目次
第1 判決要旨等
第2 関連記事その他
第1 判決要旨等
・ 最高裁判所広報課の,広報ハンドブック(令和2年3月版)55頁ないし57頁には,「6-4 判決要旨等」として以下の記載があります。
1 判決要旨等の提供の理由等
言渡し前に,記者クラブから広報担当に対して,判決言渡しの際,判決要旨・骨子を配布してほしい旨の要望が出されることがある。
記者は,言渡し後ごく短期間のうちに記事を作成しなくてはならない。記事の予定稿を用意することもあるようであるが,それでも記事をまとめるまでには,非常に慌ただしい作業となる。そのような中で短時間に判決文を読みこなす,あるいは判決理由の朗読を聴いて正確に要点を抽出するということは極めて難しいといえよう。このような状況から,正確な報道のためには,裁判所の方で要旨・骨子を提供するのが有効であるとして,これまでも便宜供与してきたところである。
2 判決要旨等作成のための協力依頼
判決要旨等の作成は広報事務であるが,実際には,事案や判断の内容に精通している裁判体の協力が不可欠である。判決を正確に報道してもらうためであり,記者クラブから要望があった場合には,広報担当者から速やかに裁判部(裁判官)に依頼することになる。
裁判部に判決要旨等の原案作成を依頼する際には,次の点にも配盧を願うとよい。
(1) 長文にならないよう配慮
紙面のスペースには限りがあるため,判決要旨が長文であると,一部がカットされて掲載されることになる。事件にもよるが,新聞に掲載される分量は,長くても3000字程度,骨子は300字程度とされている。これが要旨等の長さの目安になる。
(2) 分かりやすいよう配慮
例えば,当事者複数の民事事件の場合,記者は主文を見て認容総額を把握できないこともある。判決要旨中に認容総額を盛り込むと誤報が防げる。当事者多数の損害賠償事件などでは,認容総額(連帯して支払が命じられたときは,全体で支払うべき額),判決時の原告数と認容した原告数,認容最高・最低額等が分かるような一覧表を用意するなどの工夫が求められる。また,判決要旨の各項目ごとに見出しなどを付けると判決要旨の全体像が分かりやすい。判決要旨は,報道のためのもので,判例集に載せるものではない。重要な法律論であっても,記者が関心を示さないようなものは省き,判決要旨等は,一般読者を想定した,分かりやすいものを作成すべきであろう。
(3) プライバシー情報への配慮
判決要旨等の作成に当たっては,秘匿決定のされた事項等,関係者のプライバシーに関する情報に十分配慮することが求められる。
(4) 判決要旨等の部数への配慮
著名事件では,記者から判決要旨等を複数部数求められることがある。複数の記者が手分けをして記事を書くことがあるためと思われる。可能な範囲で配慮すべきであろう。
(5) 判決要旨を作成できないときの配慮
言渡し直前の要望で,判決要旨作成の時間的余裕がないような場合には,判決写しの要旨に当たる部分に傍線を引くだけでも,記者にとっては理解の助けになる。
3 判決要旨等の配布
判決要旨等は,言渡しがなされた後,広報担当者から記者に配布される例が多いようである。この扱いは,総務課が報道機関への窓口であることから適切といえる。
なお,判決要旨は,速報性が要求される報道機関の利用のために特別に作成したものであるが,刑事訴訟事件においては訴訟関係人から判決要旨の交付を求められることがある。そのような場合には,裁判体の意見を踏まえ,司法行政上の便宜供与として,当該訴訟関係人に対し,報道機関交付用の判決要旨を交付することが相当である。
おって,判決要旨等は,裁判所の広報業務の一環として作成された司法行政文書であることに変わりはなく,司法行政文書の開示の対象になり得るものとして扱う必要があることにも留意すべきである。
4 決定等要旨
仮処分や少年審判等については,公開手続でない以上,原則として,その決定等の写しを報道機関に便宜供与として交付することはないが,社会的に大きな注目を集める著名事件等である場合には,報道機関から決定要旨の提供が求められ,例外的に,決定等の主文を知らせるだけでなく,決定等要旨を作成し,報道機関に交付することがある。特に著名な少年事件では,社会に対する説明責任を果たし,家庭裁判所に対する社会の信頼を損なわないために,ある程度詳細な決定要旨を作成して,迅速に報道機関に交付する必要がある場合もある。
なお,決定等については,関係者への裁判結果の告知等がどの時点でなされたのか明確に分かりにくいところがあるなど,公開手続とは異なる場面が多いことから,報道機関に決定等要旨を交付する際には,裁判部等とよく連携をとる必要がある。
おって,少年事件の被害者等からは,自分たちが結果を知る前に報道されることへの不満が述べられることがある。このような不満への対応の実例として,被害者等(あるいはその代理人弁護士)に審判終了直後に決定要旨を持参又は取りに来てもらったものや,報道機関用より詳しい決定要旨を別途作成して被害者等に渡したものなどがあるので,参考とされたい。
大学生のときに教授から言われた言葉で一番衝撃を受けたのは
「難しいことをわかりやすく説明することはそもそも難しいから無理。必ず歪む。本当に理解したいなら自分の頭で一歩一歩理解してくれ」
というもので、今でも心に刻んでる。— 宇佐美典也 (@usaminoriya) June 1, 2022
第2 関連記事その他
1 東弁リブラ2022年11月号に「ジャーナリズムと弁護士の接点」が載っています。
2 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所の報道対応の基礎
・ 裁判所の報道発表等
・ 裁判所の取材対応
・ 裁判所の庁舎内(敷地内)写真撮影
・ 法廷内写真撮影
・ 所長等就任記者会見,及び記者会見実施上の一般的な留意事項(最高裁判所の広報ハンドブックからの抜粋)
・ 判決要旨の取扱い及び刑事上訴審の事件統計
・ 司法修習生による,司法研修所構内の写真撮影禁止に関する文書は存在しないこと
・ 最高裁判所における法廷内カメラ取材運用要領
・ 寺田逸郎最高裁判所長官の就任に伴う写真取材の要領
最高裁の広報ハンドブック(令和2年3月版)を掲載しています。https://t.co/wxJtzdrTuT pic.twitter.com/TtPJ3yu99n
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) January 9, 2022