裁判官の希望勤務地を取りまとめた文書は存在しないこと

1 平成27年度(最情)答申第8号(平成28年2月23日答申)には以下の記載があります。

   本件開示申出文書は,平成27年4月の人事異動に際して,全国の裁判官(簡易裁判所判事は除く。)の希望勤務地を取りまとめた文書であるところ,最高裁判所事務総長の説明によれば,全国の裁判官は,他に転任する場合の任地希望等をカードに記載して,最高裁判所事務総局人事局長に提出するとのことである。

   そうすると,人事局においては,各裁判官がカードに記載した任地希望を把握していることになるが,同説明によれば,人事局が人事異動計画の原案の立案等をする際には,各カードを個別に確認すれば足り,その記載内容を集計する必要はなく,現にその集計は行っていないというのである。人事異動事務が,任地希望を一つの考慮要素としつつも他の要素を含めて総合的に勘案して個別に検討すべき性質の事務であることに照らせば,上記説明に不合理な点は見当たらない。

2 本件開示申出文書は,「平成27年4月の人事異動に際して,全国の裁判官(簡裁判事は除く。)の希望勤務地を取りまとめた文書」です。

裁判官に関する人事事務の資料の作成等

平成16年6月1日施行の,「裁判官に関する人事事務の資料の作成等について」(平成16年5月31日付けの最高裁判所事務総局人事局長の通達)の本文は以下のとおりです。

第1 裁判官第一カード
1 作成及び提出
裁判官人事の基礎資料とするため,新規に裁判官に任命された者(以下「新任裁判官」という。) について,新任裁判官の本務庁(簡易裁判所である場合には,その所在地を管轄する地方裁判所。以下同じ。)の長は,新任裁判官の任命発令後速やかに,別紙様式第1の書面(以下「裁判官第一カード」という。)を1部作成し,当該新任裁判官の押印を得た上,人事局長に提出する。ただし,裁判官であった者が検事等に転官した後,裁判官に復帰した場合は,裁判官第一カードの作成を要しない。

2 裁判官第一カードの用紙
裁判官第一カードの用紙は人事局長が送付するものを使用する。

3 写真の更新
以下の場合は,新任時に貼付された写真の更新のため,撮影から3ヶ月以内の上半身名刺型の写真を速やかに提出する。
(1) 判事補が判事に任命された場合
(2) 判事又は簡易裁判所判事が再任された場合
(3) 裁判官であった者が検事等に転換した後,裁判官に復帰した場合

第2 裁判官第二カード 
1 作成及び提出
裁判官人事の参考資料とするため,毎年8月1日現在で在職する裁判官(高等裁判所長官を除く。)は,別紙様式第2-1から3のいずれかの書面(以下「裁判官第二カード」という。)を1部作成し,以下のとおり提出する。
(1) 高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所に補職されている裁判官(地方裁判所長,家庭裁判所長及び最高裁判所に勤務する者を除く。)は,所属庁の長に提出する。
なお,簡易裁判所判事と兼任している判事又は判事補については,判事又は判事補として補職されている所属庁の長に提出する。
(2) 複数の裁判所に捕職されている裁判官は,本務庁の長に提出する。ただし,当該裁判官が主として兼務庁において職務を行っている場合には,本務庁の長と兼務庁の長の協議により,兼務庁の長を提出先とすることができる。兼務庁の長を提出先に定めた場合には,兼務庁の長は,その旨を当該裁判官に適宜の方法で通知する。
(3) 補職されている裁判所(以下「補職庁」という。)と異なる裁判所の職務を行う裁判官は,補職庁の長(複数の裁判所に捕職されている裁判官については,(2)で定められた庁の長)に提出する。ただし,当該裁判官が主として補職庁と異なる裁判所の裁判官の職務を行っている場合は,補職庁の庁及び職務代行を命じられている裁判官(以下「職務代行庁」という。)の庁の協議により,職務代行庁の長を提出先とすることができる。(職務代行庁の長を提出先に定めた場合には,職務代行庁の長は,その旨を当該裁判官に適宜の方法で通知する。)。
(4) 地方裁判所長及び家庭裁判所長は,その所属する裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の長官(以下「管轄高等裁判所の長官」という。)に提出する。
(5) 最高裁判所事務総局の各局課に勤務する裁判官(局課長を除く。)は,その勤務する局課の局課長に,最高裁判所の裁判所調査官(首席調査官を除く。)は,最高裁判所首席調査官に,最高裁判所の研修所に勤務する裁判官(研修所長を除く。)は,その勤務する研修所の所長に,それぞれ提出する。

2 任地及び担当事務の希望に対する意見の記入等
(1) 地方裁判所長及び家庭裁判所長は,1の(1)から(3)までにより提出された裁判官第二カードに,当該裁判官の任地及び担当事務の希望に対する意見を記入し,管轄高等裁判所の長官に対し,その定める期日までに提出する。
(2) 高等裁判所の長官は,1の(1)から(4)まで及び2の(1)により提出された裁判官第二カードに,当該裁判官の任地及び担当事務の希望に対する意見を記入した上,人事局長に対し,その定める期日までに提出するとともに,地方裁判所長又は家庭裁判所長に2の(1)により提出sれた裁判官第二カードの写しを送付する。
(3) 最高裁判所事務総局の局課長,最高裁判所首席調査官及び最高裁判所の研修所の所長は,1の(5)により提出された裁判官第二カードに,当該裁判官の任地及び担当事務の希望に対する意見を記入し,人事局長に対し,その定める期日までに提出する。

3 裁判官第二カードの写しの保管,移管及び廃棄
別に定める。

裁判官第一カード,裁判官第二カード及び裁判官第三カード

1 根拠通達
(1)   裁判官第一カード及び裁判官第二カードの根拠通達は,平成16年6月1日施行の,「裁判官に関する人事事務の資料の作成等について」(平成16年5月31日付けの最高裁判所事務総局人事局長の通達)です。
(2) 裁判官第三カードの根拠通達は,「裁判官の人事評価の実施等について(平成16年3月26日付の最高裁判所人事局長通達)」です。

2 裁判官第一カード
(1) 裁判官第一カード等の記載要領について(平成29年2月16日付けの最高裁判所事務総局人事局任用課長の事務連絡)に記載要領が載っています。
(2) 裁判官第一カードは履歴書の簡略版です。

3 裁判官第二カード
(1)   裁判官第二カードには,裁判官本人が毎年8月1日時点の,氏名,現住所,所属庁,健康状態,病状・病歴,家族の状況等,次期異動における任地及び担当事務についての希望並びにその理由を記載します。
そして,「任地及び担当事務の希望に対する所長及び高裁長官の意見」欄を裁判所長及び高等裁判所長官が記載します。
(2) 毎年,全裁判官が裁判官第二カードを作成しています(裁判所HPの「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」の「4.異動の実情」参照)。

4 裁判官第三カード
   裁判官第三カードは,裁判官の人事評価に関する規則3条3項に基づき,裁判官が,自己の担当した職務の状況に関して記載した書面のことです(「裁判官の人事評価に関する規則の運用について(平成16年3月26日付の最高裁判所事務総長通達)」第1の5,及び「裁判官の人事評価の実施等について(平成16年3月26日付の最高裁判所人事局長通達)」3(1)参照)。

5 その他
(1) 現代ビジネスHPの「転勤を断ると出世できない…裁判官の世界はまるでサラリーマンのよう」(2017年5月28日付)には以下の記載があります。
   これらカード(注:裁判官第二カード及び裁判官第三カードのこと。)への記入にあたり、多くの裁判官が、多少なりとも逡巡するのが、「第二カード」に設けられた「次期異動における任地」への希望欄だ。
   大きく3つの選択肢が設けられていて、ひとつ目が、任地は「最高裁判所に一任する」。次が、「任地の希望地はあるが固執しない」。そして、「希望任地以外は不可」の項目だ。
   前のふたつの項目のいずれかにチェックを入れたうえで、異動の「時期に関しても一任する」をチェックすれば、いかなる任地への異動を命じても、本人の意に沿わない異動とはならない。
(2) 弁護士森脇淳一HP(35期の元裁判官)の「裁判官の身分保障について(1)」(平成30年12月1日付)には,「私は、本来希望しない任地への異動を承諾したり、そのような任地に赴けばその次に希望の任地に赴任できると考えて(最高裁を信用して)単身赴任などしている周囲の裁判官のことが理解できなかった。」と書いてあります。

裁判官の転出に関する約束

1 平成14年7月16日付の裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書における「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」には,以下の記載があります。
裁判官の異動については,転所に関する保障(裁判所法48条)があるので,すべて本人の同意の下に行われている。異動に関する基本資料として,毎年,全裁判官が裁判官第二カード(なお,裁判官第一カードは,履歴書の簡略版である。)により,勤務地と担当事務について希望を提出している。勤務地の希望は,圧倒的に首都圏が多く(7割前後は首都圏希望ではないかと思われる。),そのほかは京阪神地域の希望も相当数ある。このように,勤務地の希望が偏っていることから,希望者の多い大規模庁に転入する判事10年目くらいまでの者については,機会均等を図るため,「何年後には最高裁の指定する庁に転出する」という約束(あくまで紳士協定的なもの)を書面でする扱いとなっている。

2   以下の文書は,最高裁判所には存在しません(平成28年度(最情)答申第12号(平成28年6月3日答申))。
① 希望者の多い大規模庁に転入する判事10年目くらいまでの者については,機会均等を図るため,「何年後には最高裁の指定する庁に転出する」という約束(あくまで紳士協定的なもの)を書面でする扱いの詳細を定めた文書
② 「何年度には最高裁の指定する庁に転出する」という約束をした判事及び判事補の人数が分かる文書(合計数のほか,最高裁及び全国の下級裁判所ごとの人数)

3 平成28年度(最情)答申第12号(平成28年6月3日答申)には以下の記載があります(改行を追加しました。)。
最高裁判所事務総長の説明によれば,裁判官については,異動条件を記載した異動に関する承諾書が作成されることがあるとのことであり,承諾書が作成されるのは,裁判官が,裁判所法上,その意思に反して免官,転官,転所等をされることはないとされている(同法48条)ことによると解される。
しかし,同説明によれば,異動条件については,全国を異動する必要がある裁判官について,適材適所の原則による異動を確保しつつ,機会均等を図るため,紳士協定的な約束として,従前からの慣行となっているとのことであり,法令等に基づくものではないと解される。
また,裁判官の異動について,何らかのルールがあることもうかがわれない。
そうであるとすれば,異動条件の内容は,異動対象となる裁判官ごとに,その固有の諸事情に応じて定められた個別的な性格のものであって一般性がないものと認めるのが相当である。

裁判官の転勤の内示時期

1 裁判官の人事異動に関する最高裁判所の説明
   平成14年7月16日付の裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書における「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」には,以下の記載があります。
異動の大部分は,所長等の人事を除き,毎年4月期に定期異動として実施される。異動計画の原案は,高等裁判所管内の異動については主として各高等裁判所が,全国単位の異動については最高裁判所事務総局人事局が立案し,いずれについても最高裁判所と各高等裁判所との協議を経て異動計画案が作成される。異動の内示は,事件処理と住居移転の関係を考慮して,原則として異動の2か月以上前に,離島などについては3か月以上前に行われ,承諾があれば,最高裁判所裁判官会議の決定を経て発令され,承諾がない場合には,異動先の変更が行われたり,留任の取扱いがなされる。
   異動案は,各裁判所でどのような経験等を持つ裁判官が何人必要かという補充の必要性,任地・担当事務についての各裁判官 の希望,本人・家族の健康状態,家庭事情等を考慮し,適材適所・公平を旨として立案される。適材適所・公平といった面で,人事評価が影響することになる が,少なくとも所長等への任命以外の一般の異動に関する限り,実際には,上記の人事評価以外の事情が影響する度合いが高い。特に近年は,配偶者が東京等で 職業を持つ割合が格段に高くなったこと,子弟の教育を子供の幼いうちから東京等で受けさせるために比較的若いうちから地方へ単身赴任する者が増えたこと, 親等の介護の必要から任地に制限を受ける者が増えたことなどから,家庭事情に基づく任地希望が強まっている。現に,首都圏や京阪神地域の裁判所において, こうした事情を抱える裁判官は相当数に上る。また,判事補や若手の判事については,幅広い経験ができるように,評価とかかわりなしに大規模庁に異動するこ ともある。したがって,若手のうちは,異動において人事評価が影響する程度は,限定されたものである。

2 転勤を伴う人事の実情
(1) 裁判官の場合
   「転勤を伴う人事について,裁判官本人に対する内示時期の目安が分かる文書」は不開示情報に該当します(平成27年度(最情)答申第5号(平成28年2月22日答申))。
しかし,平成28年2月24日付の「裁判官異動と最高裁による同意(書)取付け方法」と題するブログ記事によれば,毎年1月中旬ぐらいに,人事異動対象者に対する新規異動先の案内がなされているようです。
(2) 検事の場合
   検事の人事異動については,平成28年1月16日配信の「検事の転勤って,どんなもの?」と題するヤフーニュースの記事に詳しく書いてあります。

毎年4月1日付の人事異動等に関する最高裁判所裁判官会議

1(1) 毎年4月1日付の人事異動等については,毎年3月の第1水曜日に開催される最高裁判所裁判官会議で決定されています。
   その時期の裁判官会議では,①裁判官の退官等,②裁判官の新規任命等,③裁判官の再任等(要審議者名簿登載の者に関する審議を含む。),④判事の転補等,⑤判事補の転補等,⑥簡易裁判所判事の転補等,⑦裁判官の民間企業長期研修及び日本銀行研修,並びに⑧裁判官の特別研究が決定されています。
(2) 転補等は人事異動のことであり,転勤を伴うかどうかを問いません。
(3) ①ないし⑥の裁判官人事は,官報に掲載されます。

2 毎年度の裁判官の人事異動(議事録別紙につき,「裁判官会議付議人事関係事項」の1頁目及び2頁目以外は省略)
(1) 平成25年度の裁判官の人事異動
平成25年3月6日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,①自動車運転による死傷事犯の罰則の整備に関する法制審議会刑事法部会の議決報告,及び②札幌高等裁判所長官の補職等の議題とあわせて,午前10時30分に開始し,午前11時22分に終了しました(平成25年3月6日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。
(2) 平成26年度の裁判官の人事異動
平成26年3月5日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,他に議題がないこともあって,午前10時30分に開始し,午前11時3分に終了しました(
平成26年3月5日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。
(3) 平成27年度の裁判官の人事異動
平成27年3月4日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,①情報公開等の苦情申出制度の整備等,②最高裁判所事務総局分課規程の一部を改正する規程,③相続に関する規律の見直しについての法制審議会への諮問,④水戸地方裁判所長の補職等の議題とあわせて,午前10時30分に開始し,午前11時53分に終了しました(平成27年3月4日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。
(4)   平成28年度の裁判官の人事異動
平成28年3月2日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,①最高裁判所行政不服審査委員会規則の制定等,②最高裁判所事務総局分課規程の改正,③裁判所の人事行政事務の実情,④裁判所職員総合研修所入所試験規程の運用,⑤東京高裁長官の補職等の議題とあわせて,午前10時30分に開始し,午前11時50分に終了しました(平成28年3月2日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。
(5) 平成29年度の裁判官の人事異動
   平成29年3月1日の最高裁判所裁判官会議で原案通り決定されており,①司法研修所規程の一部を改正する規程の制定,②最高裁判所事務総局分課規程の一部を改正する規程,③新裁判官の配置(戸倉三郎最高裁判所判事),④下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申等の課題とあわせて,午前10時30分に開始し,午前11時16分に終了しました(平成29年3月1日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。
(6) 平成30年度の裁判官の人事異動
平成30年3月7日の最高裁判所裁判官会議で原案どおり決定されており,他に議題がないこともあって,午後2時00分に開始し,午後2時21分に終了しました(平成30年3月7日の最高裁判所裁判官会議議事録本文)。

3(1) 平成29年3月1日の最高裁判所裁判官会議議事録につき,1/32/3及び3/3を掲載しています(ただし,議題4及び資料第4は除きます。)。
(2) 平成30年3月7日の最高裁判所裁判官会議議事録につき,1/2及び2/2を掲載しています。

4(1) 裁判官の人事異動が最高裁判所裁判官会議で決定された毎年3月の第1水曜日以降であれば,裁判官は自分の人事異動を対外的に公表できることとなります。
そのため,3月の第1水曜日から3月末日までの間に裁判期日がある場合,人事異動により転勤する予定の担当裁判官から,4月以降は別の裁判官が担当する予定であると告げられることが多いです。
(2) 転勤してきた裁判官が新たな担当裁判官となった場合,前任者から引き継いだ事件記録を一通り読み込む必要がありますから,4月中は裁判期日が入りにくいです。

5 定年退官に伴う玉突き人事については,発令日から約4週間前の水曜日の最高裁判所裁判官会議で決定されていることが多いですが,約2週間前の水曜日に決定されていることもあります。

6 最高裁判所裁判官会議の運営方法等については,最高裁判所裁判官会議規程(昭和22年9月22日最高裁判所規程第1号)で定められています。

最高裁判所事務総局の各係の事務分掌(平成31年4月1日現在)

1 平成31年4月1日現在における,最高裁判所事務総局の各係の事務分掌を定めた文書を以下のとおり掲載しています。

① 最高裁判所事務総局秘書課の事務分掌

② 最高裁判所事務総局広報課の事務分掌

③ 最高裁判所事務総局情報政策課の事務分掌

④ 最高裁判所事務総局総務局の事務分掌

⑤ 最高裁判所事務総局人事局の事務分掌

⑥ 最高裁判所事務総局経理局の事務分掌

⑦ 最高裁判所事務総局民事局の事務分掌

⑧ 最高裁判所事務総局刑事局の事務分掌

⑨ 最高裁判所事務総局行政局の事務分掌

⑩ 最高裁判所事務総局家庭局の事務分掌

2 「最高裁判所事務総局等の組織」も参照してください。

新しい日本のための優先課題推進枠説明資料(最高裁判所作成分)

1 最高裁判所が作成した,新しい日本のための優先課題推進枠説明資料を以下のとおり掲載しています。
① 平成30年度分1/22/2
② 平成31年度分1/22/2

2(1) 裁判所HPに,「新しい日本のための優先課題推進枠」要望一覧が以下のとおり載っています。
① 平成26年度分
② 平成27年度分
③ 平成28年度分
④ 平成29年度分
⑤ 平成30年度分
⑥ 平成31年度分
(2)ア 平成26年度から平成30年度までのテーマは,①安全・安心な社会の実現等,及び②防災・減災でした。
イ 平成31年度のテーマは,①暮らしの安全・安心,②防災・減災及び③裁判手続等のIT化の推進でした。

カルロス・ゴーンの刑事手続に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること

1 被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し,申出人は,被疑者カルロス・ゴーンに関する身柄拘束及び接見禁止決定は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨の主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定の事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
この点について,苦情申出人は, 当該特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件文書は,「被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定に関与している裁判官の氏名が分かる文書」です。

2 被疑者カルロス・ゴーンの勾留理由開示に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること

(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は, 「被疑者カルロス・ゴーンに関する勾留理由開示公判は,東京地裁又は東京地検によって公にされている事実であるから,法5条1号に定める不開示情報に相当しない。」との主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の勾留理由開示公判に関する事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
この点について,苦情申出人は, 当該特定の個人の勾留理由開示公判は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の勾留理由開示公判に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件文書は,「平成31年1月8日にあったカルロス・ゴーンの勾留理由開示公判に関して,東京地裁事務局が作成し,又は取得した文書(大使館職員等に対する傍聴席の優先割当に関する文書を含むものの,一般の傍聴者から回収した裁判所傍聴券は除く。)」です。

3 被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は, 「被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は,東京地裁又は東京地検によって公にされている事実であるから,法5条1号に定める不開示情報に相当しない。」との主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の保釈請求及び準抗告の事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
この点について,苦情申出人は,当該特定の個人の保釈請求及び準抗告は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の保釈請求及び準抗告に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相’当である。
(2) 本件文書は,「被告人カルロス・ゴーンの保釈請求及び準抗告に関与している裁判官の氏名が分かる文書(例えば,既済事件一覧表の抜粋)」です。

4 カルロス・ゴーンに関する刑事手続の存在は,東京地検が報道機関に公表している事実であると思います(「東京地検が,報道機関に対し,平成31年4月4日のカルロス・ゴーンの逮捕に関して提供した文書は,翌日までに廃棄されたこと等」参照)。

証人が正当な理由なく出頭しなかった場合の取扱い

1 証人が正当な理由なく出頭しなかった場合,つまり,出頭を拒否した場合の取扱いは以下のとおりです。
① 裁判所が決定で,証人の不出頭によって生じた訴訟費用の負担を命じ,かつ,10万円以下の過料に処します(民事訴訟法192条1項)。
② 10万円以下の罰金又は拘留に処せられ(民事訴訟法193条1項),場合によっては併科されます(民事訴訟法193条2項)。
③ 勾引されることがあります(民事訴訟法194条1項)。

2 平成29年6月14日付の開示文書によれば,平成28年に関して,民事訴訟法193条に基づき10万円以下の罰金又は拘留に処した件数は0件です。

3 平成29年6月14日付の司法行政文書不開示通知書によれば,平成28年に関して,民事訴訟法192条に基づき訴訟費用の負担を命じた件数が分かる文書,及び民事訴訟法194条に基づき証人の勾引を命じた件数が分かる文書は存在しません。

尋問に出席した場合の旅費日当

1(1) 証人尋問に出席した証人の場合,旅費日当(民事訴訟費用法18条1項)を請求できます。
ただし,証人からの旅費日当の請求が予想される場合,証人尋問を申請した当事者が旅費日当相当額を事前に裁判所に納付する必要があります(民事訴訟費用法11条1項1号・2項及び12条1項)。
そのため,当事者及び裁判所に余計な事務手続が発生しないよう,証人が旅費日当を放棄することが多いです。
(2) 証人が旅費日当を請求した場合,尋問終了後に裁判所から旅費日当を支払ってもらえます。
この場合,証人の旅費日当は訴訟費用額に含まれることとなります。
(3) 裁判所HPの「証人等日当及び宿泊(止宿)料」には,証人等の日当額は8000円以下となっています。

2(1) 当事者尋問に出席した当事者の場合,判決確定後の訴訟費用額確定処分(民事訴訟法71条)を通じてしか,旅費日当を請求できません。
つまり,当事者は判決確定前に旅費日当を支払ってもらうことはできません。
(2) 訴訟費用額確定処分については,伊東良徳弁護士HP「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」が分かりやすいです。

3 日当は1日当たり3950円です(民事訴訟費用法2条4号ロ・民事訴訟費用規則2条2項)。

裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成

  以下の記述は,①月刊大阪弁護士会平成23年10月号27頁ないし30頁,及び②阪地裁と大阪弁護士会の,平成27年2月2日開催の第72回民事裁判改善に関する懇談会議事録に書いてある,裁判官の発言をほぼ抜粋したものです。
 
1 総論
○弁論準備の終結段階で形成された心証が,尋問によって覆るという割合はそれほど多くはない。尋問前に心証が固まっている場合には,目的を持って証人尋問で検証している。
   客観的な証拠が乏しく,どちらのストーリーも成り立ちうるような場合は,どちらがより整合性があるかなどを考えて心証を確立させる場合が多い。
○目的意識が明確で簡にして要を得たものや,不利な点や矛盾点など相手方が指摘しそうな部分も意識的にカバーするような尋問が良い尋問であり,逆に,悪い尋問としては,陳述書をなぞるだけの尋問や意見を押しつける尋問,感情的になったり,証人を刺激したりするような尋問が挙げられる。
○証人の証言態度や口癖は基本的には心証形成にさほど影響しない。
   誠実に答えない場合は信用性に影響を及ぼす場合があり,逆に不利益事実も認めた上で証言すると全体として信用性が高まるという意見があった。
 
2 主尋問
(1) 総論
○大阪地裁では,主尋問を陳述書に譲って5分とする運用はしていない。
○具体的な事実をきちんと聞くと印象が強い。
   逆に,印鑑の管理が問題になっているのに,誰が管理していましたということだけ聞いて具体的にどこでどのように管理していたかということを聞かないと印象が良くない。
○表面的に流れているだけの質問では駄目で,きちんと裁判官が絵を描けるような質問が良く,リアルさに欠ける質問は適切ではない。
   主尋問で機械的に答えていたのに反対尋問で急に自分の言葉に変わるという場合,心証は良くない。本人の言葉で答えていることが大事である。
○証人や本人が直接体験していることを語ることが大前提であるから,そのリアリティーが浮かび上がってくるかどうかがポイントになってくる。
○実質的に争いのない点や争点に関係のない点に時間をかける主尋問はよくない。
   争点とは関係ないものの話しておきたいことがあれば,一番最後に「裁判所にいっておきたいことはありますか」という形で要約して伝えてもらえればよいのではないか。

(2) 主尋問における誘導
○陳述書に書いてあっても肝心なところは誘導せずに本人に話してもらいたい。
   裁判官は本人がどのように言うのかを見ているので,誘導して良い部分との区別が重要である。
○争点にかかわる部分に対する答えが「はい」「いいえ」のみの誘導が過ぎる尋問は悪い主尋問である。
○裁判所は,主尋問において,弱いと思っているところを本人がどのように説明するのかを見ているので,そういうところを誘導されると心証がとれないので止めてもらいたい。
 
(3) 陳述書との関係
○争点について具体的に証人の口から語らせるというところを一番重視しなければならない。
   陳述書をなぞるだけのメリハリのない尋問は,聞いていて効果がない。
○陳述書はきれいにまとまっていることが多いので,証人の認識等について,具体的に証人自身の言葉で聞くと迫真性が違う。
○証人が陳述書でも出ていない重要な間接事実について突然証言し出したような場合,争点に関係しないと言い切れるかどうかは疑問で,裁判所が尋問を止めることは難しい。
   ただし,その話がなぜこの段階で出るかについては非常に疑問を持つから,その理由を反対尋問で聞いてもらうのが良いのではないか。

(4) 文書等を示しての尋問
○高裁での経験からいうと,尋問は簡潔に要点を抜き出して,必要な書証に触れながら自分の言葉で語っているものが絶対良い。
   だらだらした調書を読まされることは非常に不評であり,簡にして要を得たものが一番理想だと思う。
○民事訴訟規則102条の「相当期間前」は尋問期日前の1,2週間前との理解であり,その期間は概ね遵守されている。
○尋問で示す証拠が尋問直前又は当日に提出された場合,相手方の意見を聞いた上で,事案の内容や証拠の重要性に応じて考える。
   期日の続行もあり得るし,弾劾証拠としてのみ使用を許したり,尋問で示すことを制限したり,時機に後れた攻撃防御方法として却下することもあり得る。
   例は少ないが,尋問期日が変更されたこともあるようである。
  
3 反対尋問
(1) 総論
○良い反対尋問は,淡々と事実や認識を証言させ,その中で客観的事実や主尋問との矛盾点や不合理な変遷を浮かび上がらせる尋問,記憶の内容や根拠が曖昧であることが明らかになるような尋問である。
○悪い反対尋問は,威圧的な尋問,侮辱的な尋問,些細な記憶違いをとらえて糾弾する尋問,意見や主張を押しつける尋問,無理に誘導する尋問,主尋問の上塗りの尋問である。
○反対尋問において客観的証拠との矛盾を指摘することは意味があるものの,矛盾を認めさせたり,証言を変えさせたりする必要はない。
   踏み込みすぎると,かえって弁解されたり,合理的な理由が出てきたりして逆効果となる。
○客観的な事実との矛盾を浮かび上がらせる尋問が効果的である。「このとき会いましたよね。」「いや,会っていません」というように主尋問を固めていくものは余り意味がない。
   証言と矛盾する物を示しながら,矛盾を浮かび上がらせられると良いのではないか。反対尋問で,証言の弱いところがよく分かったり,記憶の曖昧さが鮮明になったこともある。
○客観的証拠との矛盾を反対尋問で指摘する意味について,最終準備書面での指摘でもかまわないが,敗訴する側に譲歩させた和解に持って行くときに,尋問で指摘してもらっていると,それを前提に和解ができるという意味では非常にありがたい。
   自分としてはやっていただいた方が良い。
○最終準備書面における指摘で足りるということもあるが,最終準備書面は参考程度に拝見するということもあるので,尋問時間との関係もあるものの,ある程度尋問で指摘してもらった方がよい。
  
(2) 弾劾証拠
○尋問時に弾劾証拠が提出される例は多くないが,証人等の供述と矛盾する客観的事実を裏付けるような証拠(例えば,後遺症の程度と矛盾する画像,不貞の事件でホテルに入っていく写真,主張や供述と矛盾する証人自らの言動を示す文書)は効果的である。
   ただし,弾劾証拠といっても本体の証拠でもあることが多く,争点整理段階で出してもらえれば,争点や人証を絞り込めたり,和解の可能性も高まったと思われることが多い。
○弾劾証拠として機能しない証拠が出されることもある。
   録音反訳が出されることもあるが,尋問の場で反訳の正確性を検証できないから,事前に出しておくべきという意見が複数ある。
○その場で証人が内容を確認して反論できてしかるべきもの,例えば,鮮明な写真,証人自身が作成した手紙やメモで内容が完結しており,その場で見てどういうものかが誰でも分かるものであれば,尋問の際に弾劾証拠で出されても問題はない。
   しかし,内容をその場で見て確認できないものや反論の機会を後日改めて与えなければならないようなもの,例えば,録音反訳書,長いメールで一部だけ取り出してきてもやりとりの全体が分からないもの,第三者が作成したものについては,時間をとって内容を確認してもらう必要があるので,場合によっては尋問期日を続行したり,争点整理をやり直したりということにもなりかねない。
   期日を重ねて反論させるようなものであれば,尋問前に出してもらった方が良かったのではないかと思うし,尋問前に出してもらっていれば和解できたのではないかという事案もある。
   事案にもより一概に言えないが,内容に応じた適時の提出を心がけていただきたい。
○弾劾証拠をどのタイミングで提出するのかについては,弁護士の戦略と思うが,事前に提出すると弁解されて効果がなくなってしまうようなものについては,本当に弾劾証拠として意味があるのか。
   弾劾証拠というのは,その場でぎゃふんといわせるというか,弁解ができないようなものが良いのではないか。前後の文脈を見なければ分からないものはふさわしくない。
○録音した会話の証拠の価値については,裁判所と弁護士との間で若干認識のずれがある。
   発言の意味については,文脈や会話の流れの中で評価する必要がある。今証言した内容とその会話に出てきた内容との間に矛盾があることによって直ちに弾劾になるかといわれるとそうではなく,発言の趣旨を吟味した上で,弾劾証拠としての意味があるかについて判断していくことにある。
 
(3) 反対尋問で質問しないことの意味
○陳述書に重要な事実が書いてあるのに主尋問で聞かなかった場合に反対尋問しないことの印象について,反対尋問できないのだと思ってしまうという意見が多い。
○主尋問で陳述書に記載されている重要な事実を聞かなかった場合に,相手方がその事実に対して反対尋問を行わないときに,裁判所としてどういう印象をうけるかについては,ケース・バイ・ケースだと思う。
   主尋問で聞かなかった重要な事実について反対尋問を行わない場合には,そもそもその事実を立証できていないということになることもあるとは思うが,自分の印象ではむしろ逆にとらえてしまうことが多いように思う。
   反対尋問で聞かないということは,その事実は当然の前提として認めていると受け取ったり,反対尋問をしても効果が見込めないからしないと受け取ることの方が多いように思う。弁論の全趣旨で認定しても良いのだなと考える場合もある。
   したがって,争うのであれば,反対尋問はした方が良いと思う。
○反対尋問で聞かなければいけないと思っている事実については,主尋問で出てこなくても,反対尋問すべきだと思う。
○陳述書だけで事実を認定しない一番大きな理由は,反対尋問の機会が与えられておらず,弾劾を経ていないからであるが,陳述書が出され,重要な事実についての記載があり,反対尋問の機会が与えられているときに,反対尋問がされていないということになると,やはりそこは真剣に争っていないのかなという心証を抱く場合もあり得る。
   もっとも,主尋問でも触れられていないということで,その分,証明力としては弱いということは否定できないところではある。
○主尋問で触れられなかった重要な事実について,何でもかんでも反対尋問しておいた方がいいことになるのかといえば,逆効果な場合もあり得る。
   主尋問で触れられないことで,立証できていないとなりそうであったにもかかわらず,反対尋問で聞いて固めてしまうこともあり得ないわけではない。
   
4 介入尋問
○介入尋問は,身振りや手振り,「あれ,それ,そこ」といった表現,その他調書に残らない場合の確認のために行う。
○介入尋問は,証言の趣旨が不明確,質問を理解できていない,質問と答えがかみ合っていない,議論になった場合にも行う。

尋問を受ける際の留意点

1 証人尋問又は当事者尋問の際,陳述書の言葉を暗記してそのとおりに話さなければならないといったことは全くないのであって,自分の言葉で記憶のとおりに供述すればいいです。
ただし,陳述書と異なる事実関係を供述した場合,反対尋問での攻撃材料となりますから,尋問の直前に陳述書を読み直すことで記憶喚起しておいた方がいいです。

2 以下の事項に留意して供述した方がいいです。
(1) 主尋問と反対尋問とで共通の留意事項
① 質問事項に対してはっきり答えること
→ 証人尋問では,一問一答式の質疑によって回答する必要があります(民事訴訟規則115条1項参照)から,質問事項に対してはっきりと答えて下さい。

   ただし,記憶が曖昧であるときは,そのとおり曖昧であることを率直に述べて下さい。
② 質問事項以外に回答する必要はないこと。
→ 不用意に長い回答をすると,予期しない反対尋問を誘発する危険があります。
特に,理由や根拠に関する証言は,質問されない限り答える必要はないのであって,必要があれば,重ねて質問します。
③ 趣旨が不明の質問や聞き逃した質問には,改めて質問をしてもらうようにすること。

→ 尋問者の質問の趣旨がよく理解できなかった場合,理解が不十分なままに回答するのではなく,尋問者に対して質問の趣旨を尋ねたり,もう一度質問をしてもらったりするよう要求して下さい。
④ 裁判長の求めがある場合,図面を書かせられたり,図面に記入したりする場合があること(民事訴訟規則119条)。
→ 不動産事件では不動産の占有状況や現況を説明させたりする場合に図を用いたり,交通事故の事件で車両の動きを矢印で図示したりする場合があります。

(2) 反対尋問での留意事項
① 相手の弁護士の質問には全部について答える必要はないこと。
→ 尋ねられたことでも,覚えていないこと,知らないことはその旨を率直に回答すればよいのであって,質問された以上,必ず何かを回答しなければならないという気持ちは持たないで下さい。
また,日時など細かいことを思い出せない場合,「細かいことは思い出せませんが,大体,〇〇だったと思います。」という風に答えればいいですし,資料を見なければ分からない場合,「資料を見なければ,分かりません。」という風に答えればいいです。
② 想像で答えないこと。
→ 何か答えなければ格好が付かないとか,依頼者に対して少しでも多くを語って協力したいとの心境で,想像を交えて答える人もいますが,止めて下さい。
③ 相手の弁護士の挑発に乗らないこと。
→ あえて証人を怒らせるのも法廷における反対尋問の作戦の一つですものの,相手の弁護士の挑発に乗ると,冷静を失い,事実が述べ足らなかったり,余計な発言をしたり,事実に相違することを述べたりする危険が高まります。
また,同じ事柄を聞き方を変えて何回も質問された場合,何回でも同じ答えを繰り返せばいいです。
④ 文書を示して質問された場合,すぐに回答する必要はないこと。
→ 文書をじっくり読んで理解したうえで,質問に対する回答をしてください。
⑤ 証人と当事者との利害関係を尋ねられる場合があること。
→ 訴訟代理人と事前に打ち合わせたとか,本人とどんな経済的関係にあるかといった点が,相手の弁護士や裁判官から尋ねられることがありますものの,率直に答えてもらえれば結構です。
このことは,民事訴訟規則85条が「当事者は,主張及び立証を尽くすため,あらかじめ,証人その他の証拠について事実関係を詳細に調査しなければならない。」と規定していることからも確認できます。
⑥ 主尋問と反対尋問とで態度に区別を設けないこと。
→ 真摯かつ誠実に対応できた方が裁判所の印象はよいものです。

3 やっぱり世界は**しい!ブログ「反対尋問のテクニック」によれば,反対尋問をする側の一般的注意点として以下のことが記載されていますから,これらの点にも留意して反対尋問に対応してもらう方がいいです。

① テンポは速くする。

・ 証人を動揺させ、考える時間もなくすことで、矛盾する証言を引き出しやすくなる。

② 質問のスタイルは証人によって変える

・ 例えば、証人に対し友好的な態度を示し油断させるスタイルと、威圧的に質問するスタイルは、相手によって使い分けるべきである。

③ 答えが「イエス・ノー」でできる質問にする

④ 証言の根拠・理由は原則として聞かない

⑤ 出たとこ勝負にしない

⑥ 予定時間通り行う

⑦ 総花的に行わない

・ 証言すべてが虚偽ということは無いので、そもそも総花的反対尋問の意味はない。おかしいと思うところを集中的に攻撃することで、証言全体を弾劾できるので、反対尋問は一点豪華主義が効果的である。

⑧ 異議を出されないようにする。

・ 証人に休憩する暇を与えないため。

⑨ 深入りしない

⑩ 失敗した場合は早めに切り上げ、次の質問に移る

・ 証言の信用性を強めたり、不利な証言が出そうな場合には、方向転換をしなければならない。その場合、失敗を悟られないため、「今の質問は質問の趣旨がわかりにくかったと思うので、次の質問に移ります」とか、「表現が適切でなかったので撤回します」といった決まり文句をストックしておくとよい。

宣誓書及び宣誓拒絶

1 宣誓書
(1) 証人尋問又は当事者尋問の前に,宣誓書(「良心に従って本当のことを申し上げます。知っていることを隠したり,ないことを申し上げたりなど,決していたしません。以上のとおり誓います。」という文言が記載されています。)に署名押印し,法廷で起立して読み上げてもらうことで,宣誓を行います(証人尋問につき民事訴訟法207条1項後段及び民事訴訟規則112条,当事者尋問につき民事訴訟法201条,民事訴訟規則127条・112条)。
   その後,依頼した弁護士,相手方代理人及び裁判所からの尋問に答えてもらうことになります(民事訴訟規則113条・127条)。
(2) 宣誓書には通常,はんこを付いてもらいます(認め印で結構です。)。
はんこを忘れた場合,指印(親指又は人差し指の先に朱肉を付けて押す印のこと。)を押してもらうことになります。

 
2 宣誓拒絶
   ①証言拒絶権(民事訴訟法196条)を行使できる証人が尋問を受ける場合,裁判所から宣誓を求められないことがあります(民事訴訟法201条3項)し,②自己又は自己の配偶者等に著しい利害関係のある事項について尋問を受ける場合,宣誓を拒むことができる(民事訴訟法201条4項)のであって,宣誓をしないで証言をした場合,「法律により宣誓した証人」(刑法169条)に当たりませんから,偽証罪に問われることはありません。
    ただし,この場合,宣誓を拒む理由を疎明する必要があり(民事訴訟法201条5項前段・199条1項),宣誓拒絶を理由がないとする裁判(即時抗告権があることにつき民事訴訟法201条5項前段・199条2項)が確定した場合,宣誓をしなければなりません。