昭和59年8月発行の,東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎の落成記念特集号


目次

0 総論
1 落成式における大内恒夫 東京高裁長官の式辞
2 落成式における寺田治郎 最高裁判所長官の祝辞
3 落成式における住栄作 法務大臣の祝辞
4 落成式における石井成一 日弁連会長の祝辞
5 矢口洪一 元東京高裁長官の著書の記載
6 関連記事その他

新庁舎落成記念特集号(昭和59年8月)の表紙及び末尾

0 総論
(1) 東京高裁広報及び東京地裁広報が作成した,新庁舎落成記念特集号(昭和59年8月1日付)を掲載しています。
(2) 東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎は昭和59年4月に完成し,同年5月31日午前10時30分から18階の大会議室において落成式が挙行されました。
(3) 裁判所HPに「東京地方裁判所 庁舎総合案内図」が載っていて,Wikipediaに「東京高等地方簡易裁判所合同庁舎」が載っています。

1 落成式における大内恒夫 東京高裁長官の式辞
   本日ここに最高裁判所長官をはじめ来賓多数の御臨席を得まして、東京高等裁判所、東京地方裁判所、東京簡易裁判所及び東京第一・第二検察審査会合同庁舎の落成式を挙行する運びとなりましたことは、まことに喜びにたえないところであります。
   ここに完成いたしました新庁舎は、中央官衙整備計画の基本方針に基づき、旧最高裁判所庁舎跡地に建てられたもので、最高裁判所の設計、最高裁判所及び建設省の監理のもとに、十四にのぼる企業体が一致協力して施工にあたり、昭和五十四年七月の着工から約五年の歳月をかけて本年四月すべての工事を終わり、完成を見るに至ったものであります。地上十九階、地下三階、廷床面積約十三万六千平方メートルというこの庁舎は、わが国の裁判所の建物としては、最大の規模のものであり、法廷部門を低層階に、事務室部門を高層階に配置するなど機能的な面の整備とともに、耐震、防災等に関しても最新の設備を施した画期的なものであります。
   東京高等裁判所がこれまで執務して参りました庁舎は、昭和十年に東京民事地方裁判所庁舎として建設されたもので、戦後の日本国憲法の施行間もないころは、最高裁判所も同居していたなど数々の思い出を認めた庁舎でありましたが、歳月の経過とともに老朽狭あい化が著しく、また、東京地方裁判所等が執務しておりました庁舎は、各所に分散して不便が甚だしく、一日も早く首都の裁判所にふさわしい庁舎を新営することが強く望まれていたのであります。幸典この度、高、地、簡裁を一体とした合同庁舎が完成しましたが、これにより、これまで訴訟関係者はじめ多くの方々におかけしてきた不便が
解消されるばかりでなく、円滑な裁判の運営に資するところが多大であると信じております。
   申すまでもなく、裁判の仕事は、どんなに立派な施設を作ろうとも、またいかに制度を整えようとも、結局、その結果は、その仕事に携わる人間の努力にまつほかありません。最近、国民生活や社会事情の急激な変化とともに、裁判所に提起される各種事件はますます複雑、多様化の度を加え、司法の役割はいよいよ大となっております。私たちは、この機会に、あらためて裁判所に課せられた使命の重大性に思いをいたし、さらに清新の気をもって職務に精励し、より一層国民の信頼と期待にこたえて参りたいと思います。
   終りに、この庁舎の新営に多大の御尽力と御配恵を賜りました関係各位並びに幾多の困難を克服してよくこの工事を完成されました工事関係者各位に対し、心からの謝意と敬意を表しまして、私の式辞といたします。

2 落成式における寺田治郎 最高裁判所長官の祝辞
   本日、ここに、東京高等裁判所、同地方裁判所、同簡易裁判所、同第及び第二検察審査会合同新庁舎の落成式が挙行されるに当たり、お祝いを申し述べる機会を得ましたことは、私の深く喜びとするところであります。
   これまで、東京高等裁判所は、昭和十年に東京民事地方裁判所として建設された庁舎を使用し、東京地方裁判所は、昭和三十七年に建設された同裁判所の刑事部庁舎を中心として、数箇所に散在すら庁舎を併せて使用してまいりましたが、いずれも、年ごとに老朽と狭あいの度を加え、特に、東京地方裁判所においては、庁舎が各所に分散していたため、種々の点で不便を免れず、かねて新庁舎の建設が強く望まれていたところであります。
   この度、この念願が実を結び、司法部ゆかりの最高裁判所旧庁舎跡地に新庁舎のしゅん工を見るに至りました。この新庁舎は、皇居周辺の景観との調和にも配慮して計画され、大裁判所としての特質を考慮した最新設備を完備し、かつ、司法部の建物としてはこれまでにない規模を有する機能的な高層建築物で、正義の殿堂として長く霞が関にその威容を誇ることと信じます。新庁舎の落成について心から慶祝の意を表しますとともに、その建設に当たり御支援と御協力を賜りました関係各方面の方々に対し、深甚の敬意と謝意を表する次第であります。
   裁判所の取り扱う事件は、最近の社会情勢を反映して、従来にない複雑困難な問題を含むものが多くなってきております。
   私どもといたしましては、これまで以上に工夫と努力を重ねて事件の適正迅速な処理を図り、裁判所に寄せられた国民の期待と信頼にこたえていかなければならないと思います。
   裁判官をはじめ職員各位におかれては、この喜びの日を契機として決意を新たにされ、それぞれの職務に一層精励されますよう切望してやみません。
   また、御臨席の各位におかれましては、司法の重要性を御理解くださいまして、今後とも、裁判所のため一層の御協力を賜りますようお顔い申し上げます。
   これをもちまして、私の祝辞といたします。

3 落成式における住栄作 法務大臣の祝辞
   本日、東京高等裁判所・東京地方裁判所・東京簡易裁判所及び東京第一・第二検察審査会の合同庁舎の落成式が挙行されるに当たり、一言お祝いの言葉を申し述べる機会を得ましたことは、私の深く喜びとするところであります。
   本日、ここに新庁舎の落成式を迎えられた東京高等裁判所を始めとする各裁判所及び各検察審査会は、我が国司法の重要な一翼を担い、よくその使命を果たしてこられたのでありますが、この度、この霞が関の最高裁判所旧庁舎跡地という由緒ある場所に、近代技術の粋を結集し、司法の殿堂にふさわしい庁舎の完成を見るに至りましたことは、誠に御同慶に堪えないところでありまして、庁舎新営に参画された関係各位の御努力に対し深甚な敬意と祝意を表するものであります。
   この明るい近代的な庁舎の完成は、職員の皆様はもとより、訴訟関係人を始めとする関係各方面にも多大の便益をもたらし、その寄与するところは誠に大なるものがあると存じます。
   新庁舎の下で勤務される職員各位におかれましては夕今後とも一層職務に精励され、我が国司法に寄せる国民の信頼と期待にこたえられますよう念願いたしまして、私の祝辞といたします。

4 落成式における石井成一 日弁連会長の祝辞
   只今ご紹介を戴きました日本弁護士連合会会長の石井成一でございます。本日、東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎の落成式が開催されるにあたり、日本弁護士連合会を代表してお祝いの言葉を申し述べる機会を得ましたことは、私にとって大変光栄に存ずるところであります。
   裁判所におかれましては、かねてから新庁舎建設の要を痛感され、関係各位におかれて、いくたびかの検討を重ねられました結果、ここにめでたく落成式を迎えられましたことは誠にご同慶に堪えません。
   近代的感覚と設備を兼ねそなえた新庁舎は、内容・外観ともに申し分なく、先進諸国の裁判所施設の中でも、もっとも優れた庁舎の一つとして位置づけられるものと存じます。正に『司法の殿堂』にふさわしいものと拝見しておりきす。
   ところで、国民の法に対する意識も人権思想の昂りとともに、伝統的なものから徐々に脱皮しつつあることを看過することはできません。
数多くの立法や法改正はいうまでもなく、新しい形態の、また多数当事者の訴訟や紛争も次第に増加しております。
   このような情況下において、われわれ司法にたずさわる者としては、社会の進展とそして新しい要求に対して、適切に対応し、人権を擁護し社会正義の実現を目指して、一層国民の期待に副うべき責務のあることが強調されねばなりません。
   どうか、これを機会に新庁舎の管理運営に万全を期されますとともに、新庁舎がその機能を十分に生かして、国民のための司法を目指して、名実とともに「司法の殿堂」が築き上げられますよう念願いたします。我々弁護士もこのため大いにご協力申し上げたいと存じます。
   終りに、本日ご列席の各位ととともに、新庁舎の完成を心からお喜び申し上げ、益々のご発展をお祈りし、私の祝辞といたします。

5 矢口洪一 元東京高裁長官の著書の記載
    最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)54頁には以下の記載があります。
    新営庁舎といえば、昭和五八年二月東京高裁長官として日比谷公園側の旧庁舎から桜田通りに面した地、簡裁も含めた東京高裁新庁舎に移転した。
   大審院、旧最高裁と引き続いた由緒ある地に建てられた一九階建の庁舎であるが、一階ロビーの天井には、旧最高裁庁舎を飾った大シャンデリアが輝いている。一七階の長官室から見下ろした皇居前広場の薄暮の雪景色は言いようがなく、時に千葉、木更津の巨大エントッ群が鯛の上に顔を出し、筑波山も遠望できた。
   高、地、簡裁合計一七〇の法廷を持つ裁判所は、世界一の規模を誇るが、西部劇に出てくる酒場のカウンターをコンコンと叩きながら行われる裁判を一つの原型とするならば、あまりにも巨大化し過ぎた東京の姿であって、ここにも一極集中の功罪がある。

6 関連記事その他
(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 東京家庭裁判所沿革史誌(平成11年3月26日発行)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所庁舎
・ 最高裁判所の庁舎平面図の開示範囲
・ 最高裁判所の庁舎見学に関する,最高裁判所作成のマニュアル
・ 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等
・ 裁判所の庁舎等の管理に関する規程及びその運用


広告
スポンサーリンク