特例判事補

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目次
1 地家裁における特例判事補
2 高等裁判所判事職務代行としての特例判事補
3 臨時司法制度調査会意見書(昭和39年8月28日付)の記載
4 司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日付)の記載
5 平成15年2月当時の特例判事補の状況
6 平成15年2月当時,特例判事補制度を段階的に見直す方針であったこと
7 関連記事その他

1 地家裁における特例判事補
(1) 根拠法の条文
・ 「判事補は、他の法律に特別の定のある場合を除いて、一人で裁判をすることができない。」と定める裁判所法27条1項の例外としての,判事補の職権の特例等に関する法律(昭和23年法律7月12日第146号)1条は以下のとおりです。
① 判事補で裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第四十二条第一項各号に掲げる職の一又は二以上にあつてその年数を通算して五年以上になる者のうち、最高裁判所の指名する者は、当分の間、判事補としての職権の制限を受けないものとし、同法第二十九条第三項(同法第三十一条の五で準用する場合を含む。)及び第三十六条の規定の適用については、その属する地方裁判所又は家庭裁判所の判事の権限を有するものとする。
② 裁判所法第四十二条第二項から第四項までの規定は、前項の年数の計算に、これを準用する。
(2) 裁判所百年史の記載
・ 裁判所百年史(平成2年11月26日発行)207頁には,特例判事補に関して以下の記載があります。
   判事補は、司法修習生の修習を終えた者の中から任命される。なお、裁判所法上は、判事補は、原則として一人で裁判をすることができず、また、同時に二人以上合議体に加わることや裁判長となることもできないものとされているが、裁判事務繁忙の実情等にかんがみ、判事補の職権に関するこのような制限を臨時に緩和するため、昭和二三年七月一二日、判事補の職権の特例等に関する法律が公布され、判事補でその在職年数が五年以上になる者のうち、最高裁判所に指名された者は、右のような職権の制限を受けず、判事の権限を有するものとされることになった。



2 高等裁判所判事職務代行としての特例判事補

(1) 根拠法の条文
・ 「各高等裁判所は、高等裁判所長官及び相応な員数の判事でこれを構成する。」と定める裁判所法15条の例外としての,判事補の職権の特例等に関する法律(昭和23年法律7月12日第146号)1条の2(昭和32年5月1日法律第92号によって追加された条文です。)は以下のとおりです。
① 最高裁判所は、当分の間、高等裁判所の裁判事務の取扱上特に必要があるときは、その高等裁判所の管轄区域内の地方裁判所又は家庭裁判所の判事補で前条第一項の規定による指名を受けた者にその高等裁判所の判事の職務を行わせることができる。
② 前項の規定により判事補が高等裁判所の判事の職務を行う場合においては、判事補は、同時に二人以上合議体に加わり、又は裁判長となることができない。
(2) 裁判所法逐条解説の記載
・ 裁判所法逐条解説(上巻)165頁及び166頁には,高等裁判所判事の職務を代行する特例判事補に関して以下の記載があります。
(165頁の記載)
   職権特例判事補が高等裁判所判事の職務代行を命ぜられるのは、「高等裁判所の裁判事務の取扱上特に必要があるとき」である。これは、本条(山中注:裁判所法19条のこと。)の場合と異なり、必ずしも、特定の高等裁判所におけるさし迫つた必要性のみに限らず、もう少し広い意味で、最高裁判所が全国的視野において、全国各裁判所の裁判事務をできる限り効率的に運営するという観点からする必要性もふくむ趣旨と解され、本条の場合に比し、その範囲(特定性),程度(急迫性)等において差があるものということができる。
(166頁の記載)
   この措置(山中注:特例判事補が高等裁判所判事の職務を代行するという措置)は,「当分の間」行われるものである。けだし,判事の定員が充足した後は,高等裁判所は,できる限り,判事のみの合議体で事件を処理するものとすることが望ましいし,また,判事補制度そのものについても,なお十分検討されるべき点が少くなく,右に述べた制度をもって恒久的なものとするには,多くの疑問が存するからである。
(3) 最高裁判所十年の回顧の記載等
ア 最高裁判所十年の回顧(三)には以下の記載がありますし(昭和32年12月発行の法曹時報9巻12号38頁),立法趣旨に関しては,昭和32年4月5日の衆議院法務委員会における位野木益雄(いのきますお)法務大臣官房調査課長の答弁も同趣旨のものとなっています。
   一方、立法の面における第一審強化方策として、第二十六国会を通過した「判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律」がある。この法律は本年五月一日から施行されているが、その趣旨とするところは、第一審の充実強化を円滑に行うため、当分の間の措置として、いわゆる職権特例判事補に高等裁判所の判事の職務を行わせることができるようになったことである。現在地方裁判所で単独事件を処理している職権特例判事補は二百名以上にも達しているが、これをできる限り判事と交替させることが望ましい。この判事の供給源は、さしあたりこれを高等裁判所に求めなければならない。そこで高等裁判所判事を地方裁判所に配置換えし、その後を職権特例の判事補でおぎない、高等裁判所の合議体の一員に加えようとするものである。これによって第一審の充実強化をはかるとともに、一面、高等裁判所にも清新の気を送り、あわせて人事の交流をはかろうとするものである。
   この法律の施行にともなって、最高裁判所は、裁判官の配置換えを行っているが、本年十一月二十日までに、すでに判事補八名が高等裁判所に送りこまれている。
イ 制定経緯からすれば,「高等裁判所の裁判事務の取扱上特に必要があるとき」というのは,「第一審強化のために地裁に配置換えされた高裁判事の欠員を埋めるために特に必要があるとき」といった意味合いになります。
(4) 控訴院判事の任命資格
・ 明治憲法時代,5年以上裁判官の経験があれば控訴院判事の任命資格を取得しました(裁判所構成法69条)。

3 臨時司法制度調査会意見書(昭和39年8月28日付)の記載
   臨時司法制度調査会意見書(昭和39年8月28日付)の決議要目には以下の記載があります。
第一 裁判官制度
 一 任用制度運用の改善
   弁護士、検察官等で裁判官となるにふさわしいものをできる限り多数裁判官に任用することができるよう法曹三者が協力すること。
 二 判事補制度の改善
  1 判事補は、原則として、地方裁判所及び家庭裁判所において、一人で判決をすることができないものとすること。
  2 判事補のうち在職三年に達しない者は、判決以外の裁判も、特に法律で定める軽易なものを除き、一人ですることができないものとすること。
  3 判事補の研修を充実強化すること。
 三 簡易裁判所判事制度の改善
  1 簡易裁判所判事には、できる限り、判事定年退官者等法曹有資格者を充てること。
  2 いわゆる選考任命の簡易裁判所判事は、各方面から人材を求めるとともに、その素質の向上を図ること。
  3 一定年数の経験を有する選考任命の簡易裁判所判事で一定の考試を経たものは、判事補に任命することができるものとすること。
 四 裁判官の増員
   裁判官の定員を相当程度増加すること。
 五 裁判官の補助機構
  1 裁判所調査官制度を次のとおり拡充すること。
   (一) 高等裁判所における裁判所調査官の制度を拡充し、これに一般事件の審理及び裁判に関する調査をもつかさどらせるようにすること。
   (二) 地方裁判所に、裁判官の命を受けて工業所有権関係事件等の特殊事件の審理及び裁判に関して必要な調査をつかさどる裁判所調査官を置くこと。
   (三) 地方裁判所に、裁判官の命を受けて一般事件の審理及び裁判に関して必要な調査をつかさどる裁判所調査官を置くことを検討すること。
  2 1のほか、裁判所の補助職員の充実整備を図ること。

4 司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日付)の記載
   司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日付)には以下の記載があります。
(1) 判事補制度の改革等

(中略)
イ 特例判事補制度の解消
 特例判事補制度については、裁判官数の不足に対応するための「当分の間」の措置であったことや、十全の権限を行使する判事となるためには10年の法律専門家としての経験を要求している裁判所法の趣旨にかんがみ、計画的かつ段階的に解消すべきである。裁判官の大幅増員の必要性については既に言及したところであるが、特例判事補制度の解消のためにも、判事を大幅に増員すべきであり、後記(2)の措置を講じること等により、判事の大幅増員に対応できるよう、弁護士等からの任官を推進すべきである。

5 平成15年2月当時の特例判事補の状況
・ 特例判事補制度の見直しについて(平成15年2月18日付の最高裁判所事務総局の文書)には「2 特例判事補の現状」として以下の記載があります。
○  特例判事補は,全国各地の裁判所で多様な事件を判事と同等に担当し,処理している。地裁・家裁の支部で勤務する特例判事補の数も多い。
・ 全国的な配置状況(資料1,2)
 現在,約400人の特例判事補が全国各地の裁判所で事件処理を担当し,そのうち,300人以上が,民事・刑事の訴訟事件などを単独で担当している。約130人の特例判事補が支部に配置されており,そのうち,約20人は,離島,遠隔地などのいわゆる1人配置支部に勤務している。
・ 事件処理の現況
 特例判事補は,地裁本庁等では,民事・刑事の単独事件を中心に担当している。支部等では,民事・刑事の単独事件のほか,執行事件,家事事件など多様な事件を同時に担当している。
* 例えば,新潟地家裁佐渡支部(佐渡),長崎地家裁福江支部(五島列島),厳原支部(対馬),鹿児島地家裁名瀬支部(奄美大島)などへ特例判事補が赴任し,夜間令状事件を含め24時間体制で地域の司法を担っている。
* 判事補任官後の5年間,民事・刑事の合議事件の左陪席や,少年事件などの経験を積むことを通じて,単独で訴訟事件を担当することができるように,その力量を培う。特例判事補となった後は,赴任庁の事件状況に応じて事務を担当するが,訴訟事件が増加傾向にあることから,単独事件の担当とすることが多い。また,特例判事補は,子どもの年齢がまだ低く,親の介護を要するに至っていない年代の者が多く,転勤の支障が比較的小さいことから,離島,遠隔地等に所在する裁判所への赴任候補者とすることが少なくない。

6 平成15年2月当時,特例判事補制度を段階的に見直す方針であったこと
・ 特例判事補制度の見直しについて(平成15年2月18日付の最高裁判所事務総局の文書)には「3 検討の方向性」として以下の記載があります。
○ 裁判所法が判事任命のための資格として判事補経験10年を要求している趣旨,特例判事補制度が「当分の間」の措置とされている趣旨に照らし,特例判事補制度を段階的に見直す方針である。
○ 当面は,後記の条件整備の状況を踏まえつつ,特例判事補が単独訴訟事件を担当する時期を,任官7年目ないし8年目へシフトすることを目標とし,その担当事務をこれまで以上に合議事件に振り向けるとともに,各種非訟事件等の多種多様な事件とすることを工夫するなどして,段階的な見直しを推進する予定である。
・ 特例判事補の果たしている役割及び弁護士任官の現状を考慮すれば,まず,任官6年目ないし7年目の特例判事補による単独事件の担当から見直す方策を検討したい。代替する判事の人数の確保及び支部勤務者の確保という観点から,都市部から見直しを始めていくことになろう。その上で,条件整備の状況を踏まえつつ更に見直しを進めていきたい。
・ 約400名の特例判事補の見直しのためには,これに代替する判事を確保することが必要不可欠である。また,これと並行して,審理の充実・迅速化,事件増加へ対応するため,判事による事件処理態勢の充実強化を図る必要がある。
・ 資質能力を備えた判事を確保する必要があることに変わりはなく,前記のような段階的な見直しとともに,特例判事補の担当事務の見直しを含む人事ローテーションの在り方を検討し,特例判事補への研修を一層充実強化する必要がある。
・ 例えば,これらの特例判事補の担当事務としては,地家裁の合議事件を中心として,各種非訟事件(破産,執行等),簡裁の訴訟事件,調停事件等が考えられるとともに,研修としても,裁判所外部の経験(海外留学,行政官庁への出向などに加え,弁護士事務所への派遣等)等の多様なものが考えられる。
・ 特例判事補を含む判事補の研さん態勢も一層充実させることを考えている。

7 関連記事その他
(1) 民事訴訟法312条2項1号は「法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。」を絶対的上告理由としていますところ,判事補の職権の特例等に関する法律に違反することは同号に該当すると思います。
(2) 京都弁護士会は,司法制度改革審議会に対し,判事補制度の廃止を求める意見書(2000年11月22日)を提出しました。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官の種類
・ 職務代行裁判官
・ 裁判官の号別在職状況
・ 下級裁判所の裁判官の定員配置

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