第1 修習日誌の提出・保存・不開示
1 修習段階と保有主体を分ける
修習日誌の取扱いは,導入修習・集合修習と,各地の地方裁判所が実施する分野別実務修習とを区別して確認する必要がある。
司法研修所が導入・集合修習中の日誌を読むという説明だけで,各地の実務修習中の日誌も研修所に集約されるとはいえない。
以下は,令和元年度及び令和5年度の公表答申が対象とした運用と判断の説明である。
当該答申だけから,全国の裁判所の現在の提出・保存方法を確定することはできない。
2 東京・千葉・最高裁判所の答申
令和5年度(情)答申第19号(令和5年10月25日答申)は,東京地方裁判所の第74期・第75期の対象日誌について,立川支部を除く本庁では提出を求めず,自発的な提出もなく,作成・取得していないとの説明を妥当とした(PDF2頁~3頁)。
全国的な日誌提出の義務を示すものではなく,対象の裁判所・期・文書を限定した未作成・未取得の例である。
令和5年度(情)答申第47号(令和6年3月21日答申)は,千葉地方裁判所の第74期から第76期までの対象日誌について,修習生に担当日を割り当てて提出させ,修習の実施状況等を確認するための供覧後に廃棄したとの説明を妥当とした(PDF3頁~5頁)。
東京の例と異なり,提出がなかったのではなく,作成・提出後の廃棄を理由とする非保有の例である。
令和5年度(最情)答申第6号(令和5年10月3日答申)は,最高裁判所が特定の事務処理のため第75期の2件の日誌を保有していた一方,そのほかの対象日誌は保有していないとの判断を妥当とした(PDF1頁,5頁~6頁)。
地方裁判所での実務修習日誌を司法研修所へ通常送付するよう求めていないとの説明が認められており,2件の保有から日誌全体の集約・保存を推測することはできない。
3 内容の不開示と存否応答拒否
令和5年度(最情)答申第6号は,日誌の具体的記載内容について,個人のプライバシー・内心の保護と,率直な感想等が得られなくなることによる修習事務への支障を理由に不開示を妥当とした。
氏名を隠すことや,申出人が訴訟の証拠として必要とすることだけでは,本件の不開示判断は左右されないとされている(PDF5頁~6頁)。
食堂に関する特定の記載を対象とした令和元年度(最情)答申第48号(令和元年10月18日答申)は,そのような日誌の存否を答えるだけで不開示情報を明らかにすることになるとして,存否を明らかにしない判断を妥当とした(PDF3頁~4頁)。
これは日誌が存在しないとの認定ではなく,特定の記載が実際にあったとの認定でもない。
名前を隠して修習生の前で読み上げたという申出人の主張についても,委員会は,仮にその事実があったとしても広く公表したとはいえないとしたものであり,実際に読み上げた事実を確定したものではない。
4 文書取得と結果簿の区別
日誌を探索するときは,実施裁判所,修習期,修習段階,対象期間・日,原本・写し・電磁的記録の別及び原判断の時点を区別する。
廃棄済みと説明された場合も,作成・提出の有無,用途,必要期間の終了及び探索の説明を確認し,別の主体による2件の保有を根拠に,対象裁判所での保存を当然視しない。
実務修習結果簿と,配属庁会の長が司法研修所長へ提出する結果報告書は,修習日誌とは別の文書である。
それぞれの記載主体,提出先及び取扱いは実務修習結果簿を,保存・廃棄の一般規則は司法行政文書に関する文書管理(AIリライト)を参照されたい。
本記事に掲げるSNSの投稿は個々の体験談であり,全国一律の制度や現在の取扱いを裏付ける資料として扱うべきではない。
第2 食堂の記載に関する理由説明書
・ 司法研修所の食堂に関する修習日誌の記載は不開示情報であるとする,平成31年3月27日付の理由説明書の「最高裁判所の考え方及びその理由」には以下の記載があります。
ア 苦情申出人は,修習日誌の本文は不開示情報に該当しない旨主張している。
しかし,修習日誌における具体的な内容が記載されている,文書の存在を答えると「食堂の飯は案外美味かつた。不味いって言う奴は第三者の意見に乗っかって食堂行ってない奴。自分の目で判断すること大事。」という趣旨の記載がされた修習日誌が存在する事実が明らかとなる。
修習日誌は,司法修習生が記載したものであり,そこに記載されているのは,修習生個人の内心,思想,考えを含めた個人的な情報である。修習生としては, 日誌に記載する内容は,司法研修所内で教官や事務局職員に読まれることを想定して記載しており,たとえ記載どおりの表現ぶりでなく,その趣旨や要旨であったとしても,その内容が広く世間に公開されることは,全く想定していない。修習日誌に記載された内容によっては,他の情報(修習生間の相互のやり取り等) と照合することにより特定の個人を識別することが可能な場合が考えられるし,特定の個人を識別することができないとしても,公になることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがある(行政機関情報公開法(以下「法」という。)第5条第1号) 。
また,修習日誌は,修習生に担当日の修習等に限らず,修習全般に関するきたんのない感想等を記載させ,司法修習の在り方等の参考とするために使用するものであり,修習日誌に記載した内容が,たとえその趣旨や要旨であったとしても,公にされることがあるとすれば,修習生が修習日誌の記載に際して萎縮をし,修習生の意見を司法研修所が得ることができなくなり,司法修習運営上の大きな事務支障となる(法第5条第6号) 。
なお,司法研修所長,教官及び事務局職員が,修習日誌の内容について,司法修習生に対して読み上げたり,周知したりということがあったとしても,それは守秘義務を負っている司法修習生という限られた対象者に対し,講義の一環であったり,事務運営の必要上行われるものであって,そのことをもって修習日誌の内容が不特定多数の者に広く公表されたことにはならず,修習日誌の内容を開示する理由とはならない。
イ よって,原判断は相当である。
修習日誌論証パターン
今日は〇〇をした。
私は〇〇について、〇〇と考えた。
しかし、裁判官の方から、〇〇は〇〇と考えるべきではないかとご指導いただいた。私は〇〇について、もう一度文献を調べ直した。それにより、私の当初の考え方は誤りであったと認識できた。
以降、反省し教訓としたい。— 小さい弁護士73期 (@1JnrSmgg0NLUiKU) March 30, 2021
第3 存否応答拒否に関する答申の原文
・ 令和元年10月18日付の答申書には,「委員会の判断の理由」として以下の記載があります。
本件開示の申出の内容からすれば,本件開示申出文書の存否を明らかにすると,特定の記載がある特定の期の導入修習時の修習日誌が存在する事実,ひいては特定の期の司法修習生が導入修習時において修習日誌に当該特定の記載をしたという事実の有無が公になると認められる。
最高裁判所事務総長の上記説明によれば,修習日誌は,修習生に修習全般に関するきたんのない感想等を記載させ,司法修習の在り方等の参考とするために使用するものであり,修習生個人の内心,思想,考え等を含めた個人的な情報が記載されるところ、修習生としては,修習日誌に記載する内容について,たとえ記載どおりの表現ぶりでなく,その趣旨や要旨であったとしても, これが公開されることは全く想定していないとのことである。このような修習日誌の性格を踏まえて検討すれば,特定の期の修習生が導入修習時において修習日誌に特定の記載をしたという事実の存否が公になると,仮に当該事実が存在した場合には,修習生間のやり取り等の他の情報と照合することにより,修習日誌に当該特定の記載をした修習生が特定され得る事態が考えられ, また,特定することができないとしても,なお当該修習生の権利利益を害するおそれがあると認められる(法5条1号)。さらに,上記のとおりの修習日誌の性格を踏まえれば,特定の記載がある修習日誌の存否について公になると,今後,修習生が修習日誌を記載するに際して萎縮するなどして,修習生から司法修習に関するきたんのない感想等が得られなくなることが想定され,司法修習運営上の事務に支障を及ぼすおそれがあると認められる (同条6号) 。
なお,苦情申出人は,本件開示申出文書については司法研修所長が名前を隠して最終日に全体の前で読み上げた旨主張するが,苦情申出人が指摘する事実関係が仮に存在したとしても,修習日誌の内容を広く公表したとはいえず,上記の判断を左右するものではない。
したがって,本件開示申出文書については,その存否を答えるだけで同条1号及び6号に規定する情報に相当する不開示情報を開示することになると認められる。
修習日誌は裁判所のすごい偉いさんまで、かなりちゃんと読んでいるのでしっかり書いた方が良いよ。
僕は、①せめて裁判所まで通勤する定期代を出してくれ、②昼休み45分は短すぎる、③大阪地裁の食堂もう少しマシなら業者にしてくれ、と書いたけど特に何の変化も無かったな。 https://t.co/maKHXovOUB— ガツ (@gatsu73) February 3, 2021
第4 関連記事その他
(1) 実務修習日誌を提出させるか否か及びその目的は,各地方裁判所の運用に委ねられているとされた。
東京・千葉・最高裁判所で確認された保有状況の違いは第1を,千葉の日誌の廃棄と短期保有文書の規則は関連する答申例を参照されたい。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 司法研修所の食堂及び西館の弁当販売に関する文書
・ 司法研修所の職員配置図,各施設の配置及び平成24年8月当時の門限
修習で辛かったことベスト3
①結果簿
②日誌
③二回試験— 蟹江もん (@utageato) April 20, 2022
ワイが修習生のときは「修習日誌で面白いことを書いた奴がエライ」みたいなムーブがあった。
おかげでワイは所長に気に入られワイだけ所長室に呼ばれて雑談したり、会食に呼ばれたりした。
当時は「任官スカウトか?」と思っていたが、今思えば単なる「危険人物の監視」である。— 竹井 (@takei_ben) February 4, 2021
修習日誌に貸与制はおかしいので研修所こそが何とかしてよって書いたら弁護教官には褒められ検察教官にはこっそり褒められ裁判教官にはスルーされた思い出。
— 弁護士 萱野 唯 (@yuikayano) February 5, 2021
R030312 最高裁の不開示通知書(司法修習生の修習日誌が提出された後の取扱いについて定めた文書)を添付しています。 pic.twitter.com/BzgzZS10iK
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) March 17, 2021
【判決期日のリアル3】
誰もいない法廷でも、ちゃんと判決は読み上げないといけません(基本は主文〔結論部分〕だけ)。
なので、必ずされているはずです。必ずされているはずです。#弁護士 #漫画が読めるハッシュタグ #たぬじろう #食っていけない弁護士 pic.twitter.com/KUNjwobP5A— 【漫画】弁護士のたぬじろう (@B_Tanujiro) January 11, 2024