目次
1 総論
2 予納郵便切手の返却時の取扱い
3 最高裁は受領書の提出を督促していないこと
4 関連記事その他
1 総論
(1)ア 簡易書留により郵送される最高裁判所の封筒(サイズは長形3号であり,上告不受理決定が入ってあります。)には,上告受理申立てに際して提出した予納郵券のほか,郵便切手内訳表が右上に記載された返還書兼受領書が一緒に入っています。
しかし,以前は封筒及び受領書にFAX番号が書いていないため,最高裁判所に対して,FAXにより受領書を提出することができませんから,最高裁判所に対して受領書を提出する場合,持参又は郵送する必要がありました。
イ 特別抗告棄却決定についても同じ取扱いになっていました。
(2) 私の経験では,令和4年12月15日付の特別抗告棄却決定と一緒に入っていた返還書兼受領書にはFAX番号が書いてありました。
R030621 最高裁の不開示通知書(民事事件の上告棄却決定に対する予納郵券の受領書の提出に利用できるファックス番号を事件当事者に告知しない理由が書いてある文書)を添付しています。 pic.twitter.com/rYo8CJ273a
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) June 26, 2021
2 予納郵便切手の返却時の取扱い
(1) 予納郵便切手の取扱いに関する規程(昭和46年6月14日最高裁判所規程第4号)7条は以下のとおりです。
① 訟廷管理官又は主任書記官は、その保管する予納郵便切手について返還すべき事由が生じたときは、これを返還を受けるべき者に交付し、その者から受領書を受け取らなければならない。
② 主任書記官は、所在不明その他の理由により予納郵便切手を返還することができないときは、これを訟廷管理官に引き継がなければならない。
(2) 予納郵便切手の取扱いに関する規程の運用について(平成7年3月24日付の最高裁判所事務総長の通達)には「主任書記官は,予納郵便切手を郵便により送付して返還するときは,返還を受ける者に予納郵便切手及び返還書とともに受領書の用紙を送付し,これに所要の事項を記載させた上提出させる。」と書いてあります。
裁判所から予納郵券の余り61円分が送られてきた。
その受領書をFAXしたところ、「FAXではなく、原本を郵送してくれ」と書記官に言われた。
61円の切手を受け取るために、84円(郵券を裁判所→うちの事務所)+84円(受領書をうちの事務所→裁判所)の合計168円がかかる。
ザ・裁判所的な事務処理。— やつはし (@yatsuhashidayo) August 11, 2021
3 最高裁は受領書の提出を督促していないこと
(1) 令和3年10月18日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
最高裁判所の書記官が訴訟関係人に対し,予納郵便切手を返還したにもかかわらず,受領書を受け取ることができなかった場合の対応は,書記官が個別に検討し,対応しているところ,その際には高等裁判所事務局長等宛ての事務連絡(平成18年2月24日付け最高裁判所事務総局総務局第三課長及び同家庭局第一課長事務連絡「「郵券通達等の改正の概要について」等の送付について」)を参考にするなどして処理しており,改めて最高裁判所の書記官に対して訴訟関係人から受領書を受け取ることができなかった場合の取扱いを記載した文書を作成又は取得せずども,何ら支障は生じない
(2) 郵券通達等の改正の概要について(平成18年2月24日付の最高裁判所総務局第三課長及び家庭局第一課長の事務連絡)には以下の記載があります。
c 受領書の提出状況の記載について
従前,郵送により郵券を返還した場合において,受領書を得られないときは,郵券管理簿の「受領印」欄にその理由を記載し,押印することとされており(旧通達記第6の1の(3)のイただし書),その前提として,受領書の提出を受けた場合には,郵券管理簿の「受領印」欄に斜線を引く取扱いがされていた。
この点,従前から受領書の提出がない場合に受領書の提出の督促や受領者に対する受領の確認までは必要とされておらず,帳簿により受領書の提出状況を把握する必要性は低いと考えられることから,今後は,管理袋に特段の記載をすることを要しないこととした。
R030913 最高裁の不開示通知書(最高裁判所の書記官が民事事件の上告棄却決定を送付した際に予納郵便切手を上告人に返還したにもかかわらず,当該上告人から受領書を受け取ることができなかった場合の取扱いが書いてある文書)を添付しています。 pic.twitter.com/cR8A5FVKYZ
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) September 14, 2021
4 関連記事その他
(1) 予納郵券額6074円というのは,大阪地裁民事訟廷事務室事件係(本館1階)に上告状を提出する場合(控訴審としての大阪地裁の判決に対して大阪高裁に上告する場合)の切手の組み合わせであります(大阪地裁HPの「民事訴訟等手続に必要な郵便切手一覧表」参照)ところ,大阪高裁民事訟廷事務室事件係(別館10階)に上告受理申立書を提出する場合にも使えます。
(2) 今井功弁護士(平成16年12月から平成21年12月までの間,最高裁判所判事)は,自由と正義2013年6月号13頁において以下のとおり書いています。
民事事件は,各小法廷で年間1,000件を超えているから,各事件につき,判決書を作成して署名押印し,いちいち法廷を開いて言渡しをすることは,大変な無駄である。旧法時代は,弁論が開かれない上告棄却判決の多くは,傍聴人のいない法廷で,言渡しがされており,当時多くの裁判官から何とかならないかといわれていたものである。
(3)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 調書決定事務処理要領(平成27年4月1日付)
・ 大阪高裁民事部の主任決議集(令和3年3月15日改訂)
・ 高等裁判所における上告提起事件及び上告受理申立て事件の処理について
→ 上告審から見た書記官事務の留意事項(令和3年分)に含まれている資料です。
イ 以下の記事も参照して下さい。
・ 上告審に関するメモ書き
・ 最高裁の既済事件一覧表(民事)
・ 最高裁の破棄判決等一覧表(平成25年4月以降の分),及び最高裁民事破棄判決等の実情
・ 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情
・ 最高裁判所事件月表(令和元年5月以降)
・ 2000円の印紙を貼付するだけで上告受理申立てをする方法
・ 控訴審に関するメモ書き
・ 最高裁判所調査官
・ 最高裁判所判例解説
大阪高裁民事部の主任決議集(令和3年3月15日改訂)を掲載しています。https://t.co/7xcTfR9Q77 pic.twitter.com/vT9Bj8kG3N
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) November 27, 2022