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警察庁交通局(AIリライト)

警察庁交通局は,警察庁の内部部局として,交通警察に関する事務をつかさどる中央官庁です。
この記事では,交通局の所掌事務と法的根拠,発足から現在までの沿革,交通局を構成する4課の組織と担当事務,幹部の階級と定員,そして交通取締りをめぐる最高裁判例を,法令原文と公的資料に基づいて整理します。
自動車の停止や交通違反の取締りといった現場の執行事務は都道府県警察が担っており,交通局はその企画・調整と法令の運用を担う立場にある,という点が全体を理解する出発点になります。

第1 総論――交通局の所掌事務と位置づけ

交通局の所掌事務は,法律で「交通局においては,警察庁の所掌事務に関し,交通警察に関する事務をつかさどる」と定められています(警察法23条の2)。
交通局が中心的に施行を担当する法律は,道路交通法,自動車の保管場所の確保等に関する法律,及び自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律です。
このほか,警察庁組織令は交通安全施設等整備事業の推進に関する法律の施行なども交通局の各課の所掌として定めています。

交通局は,都道府県警察本部の交通部や警察署の交通課とは異なり,交通違反の取締りや自動車の停止といった現場の執行事務を直接には取り扱いません。
交通局が担うのは,交通警察に関する制度の企画・立案,交通統計の整備,交通安全教育・運動,道路交通関係法令の改正作業,そして都道府県警察に対する指導・調整です。
現場の交通取締りは都道府県警察が行い,交通局はその全国的な枠組みを設計する,という役割分担になっています。

第2 沿革――発足から交通局の設置まで

交通局は,発足当初から独立した局であったわけではなく,警察庁の組織改編の中で段階的に整備されてきました。
主な経過は次のとおりです。

年月日できごと根拠・出典
昭和29年7月1日現行の警察法の施行に伴い警察庁が発足した(1官房4部=警務部・刑事部・警備部・通信部)。交通警察は警ら交通課が担当した。警察法(昭和29年法律第162号),当時の警察庁組織令17条6号
昭和33年4月1日各部が局に昇格するとともに保安局が新設され,交通警察は保安局交通課が担当することとなった。警察法等の一部を改正する法律(昭和33年法律第19号)
昭和36年交通企画課及び交通指導課が新設された。日本警察50年史(平成16年警察白書所収)
昭和37年4月1日警察庁交通局が設置された。警察法等の一部を改正する法律(昭和37年法律第14号),警察法施行令の一部を改正する政令(昭和37年政令第129号)

交通局を設置した警察法の改正法は昭和37年3月20日に公布され,同日付けで警察法施行令を改正する政令(昭和37年政令第129号)も定められており,これらは昭和37年4月1日に施行されました。
交通局は,設置以降,独立した局として現在まで存続しています。

一方,交通課を分課する前に交通警察を所管していた保安局は,その後,別の系譜をたどりました。
保安局は,昭和43年6月15日に廃止されて刑事局保安部となり(行政機構の簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法律(昭和43年法律第99号)による),さらに平成6年7月1日に生活安全局へと改組されました(警察法の一部を改正する法律(平成6年法律第39号)による)。
交通行政は,この保安局・生活安全局の系譜とは別に,交通局として独立して発展してきたことになります。

第3 組織と担当事務

交通局は,交通企画課,交通指導課,交通規制課及び運転免許課の4課で構成されています。
各課の所掌事務は,警察庁組織令32条から35条までが定めています。
以下では各課の所掌を組織令に即して整理し,あわせて当ブログが掲載している平成29年時点の事務分掌表へのリンクを示します。

1 交通企画課(警察庁組織令32条)

交通企画課は,交通警察に関する制度及び運営の企画・立案,交通事故防止対策一般,交通に関する統計,交通安全教育及び交通安全運動,道路交通法の施行(他課の所掌を除く),自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の施行(交通指導課の所掌を除く)などを所掌しています。
交通事故調査分析センター,都道府県・全国の交通安全活動推進センター,自動車安全運転センターに関する事務や,局内の事務の総合調整も交通企画課の担当です。
実務上は,道路交通関係法令の改正作業や各種計画の策定作業を中心的に担う課という位置づけになります。

平成29年4月1日現在の交通企画課の事務分掌表を掲載しています。

2 交通指導課(警察庁組織令33条)

交通指導課は,道路交通関係法令の違反の取締り,交通反則行為の処理,交通事故の処理及び交通事故に係る犯罪の捜査,車両の使用者に対する指示・放置違反金に関する事務・車両の使用の制限,交通取締用自動車の運用,高速道路交通警察隊の管理を所掌しています。
交通取締用自動車とは,いわゆる白バイや交通パトカーを指します。
放置違反金制度と,放置車両確認事務の民間委託を柱とする駐車対策法制の運用も,交通指導課の重要な担当分野です。

平成29年4月14日現在の交通指導課の事務分掌表を掲載しています。

3 交通規制課(警察庁組織令34条)

交通規制課は,道路交通関係法令による道路の交通の規制,信号機・道路標識・道路標示その他の交通安全施設,交通安全施設等整備事業の推進に関する法律による交通安全施設等整備事業,及び自動車の保管場所の確保等に関する法律の施行(交通指導課の所掌を除く)を所掌しています。
信号制御や標識の設置などによって交通流を調整し,安全かつ円滑な道路交通を支える課です。
大規模災害の発生時には,速やかな災害対策を実施できるよう,緊急輸送ルートを確保する役割も担います。

平成29年4月1日現在の交通規制課の事務分掌表を掲載しています。

4 運転免許課(警察庁組織令35条)

運転免許課は,運転免許及び運転免許試験,運転免許の取消し・停止等,運転免許に係る講習,自動車教習所などを所掌しています。
教習・試験や講習の充実によって安全運転を促進する一方,運転免許の取消し等によって危険運転者を排除することで,運転者の資質向上を図る課です。

平成29年5月8日現在の運転免許課の事務分掌表を掲載しています。

第4 幹部の階級と定員

1 幹部の階級(平成29年4月時点)

平成29年度の警察庁交通局の事務分掌表によれば,平成29年4月時点の交通局幹部の階級と主なポストは次のとおりです。
これは当時の資料に基づく整理であり,現在の役職構成とは異なる場合があります。

階級主なポスト
警視監交通局長,長官官房審議官(交通局担当),交通企画課長
警視長高速道路交通政策総合研究官,長官官房参事官(高速道路交通政策担当),交通安全企画官(以上,交通企画課),交通指導課長,交通規制課長,運転免許課長
警視正高速道路管理室長,企画官,理事官(以上,交通企画課),交通事故事件捜査指導室長,理事官(以上,交通指導課),理事官(交通規制課),高齢運転者等支援室長兼外国人運転者対策官,理事官(以上,運転免許課)

2 都道府県警察本部長との比較

46道府県の警察本部長のうち,警視監が本部長を務めているのは27道府県程度,警視長が本部長を務めているのは19県程度とされています(東京都は警視総監が置かれるため,ここでの比較は46道府県が対象です)。
この階級構成を前提とすると,警視監である交通企画課長は中小規模の県警本部長よりも階級が上位にあたり,警視長である交通局の各課長は中小規模の県警本部長と同格にあたることになります。

3 定員

警察庁の定員に関する訓令(昭和44年6月30日警察庁訓令第6号)によれば,警察庁内部部局の警察官の定員は次のとおりです。
この訓令はその後も改正されているため,以下は同訓令に基づく整理として示すものです。

  • ① 長官 1人
  • ② 警視監又は警視長 30人
  • ③ 警視長又は警視正 88人
  • ④ 警視正又は警視 547人
  • ⑤ 警部 743人
  • ⑥ 合計 1409人

この定員は警察官のものであり,警察庁内部部局には,警察官とは別に技官が置かれています。
また,交通局各課の定員をみると,平成27年度は,交通企画課58人,交通指導課26人,交通規制課37人,運転免許課25人の合計146人でした。

第5 交通取締りと任意の停止・質問の適法性

交通局の所掌には交通指導取締りの企画立案が含まれますが,現場での自動車の停止や質問がどこまで適法かは,古くから問題とされてきました。
この点について最高裁判所は,警察官が交通取締りの一環として,交通違反の多発する地域等の適当な場所で,走行の外観上の不審な点の有無にかかわらず自動車に短時間の停止を求め,運転者などに必要な事項を質問することは,「それが相手方の任意の協力を求める形で行われ,自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法,態様で行われる限り,適法」であると判断しました(最高裁判所第三小法廷昭和55年9月22日決定)。
この決定は,交通の安全や交通秩序の維持のために必要な警察の諸活動は,任意手段による限り一般的に許容されるとしつつ,国民の権利・自由に対する干渉は無制限ではないという枠組みの中で,任意の停止・質問の適法性を認めたものです。

交通取締りの現場対応をめぐっては,停止を求められた側の受け止めや,記録映像の開示のあり方について,さまざまな声があります。
参考として,取締りを受けた立場からの投稿を掲げます。

第6 掲載資料と関連情報

1 当ブログ掲載の資料

交通局の事務分掌や取締りの運用に関して,当ブログは次の資料を掲載しています。

2 関連記事・外部資料

交通警察の全体像や,事故後の警察対応については,次の記事も参照してください。

交通局の沿革と施策については,警察庁の公的資料も参考になります。
交通局の組織の変遷は,平成16年警察白書所収の「日本警察50年史」に整理されています。
また,平成28年4月1日には,交通事故被害者サポート事業が,内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付の交通安全対策担当から交通局に移管されました(警察庁「交通事故被害者サポート事業」)。
平成19年以降の道路交通法の改正については,警察庁交通局の「道路交通法等の改正」に情報がまとめられています。

出典

1 法令

  • 警察法(昭和29年法律第162号)23条の2 e-Gov法令検索
  • 警察庁組織令(昭和29年政令第180号)32条・33条・34条・35条・17条 e-Gov法令検索
  • 警察法等の一部を改正する法律(昭和33年法律第19号) 日本法令索引
  • 警察法等の一部を改正する法律(昭和37年法律第14号),警察法施行令の一部を改正する政令(昭和37年政令第129号) 日本法令索引(政令第129号)
  • 行政機構の簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法律(昭和43年法律第99号) 日本法令索引
  • 警察法の一部を改正する法律(平成6年法律第39号)
  • 警察庁の定員に関する訓令(昭和44年6月30日警察庁訓令第6号)

2 裁判例

  • 最高裁判所第三小法廷昭和55年9月22日決定(昭和53年(あ)第1717号,刑集34巻5号272頁,道路交通法違反) 裁判所ウェブサイト

3 公文書・資料