裁判所の報道発表等

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目次
第1部 裁判所の報道発表等
第1 報道発表等における一般的な留意事項(原文の4-1)
第2 資料提供(資料等の投げ込み)(原文の4-2)
第3 記者へのレクチャー(原文の4-3)
第4 所長等就任記者会見(原文の4-4)
第5 記者会見実施上の一般的な留意事項(原文の4-5)
第6 懲戒処分の公表(原文の4-6)
第2部 関連記事

第1部 裁判所の報道発表等
・ 以下の記載は,最高裁判所広報課の,広報ハンドブック(令和2年3月版)25頁ないし33頁の記載を貼り付けたものです。

第1 報道発表等における一般的な留意事項(原文の4-1)

    報道発表等は,おおむね,記者への資料の投げ込み,記者へのレクチャー,記者会見の方法で行われる。報道発表等を行うに当たっては,次のとおり,相手方(報道機関)があることを常に意識することが必要である。
1 報道発表等の内容
    具体的にどのような内容の報道発表等を行うか,明確に整理した上で対応する必要がある。裁判所が報道してもらいたいと考えても,報道機関にとっては報道に値するものと思われない場合もある。また,報道機関は,必ずしも裁判所の業務内容等をこと細かく知っているものでもない。裁判所として国民への説明責任をどのような形で果たすべきか,報道機関がどのようなことに関心を持っているのかなどをふだんから意識しておく必要がある。
2 報道発表等の時期・タイミング
    報道機関(記者)は,日々様々な取材活動等を行っている。報道発表等を行う際には,このことも意識する必要がある。著名事件の裁判が行われている中で報道発表等を行う,記者が記事原稿を社に送るまでの時間がほとんどない時刻に報道発表等を行うなどということは可能な限り避けるべきである。このような時期・タイミングで報道発表等を行うと,記者は時間に追われて記事をまとめることになるが,その結果,十分に報道発表等の内容が理解されないままに記事(誤報)になるおそれがあるからである。
3 報道発表等の準備
    報道発表等の内容によっては,記者に交付する簡潔な説明資料を準備する,更に問われた場合の補足説明事項等を用意する,ということが必要である。
報道発表等は,各社への情報伝達に漏れがないようにする必要がある。そのため,記者クラブの幹事社を通じて行うのが一般的であろう。
4 他庁等への影響等
    ある庁の報道発表等が他庁,関係機関等に影響を及ぼすことがある。報道発表等を行うに当たっては,他庁等にどのような影響,波及が生じるかについても考える必要がある。その上で必要に応じて,上級庁を含め,他庁等に情報提供等することも必要となろう。

第2 資料提供(資料等の投げ込み)(原文の4-2)
    資料等を報道機関に投げ込む方法での報道発表である。報道発表内容を簡潔に記載したペーパー(プレスリリースペーパー)を投げ込むことが多い。例えば,次のようなものがある。
① 人事の報道発表・・・人事異動についての情報提供である。報道の解禁日時を設定して発表することもある(「シバリ付きの報道発表」ともいう。)。
② 死亡の報道発表・・・例えば,元所長が亡くなった場合についての情報提供である。
③ 懲戒処分の公表・・・懲戒処分を行った場合の情報提供である。懲戒処分の公表指針については,各庁に通知され,裁判所ウェブサイトでも公表されている(4-6参照)。
④ 庁舎建て替え,庁舎移転,新庁舎完成等の報道発表・・・報道を通じて広く利用者や一般の国民に知らせる必要がある場合の情報提供である。新庁舎が完成した場合等には,投げ込みだけでなく,新庁舎のお披露目を兼ねた見学会を開くこともある。
⑤ その他,広報活動のPR等を含む司法行政情報一般についての報道発表・・・記者へのレクチャーや記者会見を行うまでの必要はないが,報道機関に知らせ,何らかの形で取り上げてもらうことを意図する場合の情報提供である。
    また,記者クラブの求めに応じて,一般的定型的な裁判関係情報の提供を行う場合にも,この投げ込みの方式が用いられることがある(6-4参照)。

第3 記者へのレクチャー(原文の4-3)
    資料等の投げ込みだけでは十分な説明ができないと思われるような場合等に,記者を集めて説明等する方法での報道発表である(一般に「記者レク」という。)。通常は資料等を投げ込むだけで対応できる場合がほとんどであると思われるが,特に次のように,記者を集め,直接説明等した方がより良いと思われる場合に用いられる。短時間に多くの報道機関に簡潔かつ的確に説明する場合には,この記者レクの方法は優れているといえよう。記者レクでは,記者の事案に対する理解の状況等が確認できるというメリットもある。
    また,記者クラブから「記者レク」を求められることもあるが,その状況等に応じて可能な範囲で対応するというスタンスで差し支えない。
① 緊急を要する場合・・・例えば,裁判所内で事故等が発生した場合等である。
② 補足説明を加えないと誤解が生じるおそれがある場合・・・事案が複雑,あるいは記者に前提情報が足りないと思われるような場合等である。
③ 検察庁,弁護士会,捜査機関,地方公共団体等の外部機関に何らかの影響が生じるような場合・・・結果や影響の重要性等から,十分な説明を行うことが求められるような場合等である。例えば,裁判所が告発を行う場合,裁判所が中心となって法曹三者で取決めなどを行った場合等が考えられる。
④ 資料の投げ込みだけでは,その後の取材対応が必須になると思われる場合・・・投げ込みで報道発表した後に多くの記者から取材が入ることが予想される場合等である。
⑤ その他,裁判所の説明責任を明確に果たす必要がある場合・・・事案の重要性,影響の大きさなどを勘案して判断することになる。
    なお,裁判手続等について,記者を集めて勉強会のような説明会を開くことがある。このような記者を集めての勉強会,説明会等を行う場合を含めて,「記者レク」と総称することもある。特に,記者に馴染みのない家庭裁判所の手続等を「記者レク」の場で説明等することは有用であると思われる。

第4 所長等就任記者会見(原文の4-4)
    長官や所長が新たに就任した際に,報道機関が「人物欄」等に取り上げることがある。これは,国民一般に裁判所を身近に感じてもらう良い機会でもある。就任記者会見の要請があった場合には,特段の事情のない限り応じるようにすべきである。その準備等において,特に留意すべきと思われる事項等については,次のとおりである。
1 人事の報道発表後,記者クラブの幹事社等と事前に連絡調整をして,できるだけ各社の記者が出席しやすい日時に会見を設定する。場合によっては,所長等がまだ着任しないうちに調整しなければならないこともあることから,所長等ともよく連絡し合う必要がある。
2 所長等の参考にするため,これまでの就任記事を準備したり,直近の話題事項等,予想される質問事項を用意する。必要に応じて,記者クラブの幹事社等から質問事項を出してもらう。
3 会見のカメラ取材の在り方について,取材要領を作成する。カメラ撮影と録音の要領は,従来の例を参考に検討することになるが,最初の1ないし2間就任の感想や抱負等に関する応答の間に限る扱いもある。
4 所長の略歴等についての簡潔な資料を用意して,会見開始までに記者に配布する。

第5 記者会見実施上の一般的な留意事項(原文の4-5)
    所長等の就任記者会見(4-4参照)を除き,裁判所においては,一般に記者会見を行うことは多くない。報道機関への情報提供は,資料等の投げ込み,記者レクでほとんどまかなうことができるからである。それだけに記者会見を行うに際しては,その必要性を含め,十分な検討,準備等が必要である。その準備等において,特に留意すべきと思われる事項は,次のとおりである。また,会見は,裁判所の公式見解等を示す場であることから,所長が行うのが原則であり,必要に応じて,局長,次長等が陪席し,司会進行は,総務課長等が行うのが通常であろう(裁判所内では,裁判所主催で記者会見を行うことが一般的である。)。
    なお,会見の在り方等によっては,大きく報道されることがあり得るので,会見実施に当たっては,上級庁に事前に情報提供等されたい。
1 記者会見の心得
    一般的に記者会見の心得といわれているものを参考に挙げる。これは,広報担当者の日常の報道対応の心得にも通じる。
(1) 明確な表現をとる。どちらとも取れるような不明確な表現をとらない。表現が不適切なことから誤報を招くことがある。
(2) 感情的な対応は避ける。感情を害するような質問をされても,これに呼応して感情的な応答をしない。
(3) 責任があることが明らかになった場合には,率直に陳謝するべきである。ただし,責任がない場合や一部しか責任がない場合には,責任回避と受け取られないように注意する必要はあるが,その点を明確に伝えるべきでもある。なお,事実関係の調査中で,裁判所側に責任があるか否かが明らかでない段階で,「事実であるならば」といった仮定を前提として,陳謝するようなことは,慎むべきである。
(4) 関係者の人権,プライバシーを念頭に置く。特に会見の中で関係者のプライバシーに不用意に触れたりすることのないように注意する。
(5) オフレコは難しい。オフレコは発言を記録せず,公表もしないことである。記者との合意によって成立するが,相当の信頼関係がないと困難である。内容によっては,オフレコにしてほしいと言うこと自体が報道の自由に対する圧力ではないかと受け取られることもある。
(6) 記者会見を行う時期・タイミングを計る。責任者が会見を避けているという印象を与えてはならない。また,記者側の締切時間にも配慮が必要である。
2 記者会見の準備
(1) 多数の記者が参加することやカメラ機材の搬入もあることから,記者会見場所は,裁判事務その他の事務に影響を与えず,会見者と記者との間の距離やカメラ取材スペースが確保できる会議室等の場所に設定する必要がある。
(2) カメラ取材の在り方について,取材要領を作成し,事前に会見参加記者等に周知するようにする。
(3) 会見の趣旨に見合った基本説明を用意し,会見参加記者にそのペーパーを配布することも検討する。
(4) その他,一般的に会見では,記者から,①全体的な事実経過(時系列),②問題点(原因や背景)についての分析,③過去の同種事例,④裁判所としての対応(改善策や関係者の処分等),⑤所長コメントを求められることが多いので,これらを中心に事案に応じた必要な準備を行う。

第6 懲戒処分の公表(原文の4-6)
    裁判所の懲戒処分の公表指針については,平成15年12月22日付けで人事局長が発出した通知(「懲戒処分の公表指針」)及び平成16年3月4日付けで裁判所職員倫理審査会が定めた指針(「国家公務員倫理法又は同法に基づく命令に違反した場合の懲戒処分の公表指針」)がありj裁判所ウェブサイトでも公開されている。これらの指針は,それぞれ人事院が発出した「懲戒処分の公表指針について」及び国家公務員倫理審査会が発出した「国家公務員倫理法又は同法に基づく命令に違反した場合の懲戒処分の公表指針について」と基本的に同じ内容である。現在,これに基づいて,懲戒処分が公表されている。
    当然のことながら,国家公務員の不祥事については,国民から厳しい目で見られている。これに伴って,報道機関の関心も高く,懲戒処分の公表時における対応も厳しいものになってきている。裁判所としては,懲戒処分を行った場合には,この公表指針に基づいて公表していくとともに,報道機関からの取材に対しても適時適切に対応する必要がある。具体的には,懲戒処分を行った後,記者クラブに対して,懲戒処分を行った旨(事案の概要,処分量定,処分年月日等)及びこれに対する所長のコメントを記載したペーパーを投げ込みの方法で交付した上,総務課長等が必要に応じて記者に個別に補足説明を行う,というのが一般的な対応例であり,必ずしも記者レクを行わなければならないものではない。また,事案にもよるが,懲戒処分の公表のためだけに記者会見を行うことは,原則ないといってよいであろう。
    なお,報道機関等から懲戒処分に関する文書の開示を求められた場合は,司法行政文書の開示申出によって対応するのが相当である。

【参考1】裁判所の公表指針(平成15年12月22日人事局長通知)

懲戒処分の公表指針について

    この度,各庁が懲戒処分の公表を行うに当たっての参考に供することを目的として,下記のとおり懲戒処分の公表指針を作成しました。各庁においては,本指針を踏まえて,懲戒処分の適正な公表に努めてください。

1 基本方針
    各庁においては,裁判所に対する国民の信頼を確保し,職員の服務規律に対する一層の自覚を促すため,懲戒処分を行った場合には,事案の性質や内容,社会的影響,被処分者の職責や関係者のプライバシー保護の必要性等を総合的に考慮し,原則として,以下に定めるところにより,適時適切に公表するものとする。
2 公表対象
    次のいずれかに該当する懲戒処分は,公表する。(1)職務遂行上の行為又はこれに関連する行為に係る懲戒処分(2)職務に関連しない行為に係る懲戒処分のうち,免職又は停職である懲戒処分
3 公表内容
    事案の概要,処分量定及び処分年月日並びに所属,役職段階等の被処分者の属性に関する情報を,個人が識別されない内容のものとすることを基本として公表する。
4 公表の例外
    被害者又はその関係者のプライバシー等の権利利益を侵害するおそれがある場合等2及び3によることが適当でないと認められる場合は,2及び3にかかわらず,公表内容の一部又は全部を公表しないことも差し支えない。
5 公表時期
    懲戒処分が行われた後,速やかに公表する。ただし,軽微な事案については,一定期間ごとに一括して公表することも差し支えない。6公表方法公表は,被処分者の所属庁において行うことを原則とし,記者クラブ等への資料提供その他,各庁の実情に応じた適宜の方法による。

【参考2】人事院の公表指針(平成15年11月10日人事院事務総長通知)

懲戒処分の公表指針について

    人事院では,この度,各府省等が懲戒処分の公表を行うに当たっての参考に供することを目的として,下記のとおり懲戒処分の公表指針を作成しました。各府省等におかれては,本指針を踏まえて,懲戒処分の適正な公表に努められるようお願いいたします。
    本指針は懲戒処分の公表に係る原則的な取扱いを示したものであり,個別の事案に関し,当該事案の社会的影響,被処分者の職責等を勘案して公表対象,公表内容等について別途の取扱いをすべき場合があることに御留意ください。

1 公表対象
    次のいずれかに該当する懲戒処分は,公表するものとする。
(1) 職務遂行上の行為又はこれに関連する行為に係る懲戒処分
(2) 職務に関連しない行為に係る懲戒処分のうち,免職又は停職である懲戒処分
2 公表内容
    事案の概要処分量定及び処分年月日並びに所属,役職段階等の被処分者の属性に関する情報を,個人が識別されない内容のものとすることを基本として公表するものとする。
3 公表の例外
    被害者又はその関係者のプライバシー等の権利利益を侵害するおそれがある場合等1及び2によることが適当でないと認められる場合は,1及び2にかかわらず,公表内容の一部又は全部を公表しないことも差し支えないものとする。
4 公表時期
    懲戒処分を行った後,速やかに公表するものとする。ただし,軽微な事案については,一定期間ごとに一括して公表することも差し支えないものとする。
5 公表方法
    記者クラブ等への資料の提供その他適宜の方法によるものとする。

第2部 関連記事
・ 裁判所の報道対応の基礎
・ 裁判所の取材対応
・ 法廷内写真撮影
・ 裁判所の庁舎内(敷地内)写真撮影
・ 判決要旨等
・ 法廷内記者席
・ 対象裁判が著名事件等である場合の留意事項
・ 少年事件についての報道対応の留意事項
・ 所長等就任記者会見,及び記者会見実施上の一般的な留意事項(最高裁判所の広報ハンドブックからの抜粋)
・ 司法修習生による,司法研修所構内の写真撮影禁止に関する文書は存在しないこと
・ 最高裁判所における法廷内カメラ取材運用要領
・ 寺田逸郎最高裁判所長官の就任に伴う写真取材の要領

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