定を行う事件(通達1の(1)から(7))

同ガイドブック3頁によれば、特別保存に付する認定を行う事件は本通達1の(1)から(7)までに掲げられており、これらを拾い上げるための統一的な基準が本通達2の(1)及び(2)である、という関係に立つ。

この(1)から(7)の内容自体は本通達本体で定められており、ガイドブックに全類型が列挙されているわけではない。
もっとも、少年調査記録に関する別紙3頁では、(1)の例として「重要な憲法判断が示された事件」が挙げられている。
(当方整理)本記事では、この文書から確認できる(1)=「重要な憲法判断が示された事件」以外の類型については、原文に列挙がないため具体的な内容の断定を避ける。

2 四つの基準の全体像

七つの事件類型を実際に拾い上げるのが、次の四つの基準である。
このうち最初の三つ(判例集登載・日刊紙2紙掲載・事件担当部申出)は、該当すれば選定委員会の意見を聴くことなく必ず特別保存に付される。
これに対し「要望」は、付さない認定もあり得る点で性格が異なる。

基準拾い上げる類型選定委員会認定の性質
判例集登載(通達2の(1)ア)通達1の(1)から(3)に該当するものとみなす意見を聴かない該当すれば必ず特別保存に付する。
日刊紙2紙掲載(通達2の(1)イ)通達1の(4)及び(5)に該当するものとみなす意見を聴かない該当すれば必ず特別保存に付する。
事件担当部申出(通達2の(1)ウ)通達1の(1)から(7)のいずれか意見を聴かない申出があれば必ず特別保存に付する。
要望(通達2の(2))通達1の(1)から(7)のいずれか意見を聴く候補事件として判断し、付さない認定もあり得る。

(1) 判例集登載基準

同ガイドブック3頁から4頁によれば、判例集や裁判集に判決等が登載された事件については、本通達1の(1)から(3)までに該当するものとみなし、特別保存に付することになる。
この基準に該当した事件は、要望の事件と異なり、裁判所の長が選定委員会の意見を聴くことなく、該当したことをもって必ず特別保存に付する認定を行う。

(2) 日刊紙2紙掲載基準

同ガイドブック4頁によれば、主要日刊紙2紙以上に終局に関する記事が掲載された事件については、本通達1の(4)及び(5)に該当するものとみなすことになる。
また同2頁によれば、従来の各庁運用要領では「主要日刊紙2紙(地域面を除く)」とされていたものを、新運用では「地域面を含む」ものに改めた点が、実務上の大きな変更である。

(3) 事件担当部申出基準

同ガイドブック4頁によれば、事件担当部は、事件終局時に、当該事件が本通達1の(1)から(7)までのいずれかに該当するか否かを検討し、該当すると判断する場合は特別保存の申出を行う。
また同2頁によれば、従来は対象事件が本通達1の(1)から(3)までに該当する場合とされていたものを、新運用では(1)から(7)までに対象を広げた点が変更点である。

同4頁では、たとえば終局時には終局に関する記事が掲載されず日刊紙2紙掲載基準に該当しなかったものの、訴え提起・第1回期日・破産の開始決定など終局以外の事由で大きく報道された事件について、事件担当部が本通達1の(4)や(5)に該当するものとして申出を行うことが考えられる、と例示されている。

(4) 特別保存の要望

同ガイドブック4頁によれば、要望は本通達1の(1)から(7)までのいずれかに該当することを理由としてされる。
ここで重要なのは、規則第7条が「何人も」要望をすることができると定めており、これは外部の者に限らず裁判所内部の者も含まれる、と明記されている点である。
(当方整理)規則第7条が「何人も」要望できると定める以上、弁護士や市民も、歴史的・社会的意義を理由に特定事件の記録の保存を求める主体になり得ると読める。

第3 市民・弁護士が使える「要望」の手続

四つの基準のうち、外部の者が能動的に使えるのは「要望」である。
その具体的な流れを、ガイドブックの記述に沿って追う。

1 要望書の提出先と方法

同ガイドブック18頁によれば、要望書の提出先は、規則第3条各号に掲げる裁判所の「記録係等」である。
第一審が地方裁判所の支部であった場合は同支部が提出先となり、上訴審において保存する事件書類について要望をする場合は同上訴審が提出先となる。

要望書には別紙様式第4が用意されているが、同17頁によれば、事件と理由が特定されていれば同様式以外での申出も受理することとされており、通達には「原則として」という文言が入れられている。
また各庁のウェブサイトには、要望の方法等に関する案内が、運用開始日である令和6年1月30日から更新されるよう作業が求められている。
弁護士会への情報提供案については、最高裁判所から各庁に示す予定とされている。

(当方整理)実務的には、まず対象事件の第一審裁判所(支部案件なら当該支部)の記録係等が窓口になる、と読める。具体的な提出方法は、各裁判所ウェブサイトの案内ページで確認するのが確実である。

2 候補事件としての扱いと誤廃棄防止

要望があった事件は、直ちに保存が決まるわけではなく、まず「候補事件」として扱われ、廃棄されないよう保全される。

同ガイドブック18頁から19頁によれば、要望による認定プロセスでは、①要望書の提出を受けた裁判所を「A庁」、②A庁から候補事件の通知を受けた裁判所を「B庁」と表記して整理されている。
A庁の記録係等は、要望を受けた事件の記録等が既に特別保存に付されていたり特別保存予定となっていたりする場合を除き、その事件を特別保存の「候補事件」として扱う。
候補事件が他の審級にも係属していた場合には、他の審級の記録等が廃棄されるのを防ぐため、A庁はB庁の記録係等に対し、事件番号と候補事件となったことをメールやチャット等で通知する。

同19頁から20頁によれば、候補事件については、選定委員会や最高裁判所の委員会での審理等に一定の時間を要するため、認定までに事件記録としての保存期間が満了することも考えられる。
しかし、最終的に特別保存に付さない認定が行われるまでは廃棄することができないとされ、候補事件であることを看過して誤って廃棄することがないよう、他の記録との分離や事件簿情報への登録を確実に行うよう求められている。

3 選定委員会と最高裁の委員会——二段階の判断

要望の当否は、庁内の選定委員会と、最高裁に置かれた第三者委員会という二段階で判断される構造になっている。

(1) 選定委員会

同ガイドブック6頁によれば、各庁ではこれまでの運用要領に基づき既に選定委員会が設置されているものと考えられ、その場合は新たに設置する必要はないとされている。
委員会の構成員としては、裁判官のほか、首次席家庭裁判所調査官、首次席書記官、事務局の局次長・課長等が考えられるとされているが、本通達自体は構成等について具体的な定めを置いていない。
開催時期は、原則として毎年11月から12月までの間とされている。

(2) 記録の保存の在り方に関する委員会

同ガイドブック20頁から21頁によれば、裁判所の長が候補事件の記録等について特別保存に付さない認定をしようとする場合には、その適否について、最高裁判所に設置された「記録の保存の在り方に関する委員会」に意見を求める必要がある(規則第8条)。
同委員会の庶務は最高裁判所事務総局総務局とされており(規則第15条)、意見を求める際は別紙様式第5の文書及び添付書類を、最高裁判所総務局の担当チームへ送付することとされている。
意見を求める際に当該事件の記録等を添付する必要はないが、規則第16条のとおり、委員会から提出を求められた際には記録等を提出することになる。

(当方整理)つまり「付する」方向の判断は庁の権限で完結する一方、「付さない(=廃棄しうる)」方向の判断には、必ず最高裁の第三者委員会のチェックが入るという非対称な設計になっている。記録を残す方向にセーフティネットが働く仕組みだといえる。

4 認定・結果通知と、不服申立て制度の不存在

要望に対する結論は、要望者へ通知される。
ただし、その結論に対する正式な不服申立ての仕組みは用意されていない。

同ガイドブック21頁によれば、結果通知に係る事務は本庁の記録係が行い、後納郵便で送付することが想定されている。
そして、要望に対して特別保存に付さない認定がされた場合について、司法行政文書の開示に関する事務で定められているような「苦情の申出」の制度は設けられていない。
その理由として、特別保存の要望はあくまで裁判所の長が検討・判断を行う端緒の一つであり、付さない認定をしようとする場合には最高裁の委員会に意見を求めるという、要望も踏まえて客観的かつ多段階に判断する仕組みになっているから、と説明されている。

同21頁から22頁によれば、苦情申出のような制度はないものの、同じ事件について再度要望を提出することは直ちに不受理とはされない。
当初の要望が退けられた後でも、社会情勢の変化や当該事件がはらむ問題がクローズアップされるなどの事情の変化があり得るためである。
ただし、要望の理由が同じであれば結論も同じく付さない認定となる可能性が高い旨を伝え、要望の再考を促すか、別の理由を補充するよう促すことが考えられる、とされている。

第4 裁判所内部の認定プロセス(実務フロー)

ここからは、外部からは見えにくい裁判所内部の事務フローである。
基準ごとに、誰が何を確認し、どのルートで決裁されるのかが定められている。

1 判例集登載基準のフロー

同ガイドブック7頁によれば、判例集に登載された事件は、最高裁判所事務総局総務局が各審級の裁判所及び事件番号を記載した一覧表を作成し、毎年1回、COURTSポータルに掲載して各庁に知らせる。
第一審の記録係等はまずこの一覧表を確認し、第一審で保存している記録等のうち特別保存をしていないものについて、特別保存に付する事務処理を行う。
この一覧表の提供時期は、従来は毎年3月であったが、今後は前倒しして毎年1月末頃に行うことが予定されている。

同4頁及び5頁によれば、この基準に該当した事件の認定事務では、保存票(調査記録保存票)を作成し、訟廷→首次席書記官→所長(長官)のルートで決裁を取ることが想定されている。
各記録係等は、その経過を記録するため確認票を作成する。

2 日刊紙2紙掲載基準と新聞記事検索サービス

日刊紙2紙掲載基準は、今回の見直しで運用の仕組みが最も具体的に整備された基準である。
その中心が、新聞記事の検索サービスの導入である。

(1) 主要日刊紙4紙と地域面

同ガイドブック8頁によれば、本通達における「主要日刊紙」とは、全国に販売網を有する朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞の4紙とされ、新運用ではこれらの地域面に掲載された記事も含めて、2紙に掲載されたかを確認する。

同9頁によれば、「事件終局に関する記事」には、判決や和解、審判に限らず、取下げといった終局事由が含まれる(ただし移送や回付は、事件そのものが終了するわけではないため対象としないことで差支えないとされている)。
他方、倒産事件や執行事件等における開始決定や、後見事件等における後見人による横領が大きく報道されるケースは、「事件終局に関する記事」ではないため、この基準では対象外となる。
もっとも同10頁によれば、そうした報道がされた事件は、事件担当部申出により特別保存に付すことが考えられる、と補足されている。

(2) 検索サービスの導入と費用

同ガイドブック8頁から9頁によれば、日刊紙に掲載された事件終局に関する記事を確実かつ合理的に拾い上げるためのツールとして、全国の裁判所の本庁の総務課に「新聞・雑誌記事横断検索サービス」及び「日経テレコン21」(あわせて「検索サービス」)を導入することとされた。
現時点では支部への導入は予定されておらず、本庁の事務局総務課が管内各庁の記事を一元的に確認する。
速報性が求められるものではないため必ずしも毎日検索する必要はなく、検索サービスに記事が反映されるのは発行日の翌日(丸1日後)となる、とされている。

付録の「新聞記事検索サービス利用手順書」(同付録)によれば、導入するGサーチ及び日経テレコン21はニフティが提供する新聞記事の横断検索サービスで、各紙の最終版と地域面を網羅した記事検索が可能とされている。
利用料は一括して最高裁判所が支払い、利用規約上、印刷した記事をコピーしたり支部等へFAX送信・データ化してメール送信したりすることはできない、とされている。

サービス記事見出しの表示記事本文の表示
Gサーチ(新聞・雑誌記事横断検索サービス)1件につき10円(税抜)1件につき100円(税抜)
日経テレコン21課金されない1件につき200円(税抜)

(3) 記録係から事件担当部への連絡

同ガイドブック10頁によれば、第一審の本庁の記録係は、総務課から交付を受けた管内の終局事件に関する記事を集約し、別添の「特別保存対象事件リスト」(以下「リスト」)を作成するなどの方法で、2紙掲載を満たすか否かを一元的に管理することが想定されている。
このリストは、日刊紙2紙掲載以外の基準に該当する事件も併せて管理できるひな型となっており、選定委員会用の資料や結果公表用の一覧表の作成、さらには記録廃棄事務における誤廃棄防止のチェックにも活用することが考えられる、とされている。

同11頁によれば、本庁の記録係は、2紙に掲載された事件について本庁のみならず管内の事件担当部へ連絡する。
もっとも、支部等との関係では、検索サービスから印刷した記事をやりとりすることは同サービスの規約上難しいため、基本的には口頭(電話)やメール等により、終局日・当事者名・事件の概要といった事件の特定に必要な情報を提供することとされている。

3 事件担当部申出のフロー

同ガイドブック14頁から15頁によれば、事件担当部申出は、事件終局時に、当該事件を担当した裁判官・裁判所書記官・家庭裁判所調査官等の意見を踏まえ、担当部が申出をするか否かと該当理由を検討することから始まる。
その検討結果に基づき、記録表紙の余白に「申出の有無」を記載する。
記録の史料又は参考資料としての価値は担当部がよく把握しうるところであり、全ての事件について担当部で申出の検討が行われたことを明らかにするため、「申出の有無」は必ず記載することとされた。

同15頁によれば、申出を行う場合、担当書記官が申出書を作成し、裁判官(又は裁判長)の確認を受ける。
申出書の名義は、別紙様式第3のとおり、裁判官や書記官の個人名である必要はなく、「民事第●部」「△△支部民事係」等の記載で差支えなく、押印も不要とされている。

4 認定後の処理・公表・誤廃棄防止

同ガイドブック23頁から24頁によれば、特別保存に付する認定が行われた後は、記録表紙の余白や事件簿備考欄に「特別保存」と朱書きする(既にある「特別保存予定」「特別保存候補」の「予定」「候補」を二重線で抹消することでも足りる)。
保存票(調査記録保存票)は、独立行政法人国立公文書館に送付するまでの間保存し、確認票や事件担当部から提出された申出書は保存票に別紙として添付して保存する。

同24頁によれば、特別保存に付する認定を行った事件については、庁名・事件番号・事件名を記載した一覧表(別紙様式第7)をウェブサイトに掲載して公表する。
また、第一審及び上訴審の記録係等は、毎年適宜の時期に、記録等と保存票との照合や、記録等が区別して保管されていることの確認を行い、誤廃棄を防止する。
特別保存の報告は、従来どおり管内分を本庁で取りまとめてEASYで施行することとされている。

同25頁によれば、特別保存に付すると認定された記録等のうち事件記録及び事件書類については、内閣総理大臣との申合せに基づき国立公文書館へ送付されることになる(一定の事由により送付を留保する場合があるとされている)。

第5 少年調査記録の特別保存(別紙)

少年事件で作成される「少年調査記録」については、通常の事件記録とは異なる特有の事務があるため、ガイドブックでは別紙として整理されている。
ここでは、その特徴的な点を三つ紹介する。

1 特別保存をする家裁と保存をする家裁の分離

同ガイドブック別紙1頁によれば、少年調査記録を特別保存に付する認定は、その原因となるべき事件について終局決定をした家裁の長が行い(規則第3条第5号)、認定を行った少年調査記録は当該家裁において特別保存をすることとされた(規則第4条)。
他方、記録そのものを保存する裁判所(保存裁判所)の規律は従前どおりであるため、少年調査記録では、事件記録等と異なり、特別保存をする裁判所と保存裁判所が異なるケースが生じ得る。

同別紙1頁から2頁の設例によれば、A家裁が終局決定を行い特別保存に付する認定をした後、同一少年について再犯事件がB家裁に係属して保護処分が行われた場合、特別保存をする裁判所はA家裁、保存裁判所はB家裁となる。
この場合、B家裁は保存期間満了後速やかにA家裁へ少年調査記録を送付し、A家裁で特別保存をする。
記録がさらにC家裁・D家裁へと移動することもあり得るため、A家裁で特別保存することを少年調査記録表紙に明示することが極めて重要になる、とされている。

2 認定時期の前倒しと執行機関からの取寄せ

同ガイドブック別紙2頁によれば、少年調査記録は、事件が保護処分により終局した場合、速やかに保護処分の執行機関に送付されるという大きな特色がある(少年審判規則第37条の2第1項)。
従来は保存期間満了日に近接した時期に認定を行うのが実務上一般的であったが、調査報告書の指摘を踏まえ、直ちに判断できるものは直ちに認定手続を行うのが相当とされた。
そこで、執行機関への送付前に認定を得ることができるときは、速やかに認定を得ることが明記された。

同別紙2頁から3頁によれば、諸般の事情により速やかに認定を得られない場合は、まず少年調査記録を執行機関に送付し、その後に執行機関から一時的に返還を受けたうえで認定を得るフローが用意されている。
この場合の家裁における使用期間は長くとも1か月程度を目安とし、使用後は速やかに執行機関へ再送付するものとされている。

3 対象事件の共通化

同ガイドブック別紙3頁によれば、従前は特別保存に付する認定を行う事件が事件記録等と少年調査記録とで差異があったが、本通達では共通となり、本通達1の(1)から(7)までの全てが少年調査記録にも適用されることとなった。
たとえば「重要な憲法判断が示された事件」(本通達1の(1))は、改正前の少年調査記録規程の運用通達では特別保存の対象とされていなかったが、本通達では対象となる。

同別紙3頁から4頁によれば、少年保護事件記録と少年調査記録は別個に特別保存に付する認定を行う必要がある点は従前と同じである。
そのため、事件担当部申出を行う際には、少年保護事件記録又は少年調査記録のいずれかについての申出が脱漏しないよう注意が必要とされている。
もっとも、特別保存の要望については、いずれか一方のみについて要望がされたときは、双方について要望があったものとして取り扱うこととされている。

第6 弁護士から見た本ガイドブックの意義

本ガイドブックは、あくまで裁判所職員向けの内部事務資料である。
しかし、弁護士や市民の視点から見ても、いくつかの重要な意味を持つ。

(当方整理)第一に、規則第7条により「何人も」特別保存の要望ができると明記され、要望書の提出先・様式・各庁ウェブサイトでの案内までが整備された。
歴史的・社会的意義のある事件記録について、外部の者が能動的に保存を求める道が、制度として具体化されたと評価できる。

(当方整理)第二に、「付さない(廃棄しうる)」方向の判断には必ず最高裁の第三者委員会のチェックが入る非対称な設計になっており、記録を残す方向にセーフティネットが働く。
その一方で、要望が退けられた場合の正式な不服申立ての仕組みはなく、対応は再要望にとどまる点は、利用にあたって理解しておくべき限界である。

(当方整理)第三に、本記事の紹介対象は情報公開請求により開示された文書であり、通達本体だけでは見えにくい現場の事務処理イメージ(検索サービスの費用、リストによる誤廃棄防止、決裁ルート等)まで具体的に確認できる点に、資料としての価値がある。
なお、開示文書中で事件管理システムの名称が「■■■■」と表示されている箇所は、開示にあたって黒塗り(不開示)とされた部分である。

出典

特別保存ガイドブック(第1版)
最高裁判所事務総局総務局・同家庭局 令和6年1月10日
(本文26頁、別紙〔少年調査記録関係〕17頁、ポンチ絵・各様式・新聞記事検索サービス利用手順書等の付録を含む)
情報公開請求により開示された文書

事件記録等の特別保存に関する規則

令和6年1月10日付け事務総長通達「事件記録等の特別保存に関する規則の運用について」

裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書(令和5年5月公表)