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対象裁判が著名事件等である場合の留意事項

目次
第1 対象裁判が著名事件等である場合の留意事項
第2 現行の公式資料による補足
第3 弁護士側の事前確認
第4 関連記事

第1 対象裁判が著名事件等である場合の留意事項
・ 最高裁判所広報課の,広報ハンドブック(令和2年3月版)59頁ないし61頁には,「6-6 対象裁判が著名事件等である場合の留意事項」として以下の記載があります。
    全国的に注目を集めている著名事件の初公判や判決言渡しの際には,各報道機関とも大きく取り上げるため,様々な取材の申込み,便宜供与の依頼が予想される。そのような公判や判決言渡しが予定されているときには,広報担当は,あらかじめ報道対応等のやり方を検討し,必要があれば記者クラブと打ち合わせるなどして,当日混乱が生じないように準備する必要がある。
    著名事件等における主な検討項目は,次のとおりである。

1 法廷内記者席
    一般傍聴人も多数来訪することが予想される。記者席を多く取ると一般傍聴席が減って,抽選に列を作った傍聴希望者から苦情が出ることもある。逆に記者席が少ないと,十分に報道できないと記者側から苦情が出る。記者席と一般傍聴席とをいかに調整するかはなかなか難しいが,事前に記者クラブと打ち合わせして調整し,バランスを取る必要がある。
    記者席について,検討,調整する場合には,当然,裁判部と緊密に連絡し合わねばならない。その場合,広報担当者が得ている情報や予想される記者クラブの反応などを裁判部に十分伝えることが必要となる。

2 法廷内カメラ取材
    取材要領を作成の上,代表取材の担当となった社と,集合時間,集合場所等について打合せを行っておく必要がある。また,法廷以外でもカメラ取材が予定されることがあり,それぞれの場所でのカメラ取材に混乱が生じないよう,事前に裁判所からの指示を徹底させる必要がある。広報担当者を適切に配置するなど,混乱回避の手段を講じることも大切である。

3 判決要旨等
    通常,判決要旨・骨子を用意し,記者に配布することになる。事前に記者クラブと部数について打合せをし,裁判部に依頼して部数を用意してもらい,当日混乱なく配布できるように準備する。
    判決要旨・骨子は,原則,判決言渡しの終了後速やかに,広報担当者が記者クラブに配布する。判決言渡しに長時間を要する刑事事件の場合などに,記者クラブから,判決要旨・骨子を主文言渡し後速やかに配布してもらいたい旨の要望が出ることがある。言渡し終了まで待っていたのでは締切時間に間に合わず,かといって判決要旨・骨子なしには正確な報道をす-るのが困難であるという理由からのものである。裁判体と協議の上,具体的事情に応じた対応策を検討する必要がある。判決要旨等を分割して,段階的に交付する,ということもその対応の一つの方法といえよう。

4 臨時記者室
    極めて著名な事件の場合,通常使用している記者室が広くない庁では,記者クラブから,臨時の記者室として使うための会議室等を提供してもらいたい旨の要望が出ることがある。
    臨時に会議室等を提供するかどうかは,庁舎管理権の問題であり,庁舎管理権者である所長等が決めることになるが,そのためには,その事件ではどのくらいの規模の取材等が予想されるのか,既存の記者室で対処できそうなのかどうかといった点について,事前に広報担当から所長等に報告することが求められる。
    なお,臨時記者室を提供する場合,臨時の電話回線やファクシミリ回線の設置要望が出ることもあり,事前によく記者クラブ側と打ち合わせる必要がある。
おって,臨時記者室は報道のために便宜供与するものであり,当事者が報告集会を行うというような使い方ができないのは当然である。

5 中継車,中継テント
    極めて著名な事件の場合には,特に放送関係の記者から,裁判所構内の駐車場等に中継車を置かせてもらいたい,生中継をするためのテントを張らせてもらいたい旨の要望が出ることがある。このような要望についても庁舎管理権の問題であり,所長等が許否を決めることになるが,臨時記者室と同様に,予想される取材の規模等を広報担当から所長等に報告することが求められる。
    中継車や中継テントを許可する場合にも,一般来庁者の邪魔にならず,混乱発生の危険のない場所で,かつ,電波の発信等に不都合のない場所を探した上,各社平等に取材ができるよう,記者クラブと調整する必要がある。

6 事件当事者等の入庁場面のカメラ取材
    事件当事者等の入庁場面のカメラ取材を求められることがある。裁判所構内におけるこのような取材の許否についても庁舎管理権の問題であるが,臨時記者室等と同様広報担当者から必要な情報を所長等に報告することが求められる。これら入庁場面のカメラ取材を許可した場合には,広報担当者が撮影に立ち会い,一般来庁者等が写らないよう注意する。
    なお,撮影を許可する場合は,記者クラブ側が被写体となる事件当事者等の同意を得ることが前提となる。

7 立ちレボ
    テレビ報道で記者が裁判所庁舎等を背景に立ち,裁判所構内で裁判の内容や審理の様子をレポートするものである。放送記者から広報担当に許可申請が出される。これも庁舎管理権の問題である。許可した場合,広報担当者が撮影に立ち会って,一般来庁者等が写らないよう,また,できるだけ執務時間内に終えるよう注意する。

8 宣伝的行為の撮影
    裁判所構内で一方当事者が宣伝的行為に及ぶことが予想された場合,裁判所の中立性,公平性の観点から,裁判所がその撮影のために便宜供与することは適当ではない。構内での宣伝的行為は,関係者の入構時,法廷内及び判決言渡し後(例えば,裁判結果を知らせる垂れ幕など)の各段階で起こることが多く,このようなおそれがある場合には,混乱しないような形で撮影を未然に防止するよう,事前に十分検討しておく必要がある。

9 ふだんと異なる扱いをする場合
    要警備事件では,裁判所構内でのカメラ撮影等についてふだんと異なる制限が必要となる場合もある。このような場合,単に結論を告げるだけでは記者クラブの反発を招くおそれがあるため,その結論を採らざるを得ない理由とともに,裁判所の立場や考え方を丁寧に説明するなど十分に配慮する必要がある。

第2 現行の公式資料による補足
1 令和5年度(情)答申第38号によれば,東京地裁には報道機関に対する便宜供与を類型化した民事・刑事の対応基準が存在します。ただし,同答申は,具体的な取扱いは裁判体の意向を確認するなどして個別の事案に応じて判断され,基準の記載は事務便宜上の目安にすぎないとしています。
2 したがって,広報ハンドブック,ローカル基準又は他事件の例から,記者席,撮影,判決要旨,記者会見等について一律の取扱い又は権利があるとはいえません。
3 静岡地裁令和7年11月27日判決の対象事件では,約2時間の判決言渡しと並行して,言渡し済み部分に対応する判決要旨が報道機関へ5回に分けて交付され,弁護人には期日終了直後に全文1部が一括交付されました。著名事件では,判決内容,言渡し時間,報道需要及び当事者対応に応じて,交付方法まで個別に設計される実例といえます。

第3 弁護士側の事前確認
1 傍聴券,記者席,法廷内撮影,庁舎内撮影,判決要旨及び当事者会見は,それぞれ判断主体と条件が異なるため,項目を分けて確認します。
2 依頼者又は弁護団の会見を予定する場合でも,裁判所庁舎内での開催又は撮影が当然に認められるものではありません。会見場所,時刻,入退庁動線,個人情報及び撮影範囲を事前に整理します。
3 便宜供与を希望する場合は,事件との関係,必要性,希望時期,部数及び利用方法を具体的に伝え,回答内容及び条件を記録します。

第4 関連記事
・ 裁判所の報道対応の基礎
・ 裁判所の報道発表等
・ 裁判所の取材対応
・ 法廷内写真撮影
・ 裁判所の庁舎内(敷地内)写真撮影
・ 判決要旨等
・ 法廷内記者席
・ 対象裁判が著名事件等である場合の留意事項
・ 所長等就任記者会見,及び記者会見実施上の一般的な留意事項(最高裁判所の広報ハンドブックからの抜粋)
・ 司法修習生による,司法研修所構内の写真撮影禁止に関する文書は存在しないこと
・ 最高裁判所における法廷内カメラ取材運用要領
・ 寺田逸郎最高裁判所長官の就任に伴う写真取材の要領