破産管財人の選任及び報酬


目次
1 破産管財人の報酬
2 破産管財人の選任及び報酬に関する国会での質疑応答(令和元年5月15日)
3 東京地裁破産部裁判官の収賄事件を受けた,破産管財人の選任方法に関する国会答弁(昭和56年5月13日)
4 関連記事その他

1 破産管財人の報酬
(1) 破産管財人の報酬に関する条文は以下のとおりです。
・ 破産法87条(破産管財人の報酬等)
① 破産管財人は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。
② 前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
③ 前二項の規定は、破産管財人代理について準用する。
・ 破産規則27条(破産管財人の報酬等・法第八十七条)
    裁判所は、破産管財人又は破産管財人代理の報酬を定めるに当たっては、その職務と責任にふさわしい額を定めるものとする。
(2) 破産管財人の報酬は破産者及び破産債権者の感覚からすれば高額にすぎることが多いです。
    具体的には,形成された財団総額が100万円未満の場合は通常,財団債権の額によりますものの,全部又は大部分が破産管財人の報酬とされる結果,異時廃止決定により破産手続が終了します。
(3)ア 形成された財団総額から①管財人報酬以外の財団債権の額,及び②和解契約による弁済許可(破産法78条2項11号)なり労働債権の弁済許可(破産法101条1項)なりを利用した簡易な分配を予定している優先的破産債権の額を控除した金額が40万円以下の場合,その全額は管財人報酬となります。
イ 大阪地裁では,一般管財手続の場合,計算報告集会において,残郵券及び同集会後1か月以内に生じる3万円以下の財団残について,包括的に追加報酬とする決定がなされ,その結果について,追加報酬受領報告書により裁判所に報告するという運用が行われています。
(4) 西野法律事務所HPの「破産管財人の報酬は?」には「財産が集まらなかったら、報酬は予納金のみですが、財産が結構集まったら「大盤振舞い」の報酬をもらえると後で聞き、少し残念な気がしていました。」と書いてあります。
(5) 弁護士である破産管財人は,所得税法204条1項2号の規定に基づき,自らの報酬の支払の際にその報酬について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負います(最高裁平成23年1月14日判決)。
(6)ア 破産管財人以外の抗告権者に対しては,個別に報酬決定の告知がされるわけではありませんから,これらの者は,報酬決定を知ったときから即時抗告の期間内に即時抗告をすることができます。
    ただし,破産手続が終了するまでの間に,破産管財人から関係者に対して計算の報告がされ,手続終了についての異議の手続が保障されています(破産法88条及び89条)から,破産手続終了後に即時抗告をすることはできません(大コンメンタール破産法371頁参照)。
イ 財団債権者及び破産債権者は当然,告知を受けた日から1週間以内に破産管財人報酬に対する即時抗告をすることができるものの,破産者が破産管財人報酬に対する即時抗告をすることができるかどうかは不明です。


2 破産管財人の選任及び報酬に関する国会での質疑応答(令和元年5月15日)
・   
管財事件に関する,令和元年5月15日の衆議院法務委員会における質疑応答は以下のとおりです。なお,文中の井野委員は井野俊郎衆議院議員(自由民主党)であり,神田政府参考人は神田眞人財務省主計局次長であり,小野瀬政府参考人は38期の小野瀬厚法務省民事局長であり,門田最高裁判所長官代理者は45期の門田友昌最高裁判所事務総局民事局長です。

○井野委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の井野俊郎でございます。
   本日は、二十五分という時間をいただきまして、主に管財事件について、裁判所に対して中心に質疑を行いたいと思っております。
   管財事件というと、ちょっとなかなか皆さんにはわかりにくいかもしれませんけれども、簡単に言うと、会社などが債務超過に陥って、会社が運営ができなくなったという場合に、裁判所に破産申請なり民事再生等を申し立てて、裁判所の監督のもとで、いわば、会社財産が、借金が、倒産したとなると債権者とかがどんどん押しかけて勝手に換価されるのは困る。そういう中で、会社財産等を裁判所の管轄の中で監督していきながら換価手続を行い、債権者に公平に会社財産を分配して清算を終える、会社を終えるというようなことが管財事件というものでございまして、これについて、ちょっと裁判所に対して中心に質疑をしていきたい、私も、弁護士の経験上、その点について一つ疑問に思っている点があったものですから、質疑をしていきたいと思っております。
   まず一つは、裁判所が、こういった管財事件だったり、例えば国選弁護等だったり、いわゆる外の、外部の弁護士といいましょうか、そういった者に事件を委託する場合、こういったものは、そもそも、よく普通にこういう公共的機関が外に出して仕事を委託なりしたりとか、はたまた建物を建てるとか、いわゆる公共事業と言われるものですけれども、そういったものとどういう関係、いわゆる公共調達という言葉が正しいのかどうかわかりませんけれども、こういった裁判所が税金なり手数料を使って、外に、民間に委託する場合の、そういった場合の法的規制といいましょうか、公共調達というか、そういったものの法的規制はどうなっているのか、まずお伺いしたいと思います。
○神田政府参考人 お答え申し上げます。
   予算の適正な使用を図るための手続につきましては会計法で定められてございます。ここでは、公正性及び経済性の原則に基づきまして、透明な手続のもとでの一般競争契約を国の契約方式の原則としてございます。
   この一般競争契約は、不特定多数の者に競争を行わせて、国にとって最も有利な条件で申込みをした者と契約を締結する方式でございますが、この方式を原則として採用した趣旨は、第一に公正性、すなわち、国が発注する契約は、その財源が税金であることから、納税者である国民についての機会均等という思想、また、第二に経済性、すなわち、なるべく広い範囲で競争することにより、最も公正な処理を図り、かつ、国にとって最も有利な価格を見出そうとする考えに基づくものでございます。
   なお、行政事務の遂行上、一般競争に付する必要がない場合、あるいは競争に付することが望ましくない場合、こういったときには、一定の場合において、指名競争契約と随意契約の契約方式がそれぞれ、一般競争契約の例外として認められてございます。
○井野委員 基本的には、公共機関がそういった、当然、お金を使うというか、税金を使うわけですから、なるべく安く、かつ、なるべく、税金を使う以上は公正にやるということがメーンの趣旨だというふうに理解をしました。
一応念のため確認しますけれども、裁判所が発注する、委託するという言い方なのかもしれませんけれども、これについても当然に、もっと具体的には管財事件だとか、例えばまあ刑事弁護というのが適切なのかどうかわかりませんけれども、そういった場合にも該当する、当然、裁判所にも当てはまるということで、もう一度確認ですけれども、よろしいですか。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
   裁判所が行います破産管財人の選任でございますけれども、一般にいわゆる公共調達と申しますのは、国等が私人から役務の提供等を受けることを内容とする、会計法令の適用を受ける契約を指すものと解されていると承知しておりまして、この契約といいますのは、国の締結する私法上の契約のうち、国の金銭その他、財産価値の移動増減を伴うものと解されているものと承知しております。
 破産管財人の選任でございますが、この選任は、裁判所の、裁判によって行われるものでございまして、私法上の契約に基づくものではございません。また、この費用と報酬は破産財団から弁済されるものでございまして、その原資は税収等によるものではございませんので、国の財産価値が移動増減するものでもございません。したがいまして、裁判所が行います破産管財人の選任につきましては、いわゆる公共調達には該当しないものと考えております。
○井野委員 大分話が進んでしまったように思いますけれども。いいです、了解しました、その点は。
   その上で、管財事件等について入っていきますけれども、そうしますと、小野瀬さんのお話によりますと、国家の財源上の移動がないというお話をおっしゃられるんであれば、ちょっとその点について、では、反論をさせていただきたいなと思うんですけれども。
   基本的に、まず、管財の申立ての段階では、申立て手数料が定められるかと思います。この申立て手数料についてなんですけれども、国家機関に当然、裁判所という国家機関に納付されるわけです。
   これは管財から離れて、ちょっとまず先に手数料についてなんですけれども、手数料は、普通、国家機関に納付された、例えば市役所とかでも、戸籍とか住民票をとった段階で、三、四百円、支払われますね、手数料として。こういった手数料は、国家機関に入った場合というのは、どういうような法的規制になるんでしょうか。
○神田政府参考人 お答え申し上げます。
   国の徴収する手数料につきましては、国が特定の者のために役務を提供するのに際し、その反対給付として徴収するものでございます。
   この徴収された手数料は、会計法第二条の規定に基づいて、当該手数料の納付を必要とする事務事業を所掌する各府省庁を通じて、国の収入として国庫に一旦納められて、そして支出経費の財源に充当されることになってございます。
したがって、徴収された手数料を直ちに使用することはできないということになってございます。
○井野委員 そうすると、国庫に収納されるということですから、それを、手数料として入ったものを、お金を使おうとなったら、当然、それはまた、会計法の趣旨に該当し、要は、簡単に言うと、手数料でもらったんだから勝手に使ってもいいとか、税金とは違うんだから勝手に、国として幾らでも好き勝手に使っていいということではなくて、あくまで、やはりそこの部分も、手数料収入についても会計法の趣旨を、適用を受けるというか、そういう理解でいいですか。
○神田政府参考人 お答え申し上げます。
   さようでございます。
○井野委員 そうすると、管財事件についても手数料なんですよね、たしか。当然、安くはない金額。私の経験でも、そんな会社の破産申請をするに当たって、最低ラインが約百万円ぐらいだと私は理解をしています、申立ての際に裁判所に納める手数料としてですね。これぐらいの金額をまず納めなさい、もちろん事件によっては大分低くなる場合もありますけれども、少なくとも一般的な会社の場合には大体それぐらいの手数料を納めなさいという、じゃないと事件が始まらない、管財の申立て事件を受理できません、破産申立て事件を受理できませんということになっているかと思うんです。
   その上で、これはどういうお金かというと、大体、申立ての手数料というのは簡単に言うと管財人報酬に充てられるというのが、一般的な、我々弁護士というか法曹業界の中での何となくのイメージというか常識というか、その管財人報酬、最低限を担保するために申立て手数料を納付しなさいというのが裁判所の趣旨だと思うんだけれども、じゃ、そもそもとして、管財人の報酬の決め方、これについて裁判所はどのような客観的な基準で決めているんですか。
○門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
   まず前提といたしましてですけれども、破産申立てに当たりまして当事者の方に納めていただく手数料につきましては、債務者が申し立てられます破産手続の申立てにつきましては、手数料自体は千円ということになっております。今委員御指摘のような金額のものは予納金ということで納めていただくということになりますので、その前提でお答えさせていただきます。
   破産管財人の報酬ですけれども、これにつきましては、破産裁判所の裁判官が個別の事案ごとに事案の性質等の具体的事情に応じて適切な報酬を定めているというふうに承知をしております。
 少し実情を申し上げますと、これは事件ごとにまさにケース・バイ・ケースということで、事案によってさまざまということになりますけれども、一般的に考慮されております要素としましては、形成された破産財団の規模ですとか、あるいは破産管財業務の難しさ、あるいは手間ですとか、あるいは破産管財人の職務遂行の適切さ、あるいは破産財団の財団増殖や、あるいは破産事件の早期処理の面における破産管財人の功績の度合いですとか、配当額や配当率との均衡といった諸般の事情を総合的に考慮しているものと認識しております。


○井野委員 結局、客観的な基準というのは何にもないということ、いわゆる総合的にいろいろ考えると。裁判所がよく総合考慮とか判決のときは言うけれども、結局それと変わらない。何ら客観的な基準はないというのが私に言わせると問題じゃないかという意識を持っています。
   もう一つ聞くけれども、じゃ、管財人を選任って、管財人報酬も正直、何百万から何千万単位ありますよね。大型事件になると、ある程度、新聞とかに報道される場合には、管財人報酬だけで何百万、何千万と。それだけの、ある意味、公共事業といいましょうか、仕事といいましょうか、そういうものを出すに当たって、弁護士を、私の理解では一本釣りをしていると思うんだけれども、この人にやらせると。
   競争入札とかそういったことは一切なくて、なぜそうやって指名して、裁判所が勝手に、勝手にという言い方は悪いか、多分裁判所の言い分としては名簿に基づいて適切な人を指名しているというんだろうけれども、なぜそうやって、ある意味、一般的に競争入札とか周知させた上でじゃなくて、指名するやり方をするんですか。
○門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
   破産管財人の選任につきましては、破産裁判所の裁判官が、事案の性質ですとかあるいは各庁の実情等に応じて、適切な破産管財人を選任するということでやっております。
 これにつきましても実情を御紹介しますと、これもケース・バイ・ケースということにはなりますけれども、一般的に考慮されている要素といたしましては、事件の規模、あるいは予想される破産管財業務の内容や難しさ、それから候補者の法曹あるいは破産管財人としての経験、それから当該破産管財業務に必要となる特殊分野での経験、候補者が破産管財人となっている手持ちの未済事件の件数及びその進捗状況、事件関係者との利害関係の有無といった要素を総合的に考慮しておるものと認識しております。
○井野委員 全く私には、総合的に考慮、結局、裁判所はそれだけで逃げ切れると思っているのは、私は大問題だと思っていますよ。選ぶのも、総合的にいろいろなことを考えてこの人がいいと思っている、管財人の報酬も、これぐらいの事件のあり方を考えて、いいと思っている。
   ちょっと問題だと思うのは、先ほど予納金と言ったよね。これ、予納金だったら、悪いけれども、会計法の趣旨、一切適用されないんですか。多分そういうことで予納金と言ったんだと思うけれどもね。
   だって、予納金といったって、裁判所にそういった金を納めない限り、管財事件を受任しないでしょう、予納金を納めないと。それはある意味、税金と一緒ですよね、手数料と一緒ですよね。それで、予納金だから裁判所が好き勝手に自由に処分できるんだ、そういう考え方ですか。
○門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
   管財事件におきまして破産管財人に支払われる費用あるいは報酬の原資になりますものは、国の予算ではございませんで、破産財団から弁済されるものということになります。先ほど申し上げました予納金も、その破産財団に組み入れまして、その破産財団から弁済されるということになります。会計法による規制の趣旨がそのまま当たるものではないというふうに認識しております。
   ただ、もっとも、一般論として申し上げますと、事案の性質等に応じて適切な破産管財人を選任すべきであるというのは先ほど申し上げたところですけれども、その一方で、裁判所の選任が不当に偏っているとの誤解を受けぬように、適正な選任をすべきものであるとは認識しております。
○井野委員 私の経験上、それこそ公正性が担保されているか、管財事件で、全くもって、広く機会均等に行われているとはとても思えないですよ。何でそれで公正性が担保されていると言えるんですか。まあ、今まで弁護士が余り文句を言わなかったかもしれないけれども。
   だって、結局、どういう管財事件があって、よっぽど社会に、耳目を集める、新聞報道されない限りは、どういう管財事件が申し立てられているかなんかわからないし、私がその事件をやりたいとか、そう言う機会すら与えられなくて、この人と決めているわけでしょう。
   これはどう考えたって、最初の財務省が言った公正性はたまた経済性、こういったものは該当しないんじゃないんですか。どこでこういったものが担保されていると言えるんですか。
○門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
   破産管財人の選任ですとか報酬につきましては裁判事項ということになりますので、破産事件を担当する裁判官が個別の事案に応じて決定することになりますので、その具体的な選任方法あるいは報酬の決定方法について、司法行政の立場からコメントすることは差し控えさせていただきます。
○井野委員 私は個別の事件なんて一つも言っていないぞ。そうやってすぐ逃げるなというんだよ、裁判所は、いつも。管財事件一般について議論しているんだよ、こっちは。どうやったら公正性、経済性、担保されているのかと聞いているんだよ。
   もう一回。
○門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
   一般論としましては、先ほども申し上げましたとおり、裁判所による破産管財人の選任が不当に偏っているとの誤解を受けぬように、客観性と公平性に配慮した適正な選任をすべきであるとは存じております。
   ただ、先ほど、入札等によってはどうかというようなお話もございましたけれども、例えば、入札によって破産管財人を選任するという方法では、その事案を適正かつ迅速に処理するのに適した弁護士を選任することができず、その結果、破産管財事件の処理に支障を来し、債権者や債務者の権利利益を害する結果となることが懸念されるところでございます。
 また、手続の問題としましても、破産管財人は破産開始決定と同時に定めなければならないというふうにされておりますので、破産管財事件は一般的に密行性や迅速性が要求される事件類型であるということも考慮しますと、破産の申立ての後、開始決定前に事案の概要等を踏まえた入札手続等を実施するということは実際上困難であると思われます。
○井野委員 全くもって、なぜそれができないか。私、まだ入札の話はしていないけれども、これからやろうと思ったけれども、先に言ったからね。じゃ、入札の話をさせていただきますよ。
   正直言って、入札した方が私ははるかに債権者にとって有利だと思うし、なぜそれができないのかというのが全く理解できないんです。先ほど言ったけれども、だって、ある意味、公共事業だって、レクのときにも言ったけれども、ちゃんとランクを分けてやっているじゃない。ゼネコンはAランク企業、そして難しい事件はAランク企業の指名競争入札だ、普通のBランク、Cランク企業は入れませんとやっているじゃないか。何でそこで一本釣りしなきゃ適正性が確保できない。
   ある程度、例えば経験を積んだ、管財事件はこの先生とこの先生とこの先生、名簿を持っているんでしょう。その名簿の中から、この中で、できる先生で、一番安くやってくれる先生はどれですかって入札できるでしょう、何でそういったことができないんですか。もっと、その理由を述べてください。
○門田最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げたところの繰り返しになりますけれども、入札等の……(井野委員「繰り返しになるんならいいです」と呼ぶ)よろしいですか、繰り返しになります。
○井野委員 結局、答えられないということでしょう。裁判所は、そういう扱いをして今まで文句出なかったからそれでいいやということなんでしょう。だけれども、せっかくだから、これを機会に考え直してくださいよ。
   だって、債権者にとっては本当にスズメの涙ぐらいの配当しかないでしょう、経済事件。そのときに少しでも、いきなり全く関係ない弁護士が管財事件を担当して、何百万、何千万も報酬を持っていって、配当率はスズメの涙ほど、数%ですよ。そうでしょう、皆さん。管財事件をやっていて、何千万の債権があったのに、ほんの十何万円しか配当ありませんとか、そんなのざらでしょう。だけれども、管財人報酬になったら、何百万、何千万持っていく弁護士が出てくるんですよ。
   もちろん、それが全て悪いとは言いませんよ、適切な報酬だ。だけれども、そこに、入札とか、もっと広く公正性を出したりとか、経済性、何で求めないんですか。その方が国民的理解を得られると思いますよ。小野瀬さんは、税金使ってないからいいんだと言うけれども、だけれども、債権者一般からしてみたら、税金じゃないからいいやという理解を得られますか。そうじゃないと思いますよ。これはちょっと検討してくれませんか。
○門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
   先ほど申し上げたところですけれども、破産管財人の選任等は裁判事項とされております。破産裁判所の裁判官が、事案の性質や各庁の実情に応じて適切な破産管財人候補者を選任しておりますし、先ほど申し上げた破産管財業務の執行の状況等々を踏まえて、あとは破産財団の規模、配当率等も踏まえまして、適切に報酬を定めているものと承知しております。
   そのような状況でございますので、実務の適切な運用を見守ってまいりたいというふうに考えております。
○井野委員 実務は、私は不正にやっているとは言っていないんです。ただ、システムとして公正性、経済性が担保できていないんでしょうと言っているんです。個別の事件について、あの裁判官はあの弁護士だけ優遇しているとか、そういうことを言っているんじゃない。システムとして公正性、経済性が担保されていないと言っているんだよ。それをよく検討してください。
以上です。


3 東京地裁破産部裁判官の収賄事件を受けた,破産管財人の選任方法に関する国会答弁(昭和56年5月13日)
・ 25期の谷合克行東京地裁判事補が破産管財人からゴルフクラブ,背広2着等を受領した事件(Wikipediaの「梓ゴルフ場事件」参照)に関連して,高輪1期の矢口洪一最高裁判所事務総長は,昭和56年5月13日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 破産事件の処理というものは、債権に対する債務が足りないということで債権者に非常に迷惑をかける、その場合に、裁判所が間に入りまして足りないながらも公平な財産の分配をする、これが破産法の精神でございます。
    そうであるからこそ、裁判所がそういう責務を負わされておる、裁判所がそういった事件を取り扱うのに最も適しておるとされて破産法というものができておるわけでございますが、そういう観点からして、この破産事件の処理等についてもう少し慎重な扱いをしていくべきではなかったか。
    現に東京地裁では、単独で処理いたしておりましたのを直ちに取りやめまして、全部を合議体で処理して、慎重の上にも慎重を期していくという扱いに改めております。
② また、管財人の選任等につきましても、もちろん、客観的にりっぱな人格者であり、経験も豊富な弁護士さんの中から適任者を選ぶということは必要でございまして、その中には、場合によって同期の者あるいは同期に近いような人が入ってくることもございますけれども、ただ同期の友人であるというだけで選ぶ、かりそめにもそういったような選び方をすることのないように、管財人の選任につきましても十分配慮するように、直ちに現在の破産部において取り扱いを十分検討してまいっております。
③ その他、先ほどもちょっと触れましたけれども、訴訟事件の処理というのは、いわば対立する当事者の間における判断でございまして、両当事者がお互いに監視し合うというような構造の中に、監視体制と申しますか公平を保つ体制というものができておるわけでございますが、非訟事件の処理ということになりますと、ある意味での対立当事者というものがございませんので、どうしてもそこに気の緩みというようなものができてくる可能性がありますが、これをどのようにして緩みというものができてこないような、いわゆるチェック・アンド・バランスといったような形から来る処理体制というものをとっていくか、そういった点も早急に検討すべきである。
   幸い、来月の上旬には全国の長官、所長が集まりまして、重要な司法問題につきまして隔意ない意見を交換するいわゆる長官所長会同が予定されておりますので、そういう機会をとらえまして、全国の同じような事件の処理をいたしておりますところの実情を把握し、かつ、そういった事件処理体制から来る経験といったものを発表してもらって、さらに何らかの改善策がないか、そういったことを検討する、それに全力を挙げていきたいと考えております。


4 関連記事その他
(1) 破産管財人の善管注意義務違反に係る責任(破産法85条2項)は,破産管財人としての地位において一般的に要求される平均的な注意義務に違反した場合に生じますところ,破砕裁判所の許可を得て行った行為についても善管注意義務違反の責任を負うことがあります(最高裁平成18年12月21日判決)。
(2)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 差押禁止債権が振り込まれた預貯金口座に係る預貯金債権の差押えについて(令和2年1月31日付の国税庁徴収部長の指示)
→ 大阪高裁令和元年9月26日判決(裁判長は36期の中村也寸志裁判官)を踏まえた取扱いを指示した文書です。
イ 以下の記事も参照してください。
・ 倒産事件に関するメモ書き
・ 司法研修所弁護教官の業務は弁護士業務でないものの,破産管財人として行う業務は弁護士業務であること
・ 大阪弁護士会の負担金会費
→ 大阪弁護士会所属の弁護士が破産管財人報酬を受領した場合,税抜価格の7%を負担金会費として大阪弁護士会に支払う必要があります。


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