目次
1 総論
2 日本年金機構及び共済組合の取扱い
3 被扶養者の異動
4 被扶養者の意義を定めた健康保険法3条7項
5 関連記事その他
1 総論
(1) 平成28年10月14日付の「司法修習生採用後の健康保険等について」には,健康保険及び国民年金に関する手続の詳細等は,健康保険に関しては各健康保険組合等,国民年金に関しては住居地を管轄する市区町村の各ホームページを参照する等して確認してくださいと書いてあります。
(2)ア 資格のない健康保険証を使用して医療機関等で受診した場合,後日,保険給付費(総医療費の7から9割)分を返還しなければならなくなります(協会けんぽ大阪支部HPの「健康保険証はいつまで使用できるの?」参照)。
イ 協会けんぽの正式名称は,全国健康保険協会です。
2 日本年金機構及び共済組合の取扱い
(1) 日本年金機構の取扱い
・ 厚生労働省保険局保険課が日本年金機構に対して回答したと思われる疑義照会回答(厚生年金保険 適用)の26頁及び27頁には,以下の記載があります。
健康保険法第3条第7項において、被扶養者は「主としてその被保険者により生計を維持するもの」と規定されており、被扶養者の認定に当たっては、その者の収入及び被保険者との関連における生活の実態により判断されます。
裁判所法第67条の2に規定される貸与制の修習資金については、定期的に貸与単位期間の1ヵ月ごと23万円(最低18万円)貸与されるため、修習資金の目的と貸与額からも、その貸与を受けている司法修習生がそれ以外の者の収入により生計を維持されているとは言い難く、被保険者との関連における生活の実態からも被扶養者として取り扱うことは妥当ではありません。
このため、貸与制の修習資金を受けている者については、被扶養者として認定することはできません。
(2) 共済組合の取扱い
ア 公立学校共済組合愛媛支部HPの「被扶養者の認定の手続き」には,司法修習生に貸与される修習資金は,被扶養者認定における所得に含まれると書いてあります。
イ また,埼玉県市町村職員共済組合の「被扶養者認定基準及び取扱い」の末尾6頁(PDF7頁)には,「司法修習生に貸与される修習資金は,主として月々の生活費を援助することを目的とした資金の提供と考えられているため,恒常的な収入とする。」と書いてあります。
3 被扶養者の異動
(1) 協会けんぽの被保険者の被扶養者に削除,氏名変更等があった場合,被保険者は事業主を経由して,「被保険者(異動)届」を提出する必要があります(日本年金機構HPの「従業員の被扶養者に異動があったときの手続き」参照)。
(2) 被扶養者の年間収入が130万円以上になると見込まれる場合,被扶養者について削除の届出を行う必要がありますところ,年間収入とは,過去における収入のことではなく,被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。
(3) 令和4年12月13日現在,関東信越厚生局HPの「審査請求にあたっての留意事項」には健康保険の被扶養者の認定及び不認定は,社会保険審査官に対する審査請求(社会保険審査官及び社会保険審査会法3条ないし18条)の対象とはならないと書いてあります。
しかし,最高裁令和4年12月13日判決は,「健康保険組合が被保険者に対して行うその親族等が被扶養者に該当しない旨の通知は、健康保険法(平成26年法律第69号による改正前のもの)189条1項所定の被保険者の資格に関する処分に該当する」と判示しました。
4 被扶養者の意義を定めた健康保険法3条7項
・ 健康保険法3条7項の条文は以下のとおりです。
この法律において「被扶養者」とは、次に掲げる者で、日本国内に住所を有するもの又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるものをいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者は、この限りでない。
一 被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下この項において同じ。)の直系尊属、配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この項において同じ。)、子、孫及び兄弟姉妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの
二 被保険者の三親等内の親族で前号に掲げる者以外のものであって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの
三 被保険者の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの
四 前号の配偶者の死亡後におけるその父母及び子であって、引き続きその被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの
5 関連記事その他
(1) 平成25年10月1日施行の改正健康保険法により,被保険者が副業として行う請負業務中に負傷した場合や,被扶養者が請負業務やインターンシップ中に負傷した場合,労災保険の給付が受けられないときは健康保険の給付が受けられるようになりました(改正後の健康保険法1条参照)(協会けんぽHPの「健康保険の被保険者又は被扶養者の業務上の負傷等について(平成25年10月から)」参照)。
(2) 毎年3月下旬及び9月下旬,厚生労働省関係の主な制度変更の内容が,厚生労働省HPの「社会保障全般分野のトピックス」に掲載されています。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
・ 司法修習生と国民年金保険料の免除制度及び納付猶予制度