証拠説明書

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1 証拠説明書の記載方法
(1) 書証を提出する場合,文書の標目,作成年月日,作成者および立証趣旨を証拠説明書に記載します(民事訴訟規則137条1項参照)。
(2)ア 当事者の陳述書を書証として提出する場合,文書の標目は「陳述書」であり,作成年月日は通常,裁判所への提出日であり,作成者は当事者であり(代理人弁護士がゴーストライターをした場合を含む。),立証趣旨は「原告主張の事実全般」又は「被告主張の事実全般」です。
イ 証人予定者の陳述書を書証として提出する場合,文書の標目は「陳述書」であり,作成年月日は通常,裁判所への提出日であり,作成者は証人であり(当事者の代理人弁護士がゴーストライターをした場合を含む。),立証趣旨は証言予定の事実関係です。

2 証拠説明書に記載することが望ましい事項等
(1) 以下の事項は証拠説明書に記載することが望ましいとされています。ただし,陳述書で問題となるのは通常,書証として提出する陳述書が原本であることだけです。
① 偽造文書として提出する場合にはその旨
② 原本及び写しの別
③ 書証に書き込みがあり,書き込み部分も立証趣旨と関連する場合,書き込み部分とそれ以外の部分とのそれぞれの作成者
④ 写真提出の場合,撮影者,撮影対象,撮影日時及び撮影場所(民事訴訟規則148条参照)
⑤ 図面等につき,拡大・縮小コピーにより写しを作成した場合にはその旨
⑥ 文書の一部のみの提出である場合にはその旨
(2) 偽造文書として提出する場合としては,以下の二つの場合があります。
① 挙証者が,当該文書は偽造された文書であるとして,偽造行為を立証するために提出する場合
・ この場合,偽造された文書の存在を立証すれば足りるため,具体的な偽造者名というのは必ずしも主張する必要はありません。
そのため,証拠説明書の作成者欄に偽造者名まで記載する必要はありません。
② 当該文書が偽造者の作成に係る文書であるということで偽造者自身の意思・思考内容を立証するために提出する場合
・ 例えば,民法117条に基づいて無権代理人の責任を追及する場合です。
・ この場合,偽造者の意思に基づいて申請に作成された文書となるため,証拠説明書の作成者欄に当該偽造者を具体的に特定して記載する必要があります。
(3) 月刊大阪弁護士会2018年5月号21頁及び22頁に,証拠説明書の記載に関する裁判官の意見として以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
① 作成者が複数の文書,例えば引用多数の電子メール,LINE等は,該当部分ごとに作成者を明らかにする必要がある。
② 写真,録音テープ等は,撮影,録音,録画などの対象並びにその日時及び場所を明らかにするほか(民訴規則148条),必要に応じ撮影の場所,方向などを図示するなどの工夫をしてほしい。
③ 立証趣旨は,書証のどこをどのように読み取れば立証命題につながるのかを端的に説明し,当該書証から読み取れる事実とその事実から推認できる事実は区別して記載してほしい。

3 証拠説明書の重要性等
(1)   証拠説明書の記載が十分でない場合,期日における書証の取り調べが煩雑になったり,書証の意味を正確に把握するうえで支障が生じたりすることがあります。
また,控訴審の場合,記録が膨大で事案も複雑困難なものが多いため,とりわけ証拠説明書の果たす役割が大きくなります。
そのため,裁判所としては,証拠説明書を丁寧に作成することを期待しています。
(2) 月刊大阪弁護士会2018年5月号23頁に,証拠説明書の記載内容に関する裁判官の意見として以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
① 書証の写しの提出時に証拠説明書がないと確認を後回しにすることがある。
また,証拠説明書に証拠のコピーを添付し,読むべき順序を番号で示していた例があったが,分かりやすくするために様々な工夫があってよい。
③ 特にLINEは発言者が分かりづらいが,LINEの画面を書証として提出するほか,代理人が発言者と発言内容を時系列に沿って一覧表で書き直したものを書証で提出し,かつ,その中で有用な発言にマーカーを引いていた例は,読みやすく,主にそちらを参照していた。
④ 証拠説明書を読むのは,提出時のほか,尋問前や判決起案をするときである。証拠説明書の標目とともに,立証趣旨を見て,最後の判断の段階で漏れがないことをチェックしている。
⑤ 証拠説明書を提出した後に書証の立証趣旨を追加する場合,主張書面に主張と立証趣旨を追加することになった書証が照合されていれば見落とすことは余りない。
立証趣旨が大きく変わる場合,立証趣旨を補充した証拠説明書を提出しても問題はない。
⑥ カルテ等について,例えば症状固定のメルクマールになるような部分は,立証趣旨に書いた方がよい。
経過が大事であれば主張書面に時系列表を付けて,カルテのどこに書いてあるかを入れ込んでもらうと,一覧性もあって分かりやすい。
十何時間という録画を提出する場合,何時何分に何をしているのかを証拠説明書等の別紙で示されていると,録画映像が見やすくなる。
(3) 平成29年2月6日開催の民事裁判改善に関する懇談会では,「7 証拠説明書」(平成28年度懇談会報告集27頁及び28頁)には以下の記載があります。
裁:証拠説明書は,裁判官が感じているほど,代理人は重要視されていないのではないかと常々思っている。証拠説明書は書証の一覧表になるので,私の場合は,たくさんの書証が出てきた場合には,まず証拠説明書をコピーして手元に置いた上で,1枚1枚実際の証拠を見て,証拠説明書事態にこちらがポイントだと思うところを書き込むという形で活用している。そうすると,判決を書くときに,大部の書証前部に当たるのではなく,自分の証拠説明書のコピーを見て,この証拠とこの証拠は大切という再確認することができ,非常に重宝している。
高裁では,どういう状況でこの証拠が提出されたのかが分からないので,書証が大量で複雑そうな事件の場合,まず証拠説明書をコピーするというのが主任裁判官として記録を読む前の最初の作業となる。そしてその証拠説明書を見ながら,主張書面を読んだり,証拠を見たりするようにしていた。そのような形で利用していると認識していただくことが,証拠説明書に何を書くのかというところともかかわってくると思う。立証趣旨が金銭消費貸借契約書のように明白なものは詳細に書く必要はないが,書証を見ただけでは立証趣旨がすぐに分からないようなものについては,適切に書いておかないと,特に引継ぎの事件で裁判官が記録を見るときなどには,重要性とか見てほしいところが伝わらない場合がある。
裁:判決を書く際,主張の整理をするときは準備書面を読んでいくが,理由を書くときには,基本的には準備書面に戻らない。証拠説明書と証拠本体を見る。そのため,証拠説明書にどういったことが書いてあるのか,立証趣旨にどういうことが書いてあるのかというのは,判決書の理由を書くにあたって重視している。それを踏まえると,立証趣旨が適切に記載されている証拠説明書は非常に役に立つし,それが書いていない証拠説明書については,これはどういう証拠なのかと思いながら,うまくその証拠が使えないので,提出した当事者に不利に判断してしまうことがあるのかもしれないと思う。そういった意味で,立証趣旨のしっかりした証拠説明書は私も書いてほしいと思っている。

4 原本,写し及び(写し)の区別
(1) 証拠とする書類の原本が手元にあり,これを裁判所で調べてもらいたい(裁判官に確認してもらいたい)ときは,「原本」と記載します。
(2) 写しそのものが原本であるときは「写し」と記載し,原本は存在するけれど,写しを裁判所で調べてもらいたい(裁判官に確認してもらいたい)ときは「(写し)」と記載します。
ただし,「写し」と「(写し)」の区別は必ずしも厳格ではない気がしています。
(4) 広島地裁HPの「証拠説明書の作成要領等」に同趣旨の説明が載っています。

5 参考HP
(1)   駒澤大学学術機関リポジトリに載っている「証拠説明書の記載方法」が参考になります。
(2) 「陳述書」も参照してください。