即位の礼に当たり行う特別恩赦基準(平成2年11月9日閣議決定)


即位の礼に当たり行う特別恩赦基準(平成2年11月9日閣議決定・同月12日官報掲載)(趣旨)

一 即位の礼が行われるに当たり、内閣は、特別に、この基準により特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を行うこととする。

(対象)
二 この基準による特赦、減刑、刑の執行の免除又は復権は、平成二年十一月十二日(以下「基準日」という。)の前日までに有罪の裁判が確定している者に対して行う。ただし、第五項及び第七項に掲げる者については、それぞれ、その定めるところによる。

(出願又は上申)
三1 この基準による特赦、減刑、刑の執行の免除又は復権は、本人の出願を待って、行うものとし、本人は、基準日から平成三年二月十二日までに、恩赦法施行規則(昭和二十二年司法省令第七十八号)の定めるところにより、刑務所(少年刑務所及び拘置所を含む。以下同じ。)若しくは保護観察所の長又は検察官に対して出願をするものとする。
2 刑務所若しくは保護観察所の長又は検察官は、前号の出願があった場合には、平成三年五月十三日までに中央更生保護審査会に対して上申をするものとする。
3 第五項の規定による特赦又は第七項の規定による減刑の場合にあっては、前二号の定めにかかわらず、それぞれ、第1号の出願は平成三年五月十三日までに、前号の上申は同年八月十二日までにすることができる。
4 第1号及び第2号の規定は、この基準による特赦、減刑、刑の執行の免除又は復権について、刑務所若しくは保護観察所の長又は検察官が必要があると認める場合に職権により上申をすることを妨げるものではない。この場合においては、上申をする期限は、前二号に定めるところによる。

(特赦)
四 特赦は、第二項本文に定める者であって、次の各号のいずれかに該当するものについて、犯情、本人の性格及び行状、犯罪後の状況、社会の感情等にかんがみ特に相当であると認められる場合に行う。
1 少年のとき罪を犯した者であって、基準日の前日までにその罪による刑の執行を終わり又は執行の免除を得たもの
2 基準日において七十歳以上の者であって、有期の懲役又は禁錮に処せられ、基準日の前日までにその執行すべき刑の期間の二分の一以上につきその執行を受けたもの
3 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行の免除を得た日から基準日の前日までに五年以上を経過した者であって、その刑に処せられたことが現に公共的社会生活上の障害となっているもの
4 有期の懲役又は禁錮に処せられ、その執行を猶予され、基準日の前日までに猶予の期間の二分の一以上を経過している者であって、その刑に処せられたことが現に公共的社会生活上の障害となっているもの。
5 有期の懲役又は禁錮に処せられた者(刑法(明治四十年法律第四十五号)の罪(過失犯を除く。)、同法以外の法律において短期一年以上の懲役若しくは禁錮を定める罪又は薬物に係る罪により刑に処せられた者を除く。であって、社会のために貢献するところがあり、かつ、その刑に処せられたことが現に公共的社会生活上の障害となっているもの
6 罰金に処せられ、その執行を猶予されている者又は基準日の前日までにその執行を終わり若しくは執行の免除を得た者であって、その刑に処せられたことが現に社会生活上の障害となっているもの
五1 前項第5号に掲げる者については、基準日の前日までに有罪、無罪又は免訴の判決の宣告を受け、平成三年二月十二日までにその裁判に係る罪について有罪の裁判が確定した場合にも、同項の例によりこの基準による特赦を行うことができる。
2 罰金に処せられ、そのことが現に社会生活上の障害となっている者については、基準日の前日までに略式命令の送達、即決裁判の宣告又は有罪、無罪若しくは免訴の判決の宣告を受け、平成三年二月十二日までにその裁判に係る罪について有罪の裁判が確定した場合であって、その執行の猶予の期間中であるとき又は同日までにその執行を終わり若しくは執行の免除を得たときも、前号と同様とする。

(減刑)
六 減刑は、第二項本文に定める者のうち、懲役又は禁錮に処せられた者(その執行を終わり又は執行の免除を得た者を除く。)であって、次の各号のいずれかに該当するものについて、犯情、本人の性格及び行状、犯罪後の状況、社会の感情等にかんがみ特に相当であると認められる場合に行う。
1 少年のとき犯した罪により、有期の懲役又は禁錮に処せられた者であって、次の(一)又は(二)に掲げる場合に応じ、それぞれ、(一)又は(二)に定めるもの
(一) その犯した罪につき定められた懲役又は禁錮の法定刑の短期が一年以上である場合にあっては、基準日の前日までに執行すべき刑の期間の二分の一以上につきその執行を受げた者(不定期刑に処せられたときにあっては、言い渡された刑の短期のうち執行すべき部分の二分の一以上につきその執行を受けた者)
(二) (一)以外の場合にあっては、基準日の前日までに執行すべき刑の期間の三分の一以上につきその執行を受けた者(不定期刑に処せられたときにあっては、言い渡された刑の短期のうち執行すべき部分の三分の一以上につきその執行を受けた者)
2 少年のとき犯した罪により、有期の懲役又は禁錮に処せられ、その執行を猶予されている者であって、基準日の前日までにその猶予の期間の三分の一以上を経過したもの
3 基準日において七十歳以上の者であって、次のいずれかに該当するもの
(一) 有期の懲役又は禁錮に処せられ、基準日の前日までに執行すべき刑の期間の三分の一以上につきその執行を受けた者
(二) 無期の懲役又は禁錮に処せられ、基準日の前日までに十年以上その執行を受けた者
4 有期の懲役又は禁錮に処せられ、その執行を猶予され、基準日の前日までに猶予の期間の三分の一以上を経過している者であって、その刑に処せられたことが現に公共的社会生活上の障害となっているもの
5 有期の懲役又は禁錮に処せられた者(刑法の罪(過失犯を除く。)、同法以外の法律において短期一年以上の懲役若しくは禁錮を定める罪又は薬物に係る罪により刑に処せられた者を除く。であって、その刑に処せられたことが現に公共的社会生活上の障害となっているもの

七 前項第5号に掲げる者(当該懲役又は禁錮の執行を終わり又は執行の免除を得た者を除く。)については、基準日の前日までに有罪、無罪又は免訴の判決の宣告を受け、平成三年二月十二日までにその裁判に係る罪について有罪の裁判が確定した場合にも、同項の例によりこの基準による減刑を行うことができる。

八 減刑は、次による。
1 無期懲役は十五年の懲役とし、無期禁掴は十五年の禁錮とする。
2 有期の懲役又は禁錮は、次により刑の期間を変更する。
(一) 基準日において七十歳以上の者については、刑の期間の三分の一を超えない範囲でその刑を減ずる。
(二) (一)以外の者については、刑の期間の四分の一を超えない範囲でその刑を減ずる。
3 不定期刑は、その短期及び長期について、それぞれ、刑の期間の四分の一を超えない範囲でその刑を減ずる。
4 刑の執行猶予の期間を短縮する場合にあっては、その四分の一を超えない範囲とする。

(刑の執行の免除)
九 刑の執行の免除は、第二項本文に定める者であって、懲役又は禁錮に処せられ、かつ、次の各号のいずれかに該当するものについて、犯情、本人の性格及び行状、犯罪後の状況、社会の感情等にかんがみ特に相当であると認められる場合に行う。
1 病気その他の事由により基準日までに長期にわたり刑の執行が停止され、なお長期にわたりそり執行に耐えられないと認められる者
2 基準日において七十歳以上の者で、仮出獄を許されてから基準日の前日までに二十年以上を経過したもの

(復権)
十 復権は、第二項本文に定める者のうち、一個若しくは二個以上の裁判により禁錮以上の刑に処せられ又は一個若しくは二個以上の裁判により罰金及び禁錮以上の刑に処せられて基準日の前日までに刑の全部につきその執行を終わり又は執行の免除を得た者であって、次の各号のいずれかに該当するものについて、犯情、本人の性格及び行状、犯罪後の状況、社会の感情等にかんがみ特に相当であると認められる場合に行う。
1 基準日において七十歳以上の者
2 禁錮以上の刑の全部につきその執行を終わり又は執行の免除を得た日から基準日の前日までに三年以上を経過した者であって、刑に処せられたことが現に社会生活上の障害となっているもの
3 社会のために貢献するところがあり、かつ、刑に処せられたことが現に公共的社会生活上の障害となっている者

(通常の恩赦)
十一 この基準に該当しない者であっても、特赦、減刑、刑の執行の免除又は復権を行うことが相当である場合には、常時の個別の恩赦を行うことを考慮するものとする。

*1 平成2年11月12日,今の上皇について,即位礼正殿の儀が実施されました。
*2 令和元年10月22日,今の天皇について,即位礼正殿の儀が実施されました。
*3 「特赦、減刑又は刑の執行の免除の出願に関する臨時特例に関する省令(平成2年11月12日法務省令第39号)」も参照してください。
*4 平成2年11月9日付の閣議書(即位の礼に当たり行う特別恩赦基準)を掲載しています。
*5 衆議院議員保坂展人君提出死刑と無期懲役の格差に関する質問に対する答弁書(平成12年10月3日付)には以下の記載があります。
   戦後、無期懲役が確定した後、個別恩赦により減刑された者(仮出獄中の者を除く。)は八十六人である。なお、無期懲役が確定した後、昭和三十五年以降に個別恩赦により減刑された者はいない。
   また、戦後、無期懲役が確定した後、政令恩赦により減刑された者については、十分な資料がないため、総数は不明である。なお、最後に政令恩赦により減刑が行われたのは、昭和二十七年四月の日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)の発効に際してである。



広告
スポンサーリンク