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小型無人機等飛行禁止法(AIリライト)

第1 小型無人機等飛行禁止法の概要

小型無人機等飛行禁止法の正式名称は,「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(平成28年法律第9号)である。
同法は,国の重要な施設等の警戒警備を強化するため,対象施設の敷地又は区域とその周囲おおむね1000メートルの地域の上空における小型無人機等の飛行を原則として禁止する法律である。

令和8年7月14日に令和8年法律第47号による改正法が施行され,従前おおむね300メートルであった周辺地域はおおむね1000メートルへ拡大された。
そのため,改正前の300メートルを前提とする古い解説や地図だけで飛行の可否を判断してはならない。

第2 規制対象となる機器と航空法との違い

1 規制対象となる機器

規制の対象には,遠隔操作又は自動操縦によって飛行させることができる無人飛行機,無人回転翼航空機,無人滑空機及び無人飛行船等の「小型無人機」が含まれる。
一般にドローンと呼ばれるマルチコプターやラジコン飛行機等が典型例である。

また,気球,ハンググライダー,パラグライダー等の「特定航空用機器」を用いて人が飛行する場合も規制対象となる。

2 航空法とは別の規制であること

航空法第11章の無人航空機の飛行ルールは,原則として機体本体とバッテリーの合計重量が100グラム以上の機体を対象とする。
これに対し,小型無人機等飛行禁止法には同じ重量基準がないため,100グラム未満のいわゆるトイドローンであっても同法の対象となり得る。

小型無人機等飛行禁止法に基づく同意や通報と,航空法に基づく機体登録,許可・承認,飛行計画の通報等は別の手続である。
一方の手続を済ませただけで他方の規制を免れるものではなく,条例,公園等の施設管理規則,私有地の利用条件,電波法その他の規制も別に確認する必要がある。

第3 飛行禁止区域と対象施設

1 レッドゾーンとイエローゾーン

対象施設の敷地又は区域の上空は,警察庁の案内で「レッドゾーン」と呼ばれている。
レッドゾーンの周囲おおむね1000メートルの地域の上空は「イエローゾーン」と呼ばれており,両方を合わせた対象施設周辺地域の上空で飛行が原則として禁止される。

「おおむね1000メートル」は施設から機械的に半径1000メートルを描けば足りるという意味ではない。
実際の区域は,各対象施設について公示される地図で確認する必要がある。

2 対象施設

対象施設は,おおむね次のとおりである。
①国会議事堂,内閣総理大臣官邸,最高裁判所庁舎,皇居等の国の重要な施設
②対象危機管理行政機関の庁舎
③対象特別要人所在施設
④対象政党事務所
⑤大使館等,外国要人の所在施設及び国際会議の会議場施設等の対象外国公館等
⑥自衛隊施設及び在日米軍施設等の対象防衛関係施設
⑦対象空港
⑧対象原子力事業所

外国要人の来日や国際会議の開催等に伴い,施設が期間を限って指定されることがある。
過去の指定一覧だけに頼らず,飛行の直前にも警察庁の最新のお知らせと対象施設の指定関係ページを確認する必要がある。

3 地図の確認方法

警察庁の対象施設指定ページから,各施設の公示及び地図へ進むことができる。
また,国土地理院の「地理院地図」では,レッドゾーン及びイエローゾーンを表示でき,人口集中地区や航空法上の空域情報を重ねて確認することもできる。

地理院地図は飛行場所の概略確認に有用であるが,最終的には当該施設の最新の公示図面及び関係機関の案内と照合すべきである。

第4 飛行禁止の例外と通報手続

1 飛行禁止の例外

次の飛行には,原則として飛行禁止の規定が適用されない。
①対象施設の管理者又はその同意を得た者による対象施設周辺地域上空の飛行
②土地の所有者若しくは正当な権原を有する占有者又はその同意を得た者による当該土地上空の飛行
③国又は地方公共団体の業務を実施するために行う対象施設周辺地域上空の飛行

ただし,対象防衛関係施設及び対象空港のレッドゾーン上空では,①の施設管理者又はその同意を得た者による飛行だけが例外となる。
土地所有者の同意や公務目的だけでは足りない。

2 原則として飛行開始の48時間前までに通報すること

飛行禁止の例外に該当しても,対象施設周辺地域で飛行させる場合には,原則として飛行開始の48時間前までに,管轄警察署を経由して都道府県公安委員会へ通報しなければならない。
通報書には飛行区域を示す地図を添付し,同意に基づく飛行では同意を証明する書面の写しを,国又は地方公共団体の委託による飛行では委託を証明する書面の写しを提出する。

機器の写真も原則として必要であるが,航空法に基づく登録記号が表示されている機器については不要である。
都道府県公安委員会及び皇宮警察本部長への通報は,警察署の窓口のほか,e-Gov電子申請サービスからオンラインで行うことができる。

災害その他の緊急やむを得ない場合には,飛行開始直前までの口頭通報で足りることがある。
もっとも,管理者等の同意が必要な飛行では,緊急時であっても通報前に同意を得る必要がある。

3 追加の通報先

皇居又は赤坂御用地に係る対象施設周辺地域では,都道府県公安委員会に加えて皇宮警察本部長への通報が必要である。
海域を含む区域では管区海上保安本部長へ,対象防衛関係施設又は対象空港の区域では当該施設の管理者へも通報する必要がある。

対象施設周辺地域が二つ以上の都道府県にまたがる場合には,すべての都道府県公安委員会へ通報する。
必要な同意の取得先,管轄警察署及び追加の通報先は,飛行場所ごとに事前確認すべきである。

第5 違反に対する措置と罰則

警察官等は,違反飛行を行う者に対し,機器を対象施設周辺地域の上空から退去させることその他の必要な措置を命ずることができる。
一定の場合には,小型無人機等の飛行の妨害,機器の破損その他の必要な措置をとることもできる。

レッドゾーン上空で違反飛行を行った者又は警察官等の命令に違反した者は,1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられる。
イエローゾーン上空で違反飛行を行った者は,6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられる。

第6 令和8年改正の要点

令和8年改正の最も大きな変更は,イエローゾーンを施設の周囲おおむね300メートルからおおむね1000メートルへ拡大したことである。
これに伴い,従前は命令違反を介して処罰されていたイエローゾーンの違反飛行について,6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金という直接の罰則が設けられた。

改正では,対象特別要人所在施設及び国際会議の準備・運営のための会議場施設等も対象に追加された。
また,同意取得手続及び通報手続の円滑化並びに広報啓発の推進が課題とされ,警察庁は改正法施行に当たっての通達等を公表している。

規制範囲の拡大により都市部で禁止区域が重なりやすくなり,土地所有者等の同意があっても別施設の規制区域に入る可能性がある。
同意取得,警察への通報,航空法上の手続及び最新地図の確認を一体として行うことが重要である。

第7 最高裁判所庁舎周辺の取扱い

最高裁判所庁舎は,小型無人機等飛行禁止法の対象施設である。
裁判所ウェブサイトは,最高裁判所庁舎の敷地及び対象施設周辺地域の地図並びに庁舎周辺地域図を公開しており,現在の規制範囲は周囲おおむね1000メートルである。

最高裁判所庁舎の敷地及び周辺地域の詳細並びに同意手続の方法については,最高裁判所事務総局経理局管理課が問い合わせ先とされている。
裁判所ウェブサイト掲載の電話番号は03-4233-5437である。

最高裁判所庁舎周辺で飛行を予定する場合には,裁判所ウェブサイトの最新地図,警察庁の対象施設指定ページ及び管轄警察の案内を併せて確認すべきである。

第8 飛行前の確認事項

飛行前には,少なくとも次の事項を順に確認することが望ましい。
①飛行地点が最新のレッドゾーン又はイエローゾーンに入っていないか
②一時的に指定された施設や区域がないか
③飛行禁止の例外に該当し,必要な同意を取得しているか
④飛行開始の48時間前までに必要な通報を完了できるか
⑤皇宮警察,海上保安庁又は施設管理者への追加通報が必要でないか
⑥航空法上の機体登録,許可・承認及び飛行計画の通報等が必要でないか
⑦条例,施設管理規則,土地使用権限及び電波法その他の規制に抵触しないか

検索結果や古い解説の地図だけで判断せず,飛行日直前に公式サイトを再確認することが重要である。
不明点がある場合は,対象施設の管理者,管轄警察署,航空局その他の関係機関へ事前に問い合わせるべきである。

第9 出典及び関連記事

本記事は,令和8年9月23日現在の次の一次資料及び行政機関の公表資料に基づく。
①e-Gov法令検索「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC1000000009
②警察庁「小型無人機等飛行禁止法関係」
https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/
③警察庁「小型無人機等飛行禁止法に基づく対象施設の指定関係」
https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/shitei.html
④警察庁「小型無人機等飛行禁止法に基づく通報手続の概要」
https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/tsuhou.html
⑤国土地理院「地理院地図」
https://maps.gsi.go.jp/
⑥国土交通省「飛行ルール(航空法第11章)の対象となる機体」
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000040.html
⑦最高裁判所「小型無人機等の飛行禁止区域について」
https://www.courts.go.jp/saikosai/about/kogatamujinki/index.html

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