弁護士業界

司法修習生等に対する採用のための勧誘行為自粛の要請に関する最高裁及び法務省の対応

目次
1   69期の要請文書
2 69期の要請文書の発出について,文書によるやり取りはなかったこと
3 70期ないし72期の要請文書
4 72期の要請文書に関して,文書のやり取りは存在しないこと
5 関連記事その他

1   69期の要請文書
(1) 72期以前につき,日弁連は,単位弁護士会会長を通じて日弁連会員(弁護士)に対し,毎年,採用のための勧誘行為自粛を要請していました。
(2) 69期の場合,日弁連は,日弁連会員に対し,以下の要請をしています(第69期司法修習生等に対する採用のための勧誘行為自粛に関する協力について(平成27年9月3日付の日弁連会長要請)(ナンバリングを1ないし5から①ないし⑤に変えています。))。
① 会員は,第69期の司法修習生及び司法修習予定者(以下合わせて「司法修習生等」という。)に対し,平成28年2月28日まで,採用のための勧誘行為は行ってはならない。
  なお,採用情報の提供(修習開始の前後を問わず弁護士会が主催して行う採用説明会を含む。)及び事務所見学の案内は含まれない。
② 会員は,司法修習生等に対し,過度の飲食提供,その他不相当な方法による採用のための勧誘行為を行ってはならない。
③ 会員は,第69期の司法修習生等から採用申込みを受けても,平成28年2月28日までは,これを応諾してはならない。
④ 会員は,第69期司法修習生等に対する採用決定(内定を含む。)により,司法修習生等を拘束してはならない。
  会員は,第69期司法修習生等の会員に対する採用の申込み又は会員からの採用の申込みに対する第69期司法修習生等の承諾につき,司法修習生等が撤回することを妨げてはならない。
⑤ 会員は,職業選択に関する司法修習生等の自由な意思を尊重しなければならない。
(2) 73期以降の司法修習生については,司法修習開始前の採用活動が正式に解禁されました(「司法修習生等に対する採用に関する日弁連の文書(73期以降の取扱い)」参照)。

2 69期の要請文書の発出について,文書によるやり取りはなかったこと
(1) 69期の場合,司法研修所事務局長は,日弁連事務次長との間で,口頭で,前年までと同様の内容による要請文書を発出することを改めて確認していますが,文書によるやり取りはしていません(平成28年度(最情)答申第9号(平成28年4月27日答申))。
(2) 日弁連の文書には,平成22年度から法務省との間でも協議を重ねてきたと書いてありますが,司法修習生に対する採用のための勧誘行為自粛について,法務省が最高裁及び日弁連と協議を行ってきた事実は確認されていません(平成28年度(行情)答申第321号(平成28年9月14日答申))。

3 70期ないし72期の要請文書
(1)ア 第70期司法修習生等に対する採用のための勧誘行為自粛に関する協力について(平成28年10月27日付の日弁連会長要請)(以下「70期要請文書」といいます。)を掲載しています。
イ 69期までと異なり,協議した相手が司法研修所だけになっていました。
(2)  平成29年10月19日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「70期要請文書の発出に当たっては,司法研修所事務局長と日弁連事務次長との間で協議が行われ,同文書の案文を作成,取得しているが,この案文は,同文書の内容が確定した時点で,保有する必要がなくなったため廃棄した。」と書いてあります。
(3) 以下の文書を掲載しています。
・ 
第71期司法修習生等に対する採用のための勧誘行為自粛に関する協力について(平成29年9月7日付の日弁連会長要請)
・ 第72期司法修習生等に対する採用のための勧誘行為自粛に関する協力について(平成30年10月4日付の日弁連会長要請)

4 72期の要請文書に関して,文書のやり取りは存在しないこと
(1) 平成31年1月15日付の理由説明書には「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。    ア 本件対象文書には公にすると法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報(担当者直通の電話番号)が記載されている。
    よって,行政機関情報公開法第5条第2号イに定める不開示情報に相当することから,当該情報が記載されている部分を不開示とした。
   なお,苦情申出人は, 日本弁護士連合会ホームページに同会法制部法制第一課の電話番号が公表されている旨主張するが,同電話番号は,本件で不開示とした電話番号とは異なる。
イ  また,苦情申出人は,本件対象文書の原案が存在する旨主張するところ,本件対象文書の発出に当たり司法研修所事務局長と日本弁護士連合会事務次長との間で協議は行われたが,本件対象文書の内容は昨年版から修習の期及び日付が変更されたのみで実質的な内容には変更がなかったことから,文書のやりとりは行われていない。したがって,本件対象文書以外に本件開示申出文書に該当する文書を作成又は取得していない。
(2) 本件開示申出文書は,「第72期司法修習生等に対する採用のための勧誘行為自粛に関して,最高裁が日弁連と協議した際に作成し,又は取得した文書」です。

5 関連記事その他
(1) 少なくとも69期の場合,第1クールが終了した平成28年2月28日(日)までに,弁護士会主催の就職説明会はほぼ終了していました(「司法修習の日程」参照)。
(2) ジュリナビHPのカレンダー及びアットリーガルHPの法律事務所説明会カレンダーを見る限り,平成28年3月以降,69期を対象とした法律事務所説明会はあまり開催されなかったように思われます。
(3) 34期の林道晴司法研修所事務局長が寄稿した「新司法修習のポイント」には以下の記載があります(自由と正義2008年10月号54頁。なお,改行を追加しました。)。
    近時、一部の法律事務所の中には、司法修習が開始される前に(新司法試験の合格発表前の例すらあるようである。)、司法修習生への採用申込みをする者に弁護士としての採用の内定を出している例もあるようである。その結果、司法修習生の中には、内定先の法律事務所での執務に関係のない科目(特に、刑事系の科目)の修習に熱意を見せない者が出てきているなどとの指摘が配属庁会の指導官からされている。
    こうしたことこそが、各人の自己実現の機会を制約するだけでなく、統一修習システムの根幹を揺るがすことにもつながりかねない極めて憂慮すべき事態ではなかろうか。
    弁護士事務所への就職難という状況があるにしても、少なくとも司法修習の導入部に当たる期間は、司法修習生が落ち着いた環境で修習に専念する必要性が大きいことは異論のないところであり、そのためにはこうした期間内に、修習環境の整備が図られる必要があると考えている。
(4) 令和3年4月30日時点における「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第406号)(略称は「事業主等指針」です。)には以下の記載があります。
ロ 事業主は、採用内定者について労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定の取消しは無効とされることについて十分に留意し、採用内定の取消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講ずること。
また、やむを得ない事情により採用内定の取消し又は入職時期の繰下げを行う場合には、当該取消しの対象となった学校等の新規卒業予定者の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに、当該取消し又は繰下げの対象となった者からの補償等の要求には誠意を持って対応すること。

(5) 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の就職関係情報等が載ってあるHP及びブログ
・ 司法修習生等に対する採用に関する日弁連の文書(73期以降の取扱い)

大阪弁護士会の就職説明会の日時,場所等

○大阪弁護士会の就職説明会の日時は以下のとおりであす(大阪弁護士会HPの「修習生・弁護士向け就職支援情報」)。

・ 73期の場合
   令和 元年10月12日(土)午前10時~午後4時5分(午後0時15分~午後1時15分は昼休み)
・ 72期の場合
   平成30年10月13日(土)午前10時~午後4時5分(午後0時15分~午後1時15分は昼休み)
・ 71期の場合
   平成29年10月14日(土)午前10時~午後4時(午後0時30分~午後1時30分は昼休み)
・ 70期の場合
   平成28年10月29日(土)午前10時~午後4時(午後0時30分~午後1時30分は昼休み)
・ 69期の場合
   平成27年10月31日(土)午前10時~午後4時(午後0時30分~午後1時30分は昼休み)
・ 68期の場合
   平成26年11月22日(土)午前10時~午後4時(午後0時30分~午後1時30分は昼休み)
・ 67期の場合
   平成25年12月14日(土)午前10時~午後4時(午後0時30分~午後1時30分は昼休み)
・ 66期の場合
   平成24年12月15日(土)午前10時~午後4時(午後0時30分~午後1時30分は昼休み)
・ 65期の場合
   平成23年12月10日(土)午前10時~午後4時(午後0時30分~午後1時30分は昼休み)

*1 68期から導入修習が開始したため,日程が前倒しとなりました。
*2 大阪弁護士会の就職説明会は常に大阪弁護士会館(大阪市北区西天満1-12-5)で開催されています。
*3 71期までの場合,30分ごとにブースを移動しましたから,最大で10個の法律事務所又は企業の説明を聞くことができました。
*4 72期の場合,30分の説明時間及び5分の移動時間でワンセットとなりましたから,最大で9個の法律事務所又は企業の説明を聞くことができます。

司法修習生就職合同説明会の参加基準(東京三会申し合わせ)(抜粋)

目次
第1 司法修習生就職合同説明会の参加基準(東京三会申し合わせ)(抜粋)
第2 関連記事その他

第1 司法修習生就職合同説明会の参加基準(東京三会申し合わせ)(抜粋)
・ 第71期司法修習生等東京三弁護士会就職合同説明会」に掲載されていた「司法修習生就職合同説明会の参加基準(東京三会申し合わせ)(抜粋)」は,以下のとおりです。
所属弁護士の誰かが戒告の懲戒処分を受けた場合,弁護士法人又は法律事務所全体が1年間,就職説明会に参加できなくなるみたいです(3条(3)本文)し,過去1年間に市民窓口等の相談件数が10回以上ある場合も就職説明会に参加できなくなるみたいです(3条(10))から,大事務所ほど参加条件を満たせない可能性が高くなる気がします。

(法律事務所の参加条件)
第3条 就職説明会へ参加申込を行った法律事務所又はその所属弁護士のいずれかの会員が、就職説明会開催期日又は特に各号に規定された日において、次のいずれかに該当する場合には、当該法律事務所の参加は認められない。

(1) 業務停止期間中である場合、綱紀委員会で懲戒相当とされて懲戒委員会に付議されている場合、又は所属するいずれかの弁護士会の請求により、綱紀委員会に付議されている場合。
(2) 業務停止以上の懲戒処分を受け、処分の効力が生じてから3年以内である場合。ただし、業務停止処分にあっては、停止期間満了から3年以内である場合。
(3) 戒告の懲戒処分を受け、処分の効力が生じてから1年以内である場合。ただし、非弁提携事案による戒告の場合は、処分の効力が生じてから3年以内である場合。
(4) 過去20年間に戒告以上の処分を3回以上受けた場合。
(5) 非弁提携行為を行ったと認定され東京三会何れかの非弁提携行為の防止に関する会議体から警告、是正措置等を受け、それらを受けた日から1年を経過していない場合。
(6) 東京三会のいずれかの会の個別の就職説明会参加基準に抵触する場合。
(7) 弁護士法、東京三会又は日弁連の会則、会規に違反していると認められる場合。
(8) 就職説明会の手続の円滑な実施に協力しない場合、又は過去の就職説明会の実施に協力しない行為があった場合。
(9) 前年度又は前々年度の就職説明会に参加の申込みをしたにもかかわらず、正当な理由なく開催日の2週間前以後に参加を取り止めた場合。
(10) 申し込み時又は就職説明会開催日から過去1年間に、東京三会各会が設置する苦情等相談受付け窓口(市民窓口等)の相談件数が10回以上ある場合。
(11) 申し込み時に会費を3か月分以上滞納し、就職説明会の参加申込期限内に会費滞納の状況が解消されない場合。
(12) 非弁提携行為の防止に関する会議体による調査を受けている場合。
(13) 日弁連の求人求職情報提供システムへ掲載しない旨の決定を受けて3年が経過していない場合。
(14) 東京三会何れかの規程に違反し、若しくは事務の運営を妨げ又は業務執行において著しく不適当な行為を行ったことを理由として、国選弁護人、国選付添人、国選医療観察付添人、国選被害者参加弁護士及び当番弁護士(以下「国選弁護人等」という。)の候補者の推薦停止又は国選弁護人等の推薦を受ける者を登録する名簿から抹消されて3年が経過していない場合。
(15) その他弁護士の信用及び品位を害する恐れがあると認められる場合。

(企業等の参加要件)
第4条 就職説明会へ参加申込を行った当該企業等について、東京三会のいずれからも異議が出されないときは、参加を認める。この場合、当該企業等に東京三会の会員が所属することを要しない。ただし、次のいずれかに該当する場合は、参加は認められない。
(1) 当該企業等の業務が次のいずれかに該当する場合。
1) 営業形態が善良な風俗を害し又は公共の福祉に反するおそれがある場合。
2) 販売方法、宣伝広告方法等が消費者を害するおそれがある場合。
3) 非弁護士活動の助長、弁護士の肩書の不正使用その他弁護士法違反又は弁護士法の精神に反するおそれがある場合。
4) 当該企業の役員又は従業員に、反社会的勢力の構成員ないし準構成員がいる場合。
5) 当該企業が反社会的勢力と何らかの取引関係にある場合。
6) 当該企業が金銭提供、便益の供与等方法を問わず、反社会的勢力の行動を助長する活動を行っている場合。
(2) 東京三会あるいは各弁護士会からの要請にもかかわらず、当該企業等が弁護士の使命に反せず、かつ弁護士の信用及び品位を害するおそれがないと認めるに足りる資料又は情報を提供しない場合。
(3) 当該企業等に、東京三会の会員が所属するときは、当該会員が前条第1項各号のいずれかに該当する場合。この場合、前条第2項の規定を準用する。
(4) 弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)に違反するおそれがあると解される場合。
(5) 前号のほか弁護士法、弁護士職務基本規程その他の法令違反のおそれがあると解される場合。
(6) 採用予定内容が、業務委託契約あるいは1年未満の有期契約の場合。
(7) 参加の可否を判断するために十分な情報が得られない場合。

    上記の内容を確認し、よろしければ「上記に同意する」ボタンをクリックしてください。

第2 関連記事その他
1(1) 暴力団員であるのに暴力団員でないことを表明,確約して銀行の担当者に口座開設等を申し込み,通帳等の交付を受けた行為は,当該銀行において,政府指針を踏まえて暴力団員からの貯金の新規預入申込みを拒絶する旨の約款を定め,申込者に対し暴力団員でないことを確認していたなどの事実関係の下では,刑法246条1項の詐欺罪に当たります(最高裁平成26年4月7日判決)。
(2) 金融機関が,主債務者が反社会的勢力であるか否かについて相当な調査をすべきであるという信用保証協会との間の信用保証に関する基本契約上の付随義務に違反して,その結果,反社会的勢力を主債務者とする融資について保証契約が締結された場合には,上記基本契約に定められた保証債務の免責条項にいう金融機関が「保証契約に違反したとき」に当たります(最高裁平成28年1月12日判決)。
2 以下の記事も参照して下さい。
・ 司法修習生等に対する採用のための勧誘行為自粛の要請に関する最高裁及び法務省の対応
・ 司法修習生等に対する採用に関する日弁連の文書(73期以降の取扱い)

東京三会修習生就職合同説明会の参加者数等の推移

目次
1 67期ないし71期の状況
2 59期ないし61期及び66期当時の状況
3 関連記事その他

1 67期ないし71期の状況
(1) 東京三会修習生就職合同説明会の参加者数等の推移は以下のとおりです。
① 67期の場合(平成25年10月14日開催)

・   のべ48法律事務所・35企業・9弁護士会,約941名の司法修習予定者等が参加しました(とうべんいんふぉ2014年6月号6頁)。
・ 平成25年の司法試験合格者数は2049人でしたから,参加率は45.9%です。
② 68期の場合(平成26年10月13日開催)
・   のべ54法律事務所・38企業・7弁護士会,約850名の司法修習予定者等が参加しました(とうべんいんふぉ2015年7月号)。
・ 平成26年の司法試験合格者数は1810人でしたから,参加率は46.9%です。
③ 69期の場合(平成27年10月12日開催)
・   のべ61法律事務所・34企業・6弁護士会,約724名の司法修習予定者等が参加しました(とうべんいんふぉ2016年7月号)。
・ 平成27年の司法試験合格者数は1850人でしたから,参加率は39.1%です。
④ 70期の場合(平成28年10月10日開催)
・   のべ70法律事務所・30企業・6弁護士会,約600名の司法修習予定者等が参加しました(とうべんいんふぉ2017年7月号)。
・ 平成28年の司法試験合格者数は1583人でしたから,参加率は37.9%です。
⑤ 71期の場合(平成29年10月9日開催)
・ のべ93法律事務所・36企業・6弁護士会,538名の司法修習予定者等が参加しました(とうべんいんふぉ2018年7月号)。
・ 平成29年の司法試験合格者数は1533人でしたから,参加率は35.1%です。
(2) 司法修習予定者等とあるのは,司法修習予定者(当年の司法試験合格者)及び司法修習生(前年の司法試験合格者)のことです。
(3)ア 2019年4月以降,「とうべんいんふぉ」は過去の分も含めて東弁の会員サイトに移行したため,一般の人は閲覧できなくなりました。
イ 「とうべんいんふぉ」(リンク切れ)では,司法修習生と書いてありますものの,参加者の90%以上は司法修習予定者と思います。

2 59期ないし61期及び66期当時の状況
・ 東京地裁平成29年2月10日判決(判例秘書に掲載)には以下の記載があります。
    東京三会は,日本弁護士連合会及び関東弁護士会連合会との共催の下,合同で司法修習生等に対して法律事務所及び企業の就職のための情報提供をする目的で就職説明会を開催している(以下「合同説明会」という。)。近年における合同説明会の実施状況は以下のとおりである。(甲3,9,弁論の全趣旨)
(ア) 平成18年3月11日開催(第59期司法修習生対象)
    参加法律事務所45事務所,参加司法修習生等131名
(イ) 同年9月30日及び10月1日開催(第60期司法修習生対象)
    参加法律事務所のべ103事務所,参加司法修習生のべ857名
(ウ) 平成19年2月24日及び25日開催(第60期司法修習生対象)
    参加法律事務所のべ77事務所,参加司法修習生のべ783名
(エ) 同年9月29日及び同月30日開催(第60期及び第61期司法修習生対象)
    参加法律事務所のべ70事務所,参加司法修習生のべ396名
(オ) 平成24年10月27日開催(第66期司法修習生対象)
    参加法律事務所38事務所,参加司法修習生929名

3 関連記事その他
1 58期から69期までの司法修習生採用者数及び司法試験合格者数が法務省HPの「司法修習生採用者数・考試(二回試験)不合格者数」に載っています。
2 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の就職関係情報等が載ってあるHP及びブログ
・ 東京三会修習生就職合同説明会の日時,場所等

東京三会修習生就職合同説明会の日時,場所等

1 東京三会修習生就職合同説明会の日時,場所等は以下のとおりです。

・ 73期の場合
日時:令和 元年10月14日(月・祝)午前11時~午後4時30分
場所:TRC東京流通センター第一展示場A~Dホール
住所:東京都大田区平和島6-1-1(最寄り駅:東京モノレール 流通センター駅)

・ 72期の場合
日時:平成30年10月8日(月・祝)午前11時~午後4時30分
場所:TRC東京流通センター第一展示場A~Dホール
住所:東京都大田区平和島6-1-1(最寄り駅:東京モノレール 流通センター駅)

・ 71期の場合
日時:平成29年10月9日(月・祝)午前11時~午後4時30分
場所:TRC東京流通センター第一展示場A~Dホール
住所:東京都大田区平和島6-1-1(最寄り駅:東京モノレール 流通センター駅)

・ 70期の場合
日時:平成28年10月10日(月・祝)午前11時~午後4時30分
場所:TRC東京流通センター第一展示場A~Dホール
住所:東京都大田区平和島6-1-1(最寄り駅:東京モノレール 流通センター駅)

・ 69期の場合
日時:平成27年10月12日(月・祝)午前11時~午後4時30分
場所:TRC東京流通センター第一展示場A~Dホール
住所:東京都大田区平和島6-1-1(最寄り駅:東京モノレール 流通センター駅)

・ 68期の場合
日時:平成26年10月13日(月・祝)午前11時~午後4時30分
場所:TRC東京流通センター第一展示場A~Dホール
住所:東京都大田区平和島6-1-1(最寄り駅:東京モノレール 流通センター駅)

・ 67期の場合
日時:平成25年10月14日(月・祝)午前11時~午後4時30分
場所:東京都立産業貿易センター台東館4・5階展示室
住所:東京都台東区花川戸2-6-5

・ 66期の場合
日時:平成24年10月27日(土)午前11時~午後4時30分
場所:東京都立産業貿易センター浜松町館4・5階展示室
住所:東京都港区海岸1-7-8(最寄り駅:JR浜松町駅(北口)から徒歩5分)

・ 65期の場合
日時:平成23年10月15日(土)午前11時~午後4時30分
場所:東京流通センター第二展示場Fホール
住所:東京都大田区平和島6-1-1(最寄り駅:東京モノレール 流通センター前駅)

・ 64期の場合
日時:平成22年10月31日(日)午前9時30分~午後6時30分
場所:AKIBA_SQUARE
住所:東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDX2階
* 午前9時30分~午後1時30分,及び午後2時30分~午後6時30分の2部制で修習生の参加が振り分けられました(平成22年9月付の東京三会会長名の文書参照)。

2 「東京三会修習生就職合同説明会の参加者数等の推移」も参照してください。

第71期司法修習生向けの,弁護士会の就職説明会等の日程

○以下の日程につき,個別のリンクがないものはすべて,日弁連HPの「法律事務所への入所をお考えの方へのご案内」が情報源です。
司法修習中の期間よりも司法修習開始前の期間の方が,就職関係のイベントが充実している気がします。

平成29年
12月16日(土)
① 午後1時~午後4時30分
   日弁連の,就職活動セミナー(弁護士会館17階会議室)
② 午後1時~(終了後懇親会)
青法協弁学合同部会の,法律家4団体合同の事務所説明会(主婦会館プラザエフ)
平成30年
1月20日(土)
① 午後1時~午後5時

北海道弁護士会連合会の,採用説明会(札幌弁護士会館5階)
②   午後4時~午後6時30分
京都弁護士会の,採用情報説明会(京都弁護士会館 地階大ホール)
1月27日(土)
① 午後1時~午後4時
三重弁護士会の,採用説明会(三重弁護士会館)
② 午後1時~午後5時
鹿児島県弁護士会の,採用説明会(鹿児島県弁護士会館)
③ 午後1時30分~午後4時
長野県弁護士会の,採用説明会(長野県弁護士会館)
④ 午後2時30分~午後5時
東北弁護士会連合会の,採用説明会(仙台弁護士会館)
⑤ 午後3時~午後5時
青法協弁学合同部会の,法律家4団体共催法律事務所説明会(TKP大阪本町カンファレンスセンター カンファレンスルーム3A)
2月3日(土)午後1時~午後3時
岡山弁護士会の,採用説明会(岡山弁護士会館)
2月10日(土)午後1時15分~午後4時30分
①   神奈川県弁護士会の,合同就職説明会(神奈川県弁護士会館)
② 広島弁護士会の,就職説明会及び交流会(広島弁護士会館)
2月11日(日)午後2時30分~午後5時30分(終了後に懇親会)
群馬弁護士会の,採用説明会(メトロポリタン高崎)
3月2日(金)午後6時30分~
   愛知県弁護士会の,第71期司法修習生・若手弁護士と組織内弁護士との就職情報交換会
4月6日(金)午後6時30分~
愛知県弁護士会の,就職説明会(愛知県弁護士会館5階「ホール」等)
7月27日(金)午後6時30分~
愛知県弁護士会の,第2回就職説明会(愛知県弁護士会館5階「ホール」等)
10月5日(金)午後6時30分~午後8時30分
神奈川県弁護士会の,就職活動応援パーティー(神奈川県弁護士会館)

第70期司法修習生向けの,弁護士会の就職説明会等の日程

平成28年
12月3日(土)午後1時~午後4時
   日弁連の,就職活動セミナー(弁護士会館2階講堂「クレオ」A)
→ 69期までは,同趣旨のセミナーはありませんでした。
12月10日(土)午後1時~午後6時
青法協弁学合同部会の,法律家4団体合同の事務所説明会(主婦会館プラザエフ)
12月17日(土)午後1時~午後4時30分
   日弁連の,公益活動を担う弁護士になろう!~法テラススタッフ弁護士・日弁連ひまわり基金弁護士・偏在対応弁護士 説明会~(弁護士会館2階講堂「クレオ」等)
平成29年
(1月4日(水) 第1クール開始)
1月14日(土)午後2時~午後5時(交流会は午後8時まで)
   広島弁護士会の就職説明会及び交流会(広島弁護士会館)
1月21日(土)午後1時30分~午後5時(その後に懇親会)
   北海道弁護士会連合会の,就職・開業説明会(札幌弁護士会館)
1月28日(土)
① 午後1時~午後3時
    三重弁護士会の,採用(入会)説明会(三重弁護士会館)
② 午後1時30分~午後4時
   長野県弁護士会の,採用説明会(長野県弁護士会館)
③ 午後2時30分~午後5時
   東北弁護士会連合会の,合同就職・開業支援説明会(仙台弁護士会館)
④ 午後3時~午後5時
青法協弁学合同部会の,法律家4団体共催法律事務所説明会(TKP大阪本町カンファレンスセンター カンファレンスルーム3A)
2月4日(土)
① 午後1時~午後3時
   岡山弁護士会の,採用説明会(岡山弁護士会館2階大会議室)
② 午後1時15分~午後4時30分
   神奈川県弁護士会の合同就職説明会(神奈川県弁護士会館)
2月9日(木)午後7時~
   奈良弁護士会の,採用説明会(奈良弁護士会館)
2月11日(土)
① 午後2時00分~午後4時00分
   栃木県弁護士会の,採用説明会(栃木県弁護士会館)
② 午後2時30分~午後5時30分
   群馬弁護士会の,就職説明会(群馬弁護士会館3階会議室)
③ 午後4時~午後6時30分
   京都弁護士会の,採用説明会(京都弁護士会館)
2月18日(土)
青法協弁学合同部会の,法律事務所説明会(名古屋第一法律事務所3階)
(2月28日(火) 第2クール開始)
4月1日(土)午後1時00分~午後3時00分
日弁連の,即時独立開業に関する相談会(弁護士会館17階会議室)
4月7日(金)午後6時30分~午後8時
   愛知県弁護士会の,就職説明会(愛知県弁護士会館5階「ホール」等)
5月13日(土)午後1時30分~
京都弁護士会の,司法修習生採用情報説明会(京都弁護士会館地階大ホール)
→ 企業内弁護士の採用に限定した説明会でした。
(4月24日(月)第3クール開始)
6月3日(土)午後1時30分~午後4時
日弁連の,企業内弁護士セミナー(弁護士会館2階講堂「クレオ」A)
6月9日(金)午後6時~午後8時
   札幌弁護士会の,就職活動応援パーティー(ロイトン札幌20階パールホール)
(6月17日(土) 第4クール開始)
6月17日(土)午後1時~午後5時
  鹿児島県弁護士会の,採用説明会(鹿児島県弁護士会館)
6月19日(月)午後6時~
   広島弁護士会の,就職活動応援パーティー等(広島弁護士会館)
7月28日(金)午後6時30分~
   愛知県弁護士会の,就職活動応援パーティー等(愛知県弁護士会館)
(8月14日(月) A班集合修習開始)
9月15日(金)午後6時30分~
   愛知県弁護士会の,就職活動応援パーティー等(愛知県弁護士会館)
(9月29日(金) A班選択型実務修習開始)
10月6日(金)午後6時30分~午後8時30分
   神奈川県弁護士会の,就職応援会(神奈川県弁護士会館5階会議室)
11月27日(月)午後6時~

愛知県弁護士会の,就職相談会(愛知県弁護士会館)

第69期司法修習生向けの,弁護士会の就職説明会の日程

平成27年
12月12日(土)午後1時~
   青法協弁学合同部会の,事務所説明会(主婦会館プラザエフ)
平成28年
1月23日(土)
① 午後1時~午後3時
   三重弁護士会の,三重弁護士会就職(入会)説明会(三重弁護士会3階ホール)
② 午後1時~
   札幌弁護士会の,説明会(札幌弁護士会館3階)及び懇親会(ロイトン札幌)
③ 午後1時30分~午後4時30分
   長野県弁護士会の,就職情報説明会(長野県弁護士会館大会議室(4階))
1月30日(土)午後3時~午後5時
青法協弁学合同部会の,法律家4団体共催・法律事務所就職説明会(TKP大阪本町カンファレンスセンター カンファレンス3A)
2月6日(土)
① 午後0時45分~午後4時30分
   横浜弁護士会の,合同就職説明会(横浜弁護士会館)
② 午後1時~午後3時
   岡山弁護士会の,採用説明会(岡山弁護士会館2階会議室)
2月13日(土)
① 午後2時~午後8時
   広島弁護士会の,就職説明会及び交流会(広島弁護士会館)
② 午後2時30分~午後5時
   東北弁護士会連合会の,採用説明会(仙台弁護士会館)
2月20日(土)午後3時~午後7時
青法協弁学合同部会の,法律事務所説明会(名古屋第一法律事務所3階)
4月1日(金)午後6時~
   愛知県弁護士会の,司法修習生等に対する就職説明会(愛知県弁護士会館5階ホール)
5月12日(木)午後6時30分~午後7時30分
日弁連の,国会議員政策担当秘書説明会(弁護士会館17階1702会議室)
5月21日(土)午後1時30分~午後3時30分
日弁連の,企業内弁護士セミナー(弁護士会館2階講堂「クレオ」BC)
8月19日(金)午後6時30分~
   愛知県弁護士会の就活応援パーティー(愛知県弁護士会館5階ホール)
9月3日(土)午後1時00分~午後3時00分
日弁連の,就職・即時独立開業に関する相談会(弁護士会館14階・17階会議室)
10月14日(金)午後6時30分~午後8時30分
   神奈川県弁護士会の,就職活動応援パーティー等(神奈川県弁護士会館)

大阪弁護士会就職支援委員会主催の懇談会,並びに自治体職員,企業内弁護士及び政策担当秘書に関する各種資料

目次
1 大阪弁護士会就職支援委員会主催の懇談会
2 自治体職員関係の参考HP
3 企業内弁護士関係の参考HP
4 政策担当秘書関係の参考データ等
5 組織内弁護士に関する弁護士職務基本規程の条文
6 関連記事その他

1 大阪弁護士会就職支援委員会主催の懇談会
(1)ア 大阪弁護士会就職支援委員会は,平成30年度までの間,以下の懇談会及びその後の懇親会を開催しており,大阪弁護士会事務局に事前に参加申し込みをすれば,大阪修習でなくても参加することができました(開催時期が近づくと,大阪弁護士会HPの「修習生・弁護士向け就職支援情報」に案内チラシが掲載されます。)。
① 平成26年度
平成27年1月17日(土)  政策担当秘書との懇談会
平成27年1月22日(木)  自治体職員との懇談会
平成27年2月19日(木)  企業内弁護士との懇談会
② 平成27年度
平成28年2月10日(木)  自治体職員との懇談会
平成28年2月23日(火)  企業内弁護士との懇談会
平成28年3月 5日(土)  政策担当秘書との懇談会
③ 平成28年度 
平成29年2月 4日(土)  自治体職員との懇談会
平成29年2月24日(金)  企業内弁護士との懇談会
平成29年3月25日(土)  政策担当秘書との懇談会
④ 平成29年度
平成30年2月17日(土)  自治体職員との懇談会
平成30年3月 9日(金)  企業内弁護士との懇談会
平成30年3月24日(土)  政策担当秘書との懇談会
⑤ 平成30年度
平成31年2月16日(土)  政策担当秘書との懇談会
平成31年3月15日(金)  企業内弁護士との懇談会
平成31年3月23日(土)  自治体職員との懇談会
イ 参加者数の減少に伴い,平成31年度以降,懇談会は開催されなくなりました。
(2) 平成28年2月10日の自治体職員との懇談会については,参加された講師の先生が「自治体職員との懇談会」と題する記事を書いています。
(3) 営利業務及び公務に従事する弁護士に対する弁護士会及び日本弁護士連合会の指導・監督に関する基準(平成16年2月1日日弁連理事会議決)3条4号は以下の行為を禁止しています。
① 弁護士が,営利業務に従事する場合において,営利業務に際し,当該営利業務外の弁護士としての職務を依頼するよう勧誘する行為
② 弁護士が,公務に従事する場合において,公務に際し,当該公務外の弁護士としての職務を依頼するよう勧誘する行為


2 自治体職員関係の参考HP
(1) 総務省HP
ア 「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について」(平成26年7月4日付の総務省自治行政局公務部長通知)には,臨時・非常勤職員や任期付職員の任用等について,制度の趣旨,勤務の内容に応じた任用・勤務条件が確保できるように留意すべき事項が記載されています。
イ 「地方公共団体における任期付職員制度の活用状況」には,平成22年度から平成26年度までの,任期付職員の採用状況の推移等が記載されています。
ウ 「短時間勤務の職員に関する制度」には,非常勤職員,臨時的任用職員及び任期付短時間勤務職員の違いが記載されています。
エ 総務省HPに以下のとおり,地方公共団体の議会の議員及び長の任期満了に関する調が載っています。
・ 平成29年1月1日付
・ 平成30年1月1日付
・ 平成31年1月1日付
→ これとは別に,平成31年統一地方選挙執行予定団体に関する調が載っています。
オ 毎年11月1日現在の,地方公共団体の議会の議員及び長の任期満了に関する調は,総務省HPの「選挙関連資料」に載っています。
(2) 法務省HP
ア 平成29年4月1日現在の,地方公共団体における法曹有資格者の常勤職員等が,第7回法曹養成制度連絡協議会(平成29年5月19日開催)資料2「日弁連配付資料(国・自治体・福祉等)」に載っています。
イ 平成30年12月1日現在の,地方公共団体における法曹有資格者の常勤職員等が,第11回法曹養成制度連絡協議会(平成30年12月20日開催)資料2「日弁連配付資料(国・自治体・福祉等)」に載っています。
(3) 大阪府HP
ア 「第2章 地方公務員の任用根拠」には,正職員,臨時・非常勤職員,再任用職員及び任期付職員の任用根拠が記載されています。
イ 「第3章 任用根拠別府内職員数の現状」には,府内正職員数の推移,府内臨時・非常勤職員数の推移,及び府内再任用職員数の推移が記載されています。
(4) 法自研HP
・ 平成28年9月7日,法曹有資格者自治体法務研究会(法自研)HPが開設されたみたいです。
(5) その他のHP
ア 内閣官房内閣人事局HP「人事統計報告」常勤職員在職状況統計表が載っています。
イ 二弁フロンティア2017年7月号「自治体勤務弁護士との座談会」が載っていて,二弁フロンティア2021年12月号「自治体勤務弁護士の座談会~自治体における弁護士の仕事~」が載っています。
ウ 弁護士ドットコムニュースに「なぜ,兵庫県明石市は弁護士の採用に力を注ぐのか」が載っています。
エ 日弁連HPの「市民の意見を反映(市民会議)」にある「第37回日本弁護士連合会市民会議議事録」(平成25年3月6日開催分)では,平成24年4月に採用が開始した明石市の自治体弁護士5人のことが説明されています。
    また,リンク先の11頁によれば,平成24年9月分の弁護士会費から,明石市の自治体弁護士が自分で負担するようになったみたいです(この点については,平成24年9月11日の明石市議会定例会の議事録に詳しい質疑応答が載っています。)。
オ 大阪弁護士会行政連携センターHP「書庫(公開資料)」に,行政連携に関する月刊大阪弁護士会の記事が載っています。
カ 国立国会図書館HP「調査と情報」に,「地方公務員制度-国家公務員との比較の観点から-」(平成25年3月19日発行の777号)が載っています。


3 企業内弁護士関係の参考HP
(1) 日本組織内弁護士協会(JILA)HPに色々とデータが載っています。
(2) 日弁連HPの「基礎的な統計情報」における「弁護士の活動領域の拡大」において,弁護士会別企業内弁護士数等が載っています。
    また,日弁連HPの「企業内弁護士の採用にあたって」には,弁護士の採用が,一般の採用とどのような違いを持っているかについて説明されています。
(3) 第一東京弁護士会が平成26年8月25日に作成した「企業内弁護士雇用の手引き」には,企業と司法修習生・弁護士のマッチングを支援するための様々な情報が載ってあります。
(4) 大阪で企業内弁護士になる場合,大阪弁護士会弁護士業務改革委員会第3部会が平成27年10月22日に作成した「企業内弁護士になる方(新人・中途)向けQ&A」が参考になります。


(5) 平成29年4月現在の企業内弁護士の実情が,第7回法曹養成制度連絡協議会(平成29年5月19日開催)資料3「日弁連配付資料(企業)」に載っています。
(6) ビジネスローヤーHPの「第2回「インハウス・ロイヤー」という選択肢 – 日本にとってCLOは必要なのか? 」に,日清食品HD法務部の「十誡」(じゅっかい)が載っています。
(7) soraのblogの「訴訟の準備に関する法務担当の雑感」には,(1)関係者を集めて意識あわせをすること(①正確性にこだわること,②弁護士には遠慮なく何でも話すこと,及び③決まったことを勝手に変えないこと),(2)部門ごとにとりまとめ役を置くことが大事であると書いてあります。
(8) 東弁リブラ2022年7・8月合併号「インハウスローヤーの実態と外部弁護士との関係」が載っています。



4 政策担当秘書関係の参考データ等
(1) 平成5年度の制度開始から平成27年度までのデータとして,政策担当秘書に関する以下のデータを掲載しています。
① 国会議員政策担当秘書 資格試験合格者・選考採用審査認定者数の推移表
② 衆議院の国会議員政策担当秘書の口述審査合格状況等の推移表
③ 参議院の国会議員政策担当秘書の口述審査合格状況等の推移表
(2) 東弁リブラ2017年7月号「議員秘書の仕事~弁護士の第4の活動領域~」が参考になります。
(3) 議員立法の実務については,国立国会図書館HP「レファレンス」「議員立法序説」(レファレンス平成27年9月号)及び「議員立法はどのように行われてきたか」(レファレンス平成28年1月号)が非常に参考になります。

5 組織内弁護士に関する弁護士職務基本規程の条文
(自由と独立)
第五十条 官公署又は公私の団体(弁護士法人を除く。以下これらを合わせて「組織」という)において職員若しくは使用人となり、又は取締役、理事その他の役員となっている弁護士(以下「組織内弁護士」という)は、弁護士の使命及び弁護士の本質である自由と 独立を自覚し、良心に従って職務を行うように努める。

 (違法行為に対する措置)
第五十一条 組織内弁護士は、その担当する職務に関し、その組織に属する者が業務上法令に違反する行為を行い、又は行おうとしている ことを知ったときは、その者、自らが所属する部署の長又はその組織の長、取締役会若しくは理事会その他の上級機関に対する説明又は勧告その他のその組織内における適切な措置をとらなければならない。

6 関連記事その他
(1) 東京都市町村職員退職手当組合HP「退職手当制度について」には「国家公務員又は他の地方公務員から引き続き職員となった場合には、その期間は通算されます。また、退職後、他の地方公共団体等へ引き続き就職した場合は、退職手当は支給されず、その期間は通算されます。」と書いてあります。
(2) 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は,不適法です(最高裁平成14年7月9日判決)。
(3) 以下の記事も参照して下さい。
・ 政策担当秘書関係の文書

弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義

目次
第1 橋下徹弁護士が第1審被告となった最高裁平成23年7月15日判決の補足意見
1 裁判官竹内行夫の補足意見
2 裁判官須藤正彦の補足意見
第2 日弁連副会長の説明
第3 懲戒請求に伴うリスク等
1 懲戒請求に伴うリスク
2 懲戒請求の位置づけに関する最高裁判決の補足意見
第4 懲戒制度を濫用する意図があるとされた事例
1 懲戒請求者本人の場合
2 懲戒請求者代理人の場合
第5 弁護士の告発が懲戒事由となる限界事例等
1 弁護士の告発が懲戒事由となる限界事例
2 弁護士の告発予告が懲戒事由となった事例
3 「刑事事件に発展する可能性がある」等と記載したことが懲戒事由となった事例
4 告訴が被告訴人に対する不法行為を構成する場合
5 相手方に対する警告文で留意すべき事項
第6 関連記事その他

第1 橋下徹弁護士が第1審被告となった最高裁平成23年7月15日判決の補足意見
1 裁判官竹内行夫の補足意見
・ 「懲戒請求権が何人にも認められていることの意義」として以下のとおり述べています(ナンバリング及び改行を行いました。)。なお,本件発言④は,④「懲戒請求ってのは誰でも彼でも簡単に弁護士会に行って懲戒請求を立てれますんで,何万何十万っていう形であの21人の弁護士の懲戒請求を立ててもらいたいんですよ」というものでした。
(1) 第1審被告は,本件発言④において,懲戒請求は「誰でも彼でも簡単に」行うことができる旨述べた。
   弁護士法58条1項は,「何人も」懲戒の事由があると思料するときはその事由を添えて懲戒請求ができるとして,広く一般の人に対して懲戒請求権を認めている。
   これは,弁護士に対する懲戒については,その権限を自治団体である弁護士会及び日本弁護士連合会に付与し国家機関の関与を排除していることとの関連で,そのような自治的な制度の下において,懲戒権の適正な発動と公正な運用を確保するために,懲戒権発動の端緒となる申立てとして公益上重要な機能を有する懲戒請求を,資格等を問わず広く一般の人に認めているものであると解される。
   これは自治的な公共的制度である弁護士懲戒制度の根幹に関わることであり,安易に制限されるようなことがあってはならないことはいうまでもない。
   日本弁護士連合会のインターネット上のホームページにおいても,「懲戒の請求は,事件の依頼者や相手方などの関係者に限らず誰でもでき,その弁護士等の所属弁護士会に請求します(同法58条)」と紹介されているところである。
   懲戒請求の方式について,弁護士法は,「その事由の説明を添えて」と定めているだけであり,その他に格別の方式を要求していることはない。
    仮に,懲戒請求を実質的に制限するような手続や方式を要求するようなことがあれば,それは何人でも懲戒請求ができるとしたことの趣旨に反することとなろう。
(2) また,「懲戒の事由があると思料するとき」とはいかなる場合かという点については,懲戒請求が何人にも認められていることの趣旨及び懲戒請求は懲戒審査手続の端緒にすぎないこと,並びに,綱紀委員会による調査が前置されていること(後記)及び綱紀委員会と懲戒委員会では職権により関係資料が収集されることに鑑みると,懲戒請求者においては,懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠なく懲戒請求をすることは許されないとしても,一般の懲戒請求者に対して上記の相当な根拠につき高度の調査,検討を求めるようなことは,懲戒請求を萎縮させるものであり,懲戒請求が広く一般の人に認められていることを基盤とする弁護士懲戒制度の目的に合致しないものと考える。
    制度の趣旨からみて,このように懲戒請求の「間口」を制約することには特に慎重でなければならず,特段の制約が認められるべきではない。
    この点については,例えば本件のような刑事弁護に関する問題であるからとの理由で例外が設けられるものではない。
(3) 第1審被告は,本件発言④で懲戒請求は「誰でも彼でも簡単に」行うことができると述べて本件呼び掛け行為を行ったが,その措辞の問題は格別,その趣旨は,懲戒請求権を広く何人にも認めている弁護士法58条1項の上記のような解釈をおおむね踏まえたものと解することができると思われる。
(4) ところで,広く何人に対しても懲戒請求をすることが認められたことから,現実には根拠のない懲戒請求や嫌がらせの懲戒請求がなされることが予想される。
   そして,そうしたものの中には,民法709条による不法行為責任を問われるものも存在するであろう。
   そこで,弁護士法においては,懲戒請求権の濫用により惹起される不利益や弊害を防ぐことを目的として,懲戒委員会の審査に先立っての綱紀委員会による調査を前置する制度が設けられているのである。
   現に,本件懲戒請求についても,広島弁護士会の綱紀委員会は,一括調査の結果,懲戒委員会に審査を求めないことを相当とする議決を行ったところである。
   綱紀委員会の調査であっても,対象弁護士にとっては,社会的名誉や業務上の信用低下がもたらされる可能性があり,また,陳述や資料の提出等の負担を負うこともあるだろうが,これらは弁護士懲戒制度が自治的制度として機能するためには甘受することがやむを得ないとの側面があろう。


2 裁判官須藤正彦の補足意見
(1)   弁護士法上,「何人も」懲戒請求の申出が認められる(弁護士法58条1項)。その趣旨は,弁護士にあっては,主権者たる国民によりいわゆる「弁護士自治」が負託され,弁護士の懲戒権限が,弁護士会に固有の自律的権能として与えられているところ,その権限の行使が適正になされるためには,それについて国民の監視を受けて広く何人にも懲戒請求が認められることが必要であるからということにある。
    言うまでもなく,弁護士自治ないしは自律的懲戒制度の存立基盤をなすのは,主権者たる国民の信認であるから(「信なくば立たず」である。),この面からも懲戒請求が認められる者の範囲は広くかつ柔軟に解されるべきであって,厳格な調査,検討を求めて,一般国民による懲戒請求の門戸を狭めるようなことがあってはならないし,また,弁護士会によっても,懲戒事由がある場合について,懲戒請求が広く推奨されたりするところである。
    しかしながら,同時に,「何人も」とされていることは,懲戒請求者に,恣意的な懲戒請求を許容したり,広く免責を与えることを意味するわけではない。

    懲戒請求者は,懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査,検討をすべき義務を負うものであり(なお,弁護士法58条1項は,「その事由の説明を添えて」懲戒請求の申出をすることができる旨規定する。),その調査検討義務は上記のとおり厳格に要求されるものではないとしても,安易に懲戒請求がなされてよいということではないのである。
    けだし,懲戒請求は,それがなされると,弁護士会は必ず綱紀委員会の調査に付すから(弁護士法58条2項),対象弁護士は,陳述や資料の提出等を求められ(同法70条の7),また,「懲戒の手続に付された」ことによって,弁護士会の登録換えや登録取消しができなくなる(同法58条2項,62条1項)から,別の地にての開業や公務員への転職もできなくなるという制約も受け,また,事実上,懲戒請求がなされたということが第三者に知られるだけで,対象弁護士自身の社会的名誉や業務上の信用の低下を生じさせるおそれを生じさせ得,軽視し得ない結果が生ずるからである(なお,最高裁平成19年4月24日第三小法廷判決・民集61巻3号1102頁参照)。
(2) 肝腎なことは,懲戒請求が広く認められるのは,弁護士に「品位を失うべき非行」等の懲戒事由がある場合に,弁護士会により懲戒権限が,いわば「疎にして漏らす」ことなく行使されるようにするためであるということである(綱紀審査会制度(弁護士法71条)もほぼ同様の考え方に基づく。)。
    懲戒請求は,弁護士活動に対する批判のための手段として設けられた制度ではないし,弁護士活動に対する苦情申立制度でもない(弁護士会の苦情相談窓口などで責任をもって対処されるべきものである。)。
    特に,前者についていえば,もとより不当な弁護士活動が批判の対象となると同時に懲戒事由に該当することはあり得,その場合は懲戒請求は当然妨げられることはないが,しかし,そのことは,懲戒請求が弁護士活動を批判するための制度であるということを意味するものではないのである。
    更に,ある弁護士につき品位を失うべき非行などの懲戒事由が認められるのに弁護士会が懲戒権限を正しく行使しないというような場合,弁護士会の懲戒制度の運用は不当であり,これについても世論などによって厳しく批判されてしかるべきであろう(所属弁護士会の懲戒しないとの結論に不服な懲戒請求者は,日弁連綱紀委員会に異議を申し出て,その審査を受けることができ(弁護士法64条),更にそこでその結論が維持されたことで不服な場合は,非法曹のみによって構成される綱紀審査会に審査請求をすることができる(同法64条の3)。)。
    だがそのことと懲戒請求を行うこととは別であって,懲戒事由の存否は冷静かつ客観的に判定されるべき性質のものである以上,弁護士会の懲戒制度の運用や結論に不満があるからといって,衆を恃んで懲戒請求を行って数の圧力を手段として弁護士会の姿勢を改めさせようとするのであれば,それはやはり制度の利用として正しくないというべきである。

第2 日弁連副会長の説明
・ 井元義久 日弁連副会長は,法曹制度検討会(第4回)(平成14年5月14日実施分)において以下のとおり説明しています。
 2番目の、何人も弁護士会宛に特定の弁護士を懲戒することを請求することができるということでありますが、更に各弁護士会が懲戒処分をしなかったり、あるいは懲戒処分をしたけれども、その懲戒処分が軽いということで請求者が納得しないといった場合には、日弁連に異議を申し出ることができます。この制度的なものは、先ほどお話ししましたフローチャートに書いてあるとおりでございまして、日弁連の懲戒委員会が、現在、異議の申立をすべて受けているということになっております。
  我が国の弁護士の綱紀・懲戒制度を見た場合には、何人も請求できるということに特徴がございますが、先進諸国の弁護士の懲戒制度を見ましても、また、我が国の裁判官、検察官、その他の公務員の懲戒・罷免制度を見ましても、一般に懲戒請求や罷免の訴追請求が、懲戒者や罷免権者の職権の発動を促すと位置づけられておるということでございますが、ドイツ、フランスでは、一般人からの懲戒請求は認められておりません。その意味では、我が国の懲戒制度というのは開かれたものであるということが言えるのではないかと思います。
  それでは、どうして我が国が、弁護士に対する懲戒請求を何人も行うことができるとしたのかということでございますが、これは現行弁護士法が弁護士の懲戒権を弁護士会の自治権の一部として位置づけておりまして、その結果、弁護士会に弁護士懲戒権行使を委ねておりますから、その適切な行使を可能ならしめるために広く一般の人に懲戒を請求することを認めたものであるという具合に弁護士会としては考えておりまして、これは「条解弁護士法(第二版補正版)」の423ページにこの趣旨が記載されております。


第3 懲戒請求に伴うリスク等
1 懲戒請求に伴うリスク
(1) 虚偽告訴罪
ア 弁護士に対して理由のない懲戒請求をした場合,損害賠償請求をされることがありますし,その内容が虚偽の申告であった場合,虚偽告訴罪(刑法172条)が成立することがあります。
イ 虚偽の申告とは,申告の内容をなすところの刑事・懲戒の処分の原因となる事実が客観的真実に反することをいいます(最高裁昭和33年7月31日決定)。
(2) 懲戒請求をしたこと自体に基づく懲戒
ア 平成24年10月16日発効の日弁連の取消裁決には以下の記載があります(自由と正義2012年12月号111頁)。
     弁護士が懲戒請求書を作成した場合に、その記載内容がいかなる場合であっても、弁護士としての品位を失うべき非行にあたらないとは解されないのであって、弁護士職務基本規程第70条において、他の弁護士等との関係において、相互に名誉と信義を重んじることとされていることに鑑みれば、対象弁護士を侮辱する表現やその人格に対する誹誇中傷等については、弁護士としての品位を失うべき非行にあたる場合があるものと解すべきである。
イ 平成31年3月25日発効の第一東京弁護士会の懲戒事例では,弁護士である懲戒請求者本人が業務停止2月となり,代理人弁護士が戒告となりました(自由と正義2019年7月号123頁ないし125頁)ところ,2020年弁護士懲戒事件議決例集(第23集)19頁によれば,懲戒委員会議決書には以下の記載がありました。
    弁護士が自ら又は代理人として関与する場合には,懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査,検討することは通常人に比べ容易であり,また不当な懲戒請求により被請求者が被る不利益や弁護士自治への悪影響についても容易に認識することができるのであるから,違法な懲戒請求をした場合の非難可能性はむしろ通常人に比してより重大というべきである。この理は弁護士が自ら請求人として請求する場合でも何ら変わりなく(「解説弁護士職務基本規程第3版」201頁。同解説はむしろ注意義務は加増されるとする),自らが当事者である私的紛争の一環でなされたことは情状として考慮される要素となるか否かの問題に過ぎない。
(3) 懲戒請求をしたことに基づく損害賠償責任の発生
・ 弁護士法58条1項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において,請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに,あえて懲戒を請求するなど,懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには,違法な懲戒請求として不法行為を構成します(最高裁平成19年4月24日判決)。
2 懲戒請求の位置づけに関する最高裁判決の補足意見
・ 最高裁平成19年4月24日判決における裁判官田原睦夫の補足意見に以下の記載があります。
    殊に弁護士が自ら懲戒請求者となり,あるいは請求者の代理人等として関与する場合にあっては,根拠のない懲戒請求は,被請求者たる弁護士に多大な負担を課することになることにつき十分な思いを馳せるとともに,弁護士会に認められた懲戒制度は,弁護士自治の根幹を形成するものであって,懲戒請求の濫用は,現在の司法制度の重要な基盤をなす弁護士自治という,個々の弁護士自らの拠って立つ基盤そのものを傷つけることとなりかねないものであることにつき自覚すべきであって,慎重な対応が求められるものというべきである。


第4 懲戒制度を濫用する意図があるとされた事例
1 懲戒請求者本人の場合
(1) 平成31年3月25日発効の第一東京弁護士会の業務停止2月の場合,「A弁護士らを代理人として被懲戒者の妻Bに対し離婚訴訟を提起していたところ、上記訴訟に先立って行われた離婚調停の期日においてBないしBの代理人であった懲戒請求者C弁護士が調停委員に対してなしたとする、被懲戒者がBを一方的に攻撃し自分は悪くないという自己弁護を記載したメールを長女に対し送付したなどの発言が虚偽の発言であり、被懲戒者に対する名誉毀損に当たるなどとして、上記発言の基本的な部分が事実に基づくものであることを知りながら、A弁護士らを代理人として、懲戒制度を濫用する意図をもって、上記訴訟係属中の2014年4月14日、懲戒請求者C弁護士を対象として懲戒請求を行った。」行為について,弁護士職務基本規程70条及び71条に違反し,弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとされました(自由と正義2019年7月号123頁及び124頁)。
(2) 2020年弁護士懲戒事件議決例集(第23集)21頁によれば,第一東京弁護士会の懲戒委員会議決書には,「対象弁護士Yは,離婚の解決を急いでいたが思うように話が進んでいなかったことより,懲戒請求者に対して懲戒請求する旨を伝えて懲戒請求者に圧力をかけるように指示するメール(乙ロ26及び27)を対象弁護士Aに送信していたことから,対象弁護士Yについては,懲戒請求制度を濫用する意図が明瞭であると断ぜざるを得ない。」と書いてあるみたいです。
2 懲戒請求者代理人の場合(1の事例の代理人弁護士です。)
(1) 平成31年3月25日発効の第一東京弁護士会の戒告の場合,「A弁護士からその妻Bに対する離婚調停事件、離婚訴訟事件等を受任していたところ、A弁護士の代理人として、上記調停事件の期日においてBないしBの代理人であった懲戒請求者C弁護士が調停委員に対してなしたとする、A弁護士がBを一方的に攻撃し自分は悪くないという自己弁護を記載したメールを長女に対し送付したなどの発言が虚偽の発言であり、A弁護士に対する名誉毀損に当たるなどとして、A弁護士が上記発言の基本的な部分が事実に基づくものであることを知っていたにもかかわらず、A弁護士の弁解を軽信してしかるべき調査を尽くさず、上記訴訟係属中の2014年4月14日、懲戒請求者C弁護士を対象として懲戒請求を行った。」行為について,弁護士職務基本規程70条に違反し,弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとされました(自由と正義2019年7月号124頁及び125頁)。
(2) 2020年弁護士懲戒事件議決例集(第23集)21頁及び22頁によれば,「対象弁護士Aについては,当委員会における陳述態度を見ても反省の情が顕著であり,懲戒請求者が希望するとおりの◯◯万円(山中注:原文でも伏せ字ですが,同議決例集18頁にはなぜか金額が書いてあります。)という高額な示談金を支払い,懲戒請求者との間で示談を成立させ,懲戒請求者から「本件非行事実を許し,懲戒請求を取り下げる」旨の供述を得,「できるだけ寛大な処分を望む」との上申書も提出されている。こうした事情を考慮し,今回に限り,対象弁護士Aについては戒告処分とするのを相当と考える」と書いてあります。



第5 弁護士の告発が懲戒事由となる限界事例等
1 弁護士の告発が懲戒事由となる限界事例

(1) 平成19年10月14日発効の日弁連の裁決には以下の記載があります(自由と正義2007年12月号198頁)。
① Cを告発した行為について
    弁護士が告発をする場合は、弁護士は調査及び検討について一般人より高度の能力を有し、また弁護士法第1条及び第2条の趣旨は弁護士に対し被告発者の人権にも一般人以上に配慮することを求めているといえるから、弁護士には、告発の根拠の調査及び検討につき、一般人より高度な注意義務が課せられている。本事案では、審査請求人がCを弁護士法違反で告発したことについては、告発行為の時点において、CがA社グループの債務整理を行っていたこと、成立させた弁済契約の内容は不公正なものであったことなどが認められ、審査請求人はこれらの事実を債権者、ホテル経営の責任者達からの通報で知ったことが認められる。また、CはD社によるホテルの運営受託業務において、一見して、不当・違法な行為を行う計画を立てていたことが明白に認められる。そして、審査請求人は、告発する約2週間前に山形警察署に相談し、告発を受理し捜査するという言明を得た上で告発行為を行うという慎重な行動をしている事実が認められる。捜査において、弁護士法第72条の報酬性の要件についての証拠固めが十分にできなかったため不起訴処分となったということはあるが、本件では、犯罪の嫌疑については相当程度高度の疑いが存在しており、審査請求人は弁護士に求められる告発の根拠の調査及び検討につき、注意義務を尽くしたというべきである。
    審査請求人の本件告発行為について、原弁護士会が弁護士として品位を失うべき非行に該当するとしたことは、相当でない。
(2) 原処分としての平成19年4月4日発効の山梨県弁護士会の戒告では,「① Cを告発した行為」について以下のとおり記載されていました(自由と正義2007年7月号150頁)。
    被懲戒者は、Bの相談相手で、懲戒請求者らが経営するホテルの運営管理を受託していた会社の専務取締役である懲戒請求者Cを、同年8月6日付で、十分な調査を行わず、具体的証拠がないまま非弁行為を理由として刑事告発した。
2 弁護士の告発予告が懲戒事由となった事例
・ 令和3年2月9日発効の大阪弁護士会の懲戒では,以下の行為について戒告とされました(自由と正義2021年6月号94頁)。
    被懲戒者は、Aと懲戒請求者Bの間の婚姻費用分担請求事件につきAの代理人であったが、2015年12月24日に上記事件の審判が確定し、Aが懲戒請求者Bに対して婚姻費用支払義務を負っていたにもかかわらず、2016年4月4日に懲戒請求者Bの代理人に対して審判に沿った支払いをする旨連絡したものの、それ以上の具体的な支払方法を示さなかったため、懲戒請求者Bの代理人が被懲戒者に対して同年5月13日までに婚姻費用の支払がない場合は法的手段をとる旨通知したところ、その前日である同月12日、懲戒請求者Bの代理人に対し、婚姻費用の支払とは全く関係のない詐欺罪での告発を持ち出し、強制執行をするのであれば刑事告発をすると書面に記載した送付した。
3 「刑事事件に発展する可能性がある」等と記載したことが懲戒事由となった事例
・ 令和3年2月9日発効の大阪弁護士会の懲戒では,以下の行為について戒告とされました(自由と正義2021年8月号54頁)。
    被懲戒者は、A株式会社の要求に応じて懲戒請求者に対し、A社の元総務部長Bに対する懲戒請求者の言動につき、犯罪が成立し、立件される可能性がないにもかかわらず、懲戒請求者に対する聴き取り調査を行わず、弁明の機会を与えないまま、「刑事事件に発展する可能性がある」等と記載して、殊更に犯罪成立及び立件の可能性、懲戒事由該当の可能性を示して退職届の提出を迫り、これに応じないときは懲戒解雇、法的手段に及ぶことを告げるなど、懲戒請求者の意思の自由を確保することへの配慮を全くせず、退職勧奨を目的とする通知として著しく適切さを欠くばかりか、即時の自宅待機を命ずるなど懲戒請求者に不当な結果を強要し、さらに、違法な相殺を理由とする退職金不支給を一方的に通知するなど、A社の正当な利益の実現を求めるものとは認められない内容の通知書を送付した。
4 告訴が被告訴人に対する不法行為を構成する場合

・ 広島高裁平成31年3月14日判決(判例時報2474号(2021年5月11日号)106頁ないし122頁)は,以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
    告訴は、被告訴人を犯罪者であると名指しするものであり、対象者である弁護士等に品位を失うべき非行があったこと等を理由とする懲戒の請求に比べ、被告訴人に対する非難の程度が異なり、その名誉等が毀損される程度はより大きい。そうすると、過失による不法行為における告訴人の注意義務は、懲戒請求者のそれ平成19年判決参照)に比べ高度なものというべきであり、告訴人が、被告訴人に犯罪の嫌疑をかけることを相当とする客観的根拠を確認すべき注意義務を怠った場合には、違法な告訴として不法行為を構成するものと解すべきである。
5 相手方に対する警告文で留意すべき事項
・ クロスレファレンス民事実務講義(第3版)6頁には,「弁護士としての「手紙」の出し方」の一内容として以下の記載があります。
    相手方(代理人に対するものも含む)に対する警告文で,「ついては,◯◯までに△△してください。△△がなされない場合,民事責任または刑事責任が生じる可能性もありますので,重々ご留意ください」というような表現を時折見かけます。しかし,あなたが,この文面を用いようとする場合,相手方代理人から「いかなる民事責任または刑事責任が生じることになるのか,明示して説明されたい」という返答が返ってくることを想定しましょう。特に,刑事責任の予告については,脅迫と紙一重ですから,真に刑事責任が生じると伝えて差し支えないのか,現実に告訴手続を取る覚悟が,依頼者にもあるのか,十分に自問・検討しましょう。また,民事の紛争で,刑事責任の予告を行うことのプラスの効果と,いたずらに相手方を刺激し感情的対立を激化させるマイナスを勘案すると,それを行うことが依頼者の利益になる,というケースは殆どないのではないか,と感じます。
    そこで,代理人に対する場合は,例えば「△△がなされない場合,紛争をいたずらに深刻化させることになりますので,ご留意いただきますようお願いいたします」,相手方に代理人が付いていない場合は,「△△がなされない場合,法的な責任が生じる可能性もありますので,ご留意くださいますようお願いします」,このような表現も考えられるところです。


第6 関連記事その他
1 弁護士の懲戒制度は,弁護士会又は日弁連の自主的な判断に基づいて,弁護士の綱紀,信用,品位等の保持をはかることを目的とするものでありますものの,弁護士法58条所定の懲戒請求権及び同法64条所定の異議申出権は,懲戒制度の目的の適正な達成という公益的見地から特に認められたものであり,懲戒請求者個人の利益保護のためのものではありません(最高裁昭和49年11月8日判決)。
2 以下の記事も参照してください。
・ 弁護士会の懲戒手続
・ 弁護士の懲戒事由
・ 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例
・ 弁護士の懲戒処分と取消訴訟
・ 弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文
・ 弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)

弁護士の懲戒処分の公告,通知,公表及び事前公表

目次
第1 懲戒処分の公告(日弁連会則68条)

1 日弁連による公告
2 大阪弁護士会による公告
第2 懲戒処分の通知(日弁連会則68条の3及び68条の4)
1 対象弁護士等に対する通知
2 日弁連等に対する通知
3 最高裁判所等に対する通知
4 懲戒請求者に対する通知
第3 懲戒処分の公表
1 弁護士会の場合
2 日弁連の場合(日弁連会則68条の2第1項参照)
第4 懲戒処分の事前公表
1 弁護士会の場合
2 日弁連の場合(日弁連会則68条の2第2項参照)
第5 弁護士の懲戒処分の官報公告に関する説明
第6 関連記事

第1 懲戒処分の公告(日弁連会則68条)
1 日弁連による公告
(1) 日弁連は,弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒した場合,遅滞なく,懲戒の処分の内容を官報をもって公告しなければなりません(弁護士法64条の6第3項)。
(2) 日弁連は,弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒した場合,懲戒の処分の内容等を機関雑誌である「自由と正義」に掲載して公告します(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程3条参照)。
2 大阪弁護士会による公告
(1)   大阪弁護士会所属の弁護士又は弁護士法人に対する懲戒処分があった場合,懲戒処分の主文及び詳細な理由が大阪弁護士会の機関紙である「月刊大阪弁護士会」(毎月末日発行)(大阪弁護士会HPの「広報誌」参照)に掲載されます。
(2) 大阪弁護士会館13階の会員ロビー掲示板にも,懲戒処分の主文及び詳細な理由が掲載されます。


第2 懲戒処分の通知(日弁連会則68条の3及び68条の4)
1 対象弁護士等に対する通知
   弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒した場合,又は懲戒しない旨を決定した場合,対象弁護士等に対し,懲戒の処分の内容及びその理由を書面により通知しなければなりません(懲戒した場合につき弁護士法64条の6第1項,懲戒しない旨を決定した場合につき弁護士法64条の7第1項2号及び同条第2項2号)。
2 日弁連等に対する通知
   弁護士会は,対象弁護士等を懲戒した場合,懲戒の手続に付された弁護士法人のほかの所属弁護士会及び日弁連に対し,懲戒の処分の内容及びその理由を書面により通知しなければなりません(弁護士法64条の6第2項)。
3 最高裁判所等に対する通知

   弁護士会又は日弁連が業務停止以上の懲戒処分をした場合,遅滞なく,最高裁判所,検事総長その他の官公署に対し,その旨及びその内容を通知しなければなりません(単位弁護士会による懲戒につき日弁連会則68条の3第1項及び懲戒処分の公告及び公表等に関する規程4条,日弁連による懲戒につき日弁連会則68条の3第2項及び懲戒処分の公告及び公表等に関する規程5条)。
4 懲戒請求者に対する通知
   弁護士会が対象弁護士等を懲戒し,又は懲戒した旨の決定をした場合,速やかに,懲戒請求者に対し,その旨及びその理由を書面により通知しなければなりません(日弁連会則68条の4第1項)。
   その際,日弁連に対して異議の申出ができる旨を教示しなければなりません(日弁連会則68条の4第2項)。

第3 懲戒処分の公表
1 弁護士会の場合
   弁護士会は,懲戒処分の効力発生後,懲戒処分の内容を速やかに公表することがあります(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程6条)ものの,戒告の場合は原則として公表しません。
2 日弁連の場合(日弁連会則68条の2第1項参照)
   日弁連は,業務停止,退会命令又は除名の場合,懲戒処分の効力発生後,原則として速やかに公表します(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程7条本文及び懲戒処分の公表等に関する規則)。
   日弁連は,戒告の場合,弁護士,弁護士法人,弁護士会又は日弁連に対する国民の信頼を確保するために必要と認めるときに限り,公表することができます(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程7条ただし書及び懲戒処分の公表等に関する規則)。


第4 懲戒処分の事前公表
1 弁護士会の場合
(1)   弁護士会は,綱紀委員会に事案の調査を求めたとき,又は懲戒委員会に事案の審査を求めたときは,懲戒に関する処分前であっても,会則又は会規に定めるところにより,対象弁護士の氏名等を公表することができます(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程8条参照)。
(2) 平成29年10月11日効力発生の,弁護士法人アディーレ法律事務所に対する業務停止2か月の懲戒処分の場合,懲戒処分の事前公表はされませんでした(弁護士自治を考える会HPの「『アディーレ処分から見える 弁護士組織の“悪質”なる定義』」参照)。
2 日弁連の場合(日弁連会則68条の2第2項参照)
   日弁連は,綱紀委員会に事案の調査を求めたとき,又は懲戒委員会に事案の審査を求めたときは,懲戒に関する処分前であっても,日弁連又は弁護士及び弁護士法人に対する国民の信頼を確保するために緊急かつ特に必要と認めるときは,対象弁護士の氏名等を公表することができます(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程9条参照)。


第5 弁護士の懲戒処分の官報公告に関する説明
・ 村山晃日弁連副会長は,平成20年12月5日の日弁連臨時総会において以下の説明をしています。
   懲戒制度を適正に運営をするということは、弁護士会への市民の信頼を確保し、弁護士自治を堅持するうえで不可欠である。懲戒制度の適正な運営は、まず懲戒処分が適正になされていることが最も大切なことである。しかし併せて、処分がなされた後、処分結果をどう扱っていくのかということも、もう一つの課題だと言える。
   そこで、まず導入をされたのが、「自由と正義」に公告をするという制度である。平成15年には弁護士法の改正があり、平成16年からは官報に、戒告も含めてすべての処分が公告をされることになっている。
   これと違って公表制度が、平成3年の臨時総会で導入された。「自由と正義」では、一般市民が知ることはできず不十分だということで、創設された。公表は、いわゆる業務停止以上の処分については、原則全部公表をする。戒告については、それぞれ単位会や日弁連の判断で、社会的にこれは公表するべきだと判断をされたものについてのみ公表をする。この5年間で今日時点まで165件の戒告事例があり、公表をされたのは6件となっている。そういう意味では、戒告については公表されていないケースがほとんどだとご理解をいただきたい。
    ただ、平成16年に官報公告が始まった結果、戒告もすべてこの公告の対象になるので、大変広い範囲の人たちが、結果的には弁護士の処分を知りうる状況になっている。


第6 関連記事その他
1(1) 奈良地裁平成20年11月19日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
    弁護士会が、綱紀委員会や懲戒委員会の懲戒に関する意見表明の前に、当該弁護士に詐欺・横領等の可能性が濃厚であることを公表することについても、それが当該弁護士に対する著しい不利益処分であり、ときにその名誉・信用を甚だしく毀損し回復不可能な損害を与える場合があることに照らせば、これを認める法令・会則等の規定があるか、又は当該弁護士の非行が重大であって、公表せずにいることによる依頼者等への被害の発生及び拡大が明白であり、公表の緊急の必要性があると認められる場合でなければ、公表することは許されないというべきところ、当時、被告弁護士会につきかかる公表をすることができる旨を定めた法令ないし会則等の規定が存在したことは認められない。
(2)ア 国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法となります(最高裁平成26年10月9日判決。なお,先例として,最高裁平成16年4月27日判決最高裁平成16年10月15日判決参照)。
イ 主務大臣の安衛法に基づく規制権限は,労働者の労働環境を整備し,その生命,身体に対する危害を防止し,その健康を確保することをその主要な目的として,できる限り速やかに,技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものに改正すべく,適時にかつ適切に行使されるべきものです(最高裁令和3年5月17日判決。なお,先例として,最高裁平成16年4月27日判決最高裁平成26年10月9日判決)。
2 以下の記事も参照してください。
・ 弁護士の懲戒事由
 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例
 弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義
・ 弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文
・ 「弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)
→ 令和元年の場合,審査請求の件数は30件であり,原処分取消は3件であり,原処分変更は1件です。
・ 弁護士会の懲戒手続

弁護士の業務停止処分に関する取扱い

目次
1 業務停止処分を受けた場合の取扱い
2 業務停止を受けた弁護士が途中で辞任した場合の依頼者との法律関係
3 業務停止処分中の訴訟行為は有効であること
4 委任契約終了時の一般的な義務
5 業務停止の効力発生時期に関する解釈の変遷
6 弁護士の業務停止に関する最高裁平成19年12月18日決定の補足意見
7 普通地方公共団体の議会の議員の出席停止の懲罰と司法審査(参考)
8 関連記事その他

1 業務停止処分を受けた場合の取扱い
(1) 業務停止処分を受けた弁護士及び弁護士法人が取るべき措置に関する基準として以下のものがあります。
① 弁護士の場合
   被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準(平成4年1月17日日弁連理事会議決)
→ 弁護士が業務停止の懲戒処分を受けた場合,業務停止の期間中,①依頼者との委任契約を解除したり(業務停止期間が1ヶ月以内の場合であり,依頼者が委任契約の継続を望む場合を除く。),②顧問契約を解除したり,③補助弁護士(=復代理人又は雇傭する等した弁護士)の監督ができなくなったり,④原則として事務所の使用ができなくなったり,⑤法律事務所の表示を除去したり,⑥弁護士の肩書等のある名刺等を使用できなくなったり,⑦弁護士記章及び身分証明書を日弁連に返還したり,⑧会務活動ができなくなったり,⑨公職等を辞任したりする必要があります。
② 弁護士法人の場合
   弁護士法人の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準(平成13年12月20日日弁連理事会議決)
→ 被懲戒弁護士法人の社員等(=被懲戒弁護士法人の社員又は使用人である弁護士(第二のAの5後段。なお,弁護士法30条の6第1項前段参照))は,被懲戒弁護士法人が解除すべき,又は解除した法律事件等を,個人として引き継いで行うことはできません。
   ただし,被懲戒弁護士法人の他の社員の承諾があり,かつ,依頼者が受任を求めるときはこの限りではないものの,当該社員等は,依頼者に対して委任を求める働きかけをしてはならず,受任する場合,依頼者から,業務停止にかかる説明を受けて委任した旨の書面を受領しなければなりません(第二のAの9参照)。
(2) 訴訟代理人の権限の消滅は,本人又は訴訟代理人から相手方に通知しなければ,その効力を生じませんし(民事訴訟法59条・36条1項),訴訟代理権の権限の消滅の通知をした者は,その旨を裁判所に書面で届け出なければなりません(民事訴訟規則23条3項)。
   つまり,被懲戒弁護士は,辞任届を裁判所及び相手方の両方に提出しなければなりません。
(3) 弁護士法人の依頼者が,当該法人に事件を依頼した際,当該法人とは別に,当該法人所属の弁護士に共同で事件を個人受任してもらっている場合,当該弁護士に引き続き事件処理を依頼することができると思いますが,弁護士法人の業務停止の潜脱として許されないかも知れません。
   また,この場合,当該弁護士が,業務停止にかかる説明を受けて委任した旨の書面を依頼者から受領する必要があるかどうかは不明です。
(4) 被懲戒弁護士が処分を受ける前に雇用した弁護士(補助弁護士)は,被懲戒弁護士の事務所を自己の法律事務所として使用することができます( 被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準 第一の九)。
(5) 被懲戒弁護士は,期日変更申請,訴訟書類の授受,保証金の還付,復代理人の選任等もできなくなると最高裁判所は考えています(平成29年10月11日付の,弁護士法人等の懲戒処分(業務停止)について(最高裁判所事務総局民事局第一課長等の事務連絡))。
(6) 自由と正義2024年2月号71頁(懲戒処分の公告)に「業務停止1月の懲戒処分においては、依頼者から委任継続の意思を記載した確認書面を受領し、所属弁護士会に提出することを条件として、受任している事件の辞任を回避することが可能である」と書いてあります。


2 業務停止を受けた弁護士が途中で辞任した場合の依頼者との法律関係
(1) 着手金の全部又は一部を返還し,かつ,みなし成功報酬金は請求できないと思われること等
ア   大阪高裁平成22年5月28日判決は以下の判示をしています。
① 訴訟委任契約に伴う着手金は、弁護士への委任事務処理に対する報酬の一部の前払の性質を有するものであり、この訴訟委任契約が受任者である弁護士の債務不履行によって解除された場合には、原則として、受領した着手金を返還すべきであるところ、その契約の解除に至るまでの間に委任の趣旨に沿った事務処理が一部されたときは、同事務処理費用のほか、その委任契約全体に占めるその事務の重要性及びその事務量等を勘案して、その分に見合う額については返還することを要しないと解するのが相当である。
② 被控訴人は、着手金以外に、みなし成功報酬又は民法六四八条三項に基づき報酬の支払を求めているが、上記説示のとおり、甲・乙事件についての各委任契約は受任者である被控訴人の責めに帰すべき事由による本件解任により終了したのであるから、被控訴人が上記報酬の支払を求めることができないことは明らかである。
イ 訴訟代理人としてなすべき業務が未だ存在していた段階で業務停止により辞任する場合,対象弁護士は着手金の清算義務があります。
   また,着手金返還の協議については,対象弁護士としてできる限りの協議を尽くしたうえで解決ができなかったとすれば,民事調停又は民事訴訟の方法を利用すべきであるという意見も認められることもありますが,十分な努力をせずに元依頼者に訴訟手続き等の負担を強いるのは,適切かつ妥当な対応とはいえません(平成28年4月11日付の日弁連懲戒委員会の議決(平成28年弁護士懲戒事件議決例集(第19集)21頁)参照。なお,事案につき,弁護士自治を考える会HPの「懲戒処分の要旨」参照)。

(2) 概算実費その他の預り金の清算
ア 弁護士は,委任の終了に当たり,委任契約に従い,金銭を清算したうえ,預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければなりません(弁護士職務基本規程45条)。
イ   
債務整理事務の委任を受けた弁護士が委任者から債務整理事務の費用に充てるためにあらかじめ交付を受けた金銭は,民法上は同法649条の規定する前払費用に当たるものと解されます。
   そして,前払費用は,交付の時に,委任者の支配を離れ,受任者がその責任と判断に基づいて支配管理し委任契約の趣旨に従って用いるものとして,受任者に帰属するものとなると解されます。
   受任者は,これと同時に,委任者に対し,受領した前払費用と同額の金銭の返還義務を負うことになりますところ,その後,これを委任事務の処理の費用に充てることにより同義務を免れ,委任終了時に,精算した残金を委任者に返還すべき義務を負うこととなります(最高裁平成15年6月12日判決)。
(3) 訴訟復代理人の代理権は当然には消滅しないこと
   訴訟代理人がその権限に基づいて選任した訴訟復代理人は独立して当事者本人の訴訟代理人となるものですから、選任後継続して本人のために適法に訴訟行為をなし得るものであって,訴訟代理人の死亡によって当然にその代理資格を失なうわけではありません(最高裁昭和36年11月9日判決)。
   そのため,業務停止処分を受けた弁護士法人が外部の弁護士を訴訟復代理人にしている場合,当該復代理人の権限は業務停止処分を受けた弁護士法人の辞任によって当然に消滅するわけではないと思います。
(4) 消費者契約法により無効となる可能性がある条項
ア   業務停止を受けた弁護士の損害賠償責任を免除する条項は消費者契約法8条により,委任者が払う損害賠償の額を予定する条項は消費者契約法9条により無効となることがあります。
イ 消費者庁HPの「逐条解説」に,消費者契約法の逐条解説が載っています。
(5) 依頼者等に対する引継ぎはできること
   被懲戒弁護士は,委任契約及び顧問契約を解除する場合,依頼者及び当該事件を新たに取り扱う弁護士に対し誠実に法律事務の引継ぎをしなければなりません(被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準(平成4年1月17日日弁連理事会議決)第二の五)。


3 業務停止処分中の訴訟行為は有効であること
   弁護士業務を停止され,弁護士活動をすることを禁止されている者の訴訟行為であっても,その事実が公にされていないような事情のもとにおいては,一般の信頼を保護し,裁判の安定を図り,訴訟経済に資するという公共的見地から当該弁護士のした訴訟行為は有効とされています(最高裁大法廷昭和42年9月27日判決)。
   
4 委任契約終了時の一般的な義務
(1) 弁護士は,委任の終了に当たり,事件処理の状況又はその結果に関し,必要に応じ法的助言を付して,依頼者に説明しなければなりません(弁護士職務基本規程44条)。
(2) 委任契約や準委任契約においては,受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負いますところ(民法645条,656条),これは,委任者にとって,委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに,受任者の事務処理の適切さについて判断するためには,受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解されます(最高裁平成21年1月22日判決)。


5 業務停止の効力発生時期に関する解釈の変遷
(1) 旧弁護士法58条は「本法二規定スルモノノ外懲戒二付テハ判事懲戒法ヲ準用ス」と規定し,判事懲戒法46条は「懲戒裁判所ノ裁判ハ確定ノ後二非サレハ之ヲ執行スルコトヲ得ス」と規定していたため,弁護士の懲戒処分の効力発生時期が確定時であることは法文上明確でした。
(2) 現行弁護士法が制定された後も,日弁連の運用上,弁護士の懲戒処分の効力発生時期が確定時であるとされていました。
(3) 昭和37年10月1日施行の行政不服審査法34条1項は,「審査請求は,処分の効力,処分の執行又は手続の続行を妨げない」と規定しています。
   また,このときの弁護士法改正により,懲戒処分を受けた弁護士は上級行政庁たる日弁連に対して審査請求をすることができるとされ,弁護士の懲戒処分も一般行政庁の行う懲戒処分と同様に扱われることとなりました。
   そのため、弁護士の懲戒処分も一般の行政処分と同様に告知によって直ちにその効力を生ずるのではないかといわれるようになりました。
   しかし,日弁連は,昭和40年12月24日付の「弁護士に対する『懲戒処分の効力発生時期』について」と題する通達において,戒告及び業務停止の効力発生時期は確定時であると主張しました。
(4) 最高裁大法廷昭和42年9月27日判決は,弁護士に対する懲戒処分は告知時に効力が生ずるという解釈を全員一致で採用し,従前の日弁連の見解と対立する意見を表明しました。
    そのため,日弁連は,昭和43年1月20日の理事会において,懲戒処分は,当該会員にこれを告知した時に直ちに効力を発生することを承認し、以後、告知時説による取扱いをするようになりました。
(5) 弁護士懲戒手続の研究と実務(第3版)194頁ないし199頁に詳しい経緯が書いてあります。

6 弁護士の業務停止に関する最高裁平成19年12月18日決定の補足意見
・ 最高裁平成19年12月18日決定における裁判官田原睦夫の補足意見には以下の記載があります。
    弁護士業務は,その性質上,高い信用の保持と業務の継続性が求められるところ,多数の訴訟案件,交渉案件を受任している弁護士が数か月間にわたる業務停止処分を受けた場合,その間,法廷活動,交渉活動,弁護活動はもちろんのこと,顧問先に係る業務を始めとして一切の法律相談活動はできず,業務停止処分により,従前の依頼者は他の弁護士に法律業務を依頼せざるを得なくなるが,進行中の事件の引継ぎは容易ではない。また,懲戒を受けた弁護士の信用は大きく失墜する。そして,業務停止期間が終了しても,いったん他の弁護士に依頼した元の依頼者が再度依頼するとは限らず,また,失墜した信用の回復は容易ではない。
    業務停止処分を受けた弁護士が受ける上記の状況によって生ずる有形無形の損害は,後にその処分が取り消された場合に,金銭賠償によっては容易に回復し得ないものである。

7 普通地方公共団体の議会の議員の出席停止の懲罰と司法審査(参考)
(1) 普通地方公共団体の議会の議員の場合,除名処分の適否は司法審査の対象となる(最高裁大法廷昭和35年3月9日判決参照)ものの,出席停止の懲罰の適否は司法審査の対象とならないとされていました(最高裁大法廷昭和35年10月19日判決)。
    しかし,最高裁大法廷令和2年11月25日判決は判例変更をして,普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰も司法審査の対象になると判示しました。
(2) 県議会議長の県議会議員に対する発言の取消命令の適否は,司法審査の対象とはなりません(最高裁平成30年4月26日判決)。
(3) 普通地方公共団体の議会又は議長の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟については,議長が当該普通地方公共団体を代表します(地方自治法105条の2)。

8 関連記事その他

(1) 債務整理ナビ「担当弁護士が業務停止した場合にすべき3つのこと|依頼案件はどうなる? 」が載っています。
(2) 東京地裁平成27年9月18日判決(判例時報2294号65頁)は,約20億円の赤字を抱え,代表者からの借入等で資金繰りを回す状態であった弁護士法人(平成23年3月1日設立)による整理解雇について,解雇回避努力義務が不十分であるなどとして,事務員(元裁判所書記官であり,東京高裁から懲戒免職処分を受けたものの,そのことを秘して弁護士法人に採用された人です。)の整理解雇は無効であると判断しました。


(3) 免職された公務員が免職処分の取消訴訟の係属中に死亡した場合,その取消判決によって回復される当該公務員の給料請求権等を相続する者が右訴訟を承継します(最高裁昭和49年12月10日判決)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 弁護士の戒告,業務停止,退会命令及び除名,並びに第二東京弁護士会の名簿登録拒否事由
 弁護士法人アディーレ法律事務所に対する懲戒処分(平成29年10月11日付)
 弁護士の懲戒処分と取消訴訟
 弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)

弁護士の戒告,業務停止,退会命令及び除名,並びに第二東京弁護士会の名簿登録拒否事由

目次
0 総論
1 戒告
2 業務停止
3 退会命令
4 除名
5 弁護士の懲戒処分に関する日弁連副会長の説明
6 第二東京弁護士会の名簿登録拒否事由
7 関連記事その他

0 総論
(1)ア 弁護士に対する懲戒処分は,それが対象弁護士に告知されたときにその効力が生じます(最高裁大法廷昭和42年9月27日判決)。
イ 最高裁大法廷昭和42年9月27日判決が出る前は,弁護士の懲戒処分は,他の行政処分と異なり,告知と同時に効力を生せず,確定を待って初めて効力を生ずるものと解釈され,実務の上でもそのように取り扱われていました(日弁連二十年史99頁及び100頁)。
(2) 憲法39条後段の規定は何人も同じ犯行について二度以上罪の有無に関する裁判を受ける危険にさらされるべきものではないという根本思想に基づく規定です(最高裁大法廷昭和25年9月27日判決)。
   そして,弁護士法に規定する懲戒は刑罰ではありませんから,被告人が弁護士法に規定する懲戒処分を受けた後,さらに同一の事実に基づいて刑事訴追を受けて有罪判決を言い渡されたとしても,二重の危険にさらされたものということはできません(最高裁昭和29年7月2日判決)。
(3) 弁護士会の懲戒処分は,弁護士にとって刑罰にも比すべき重大なものではあるが,弁護士法の定めるところにより,弁護士の使命および職務の特殊性にかんがみ,弁護士会に与えられた公の権能の行使として当該弁護士会が自主的に行うものであって,その性質は,広い意味での行政処分としての懲戒罰であると解されています(東京高裁平成元年4月27日判決)。
(4) 弁護士懲戒処分検索センターHPの「懲戒の種類」に,戒告,業務停止,退会命令及び除名に関する説明が載っています。


1 戒告
(1)ア 戒告とは,対象弁護士に対し,その非行の責任を確認させて反省を求め,再び過ちがないように戒める懲戒処分をいい,懲戒処分の中では最も軽い処分です。
イ 弁護士に対する戒告処分は,それが当該弁護士に告知された時にその効力が生じ,告知によって完結するのであって,その後に会則97条の3第1項に基づいて行われる公告は,処分があった事実を一般に周知させるための手続であって,処分の効力として行われるものでも,処分の続行手続として行われるものでもありません(最高裁平成15年3月11日決定)。
(2) 戒告を受けた弁護士は,処分の告知を受けた後も従前通り弁護士業務を行うことができますし,弁護士たる身分及び弁護士資格を失うことはありません。
   ただし,戒告を受けた弁護士が所属している法律事務所は1年間,東京三弁護士会主催の司法修習生向け就職説明会に参加できなくなります(「司法修習開始前の日程」参照)などの効果を伴います。
   また,戒告の理由の要旨が「自由と正義」等に掲載されるため,自分の不祥事の内容が弁護士業界に広く知られることとなります。
   そのため,懲戒処分としての戒告は,軽い処分とはいえません。
(3) 弁護士自治を考える会HPの「弁護士懲戒処分〔戒告〕と〔業務停止〕ではどこが違うのか」にも,戒告と業務停止は月とスッポンぐらいに処分の重さに違いがあると書いてあります。

2 業務停止
(1) 業務停止とは,対象弁護士に一定期間,弁護士業務を行うことを禁止する懲戒処分をいいます。
(2)   業務停止を受けた弁護士は,特に効力停止の決定を得ない限り,処分の告知を受けた時から一定期間,弁護士業務を行うことができなくなります。
   ただし,退会命令及び除名と異なり,弁護士たる身分及び弁護士資格を失うわけではありません。
(3)ア 弁護士業務は,その性質上,高い信用の保持と業務の継続性が求められますところ,多数の訴訟案件,交渉案件を受任している弁護士が数か月間にわたる業務停止処分を受けた場合,その間,法廷活動,交渉活動,弁護活動はもちろんのこと,顧問先に係る業務を始めとして一切の法律相談活動はできず,業務停止処分により,従前の依頼者は他の弁護士に法律業務を依頼せざるを得なくなりますところ,進行中の事件の引継ぎは容易ではありません。
   また,懲戒を受けた弁護士の信用は大きく失墜しますし,業務停止期間が終了しても,いったん他の弁護士に依頼した元の依頼者が再度依頼するとは限らず,また,失墜した信用の回復は容易ではありません(最高裁平成19年12月18日決定における裁判官田原睦夫の補足意見参照)。
   そのため,懲戒処分としての業務停止は,非常に重い処分であるといえます。
イ 弁護士法人が業務停止を受けた場合の影響の大きさについては,msnニュースの「アディーレの不適切業務めぐる「処分」の重み 懲戒の段階によって影響は断然変わってくる」が参考になります。
(4) 1か月を超える期間の業務停止処分を受けた弁護士又は弁護士法人は,依頼者が委任契約の継続を求める場合であっても,委任契約を全部解除しなければなりません(被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準(平成4年1月17日日弁連理事会議決)第二の一)。
(5)ア 1か月を超える期間の業務停止処分を受けた弁護士又は弁護士法人は,所属弁護士会に対し,戸籍謄本等請求用紙を返還しなければなりません(弁護士につき戸籍謄本等請求用紙の使用及び管理に関する規則7条1項,弁護士法人につき同規則7条2項)。
イ 戸籍謄本等請求用紙とは,弁護士が,戸籍法及び住民基本台帳法並びにこれらに基づき定められた政省令の規定に基づき弁護士の業務に関する戸籍謄本,住民票の写し等の交付の請求に使用する用紙であって,日弁連が作成したものをいいます(戸籍謄本等請求用紙の使用及び管理に関する規則2条)。


3 退会命令
(1) 退会命令とは,対象弁護士をその所属弁護士会から一方的に退会させる懲戒処分をいいます。
(2) 退会命令を受けた弁護士は,特に効力停止の決定を得ない限り,処分の告知を受けた時からその所属弁護士会を当然に退会して弁護士たる身分を失います。
   ただし,除名と異なり,弁護士資格を失うわけではありません。
(3)ア 退会命令を受けた弁護士は,法的には,改めて入会を希望する弁護士会を通じて弁護士登録の請求をすることができます。
   しかし,「弁護士会の秩序若しくは信用を害するおそれがある者」(弁護士法12条1項柱書)に該当するかどうかが特に審査され,当該おそれがあると判断された場合,入会しようとする弁護士会から日弁連への登録請求の進達を拒絶されることがあります。
イ 弁護士会の入会審査については,「弁護士登録制度」を参照してください。
(4) 懲戒処分としての退会命令は,弁護士生命を事実上終わらせる可能性があるぐらい,重い処分です。

4 除名
(1) 除名とは,対象弁護士の弁護士たる身分を一方的に失わせる懲戒処分をいいます。
(2) 除名処分を受けた弁護士は,特に効力停止の決定を得ない限り,処分の告知を受けた時からその所属弁護士会を当然に退会して弁護士たる身分を失い,かつ,処分の告知を受けた日から3年間,弁護士資格を失います(弁護士法7条3号)。
(3) 除名された弁護士は,告知の日から3年が経過するまでの間,弁護士登録の請求をすることができません。
   また,告知の日から3年が経過してから弁護士登録の請求をした場合,「弁護士の職務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者」(弁護士法12条1項柱書)に該当するかどうかが特に審査され,当該おそれがあると判断された場合,入会しようとする弁護士会から日弁連への登録請求の進達を拒絶されることがあります。
(4) 懲戒処分としての退会命令は,弁護士生命を事実上終わらせる可能性が極めて高い,重い処分です。

5 弁護士の懲戒処分に関する日弁連副会長の説明
・ 井元義久 日弁連副会長は,法曹制度検討会(第4回)(平成14年5月14日実施分)において以下のとおり説明しています。
懲戒処分というのがどういうものであるかということを御理解いただくために、若干申し述べさせていただきます。まず、資料3をごらんいただきます。懲戒処分につきましては、4つの種類がございまして、まず軽い順番からいきますと「戒告」、次に2年以内の「業務停止」、更に「退会命令」、「除名」という4段階になっております。これは要するに、非行が軽いという順番でこういう具合に懲戒処分がなされるということでございます。退会命令と除名というのは、弁護士会は強制加入団体でございますから、弁護士会に加入しないと弁護士活動はできないということは御承知のとおりだと思いますが、退会命令と除名の違いというのは、「綱紀・懲戒制度に関する資料」の資料3に書いておりますので、ごらんいただければ幸いでございます。
 いずれの処分がなされた場合でも、日弁連の機関誌『自由と正義』に毎月掲載されます。したがいまして、会員には少なくとも全員に周知徹底されておるということでございます。業務停止以上になりますと、弁護士会から最高裁、最高検などを含め、弁護士会のある地域の地方裁判所及びその支部、地方検察庁及びその支部、簡易裁判所、区検察庁、都道府県、そういうところ全部に懲戒された弁護士の氏名、住所、生年月日、それから懲戒の種類、内容、業務停止になりました場合はその期間、こういうものがすべて通知される仕組みになっておりまして、更に記者会見が行われて公表されます。ときどき新聞に載っているのは、この記者会見をされた結果でございまして、これは弁護士会が積極的にそのような外部公表をしているということでございます。
 それから、更に懲戒された弁護士への執行といたしましては、弁護士会が担当副会長、あるいは事務職員がその弁護士の事務所に行きまして、弁護士の看板をはずす。それからバッチの返還をさせる。更に看板が撤去できない場合は、白紙を看板の上に張ってくるということをしております。そして、弁護士は現在受任している事件、これもすべて辞任しなければいけない。更に顧問会社との契約は即時解約しなければいけないというような極めて厳しい処分だということになっております。この辺を十分御理解くださいまして、今回の綱紀・懲戒問題の制度設計については、お考えいただければ弁護士会としては幸いだと考えております。

6 第二東京弁護士会の名簿登録拒否事由
   第二東京弁護士会は,「各種法律相談,弁護士紹介等担当者名簿に関する規則」6条に基づき,以下の事項に該当する会員については,名簿への登録を拒否しているみたいです(二弁フロンティア2018年7月号「弁護士保険とリーガル・アクセス・センター~その期待と課題,今後の展望~」末尾26頁及び27頁)。
① 当会または日弁連の懲戒委員会で審査中
② 戒告処分から3年を経過していない
③ 業務停止明けから5年を経過していない
④ 過去20年間に戒告1回以上+業務停止1回以上、または過去20年に戒告3回以上
⑤ 退会命令または除名の懲戒処分を受けたことがある
⑥ 会費免除中(出産・育児を理由とするものを除く)
⑦ 過去3年に会費滞納額が6か月分以上に達したことがある
⑧ 非弁提携の疑いで是正指導を受けてから1年を経過していない
⑨ 会立件により綱紀委員会で調査中
⑩ 法テラスの契約締結拒絶期間中
⑪ 倫理研修の未履修による措置を受け、措置の期間中
⑫ 市民窓口への苦情が一定期間中に一定回数を超え事情聴取の対象となり、事情聴取の結果名簿への登録拒否が相当と認められた会員
など。

7 関連記事その他
(1)ア 普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は従前,司法審査の対象外でしたが(最高裁大法廷昭和35年10月19日判決),最高裁大法廷令和2年11月25日判決によって司法審査の対象となりました。
イ 政党が党員に対してした処分は,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,裁判所の審判権は及びません(最高裁昭和63年12月20日判決)。
(2) 自由と正義2018年12月号64頁に載ってある,大阪弁護士会の業務停止3月(平成30年9月12日発効)の「処分の理由の要旨」は以下のとおりです(「【弁護士】◯◯ ◯◯ 大阪:業務停止3月」(リンク先の記事は実名です。)参照)。
① 被懲戒者は、懲戒請求者株式会社AからB株式会社の懲戒請求者A社らに対する所有権移転登記手続等を求める訴訟等への対応につき受任し、2014年12月5日に成立した訴訟上の和解に基づきB社に支払うために懲戒請求者A社から合計6460万円の送金を受けたが、B社が代理人弁護士を解任していたため、上記和解の条項にのっとって支払をすることができず、上記金6460万円を預かったままとなっていたところ、2015年7月17日に懲戒請求者A社が被懲戒者に対し一切の委任契約の解除を申し入れ、被懲戒者がこれに同意した後、明確な報酬合意がないにもかかわらず、弁護士報酬等との相殺を一方的に主張して上記6460万円を懲戒請求者A社に返還しなかった。
② 被懲戒者は、C株式会社が懲戒請求者A社に対して提起した訴訟において、C社の要請に応じて、被懲戒者が懲戒請求者A社の代理人として活動してきた経過や職務上知り得た事実をかなり詳細に記載した陳述書を2016年10月26日付けで作成し、C社はこれを証拠として裁判所に提出した。
③ 被懲戒者の上記①の行為は弁護士職務基本規程第45条に、上記②の行為は同規程第23条に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
(3) 以下の記事も参照して下さい。
・ 弁護士の懲戒処分と取消訴訟
・ 弁護士の業務停止処分に関する取扱い
・ 弁護士法人アディーレ法律事務所に対する懲戒処分(平成29年10月11日付)
・ 弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)

弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文

○弁護士職務基本規程82条2項は「第一章並びに第二十条から第二十二条まで、第二十六条、第三十三条、第三十七条第二項、第四十六条から 第四十八条まで、第五十条、第五十五条、第五十九条、第六十一条、第六十八条、第七十条、第七十三条及び 第七十四条の規定は、弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければならない。」と定めています。
そのため,これらの条文に形式的に違反する行為があったとしても,それによって直ちに懲戒の事由と判断されるものではなく,弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行があったとき」として評価されるかどうかの判断の一要素となるに過ぎません。
○該当する条文の中身は以下のとおりです。

第一章 基本倫理 
(使命の自覚)
第一条 弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に努める。
(自由と独立)
 第二条 弁護士は、職務の自由と独立を重んじる。
 (弁護士自治)
 第三条 弁護士は、弁護士自治の意義を自覚し、その維持発展に努める。
 (司法独立の擁護)
 第四条 弁護士は司法の独立を擁護し司法制度の健全な発展に寄与するように努める
(信義誠実)
 第五条 弁護士は、真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行うものとする。
 (名誉と信用)
 第六条 弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める。
 (研鑽)
 第七条 弁護士は、教養を深め、法令及び法律事務に精通するため、研鑽に努める。
 (公益活動の実践)
 第八条 弁護士は、その使命にふさわしい公益活動に参加し、実践するように努める。
(依頼者との関係における自由と独立)
第二十条 弁護士は、事件の受任及び処理に当たり、自由かつ独立の立場を保持するように努める。
(正当な利益の実現)
第二十一条 弁護士は、良心に従い、依頼者の権利及び正当な利益を実現するように 努める。
(依頼者の意思の尊重)
第二十二条 弁護士は、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うも のとする。
2 弁護士は、依頼者が疾病その他の事情のためその意思を十分に表明できないときは、適切な方法を講じて依頼者の意思の 確認に努める。
(依頼者との紛議)
 第二十六条 弁護士は、依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じないように努め、紛議が生じたときは、所属弁護士会の 紛議調停で解決するように努める。
(法律扶助制度等の説明)
 第三十三条 弁護士は、依頼者に対し、事案に応じ、法律扶助制度、訴訟救助制度 その他の資力の乏しい者の権利保護のための制度を説明し、裁判を受ける権利が 保障されるように努める。
(法令等の調査)
 第三十七条 (1項は対象外)
2 弁護士は事件の処理に当たり必要かつ可能な事実関係の調査を行うように努める。
(刑事弁護の心構え)
 第四十六条 弁護士は、被疑者及び被告人の防御権が保障されていることにかんがみ、その権利及び利益を擁護するため、最善の弁護活動に努める。
 (接見の確保と身体拘束からの解放)
 第四十七条 弁護士は、身体の拘束を受けている被疑者及び被告人について、必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努める。
(防御権の説明等)
 第四十八条 弁護士は、被疑者及び被告人に対し、黙秘権その他の防御権について適切な説明及び助言を行い、防御権及び弁護権に対する違法又は不当な制限に対し、 必要な対抗措置をとるように努める。
(自由と独立)
 第五十条 官公署又は公私の団体(弁護士法人を除く。以下これらを合わせて「組織」という)において職員若しくは使用人となり、 又は取締役、理事その他の役員となっている弁護士(以下「組織内弁護士」という)は、弁護士の使命及び弁護士の本質である自由と 独立を自覚し、良心に従って職務を行うように努める。
(遵守のための措置)
 第五十五条 複数の弁護士が法律事務所(弁護士法人の法律事務所である場合を除く)を共にする場合(以下この法律事務所を「共同 事務所」という)において、その共同事務所に所属する弁護士(以下「所属弁護士」という)を監督する権限のある弁護士は、所属 弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるように努める。
(事件情報の記録等)
 第五十九条 所属弁護士は、職務を行い得ない事件の受任を防止するため、他の所属弁護士と共同して、取扱い事件の依頼者、相手方及 び事件名の記録その他の措置をとるように努める。
(遵守のための措置)
 第六十一条 弁護士法人の社員である弁護士は、その弁護士法人の社員又は使用人である弁護士(以下「社員等」という)及び使用人で ある外国法事務弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるように努める。
(事件情報の記録等)
 第六十八条 弁護士法人は、その業務が制限されている事件を受任すること及びその社員等若しくは使用人である外国法事務弁護士が 職務を行い得ない事件を受任することを防止するため、その弁護士法人、社員等及び使用人である外国法事務弁護士の取扱い事件の 依頼者、相手方及び事件名の記録その他の措置をとるように努める。
(名誉の尊重)
 第七十条 弁護士は他の弁護士、弁護士法人及び外国法事務弁護士(以下弁護士等という)との関係において、相互に名誉と信義を重んじる。
(弁護士間の紛議)
 第七十三条 弁護士は、他の弁護士等との間の紛議については、協議又は弁護士会の紛議調停による円満な解決に努める。
(裁判の公正と適正手続)
 第七十四条 弁護士は、裁判の公正及び適正手続の実現に努める。

非弁護士との提携の禁止

目次
第1 総論
第2 弁護士法72条から74条までの規定に違反している者の内容
第3 弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
1 条文等
2 弁護士法72条のそれぞれの文言の意義
第4 弁護士法73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
1 条文等
2 サービサー法の位置づけ等
第5 非弁護士との提携の取締り
第6 弁護士法人ベリーベストの懲戒処分に関する文書
第7 関連記事その他

第1 総論
1 非弁提携の禁止に関しては,「弁護士は,弁護士法第72条から第74条までの規定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当な理由のある者から依頼者の紹介を受け,これらの者を利用し,又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。」(弁護士職務基本規程11条。なお,同趣旨の規定につき大阪弁護士会会則108条2項)と規定されています。
   そして,禁止される提携の対象は,弁護士法27条と異なり,①弁護士法72条ないし74条の規定に違反する者に限らず,「違反すると疑うに足りる相当な理由のある者」にまで広げられていますし,②「事件の周旋」に限らず,「依頼者の紹介」にまで広げられています。
2 「自己の名義を利用させる」とは,「弁護士某」という名義の他,氏名だけの利用も含まれますし,「○○法律事務所」という標示についても名義の利用に当たる場合があります。
   例としては,大量に処理する報告書,内容証明郵便等に,弁護士の氏名を記載し,更に弁護士の印鑑を弁護士でない者に預けて押捺させる場合があります。


第2 弁護士法72条から74条までの規定に違反している者の内容
1 弁護士法72条から74条までの規定に違反している者の内容は以下のとおりであり,①ないし③に該当する場合,2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられ(弁護士法77条),④ないし⑥に該当する場合,100万円以下の罰金に処せられます(弁護士法77条の2)。
① 弁護士又は弁護士法人でないのに,報酬を得る目的で,業として,訴訟事件その他一般の法律事件に関して,鑑定,代理,和解等の法律事務を取り扱う者(弁護士法72条本文前段違反)
② 弁護士又は弁護士法人でないのに,報酬を得る目的で,業として,法律事件に関する法律事務の取扱いを周旋する者(弁護士法72条本文後段違反)
③ 他人の権利を譲り受けて,訴訟等の手段によって,その権利を実行することを業とする者(弁護士法73条違反)
④ 弁護士又は弁護士法人でないのに,弁護士又は法律事務所の標示又は記載をする者(弁護士法74条1項違反)
⑤ 弁護士又は弁護士法人でないのに,利益を得る目的で,法律相談その他法律事務を取り扱うことを標示又は記載した者(弁護士法74条2項違反)
⑥ 弁護士法人でないのに,その名称中に弁護士法人又はこれに類似する名称を用いた者(弁護士法74条3項違反)
2 平成13年6月8日法律第41号(平成14年4月1日施行)に基づき弁護士法人の制度が導入されたことに伴い,弁護士法人を主体とする犯罪(弁護士法30条の21において準用される弁護士法27条及び28条に違反した場合)についても弁護士法77条の適用があることを明確にするとともに,罰金刑の最高額が100万円から300万円に引き上げられました。
3 弁護士でない者に,自己の法律事件の示談解決を依頼し,これに,報酬を与えもしくは与えることを約束した者を,弁護士法72条,77条違反の罪の教唆犯として処罰することはできません(最高裁昭和43年12月24日判決)。
4 自己の法律事件の解決を弁護士でない者に依頼した者については,弁護士法72条違反の罪の共同正犯にもならないこととなります。
   なぜなら,最高裁昭和43年12月24日判決は,弁護士法は,自己の法律事件を自ら取り扱うことまで禁止しているものとは解されないとしているので,自己の法律事件を弁護士でない者に依頼した者が,弁護士法72条違反の罪の正犯となることはあり得ず,共同正犯にもならないからです。
5 以下の士業から依頼者の紹介を受けたり,以下の士業を利用したりした場合,弁護士職務基本規程11条に違反することとなります。
① 紛争の目的の価額が140万円を超える事件に関する相談,和解の交渉,和解契約の締結(例えば,140万円を超える過払金の返還請求)を事実上行っていると疑うに足りる相当な理由のある司法書士
② 権利義務又は事実証明に関する書面の作成(行政書士法1条の2第1項参照)にかこつけて,交通事故・相続紛争等の示談交渉を事実上行っていると疑うに足りる相当な理由のある行政書士
③ 以下の権限外行為を事実上行っていると疑うに足りる相当な理由のある社会保険労務士
(a) ADR手続の利用を前提とする,紛争の価額が60万円を超える労使紛争に関して,弁護士と共同受任することなく行う,相談,和解の交渉,和解契約の締結
(b) ADR手続の利用を前提とする,解雇,退職,雇い止め等の効力を争う労使紛争に関して,弁護士と共同受任することなく行う,相談,和解の交渉,和解契約の締結
(c) ADR手続の利用を前提としない労使紛争(紛争の価額は問わない。)に関して行う,相談,和解の交渉,和解契約の締結


第3 弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
1 条文等
(1) 弁護士法72条は以下のとおりです。
   弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
(2) 最高裁大法廷昭和46年7月14日判決は,弁護士法72条の趣旨について以下のとおり判示しています。
   同条制定の趣旨について考えると、弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、ひろく法律事務を行なうことをその職務とするものであつて、そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされるなど、諸般の措置が講ぜられているのであるが、世上には、このような資格もなく、なんらの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、同条は、かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられるのである。
(3) 弁護士法72条違反の罪が成立するためには,前段についても,後段についても,①報酬を得る目的があること,及び②業として行うことが必要とされています最高裁大法廷昭和46年7月14日判決)。
   そのため,例えば,大学の法学部等で教授,学生が継続的に無料法律相談を実施する場合,報酬を得る目的がないことから,本条に違反しません。


2 弁護士法72条のそれぞれの文言の意義
(1) 「訴訟事件」とは,訴訟として裁判所に係属する民事,刑事及び行政の各事件をいい,人事訴訟事件(例えば,離婚訴訟事件)も含まれます。
   ちなみに,憲法32条にいう裁判とは,同法82条にいう裁判と同様に、現行法が裁判所の権限に属せしめている一切の事件につき,裁判所が裁判の形式をもってするすべての判断作用ないし法律行為を意味するものではなく,そのうち固有の司法権の作用に属するもの,すなわち,裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判だけをいいます(最高裁大法廷昭和45年12月16日判決)。
(2) 「非訟事件」とは,裁判所が裁量によって一定の法律関係を形成する裁判をする事件をいい,例としては以下のものがあります。
① 地方裁判所が担当する借地非訟事件(借地借家法41条以下参照)
→ (a)借地条件の変更及び増改築の許可(借地借家法17条),(b)借地契約の更新後の建物の再築の許可(借地借家法18条1項),(c)土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可(借地借家法19条),(d)建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可(借地借家法20条1項)のことです。
   ちなみに,借地非訟事件における裁判に対しては,即時抗告をすることができます(借地借家法48条1項)。
② 家庭裁判所が担当する家事審判事件(家事事件手続法別表第一及び別表第二参照)
(3) 「行政庁に対する不服申立事件」とは,例示列挙されている審査請求,異議申立て及び再審査請求(行政不服審査法参照)のほか,例えば,弁護士会が行った,対象弁護士等(懲戒の手続に付された弁護士又は弁護士法人をいいます。以下同じ。)を懲戒しない旨の決定等に対する異議の申出(弁護士法64条)があります。
(4) 「その他一般の法律事件」には,以下のものが含まれます。
① 債権者の委任により請求・弁済受領・債務免除等を行うこと(最高裁昭和37年10月4日決定
② 自賠責保険金の請求・受領に関するもの(東京高裁昭和39年9月29日判決)
③ 交通事故の相手方との間で示談交渉をすること(札幌高裁昭和46年11月30日判決)
④ 建物賃貸借契約の解除,及び賃借人の立退交渉をすること(広島高裁平成4年3月6日決定)
⑤ 真正な登記名義を回復する登記手続をすること(東京地裁平成6年4月20日判決)
⑥ 登記・登録に関する各種申請(日弁連調査室の見解)
⑦ 税務に関する各種申請(日弁連調査室の見解)
⑧ 特許等に関する各種申請(日弁連調査室の見解)
⑨ 裁判所以外の紛争処理機関に対する各種の申立て(日弁連調査室の見解)
(5) 弁護士法72条の「法律事件」といえるためには,事件性のある案件,つまり,事件といわれる案件及びこれと同視できる程度に法律関係に争いがあって事件といいうる案件である必要があるかどうかについては,争いがあります。
   なお,日弁連調査室の見解のほか,東京高裁平成7年11月29日判決(埼玉司法書士会職域訴訟控訴審判決)は,事件性は不要であるとしています。
(6) 弁護士資格等がない者らが,ビルの所有者から委託を受けて,そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為については,その業務が,立ち退き合意の成否等をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであって,弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものというべきであり,その際,賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いをしていたなどといった事情の下では,弁護士法72条違反の罪が成立します(最高裁平成22年7月20日決定)。
(7) 「鑑定」とは,法律上の専門的知識に基づいて法律事件について法律的見解を述べることをいいます。
   「代理」とは,当事者に代わり当事者の名において法律事件に関与することをいいます。
   「仲裁」とは,当事者間の紛争を仲裁判断に基づき解決することをいいます。
   「和解」とは,争っている当事者に互いに譲歩することを求めて争いを止めさせることをいいます。
   なお,これらは,「法律事務」の例示と考えられますから,上記の定義に入らないものはすべて「その他の法律事務」に含まれるとされています。
(8) 「業として」とは,反復的に又は反復の意思をもって法律事務の取扱い等をし,それが業務性を帯びるに至った場合をいいます(最高裁昭和50年4月4日判決)。
(9) 「周旋」とは,訴訟事件の当事者等と弁護士との間に介在し,両者間における委任関係その他の関係成立のための便宜を図り,その成立を容易ならしめる行為をいい(名古屋高裁金沢支部昭和34年2月19日判決),現実に,委任契約等の契約関係が成立している必要はありません。
   周旋を「受け」とは,受諾する意思表示をすることであり,明示であると黙示であるとを問いません。
(10) 弁護士法72条本文前段に抵触する委任契約は,民法90条に照して無効です(最高裁昭和38年6月13日判決)。
(11) 昭和30年8月10日法律第155号(同日施行)による改正前の弁護士法7条は,外国の弁護士となる資格を有する者であって,最高裁判所の承認を受けて法律事務を行うことが認められていた者は,弁護士法72条ただし書所定の「この法律に別段の定めがある場合」に基づいて法律事務を取り扱っていました。
   しかし,昭和30年8月10日法律第155号による改正後は,該当する規定が弁護士法からなくなりました。


第4 弁護士法73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
1 条文等
(1) 弁護士法73条は以下のとおりです。
   何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。
(2) 「他人」とは,不特定の者を対象に権利を譲り受ける場合のみならず,特定の者の債権の取立て,整理のために権利を譲り受ける場合を含みます。
   「権利」とは,債権だけでなく,物権その他いかなる権利をも含みます。
   「譲り受け」とは,売買,贈与その他法形式のいかんを問わず,他人の権利の移転を受け,自らに帰属させる行為をいい,有償であると無償であるとを問いませんし,権利実行により利益を得る目的の有無も問いません。
(3) 弁護士法73条の趣旨は,主として弁護士でない者が,権利の譲渡を受けることによって,みだりに訴訟を誘発したり,紛議を助長したりするほか,同法72条本文の禁止を潜脱する行為をして,国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずることを防止するところにあります。
   このような立法趣旨に照らすと,形式的には,他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても,上記の弊害が生ずるおそれがなく,社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には,同法73条に違反するものではありません(最高裁平成14年1月22日判決)。
(4) ゴルフ会員権の売買には,ゴルフ会員権市場ともいうべき市場が存在し,その市場において多数の会員権の売買が日常的に行われていることは公知の事実です。
   そして,ゴルフ会員権の売買等を業とする者が,業として,上記市場から,会員権取引における通常の方法と価格で会員権を購入した上,ゴルフ場経営会社に対して社会通念上相当な方法で預託金の返還を求めたものであれば,利益を得る目的で会員権を購入していたとしても,弁護士法73条に違反するものではないと解されることがあります。
   そのため,ゴルフ会員権の譲受けの方法・態様,権利実行の方法・態様,譲受人の業務内容やその実態等を審理して,譲受人の行為が濫訴を招いたり紛議を助長したりするおそれがないかどうかや弁護士法72条本文が禁止する預託金の取立て代行業務等の潜脱行為に当たらないかどうかなどを含め,社会的経済的に正当な業務の範囲内の行為であるかどうかが判断されることとなります(最高裁平成14年1月22日判決参照)。
(5) 弁護士法72条違反の委任行為は非弁行為の禁止の趣旨から無効と解すべきであって(最高裁昭和38年6月13日判決),同法73条も,同法72条と同趣旨の規定です。
    そのため,弁護士法73条の違反行為は,民法90条にも違反するものとして無効であると解されています(東京地裁平成16年11月26日判決等。なお,先例として,東京高裁平成3年6月27日判決)。


2 サービサー法の位置づけ等
(1) 債権管理回収業に関する特別措置法(平成10年10月16日法律第126号。平成11年2月1日施行)(=サービサー法)に基づき,法務大臣の許可(サービサー法3条)を受けた会社である債権回収会社(サービサー)は,弁護士法72条及び73条の特例として(サービサー法1条参照),業として,特定金銭債権(サービサー法2条参照)の管理及び回収をすることができます。
(2) 債権管理回収業とは,弁護士又は弁護士法人以外の者が,①委託を受けて法律事件に関する法律事務である特定金銭債権の管理及び回収を行う営業,又は②他人から譲り受けて訴訟,調停,和解その他の手段によって特定金銭債権の管理及び回収を行う営業をいいます(サービサー法2条2項)。
(3) 「弁護士は,係争の目的物を譲り受けてはならない。」(弁護士職務基本規程17条)とされています(弁護士法28条も同趣旨の規定です。)。
   そのため,取立てを目的とする債権譲受行為は,債権を譲り受けなければ,当該権利の実行に当たり支障が存在するなど,行為を正当化する特段の事情がない限り,弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」に該当します(最高裁平成21年8月12日決定における裁判官宮川光治の補足意見参照)。
    したがって,①サービサーの場合,他人から債権を譲り受けることができるのに対し,②弁護士の場合,他人から債権を譲り受けることができないという違いがあります。
(4) 債権譲渡は,その原因行為(その要件事実)が要件事実と考えられるから,原因行為を売買とするときには,債権移転の対価として金銭支払が約されているという抽象的事実が要件事実になります。
   この抽象的事実が主張されれば,原因行為が売買であるとの法性決定が可能になり,相手方において,基本的に,抗弁(債権譲渡が請求原因である場合)主張が可能になると考えられるものの,相手方の訴訟上の攻撃防御の観点からは,当該抽象的事実に当たる具体的事実(主要事実)が主張されるべきと考えられます。
   ただし,どの程度の具体化した事実主張を要するかは,各事案における具体化の困難性や相手方が攻撃防御上被る不利益の程度によって決定されることとなると解されています(東京地裁平成22年6月25日判決)。
(5) サービサー法及び弁護士法73条により譲受けが禁止されている債権とは,いわゆる事件性のある債権,すなわち,債務者において支払を遅延し回収困難の状態にあったものなど,債権が通常の状態ではその満足を受けられないものをいうと解されています(東京地裁平成23年6月27日判決。なお,先例として,福岡高裁昭和36年11月17日判決参照)。
(6) 法務大臣の許可を受けないで,消費者金融会社から,通常の状態では満足を得るのが困難な貸付債権を譲り受け,同債権に関し,取立てのための請求をし,弁済を受けるなどしてその管理回収業を営んだ行為は,債権管理回収業に関する特別措置法33条1号,3条に該当します(最高裁平成24年2月6日決定)。
(7)  最高裁令和5年2月20日決定は,債権譲渡の対価としてされた金銭の交付が出資法5条3項にいう「貸付け」に当たるとされた事例です。


第5 非弁護士との提携の取締り
1(1) 日弁連の,①多重債務処理事件にかかる非弁提携行為の防止に関する規程(平成14年2月28日会規第48号。平成14年4月1日施行),及び②多重債務処理事件にかかる非弁提携行為の防止に関する規則(平成14年3月15日規則第81号。平成14年4月1日施行),並びに③これらに関する運用指針に基づき,単位弁護士会が,非弁提携行為の取締りを行っています。
(2) 「多重債務処理事件にかかる非弁提携行為」とは,金融業者に対して多重に債務を負担する者から受任する任意整理事件,破産申立事件,民事再生申立事件,特定調停申立事件及びこれに類する事件について,弁護士又は弁護士法人が,弁護士法に違反して法律事務を取扱い,又は事件を周旋することを業とする者から,事件の紹介を受ける行為,これらの者を利用する行為,又はこれらの者に自己の名義を利用させる行為をいいます。
(3) 日弁連HPに「隣接士業・非弁活動・非弁提携対策(業際・非弁・非弁提携問題等対策本部)」が載っています。
2 大阪弁護士会の場合,法七十二条等問題委員会規則(平成17年2月15日規則第163号。平成17年4月1日施行)に基づき,法七十二条等問題委員会が,非弁提携行為対策業務として,非弁提携行為の取締りを実施しています。
3 東弁リブラ2021年3月号の「弁護士業務に関するアウトソーシングの限界と注意点」には以下の記載があります(リンク先のPDF12頁)。
    預り金の返還が遅滞し,依頼者からの苦情が市民窓口に殺到して,預り金欠損が明らかに疑われる事態に至ってしまえば,もはや軟着陸は不可能となる。弁護士会としても,対象会員に手
を差し伸べるのは困難となり,事態の早期収束と被害拡大の防止のため,非弁提携調査とそれに続く会立件・事前公表を検討せざるを得ない。内部告発等がなされている場合には,強制捜査や刑事訴追の可能性もある。
4 大阪地裁平成31年4月25日判決は,弁護士資格がない事務員に債務整理手続きの助言など非弁行為をさせたとして、弁護士法違反の罪に問われた弁護士法人「あゆみ共同法律事務所」の元代表である高砂あゆみ弁護士に対し,懲役1年6月,執行猶予3年の判決を言い渡しました。



第6 弁護士法人ベリーベストの懲戒処分に関する文書
1 弁護士法人ベリーベスト法律事務所,弁護士酒井将及び弁護士浅野健太郎に対する懲戒処分(業務停止6月)の審査請求事件に関して開設された,「非弁提携を理由とする懲戒請求について」と題するHPには例えば,以下の文書が載っています。
① 東京弁護士会懲戒委員会の議決書(令和2年2月28日付)
→ 令和2年3月12日に公表されたものですが,PDF55頁に文書の日付が載っています。
② 審査請求書(令和2年6月11日公表)
③ 日本弁護士連合会への審査請求について(令和2年6月11日付)
④ 日弁連懲戒委員会の議決に基づく日弁連の裁決書(令和3年10月19日付)
→ 業務停止3月となりました。
2 東京弁護士会HPに「弁護士法人ベリーベスト法律事務所らに対する懲戒処分についての会長談話」(2020年3月12日付)が載っています。


第7 関連記事その他
1(1) 二弁フロンティア2017年10月号「本当に怖い非弁提携」が載っていますところ,非弁提携業者からの勧誘としては,開口一番,電話口で「~の問題を抱えている方がいらっしゃるのですが」「先生で,~ということは対応可能ですか?」「~事件が増えたら困りますか?(対応できますか?)」と尋ね,事件(それも複数)の依頼を装うものであるとのことです。
   また,非弁提携業者としては,「仕事に困っていそうな弁護士」をターゲットに選びますから,話に乗れば仕事がもらえる,そういう風に弁護士の心をくすぐろうとしますし,弁護士の警戒心を解こうとしてか,株式会社ではなくNPO法人を名乗るケースも少ないとのことです。
(2) 二弁フロンティア2021年10月号「本当に怖い非弁提携」では,非弁提携の事例として,【事例1】不動産会社への紹介料,【事例2】事務職員への営業歩合,【事例3】他士業(会社)連携,及び【事例4】会員になると事件紹介をしてくれる,について説明されています。
2 東弁リブラ2021年3月号の「特集:弁護士業務の落とし穴」には以下の記事が含まれています。
総論:一人で悩まないで!  鍛冶良明
Part1:非弁提携に陥らないための転ばぬ先の杖  柴垣明彦
Part2:弁護士業務に関するアウトソーシングの限界と注意点  石本哲敏
Part3:報酬契約の落とし穴  矢野亜紀子
Part4:相続に関する利益相反等  矢野亜紀子
Part5:行き過ぎた弁護活動等  矢野亜紀子
コラム:「非弁行為」と「非弁提携」の関係
コラム:営業電話や飛び込み営業の見極め方
3(1)  指名債権譲渡の通知は、右債権の譲渡人、その包括承継人またはそれらから委任を受けた者がなすべきで、右債権の譲受人が委任を受けないで事務管理として右譲渡の通知をしても、債権譲渡の通知の効力を生じない(最高裁昭和46年3月25日判決)。
(2)  無免許者が宅地建物取引業を営むために宅地建物取引業者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,公序良俗に反し,無効です(最高裁令和3年6月29日判決)。
   そのため,無資格者が弁護士業を営むために弁護士からその名義を借り,当該名義を借りてされた弁護士業による利益を両者で分配する旨の合意は,公序良俗に反し,無効であると思います。
4 自己の氏名が弁護士甲と同姓同名であることを利用して,「弁護士甲」の名義で弁護士の業務に関連した形式,内容の文書を作成した所為は,たとえ名義人として表示された者の氏名と同一であったとしても,私文書偽造罪に当たります(最高裁平成5年10月5日決定)。
5 法務省HPに「親子会社間の法律事務の取扱いと弁護士法第72条」(法務省大臣官房司法法制部の文書)が載っています。
6(1) 東洋経済オンラインに「「AI契約チェックは違法の疑い」の衝撃的な中身 法務省判断は急成長のリーガルテックに激震」(2022年10月24日付)が載っています。
(2) 若手組織内弁護士研究ノートに「法務省が16類型の新回答公表「弁護士法72条のAI契約書レビュー問題」― 拙稿「弁護士法第72条とリーガルテックの規制デザイン(上/下)」原稿補正のメモ」(2022年10月14日付)が載っています。
(3) 令和5年8月1日,法務省HPに「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」が掲載されました。
7  賭博の勝ち負けによって生じた債権が譲渡された場合においては,右債権の債務者が異議をとどめずに右債権譲渡を承諾したときであっても,債務者に信義則に反する行為があるなどの特段の事情のない限り,債務者は,右債権の譲受人に対して右債権の発生に係る契約の公序良俗違反による無効を主張してその履行を拒むことができます(最高裁平成9年11月11日判決)。
8 以下の記事も参照してください。
・ 弁護士の懲戒事由
・ 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例
 弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義
・ 弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文
 「弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)
→ 令和元年の場合,審査請求の件数は30件であり,原処分取消は3件であり,原処分変更は1件です。
 弁護士会の懲戒手続
 弁護士の懲戒処分の公告,通知,公表及び事前公表