家庭裁判所調査官の役職


目次
1 総論
2 家庭裁判所調査官と裁判所書記官の役職の比較
3 最高裁判所事務総局家庭審議官
4 高等裁判所の家庭裁判所調査官
5 人事情報データベース等の改修
6 関連文書及び関連記事

1 総論
(1)ア 家裁調査官は,①家庭裁判所においては,家事審判,家事調停,人事訴訟における付帯処分等の裁判及び少年審判に必要な調査等の事務を掌り,②高等裁判所においては,家事審判に係る抗告審の審理及び付帯処分等の裁判に係る控訴審の審理に必要な調査等を掌ります(裁判所法61条の2第2項)。
イ 裁判所HPの「家庭裁判所調査官」に公式の説明があります。
(2) 家裁調査官の役職は以下のとおりです。
・ 最高裁判所
家庭審議官(最高裁判所事務総局規則3条の3)
・ 高等裁判所
上席の家裁調査官(裁判所法61条の2第1項,首席家庭裁判所調査官等に関する規則5条)
・ 家庭裁判所
① 首席家裁調査官(裁判所法61条の2第3項,首席家庭裁判所調査官等に関する規則1条)
② 次席家裁調査官(首席家庭裁判所調査官等に関する規則2条)
③ 総括主任家裁調査官(首席家庭裁判所調査官等に関する規則3条)
④ 主任家裁調査官(首席家庭裁判所調査官等に関する規則4条)


2 家庭裁判所調査官と裁判所書記官の役職の比較
(1) 家庭裁判所調査官の役職と裁判所書記官の役職を比べた場合,①最高裁家庭審議官が最高裁大法廷首席書記官と,②首席家裁調査官が地家裁首席書記官と,③次席家裁調査官が地家裁次席書記官と,④総括主任家裁調査官が地家裁総括主任書記官と,⑤主任家裁調査官が地家裁主任書記官と,⑥家裁調査官が地家裁の裁判所書記官と大体,対応しています。
   ただし,東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台及び札幌の家裁の首席家裁調査官は指定職俸給表2号が適用されています(指定職俸給表の準用を受ける職員の号棒について(平成26年5月26日最高裁判所裁判官会議議決)参照)から,指定職俸給表が適用されていない高裁首席書記官よりもランクが上であると思います。
(2) 高等裁判所は,その所在地を管轄する家庭裁判所の首席家庭裁判所調査官(略称は「所在地首席」です。)に対し,その管轄区域内の家庭裁判所の首席家庭裁判所調査官が行う事務の調整を命じることができます(首席家庭裁判所調査官等に関する規則1条4項)。
(3) 高松家裁の首席家裁調査官は指定職扱いされていませんところ,法務局長の場合でも,高松法務局長は指定職扱いされていません。


3 最高裁判所事務総局家庭審議官
(1) 最高裁判所事務総局に家庭審議官が新設されたのは昭和56年4月1日です。
(2) 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)84頁には以下の記載があります。
   事務総局に新たに局長に準ずる家庭審議官のポストを設け、家庭局第三課長の職と共に家裁調査官出身者を充てることとした。家裁調査官制度を常時検討し、家裁調査官が時世に遅れないようにする必要があると考えたからであった。


4 高等裁判所の家庭裁判所調査官
(1) 裁判所法61条の2第1項に基づき,各高等裁判所に家庭裁判所調査官が置かれています。
(2)ア 高等裁判所の家庭裁判所調査官は,家事事件手続法で定める家庭に関する事件の審判に係る抗告審の審理及び付帯処分等の裁判に係る控訴審の審理に必要な調査をつかさどります(裁判所法61条の2第2項)。
イ 実務上,高等裁判所の家庭裁判所調査官による事実の調査は主として親権者の指定・変更事件や子の監護に関する処分(養育費を除く。)事件など別表第二審判に対する抗告申立事件及び人事訴訟判決に対する控訴事件において,以下の場合に行われています(家庭裁判所調査官執務必携21頁参照)。
① 原審で調査官調査が行われていない場合
② 原審の事実認定に重大な誤りがあるとして新たな主張がされ,それに関する調査官調査が必要になる場合
③ 原審での調査官調査の結果に何らかの問題等があり,再調査をする必要がある場合
④ 原審後に事情変更等が生じている場合
(3) 平成28年8月1日現在,高等裁判所の家庭裁判所調査官は,東京高裁に2人,大阪高裁に2人いました(家庭裁判所調査官名簿(平成28年8月1日)参照)。
(4) 高等裁判所の上席の家庭裁判所調査官は,高等裁判所の家庭裁判所調査官に対する指導監督権を持っています(首席家庭裁判所調査官等に関する規則5条)。


5 人事情報データベース等の改修
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)223頁には以下の記載があります。
(人事情報データベース等改修(制度改正対応))
    現在,全国の裁判所においては,一般職の評価に関する業務を,人事評価シート等作成支援ツールを用いて行っている。同ツールは,被評価者用,各評価者用,人事担当課用に分かれており,各ツールで入力した情報をツール間で受け渡しながら,多段階評価を行っている。令和4年度に予定されている人事評価制度改正により,評語区分が細分化され,評価項目等にも変更が生じることから,同改正に対応した,適切な評価関係業務を継続するため,各ツールのプログラム並びにフォーム及びレポートの改修を行うために必要な改修経費を要求する。
    また,人事評価シート等作成支援ツール(人事担当課用)で作成した評価データは,本データベース内に一元的に格納されており,本データベースから出力可能な昇格,昇給,勤勉手当区分の決定についての検討資料に反映させる等して利活用しているほか,人事異動計画案作成機能等を有する異動関係ツールにおいても,本データベースとの連携機能を用いて,人事異動計画の策定業務に必要な情報をインポートし,利活用している。令和4年度に予定されている人事評価制度改正に伴い,評価ツールの改修が行われ,同ツールが保有するデータの形式に変更が生じることから,適切な人事関係業務を継続するため,同データを利活用する本データベース及び異動関係ツールについても,変更後のデータの形式に対応するための改修経費を要求する。


6 関連文書及び関連記事
(1) 関連文書
・ 家庭裁判所調査官執務必携(平成20年3月の,最高裁判所事務総局家庭局作成の文書)
・ 
首席家庭裁判所調査官等に関する規則(昭和57年6月14日最高裁判所規則第4号)
・ 首席家庭裁判所調査官等に関する規則の運用について(平成7年7月14日付の最高裁判所事務総長依命通達)
・ 家庭裁判所調査官及び家庭裁判所調査官補の配置,組の構成等について(昭和62年3月19日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
・ 家庭裁判所調査官事務の査閲等について(平成18年3月28日付の最高裁判所家庭局長通達)
・ 
裁判官以外の裁判所職員の任免等に関する規則(昭和25年1月20日最高裁判所規則第4号。平成24年3月12日最終改正)
・ 裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の管理職員等の範囲に関する規則(昭和41年7月22日最高裁判所規則第6号)
・ 裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の管理職員等の範囲に関する規則の運用について(昭和63年9月30日付の最高裁判所事務総長依命通達)
 少年審判運営の手引(平成22年3月)
(2) 関連記事
・ 最高裁判所が作成している,首席家裁調査官等名簿
・ 司法行政部門における役職と,裁判部門における裁判所書記官の役職の対応関係
・ 裁判所書記官,家裁調査官及び下級裁判所事務局に関する規則,規程及び通達
・ 裁判所書記官の役職
・ 総括企画官,文書企画官及び企画官
・ 
下級裁判所事務局の係の事務分掌
・ 最高裁判所が作成している,下級裁判所幹部職員名簿



広告
スポンサーリンク