裁判所速記官

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目次
1 裁判所速記官の役割
2 平成2年時点で裁判所速記官の養成は困難となっていたこと
3 裁判所速記官制度に関する平成7年当時の検討状況
4 平成10年4月以降,裁判所速記官の新規養成が停止していること
5 速記録の優れた特性
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1 裁判所速記官の役割
(1) 裁判所速記官は,法廷に立ち会い,訴訟当事者や証人などが裁判官の前で供述するのを速記する事務などを行っており(裁判所法60条の2),速記に際しては,速記タイプライターを使用して証人の供述などを速記符号として記録し,法廷が終わった後で,速記符号を反訳して速記録を作成するという方法をとっています(裁判所HPの「裁判所速記官」参照)。
(2) Wikipediaの「裁判所速記官」には以下の記載があります。
    裁判所速記官を志す者は、17歳から20歳を対象とする裁判所速記官研修生採用試験に合格して裁判所事務官に採用され、裁判所書記官研修所で2年間の研修を受けて裁判所速記官補に任命後,各裁判所での実務経験と試験により裁判所速記官に昇任した。
(3) 40期の中村慎最高裁判所総務局長は,平成27年4月7日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
    裁判所速記官が作成する速記録というのは、証人の証言等をそのまま文字にする、いわゆる逐語調書でございます。速記官は、速記タイプを用いて、法廷で発せられた証言等をそのまま記録するということになりますから、誤字脱字及び反訳の誤りは別として、裁判官といえどもその内容の変更を命じることができないということは実務に定着しているところでございまして、これはまさに逐語調書という性質からきているものというふうに理解しているところでございます。

2 平成2年時点で裁判所速記官の養成は困難となっていたこと
・ 12期の金谷利廣最高裁判所総務局長は,平成2年3月29日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 速記官につきましては、相当数の欠員のあることは御指摘のとおりでございます。
    これがなぜ欠員が生ずるかという理由でございますが、裁判所の速記は速タイプをたたいて行う速記でございます。非常に技術性の強いものでございます。そんなところからなかなか適性のある人、適格な人が得がたい。
    一言で申し上げればそういうことでございます。

② それにつきまして、またいろんな理由があるのだろうと思いますが、最近の技術革新の時代でこういう逐語調書をとる方法というのが、今後速タイプをたたく速記というようなことからほかの方法に移っていくのではないかといったような不安が受験希望しようかどうかと考えられる方にあるいはあるのではないか、そういったこともございますし、またせっかく速記官の研修所に入る試験に受かられても途中辞退されるという方もあります。研修所に入って鍛えているうちにやはり適性がないということで脱落される方もあります。
    私どもの方としては毎年四十人程度の速記官の養成ということを目標にして、それを上回る合格者を出しもしておるわけですが、途中辞退だとか脱落とかいった形で結局速記官として巣立っていくのが二十数名といった形になっているのが現状でございます。

3 裁判所速記官制度に関する平成7年当時の検討状況
・ 「速記問題について 小池総務局第三課長に聞く」(平成7年当時の文書)には以下の記載があります。
    平成七年一月上旬には、「裁判所速記官を取り巻く諸問題について」と「裁判所速記官の大量退職に対する対応策について」という二冊の小雑誌を速記官をはじめとする職員に公表しました。この二冊の小雑誌のうち、前者は、速記を取り巻く裁判所内外の客観的状況について取りまとめたものです。後者は、速記官の大量退職に対する対応策について、考えられる対応策を並列的に列挙し、それぞれの長所、短所を羅列したもので、今後検討すべき課題として提示しているものです。この二冊の小雑誌は、すべての速記官に配布され、主任書記官にも配布されました。希望する書記官にも閲覧できるようになっています。
    また、平成七年一月中旬に最高裁で開催された速記管理官研究会、その後に書く高裁で開かれた速記官研究会で、この二冊の小雑誌についての説明、意見聴取を行ってきました。
(中略)
    「裁判所速記官を取り巻く諸問題について」では、速記タイプを安定的に確保していくことが難しい状況にあること、速記官の人材確保が困難な状況にあることなどが指摘されていますが、このような状況の中で、裁判所として、将来にわたって増大する逐語調書の要請に対し永続的かつ安定的にどのように対応していくかが大きな課題となっているわけです。今後、ある時点で速記官制度を維持することができなくなれば、速記録に代表する逐語調書をだれがどのようにして作成するのかという問題に直面せざるを得ませんし、このような事態は、書記官事務に大きな影響を及ぼすことが明らかです。


4 平成10年4月以降,裁判所速記官の新規養成が停止していること
(1) 平成9年2月26日開催の最高裁判所裁判官会議において「これからの逐語録作成方法と速記官制度について」と題して以下の決定がなされました。
    録音反訳検証実験報告書[提言編]に基づき,次のとおり方針を決定する。
    速記官制度を取り巻く客観状況を踏まえ,今後増大すると予測される逐語録需要に的確かつ機動的にこたえるために,可及的速やかに録音反訳方式の導入を開始する。
    逐語録作成の代替方法がある一方で,速記官制度の基盤が将来的に極めて不安定な状況の中で特殊技能習得のための厳しい訓練を伴う速記官の養成を続けることは適当でないこと等にかんがみ,速記官の新規の養成は平成10年4月以降停止することとし,当分の間は現に在職している速記官による速記と録音反訳方式を併用する形で,緩やかに録音反訳方式への移行を図る。
(2) 40期の中村慎最高裁判所総務局長は,平成27年4月7日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 平成九年当時、速記タイプの確保に不安が生じたこと、人材確保が困難であること、速記官の職業病の問題もあること、将来的にふえていくと見込まれる逐語的調書に対する需要の増大に機動的に対応していくことが困難であると考えられたことから、速記官の養成を停止するという判断を行ったものでございます。
② 平成九年当時は、バブル崩壊による事件が非常に急増している状況でございました。平成二十一、二年をピークに、事件数が、今、民事事件については少し下がっている現状でございまして、全体の事件数自体は下がっているところなのでございますが、いわゆる速記官の廃止に伴って導入した録音反訳方式、これによる時間数というのが、記録に残っている範囲で申し上げますと、平成二十一年度には四万三千時間といったところでございますが、平成二十五年度には五万二千時間ということで、時間数というのはふえているところでございます。
③ 音声認識システムの認識率が録音反訳でそのまま使えるようになることについて期待を持ったというのは事実でございます。その期待に達していないというところでございます。


5 速記録の優れた特性
・ 栃木県弁護士会HPの「裁判所速記官制度に関する意見書」(平成20年9月24日付)には,速記録の優れた特性に関して以下の記載があります。
録取者である速記官が法廷に立会していることから、
・言語化されない表現でも録取可能である。

・録音状態とは関わりなく、不明瞭な供述でもその場で確認できたり、口元を見て聞き分けられたりする。
・事前・事後の確認作業によって専門用語・固有名詞・法律用語でも正確に録取できる。
・同時発言でも対応できる。
・多数関係者がいるときでも発言者の特定が容易である。
・記録に残す意味のないやりとりは始めから記録化しないなどの対応が可能であり、全逐語録とは違い、繰り返し・言い直しなどは適切に省かれ、読みやすい記録が作成される。
・尋問途中でも、必要があるときは、前の供述を訳読して供述内容を確認することができる。
・音声をその場で記録した調書であるので、裁判官の訂正命令に服することもないとされ、(裁判官の記憶の誤りによる誤謬を排することができ)内容の正確性が保たれる。
・録取者である速記官には公務員としての守秘義務がある。裁判は公開が原則であるとはいえ、訴訟であることの性質上、関係者が一般に知られたくない情報が多くあり、反訳外部委託方式により速記録の方が秘密保持性において優れている。


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