司法修習生の欠席承認に関する運用基準(平成30年4月25日施行分)


司法修習生の規律等について(平成29年11月1日付の司法研修所長の通知)第5の7(欠席承認の判断基準)に基づいて定められ,平成30年4月25日に実施された,司法修習生の欠席承認に関する運用基準について(平成30年4月3日付の司法研修所長通知)の内容は以下のとおりです。ただし,1箇所だけあった脚注は省略しました。

司法修習生の欠席承認に関する運用基準(平成30年4月25日)

1 司法修習生が,負傷又は疾病のため療養する必要があり,修習しないことがやむを得ないと認められる場合,その必要最小限度の期間に限り,欠席を承認することができる。
2 以下の場合は,国家公務員の特別休暇の例により,欠席を承認することができる。
(1) 選挙権その他公民としての権利を行使する場合で,修習しないことがやむを得ないと認められるとき
(2) 6週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定である司法修習生が申し出た場合
(3) 司法修習生が出産した場合
   なお, 当該司法修習生の希望があれば,産後6週間を経過しない場合でも,医師の診断書その他を徴し,配属庁会の長において支障がないと認めたときは,修習をさせることができる。この場合の判断においては, 「司法修習生の規律等について」第5の11の修習単位における欠席日数の制限などにも
留意する。
(4) 地震,水害,火災その他の災害又は交通機関の事故等により出席することが著しく困難であると認められる場合
3 2に定める以外の特別の事由(特別の事由は,特別休暇の例による。)又は欠席を必要とする事由がある場合は, 当該事由により欠席を必要とする程度と,修習に及ぼす支障の程度とを個別に比較衡量し,修習に著しい支障がないと認められる場合に,欠席を必要とする最小限度の期間(欠席の事由が特別休暇の例による場合は,原則としてその期間を限度とする。)に限り,正当な理由があるものとして欠席を承認することができる。
   その判断に当たっては,以下の(1)に掲げる修習に及ぼす支障の程度と,(2)に掲げる事由ごとの例を参酌するものとする。
(1)  修習に及ぼす支障の程度について
ア 選択型実務修習期間のうち,選択した全国プログラム及び個別修習プログラム等の修習の日の場合
   これらの修習は修習期間が短いこと, 自ら主体的に選択した修習プログラムであること,民間企業等外部機関が修習先になることがあることから,修習に及ぼす支障の程度は非常に大きいため,欠席を承認し得る場合はごく限られる。
イ 司法研修所における導入修習及び集合修習の修習日並びに分野別実務修習のうち講義,見学その他の合同修習の日及び家庭裁判所における修習の日の場合
   これらの日に行われる修習は代替性に乏しく,欠席すると司法修習生の修習に及ぼす支障が大きく,欠席を承認し得る場合は限られる。
ウ 実務修習のうちア及びイ以外の修習の日の場合
   これらの修習の日に欠席しても,修習に及ぼす支障の程度は通常は比較的小さく,他の日に修習することによってこれを補うことが可能である場合も少なくないことから,欠席を承認し得る場合は,前記ア及びイの場合よりも広い。
エ 自由研究日及び自宅起案日の場合
   自由研究日については,その日に欠席しても,司法修習生が自らの責任において代替措置を採ることが可能であるから,特別の事情がない限り,外国旅行に伴う欠席なども含め,承認することができる。
   自宅起案日は,指導担当者等が具体的な修習課題等を与え, 司法修習生が当該日にその課題等を行うことを前提として,出席を要しないものとされる日であるから, あらかじめ承認を要する外国旅行のために欠席することは認められない( 「司法修習生の規律等について」第6の3(1)ウ参照) 。
(2) 2に定める以外の特別の事由及び欠席を必要とする事由の例について
ア ドナー休暇の準用について
   特別休暇の例により,欠席が認められる。
イ ボランテイア休暇の準用について
   自由研究日以外の日については,欠席を承認することはできない。
ウ 司法修習生が結婚する場合
(ア) 結婚式等
   特別休暇の例に準じ,結婚式,旅行その他結婚に伴い必要と認められる行事等のため,修習をしないことがやむを得ないと認められる場合,結婚の日(社会的に結婚したと認められる日。一般的には結婚式の日や婚姻届けの提出日等)の5日前の日から結婚の日以後4か月を経過する日までの期間における連続する5暦日の範囲内の期間(土曜・日曜等出席を要しない休日も日数に含まれる。)で,欠席を承認することができる。
   ただし,前記(1)ア及びイの修習日については, あらかじめ修習の日程が明らかになっていること,結婚式や新婚旅行の日程は本人によって選択できることから,原則として認められない。
   また,司法修習生の場合,前記(1)のとおり,修習日によって欠席による支障の程度が異なることから,結婚の日から4か月経過する日までの期間を取得期間としている(特別休暇では1か月)が, この期間内に年末年始やゴールデンウイークなど,長期の修習を要しない日程が含まれる場合は,当該日程を利用して旅行することが可能であるため,その前後の日程の新婚旅行を理由とする欠席は承認しないことができる。
   なお,結婚の日が司法修習生採用発令前であった場合は,欠席を承認することはできない。
(イ)  結納及び結婚準備
   結納を理由とする欠席は,原則として承認することができない。ただし,結納やこれに準じた儀式(結婚前に親族への挨拶回りを必ず行わなければならないなど)を行うことが,その地方の風習となっているなど,それを行わない場合は社会的儀礼を欠く場合においては, 「結婚に伴い必要と認められる行事等」に当たると認められる場合もある。しかし,例外的に結婚の日より前に欠席を認めることから,その適用は厳格に行うべきであり,少なくとも,婚姻日・結婚式の日が定まっていること,必要最小限度の欠席日数であることが必要である。また,結婚に伴い必要と認められる他の行事等を理由とする欠席が認められなくなることに留意する。
   結婚準備を理由とする欠席は認められない。結婚式,結納と異なり,社会的儀礼を欠くことはなく,土曜日・日曜日等休日に行うことが可能だからである。
エ 親族・友人等の結婚式への参列
   前記(1)ア及びイの修習日については,原則として承認することができないが,親族の結婚式については,続柄や結婚式への関与度合い等を総合考慮して例外的に認める余地もある。前記(1)ウの修習日については,欠席を承認することができる。
オ 親族等が死亡した場合
   特別休暇の対象となる親族が死亡した場合で,葬儀服喪その他の親族の死亡に伴い必要と認められる行事等のため,修習をしないことがやむを得ないと認められるとき,前記(1)アの修習日であっても,親族に応じて特別休暇の認められる日数の範囲内で,行事等のため必要な日数の欠席を承認することができる。
   いとこ,いとこの配偶者及びいとこの子については,特別休暇の例には含まれないが,それを理由に欠席を承認しないと休暇の認められていない司法修習生にとって社会的儀礼を欠く結果となる場合もあるので,特別休暇の対象となる親族と同様に扱うことができる。
   友人の葬儀についても,生前の交友の度合い,通夜のみの参列の要否などの個別事情によっては,親族が死亡した場合と同様に扱うことができる。
力 父母等を追悼する場合
   父母の追悼のための特別な行事のため,修習をしないことがやむを得ないと認められる場合,前記(1)アの修習日であっても,特別休暇の例により欠席を承認することができる。父母以外の者が対象となる場合については原則として認められないが,前記オのとおり社会的儀礼を欠く結果となる場合は,近親者が対象となる場合に限り,欠席を承認し得る。
キ 親族を看病等する場合
   親族の看病,看護,介護(以下「看病等」という。)については,子や配偶者, 同居の親族の看病等であって,他に看病等する者がいない場合や,近親者が危篤状態に陥っているなど,その病状等に照らしてこれに付き添うことが必要かつ社会的に相当と認められる場合,前記(1)アの修習日についても,
欠席を承認することができる。
ク その他の欠席を必要とする事由の例について
(ア) 健康診断について
   前記(1)ア及びイの修習日については承認することができない。前記(1)ウの修習日については,年一,二回程度の健康診断受診(人間ドック等)のための欠席を承認することができる。
(イ) 官公署に対する届出, 申請等について
   前記(1)アの修習日については承認することができない。
   前記(1)イの修習日のうち,司法研修所における導入修習,集合修習期間は比較的長期にわたる上,前後の他の修習日も代替困難なカリキュラムである場合が多いことから,事情により欠席を承認することができる場合もあるが(なお,運転免許試験の受験のための欠席は認められない。) ,分野別実務修習中の合同修習や家裁修習の日の場合は, 当該修習日に届出,申請をする必要がある事情はあまり想定されず,欠席を承認することができる場合は限られると考えられる。
   前記(1)ウの修習日については,欠席を承認することができる。
   ただし,休日,修習時間外,郵送等による届出, 申請等が可能である場合には,欠席を承認することができない。例えば,運転免許の更新手続は,運転免許試験場で日曜日に行うことができるから,欠席は認められない。
(ウ) 子の入学・入園試験,卒業・卒園式等への出席等
   前記(1)ア及びイの修習日についても,父母双方の同伴を要する場合など,当該司法修習生の出席が必須である場合は認められる。父母の一方が出席すれば足りる場合に,他方が仕事を休みづらいとの理由では,原則として欠席を承認することはできない。
前記(1)ウの修習日については,欠席を承認することができる。
(エ) 親族や知人の案内, 引越し等
   自由研究日を除き,欠席を承認し得る場合に当たらない。
(オ) 弁護士事務所訪問等の就職活動について
   弁護士事務所訪問等の就職活動を理由とする欠席は,導入修習期間中を除き,合計5日間を限度として承認して差し支えない。また,遠方での就職を予定しているなど, 5日間を超える欠席が必要と認められるときは,合計7日間程度であれば承認して差し支えない(欠席を求める事情や時期に照らし,その必要性が更に高いと認められる場合には,10日間程度の欠席を承認する余地もある。) 。
   公務員試験及び資格試験の受験に関しても,就職活動の一環として欠席が認められる。また,国家公務員試験における官庁訪問など,その仕組からして不可避的に7日間を超える欠席を必要とする例外的な場合は,合計10日間程度の欠席を承認することも考えられるが,その承認に当たっては,必要最小限度の欠席となるよう留意する必要がある。
   就職活動に含まれる欠席事由の範囲については,個別具体的に判断することになるが,就職内定先での勉強会や内定者歓迎会のような,その主たる目的が就職活動先への採否に関わらないようなものである場合は,欠席を承認することはできない。
4 この基準の運用に当たっては,司法修習生の修習に及ぼす影響ができるだけ少なくなるように指導するものとする。
以上


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