東京高裁が平成30年3月15日付で岡口基一裁判官を厳重注意処分とした 際に作成した文書の一部は不開示であること


1 令和元年8月5日付の理由説明書の「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」には以下の記載があります。
ア 苦情申出人に開示された注意書(以下「本件注意書」という。)には,厳重注意の内容が記載されており, これは行政機関情報公開法(以下「法」という。)第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
   また,本件注意書の不開示部分は,当該裁判官に対する分限裁判の決定において明らかにされていない部分であるところ,同部分を開示すると,人事管理に係る事務に関与する判断権者及び職員に対し,文書の作成,管理,保存について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報を開示することになる(法第5条第6号二) 。
   なお,苦情申出人は,本件注意書の不開示部分がインターネットで公表されている可能性を主張するが,裁判所において同部分を公表したことはない。
イ 苦情申出人は,本件注意書に関する決裁文書が別に存在すると主張するが,東京高等裁判所が平成30年3月15日付けで行った厳重注意は,下級裁判所事務処理規則21条に基づき,事務の取扱いや行状についての改善を目的として行うものであって,懲戒処分のような制裁的な効果を伴わない措置であると解される。そして,同条によれば,その主体は,高等裁判所においては,高等裁判所長官とされており,専ら高等裁判所長官の責任において,注意の要否やその態様等を決することが予定されている。また,同条には,注意の方法等についての規定はなく,他に,注意の方法や文書の作成の要否等に関する定めも見当たらない。
   したがって,東京高等裁判所長官が下級裁判所事務処理規則21条に基づく厳重注意に係る意思決定を行うに際し,本件注意書以外の文書の作成が必ず求められるものではない(平成29年度(情)答申第1号参照)から,本件注意書以外の文書を作成又は取得していない。
ウ よって,原判断は相当である。

2 46期の岡口基一裁判官は,「分限裁判の記録」と題するブログを運営しており,ご自身の分限裁判のことを色々と公表されています。

3 46期の岡口基一裁判官に対する,平成30年3月15日付の注意書の文言は以下のとおりです。
   あなたは,裁判官であることを他者から認識できる状態で,性的な内容の文章や写真等を繰り返し投稿しているツイツターのアカウントを利用し,平成29年12月13日頃,特定の性犯罪事件についての判決を閲覧できる裁判所ウェブサイトのURLとともに, 「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」「そんな男に,無惨にも殺されてしまった17歳の女性」との投稿をインターネット上に公開して,被害者遺族の感情を傷つけ,(不開示部分)
このことは,裁判官として不適切であるとともに,裁判所に対する国民の信頼を損なう行為であって,誠に遺憾である。
   よって,今後再びこのようなことのないよう,下級裁判所事務処理規則第21条に基づき,厳重に注意する。


4 下級裁判所判例集に掲載する裁判例の選別基準等について(平成29年2月17日付の最高裁判所広報課長等の事務連絡)によれば,以下の刑事事件の判決書は裁判所HPに掲載しないこととなっています(ナンバリングを変更しています。)。
① 憲法第82条第2項により公開停止とされた事件
② 性犯罪(起訴罪名は性犯罪ではなくても,実質的に性犯罪と同視できる事件を含む。),犯行態様が凄惨な殺人事件など,判決書を公開することにより被害者・遺族などの関係者に大きな精神的被害を与えるおそれがある事件
③ 少年の刑事事件(判決時成人を含む。)
④ 名誉毀損罪や秘密漏示罪など,判決書を公開することにより再び被害を生じさせるおそれがある事件
⑤ その他,上記①から④までに準ずる事件


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