司法修習生の修習事務に関する内部文書

○司法修習生の修習事務に関する内部文書を以下のとおり掲載しています。

1 司法修習生の司法修習に関する事務便覧
・ 平成30年11月付(72期用)
・ 平成29年11月付(71期用)
・ 平成28年11月付(70期用)

2 導入修習及び分野別実務修習に参加するための旅費について(司法研修所事務局経理課長の事務連絡)
・ 平成30年11月1日付(72期用)
・ 平成29年11月1日付(71期用)

3 旅費に関する一般的な取扱いを定めた内部文書
・ 内国旅行の旅費について(昭和61年9月12日付の最高裁判所事務総長依命通達)
・ 国家公務員等の旅費に関する法律第4条第1項の規定に基づく旅行命令権の委任等について(平成14年3月29日付の最高裁判所事務総長依命通達)
・ 旅費業務に関する標準マニュアルVer.2-0(平成26年12月の各府省申合せ)
・ 旅費支給事務のQ&A(平成24年4月)
・ 旅費業務の取扱いに係るQ&A(平成30年3月)(最高裁判所事務総局経理局監査課)

* 以下の記事も参照してください。
① 司法修習開始前に送付される資料
② 司法修習生の採用選考の必要書類

72期司法修習予定者の実務修習地を決定する際に作成した文書

1(1) 令和元年8月23日付の答申書によれば,「72期司法修習予定者の実務修習地を決定する際に作成した文書」は「第72期司法修習生採用選考申込者の実務修習地,組,出席番号及び修習班について(平成30年10月17日決裁)」(答申書がいうところの「本件開示文書」(=「本件名簿」及び「決裁票」))だけです。
(2) 答申書がいうところの本件各開示申出文書は以下のとおりです。
① 72期司法修習予定者の実務修習地を決定する際に作成した文書(72期司法修習予定者から提出された文書は除く。)
② 72期司法修習予定者の実務修習地の決定に関与した職員の氏名が分かる文書

2 令和元年8月23日付の答申書には以下の記載があります。
   苦情申出人は,本件各開示文書以外にも,例えば,①実務修習地決定のための会議を開催した際の資料,②組の数を決めた上で,京都修習と大津修習を一緒にしたり,神戸修習と奈良修習を一緒にしたりすることを決定した際の文書,③どの司法修習生をどの実務修習地に配属するかを検討した際に作成した文書等,本件各開示申出文書に該当する文書が存在する旨を主張する。
   まず,別紙1記載1の開示の申出に係る文書は,その申出の内容に照らせば,第72期司法修習について, 司法修習予定者ごとの実務修習地を決定する際に作成した文書であると解されるから,その対象文書として,最高裁判所が本件名簿を特定したことは妥当である。この点について, 当委員会庶務を通じて確認した結果によれば,苦情申出人が主張する上記②の文書は, 司法修習予定者ごとの実務修習地を決定する際に作成されるものではないと認められるから,対象文書には該当しないといえる。
   次に,最高裁判所事務総長の上記説明によれば,司法修習採用選考申込者ごとの実務修習地を決定するに当たっては,実務修習希望地調査書に記載された希望修習地及びその順位,各人の健康状態,家族状況等の諸般の事情を考慮して検討・調整を行い,本件名簿を作成して決定しており,その際の個々の検討・調整については,順次変更が重ねられていく流動的なものにすぎないから,個別に文書を作成する必要はないとのことである。司法修習採用選考申込者ごとの実務修習地がこのような検討・調整を経て決定されることを踏まえて検討すれば,本件名簿以外の文書は作成又は取得していないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。したがって,苦情申出人が主張する上記③の文書を最高裁判所が保有しているとは認められない。
   また,最高裁判所事務総長の上記説明によれば, 司法修習採用選考申込者の実務修習地を決定し,本件名簿を作成する段階で会議は開催していないとのことであり,実務修習地の決定に際して必ず会議が開催されているという事情はうかがえないことからすれば, このような説明の内容が不合理とはいえない。
   したがって,苦情申出人が主張する上記①の文書を最高裁判所が保有しているとは認められない。
   そのほか,最高裁判所において,本件各開示文書以外に本件各開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせるような事情は認められない。

「第72期司法修習生採用選考申込者の実務修習地,組,出席番号及び修習班について」と題する決裁票(平成30年10月17日決裁)

 

司法修習生の採用選考の必要書類

目次
第1 総論
第2 提出書類の一覧
1 最高裁判所事務総局人事局任用課試験係に提出する書類(書留・速達)
2 司法研修所企画第二課調査係に提出する書類(簡易書留)
3 司法研修所(いずみ寮)総務課寮務係に提出する書類(簡易書留)(入寮希望者だけ)
第3 追完できない書類及び追完可能な書類
第4 書類の記載方法等
第5 司法試験合格証書
第6 民間企業が採用選考する時に配慮すべきとされている事項,及び犯罪経歴証明書における取扱い
第7 二回試験不合格者が再採用してもらう際の手続
第8 54期の司法修習生採用選考当時の提出書類
第9 関連記事

第1   総論
1 本ブログの記載は参考程度にとどめた上で,必ず裁判所HPで提出書類の書き方等を確認して下さい。
2 司法修習生の採用選考の必要書類は例年,以下のとおりでありますところ,コピーを提出してもいいのは司法試験合格証書だけです。

73期提出書類一覧表(最高裁提出分)

第2 提出書類の一覧
1 最高裁判所事務総局人事局任用課試験係に提出する書類(書留・速達)
① 司法修習生採用選考申込書(署名・押印・写真貼付)
② 司法試験合格証書のコピー(当年度合格者は提出不要)
③ 戸籍抄(謄)本又は住民票の写し
→ 住民票の写しを提出する場合,本籍地及び戸籍筆頭者の記載がされており,マイナンバーが記載されていないものが必要です。
(④ 欠番)
→ 73期司法修習生から,登記されていないことの証明書を提出する必要がなくなりました。
⑤ 学校の成績証明書(追完可能)
⑥ 学校の卒業(退学)年月を証する書面(追完可能)
→ 学校の成績証明書に卒業(修了)年月日の記載がある場合,提出不要。
⑦ 退職証明書(該当者だけ)(追完可能)
⑧ 資格の登録抹消証明書等(該当者だけ)(追完可能)
⑨ 健康診断票
→ 送付期限前3ヶ月以内に実施したものであれば足りますから,司法試験合格発表前に健康診断を受けることができます。

73期司法修習生採用選考申込書の記載例

2 司法研修所企画第二課調査係に提出する書類(簡易書留)
⑩ 実務修習希望地調査書
⑪ 身上報告書2部・カラー写真5枚
→ カラー写真(縦4cm,横3cm)5枚のうち,2枚は身上報告書に貼付し,残り3枚は写真用封筒に入れて送付します。

73期実務修習希望地調査書

73期身上報告書

3 司法研修所(いずみ寮)総務課寮務係に提出する書類(簡易書留)(入寮希望者だけ)
⑫ 入寮許可願
⑬ 84円相当の切手を貼付した返信用封筒(消費税・軽減税率情報Cafe「消費税10%増税で郵便料金も値上げ、はがき63円、手紙84円に」(2019年4月4日付)参照)
→ 令和元年9月30日までは消費税は8%でしたから,72期司法修習までは82円相当の切手を貼付していました。

73期導入修習の入寮許可願

第3 追完できない書類及び追完可能な書類
1 追完できない書類
   追完できない書類のうち,取得に時間がかかる書類は,⑨健康診断票です。
   ただし,健康診断において要再検査の項目がある場合,再検査の項目については,9月末日頃までに再検査等結果報告書を提出すれば足ります。
2 追完可能な書類
(1) 「司法修習生採用選考審査基準」(令和元年7月3日付)からすれば,⑤学校の成績証明書,⑥学校の卒業(退学)年月を証する書面,⑦退職証明書及び⑧資格の登録抹消証明書等は,司法修習生の採用選考における審査基準と直接の関係がないから,追完可能な書類となっているのかもしれません。
(2) 外部HPの「退職」に,退職証明書の追完日に関してブログ主が最高裁の担当者に問い合わせたときの体験談が書いてあります(リンク先のブログでは「法務省」と書いてありますが,「最高裁」の誤記と思います。)。

第4 書類の記載方法等
1 一晩待って作成した方がいいこと
   司法修習生採用選考申込書,実務修習希望地調査書,身上報告書及び入寮許可願については,最初は下書きを作成しながら推敲し,記入事項を完全に確定した後,一晩待って考えに変更がないかどうかを確認した上で,改めて一から書類を作成した方がいいと思います。
2 誤記等の訂正はしない方がいいこと
   二重線で誤記等の訂正をした場合,書類が汚くなります。
   そして,身上報告書は,司法研修所及び実務修習地の修習指導関係者など,多くの人の目に触れる書類です「司法修習生の身上報告書等の取扱いについて(平成28年11月9日付の司法研修所事務局長事務連絡)参照)から,少なくとも身上報告書については訂正のないものを提出した方がいいと思います。
3 写真撮影プラン
   東京都豊島区池袋にあるフォトスタジオアペックスHP「司法修習生用写真/写真名刺」に,合格時の書類提出用の,写真撮影のみのプランが載っています。

第5 司法試験合格証書
1 司法試験合格者が合格直後に司法修習生となる場合(例えば,令和元年度司法試験合格者が73期司法修習生となる場合),司法試験合格証書のコピーを提出する必要はありません。
   ただし,司法試験合格証書を受領するためには,6か月以内に作成された戸籍抄本又は本籍若しくは国籍の記載のある住民票等を用意して,合格した年の9月中に受領手続をしておく必要があります。
2 法務省HPの「平成28年司法試験の結果について」に載ってある「平成28年司法試験合格証書の交付について」を見れば司法試験合格証書の受領手続が分かります。
   毎年,同趣旨の説明文が法務省HPに載ってあります。

第6 民間企業が採用選考する時に配慮すべきとされている事項,及び犯罪経歴証明書における取扱い
1 民間企業が採用選考する時に配慮すべきとされている事項
 厚生労働省HPの「公正な採用選考の基本」には以下の記載があります。
(3)採用選考時に配慮すべき事項
 次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握することや、cを実施することは、就職差別につながるおそれがあります。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
(2) 大阪市HPに「職業安定法(抄)、労働省指針(抄)」が載っています。

2 犯罪経歴証明書における取扱い
(1)   犯罪経歴証明書発給要綱(平成31年3月29日警察庁刑事局長通達)によれば,以下の①ないし⑦のいずれかの場合に該当すれば,当該①ないし⑦に規定する犯罪については犯罪経歴を有しないものとみなしてもらえます。
① 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過しているとき。
② 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられられないで10年を経過しているとき。
③ 罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過しているとき。
④ 恩赦法の規定により大赦若しくは特赦を受け,又は復権を得たとき。
⑤ 道路交通法125条1項に規定する反則行為に該当する行為を行った場合であって、同条第2項各号のいずれにも該当しないとき。
⑥ 少年法60条の規定により刑の言渡しを受けなかったものとみなされたとき。
⑦ 刑の言渡しを受けた後に当該刑が廃止されたとき。
(2) 恩赦を受けた場合,犯罪経歴証明書発給申請書(別記様式第1号)の注記欄にあるとおり,同申請書と一緒に,特赦状,復権状等を提出する必要があります。
(3) 日弁連の,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言(平成28年10月7日付)には,「刑罰を受けることにより、一定の資格制限があり、刑を終えて(仮釈放を得て)社会に戻る人に、社会復帰の障害となるような資格制限が多く設けられていることは、今や時代錯誤である。」と書いてあります。
(4) 「恩赦の効果」も参照して下さい。

第7 二回試験不合格者が再採用してもらう際の手続
1 かつて司法修習生であった者が,考試を再度受験するために司法修習生に再採用されることを希望する場合,司法研修所を経由して最高裁判所に採用選考の申し込みを行う必要があります(「司法修習生採用選考申込み(考試再受験希望者)について」参照)。
2(1) 70期二回試験不合格者の場合,平成30年8月24日(金)から9月7日(金)までの間に,通常の採用選考申込書類及び受験歴申告書を提出する必要がありました(消印有効)。
(2) 71期二回試験不合格者の場合,令和元年8月23日(金)から9月6日(金)までの間に,通常の採用選考申込書類及び受験歴申告書を提出する必要がありました(消印有効)。

第8 54期の司法修習生採用選考当時の提出書類
1 平成12年度採用の54期当時の司法修習生採用選考のための提出書類が,1999年度の司法試験合格者「さく」のHP「知られざる合格後」に載っています。
2   平成11年度司法試験の場合,平成11年10月29日に最終合格発表があり(日弁連HPの「平成11年度司法試験最終合格者発表に関する会長声明」参照),司法研修所への入所が平成12年4月1日頃でしたから,司法試験合格から司法研修所入所までに5ヶ月余りありました。

第9 関連記事
   以下の記事も参照してください。
① 司法修習生の採用選考に関する公式文書
② 司法修習生の採用選考に必要な書類の掲載時期
③ 司法修習生の修習事務に関する内部文書
④ 採用内定留保者に対する面接(司法修習)

司法修習生の採用選考に必要な書類の掲載時期

1  71期司法修習生の場合
(1)   裁判所HPの「司法修習生採用選考」(リンク切れ)に,平成29年7月3日(月),平成29年度司法修習生採用選考要項及び健康診断票の書式等が掲載され,平成29年8月1日(火),司法修習生採用選考に必要な書類が一通り掲載されました。
(2) 平成29年7月3日時点と同年8月1日時点とでは,「司法修習生採用選考」のアドレスが少し変わっています(「saiyo_senkou_29」が「saiyo_senkou_29-2」になっています。)。

2 72期司法修習生の場合
(1)   裁判所HPの「司法修習生採用選考」(リンク切れ)に,平成30年7月2日(月),平成30年度司法修習生採用選考要項及び健康診断票の書式等が掲載され,平成30年8月1日(月),司法修習生採用選考に必要な書類が一通り掲載されました。
(2) 平成30年7月2日時点と同年8月1日時点とでは,「司法修習生採用選考」のアドレスが少し変わっています(「saiyo_senkou_30」が「saiyo_senkou_303」になっています。)。

3 73期司法修習生の場合

(1)   裁判所HPの「司法修習生採用選考」(リンク切れ)に,平成31年7月5日(金),令和元年度司法修習生採用選考要項及び健康診断票の書式等が掲載され,令和元年8月1日,司法修習生採用選考に必要な書類が一通り掲載されました。
(2)   令和元年7月5日時点と同年8月1日時点とでは,「司法修習生採用選考」のアドレスが少し変わっています(「saiyo_senkou_01」が「saiyo_senkou_012」になっています。)。

採用内定留保者に対する面接(司法修習)

1 司法修習生採用選考要項の記載等
(1) 72期司法修習生の場合
ア 平成30年7月18日付の,平成30年度司法修習生採用選考要項の2(1)には,「ウ 面接  ア,イの結果,必要があると認めた場合に実施する。」と書いてありますし,司法修習生採用選考申込書(「72期司法修習の提出書類の記載例等」参照)には「13 不採用事由等の有無」欄があります。
イ   健康診断の結果が非常に悪かったり,重大な既往歴があったり,重大な身体上の障害があったりした場合,「心身の故障により修習をすることが困難である者」に該当する可能性があります。
   過去に起訴(略式起訴を含む。)又は逮捕(補導)されたことがある場合,「品位を辱める行状により,司法修習生たるに適しない者」に該当する可能性があります。
   そのため,これらの事情がある場合,最高裁判所又は司法研修所において面接の必要があるということで採用内定を留保されて,面接通知書が届くかもしれません。
ウ 逮捕歴等については,司法修習生採用選考申込書の「14 備考」欄に詳しく記載する必要があります(「平成30年度司法修習生採用選考申込書の記載要領」9頁参照)。
エ 「心身の故障により修習をすることが困難である者」又は「品位を辱める行状により,司法修習生たるに適しない者」以外の事由については形式的事由のため,書面で一義的に判断できるものばかりです。
   そのため,これら以外の事由に基づいて面接通知書が届くことはないと思います(「平成30年度司法修習生採用選考申込書の記載要領」8頁及び9頁参照)。
(2) 73期以降の司法修習生の場合
   特に変更はないと思います。

2 不採用者が出た修習期等
(1) 66期以降の場合,採用要審議者名簿又は重点審議者名簿に搭載された司法修習予定者は毎年いたものの,前述したとおり不採用者が出たのは66期,70期及び72期だけみたいです(「司法修習生の採用選考で不合格となった人が出た修習期等」参照)。
   そのため,面接通知書が届いたとしても,結論ありきの面接ではないのであって,罰金前科等については当時の行いについて真摯に反省していることを面接で説明し,健康不良については家族のサポート等により問題なく修習をすることができることを面接で説明すれば,無事に採用してもらえる可能性の方が高いと思います。
(2) 弁護士法人アディーレ法律事務所(同法人に対する平成29年10月11日の業務停止2月につき「弁護士の懲戒」を参照してください。)の代表社員であった石丸幸人弁護士(56期)の場合,酒気帯び運転で3回逮捕され,懲役9月執行猶予4年の有罪判決を受けて勤務先を懲戒解雇されています(Wikipediaの「石丸幸人」参照)が,普通に司法修習を経て弁護士となっています。
(3) 71期司法修習予定者の場合,平成29年11月9日付の「実務修習地等について(通知)」を送付された人がいます。
   そのため,採用内定留保者になったことが直ちに不採用を意味するわけではないみたいです。
(4) 平成30年7月20日付の答申書によれば,第71期司法修習生の採用選考申込において不合格となった人の数が明らかになった場合,不採用者が特定される可能性や不採用となった理由が特定される可能性があることから,個人識別情報として不開示情報となるとのことです。

3 司法修習生採用選考面接等
(1)   採用面接に関する以下の文書を掲載しています。
① 第71期司法修習生採用選考面接について
② 第72期司法修習生採用選考面接について
(2) 採用面接の実施場所については,「最高裁判所庁舎」を参照してください。
(3) 国土交通省HPの「霞が関の主要施設」の中に「最高裁判所庁舎」が載っています。
(4) 河原崎法律事務所HP「前科があっても弁護士になれますか」には以下の記載があります。
   刑法27条で、執行猶予期間を経過すれば、刑の言渡しの効力はなくなり、欠格事由はなくなります。 まず、司法修習生に採用される時期に、無事、執行猶予期間が経過して、欠格事由がなくなっている必要があります。このときは、厳重に注意を受けるでしょう。罰金刑の場合でも、厳重に注意されます。


4 弁護士登録の場合の取扱い
(1) 東京弁護士会入会手続案内(70期司法修習終了予定 弁護士名簿登録希望者各位)には,「履歴書に罰(刑事処分・保護観察処分、公務員としての懲戒処分、注意処分等)のある方は、上申書(日本弁護士連合会会長宛1部、東京弁護士会会長宛1部)の提出が必要になります。罰の事実の内容及び情状等参考になる事情を記載してください。」と書いてあります。
(2) ちなみに,日弁連の,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言(平成28年10月7日付)には,「刑罰を受けることにより、一定の資格制限があり、刑を終えて(仮釈放を得て)社会に戻る人に、社会復帰の障害となるような資格制限が多く設けられていることは、今や時代錯誤である。」と書いてあります。

5 犯罪経歴証明書における取扱い
(1)   犯罪経歴証明書発給要綱(平成31年3月29日警察庁刑事局長通達)によれば,以下の①ないし⑦のいずれかの場合に該当すれば,当該①ないし⑦に規定する犯罪については犯罪経歴を有しないものとみなしてもらえます。
① 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過しているとき。
② 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられられないで10年を経過しているとき。
③ 罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過しているとき。
④ 恩赦法の規定により大赦若しくは特赦を受け,又は復権を得たとき。
⑤ 道路交通法125条1項に規定する反則行為に該当する行為を行った場合であって、同条第2項各号のいずれにも該当しないとき。
⑥ 少年法60条の規定により刑の言渡しを受けなかったものとみなされたとき。
⑦ 刑の言渡しを受けた後に当該刑が廃止されたとき。
(2) 恩赦を受けた場合,犯罪経歴証明書発給申請書(別記様式第1号)の注記欄にあるとおり,同申請書と一緒に,特赦状,復権状等を提出する必要があります。
(3) 「恩赦の効果」も参照して下さい。

6 関連記事
   以下の記事も参照してください。
① 司法修習生の採用選考の必要書類
② 司法修習生の採用選考で不合格となった人が出た修習期等
③ 
交通事故等の刑事責任及び資格制限その他の不利益
④ 事件記録等保存規程
⑤ 交通事故事件の刑事記録の入手方法

司法修習生の採用選考で不合格となった人が出た修習期等

1 司法修習生の採用選考申込みで不合格となった人に関する文書
(1) 以下の文書を掲載しています。
① 平成29年6月23日付の司法行政文書不開示通知書
→ 59期から新61期まで,新62期,新63期から新65期まで,67期から69期までについて,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人の数が修習期ごとに分かる文書は存在しません。
② 現行62期,現行63期及び66期採用時の最高裁判所裁判官会議議事録
→ これらの期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人がいたとのことです。
③ 70期採用時の最高裁判所裁判官会議議事録
→ 70期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人がいたとのことです。
④ 71期採用時の最高裁判所裁判官会議議事録
→ 71期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人がいたとのことです。
⑤ 平成31年1月23日付の司法行政不開示通知書
→ 72期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人の数が分かる文書は存在しません。
(2) ①ないし⑤の文書からすれば,59期以降について,司法修習生の採用選考で不合格となった人が出た修習期は現行62期,現行63期,66期,70期及び71期だけであると思われます。

2 司法修習生の採用選考手続に関して存在しない文書
(1) 平成29年6月19日付の司法行政文書不開示通知書によれば,以下の文書は存在しません。
① 精密検査が必要と判定された結果,最高裁判所での健康診断を実施した人の数が分かる文書
② 採用選考申込者のうち,修習に耐えられる健康状態ではないという理由で不採用になった人の数が分かる文書
③ 採用申込みに当たって虚偽の申告をしたという理由で採用内定が取り消された人の数が分かる文書
(2) 平成30年11月13日付の理由説明書によれば,71期司法修習生採用選考手続において,最高裁判所での健康診断は実施されませんでした。

3 地裁で罰金刑を受けて控訴中であったことに基づく不採用事例等
(1) 昭和30年6月3日に発生した,滝川幸辰京大総長に対する暴行事件(「第二次滝川事件」といわれることがあります。)で起訴された人は事件発生当時,京大法学部生でしたところ,昭和35年度司法試験に合格しました。
   しかし,その人は,京都地裁昭和33年4月16日判決(判例秘書に掲載されています。)により傷害罪では無罪となったものの,不退去罪で罰金2000円に処せられたため,控訴中の被告人であったことを理由に,昭和36年4月採用の15期司法修習生にはなれませんでした。
   その後,大阪高裁昭和37年10月17日判決(判例秘書に掲載されています。)により不退去罪でも無罪となりましたから,昭和38年4月採用の17期司法修習生になりました。
(2) 32期の伊藤茂昭弁護士(平成27年度東京弁護士会会長)が発行している白い雲2018年初夏号(Vol.65)には,学生運動の激しかった当時の司法試験合格者の中には,合格した年に司法修習生になれなかった人が何人かいたという趣旨の記載があります。

4 以下の記事も参照してください。
① 司法修習生の採用選考の必要書類
② 採用内定留保者に対する面接(司法修習)
③ 司法修習生の採用に関する最高裁判所の裁判官会議議事録の本文

司法修習生の身上報告書等の取扱い

司法修習生の身上報告書等の取扱いについて(平成28年11月9日付の司法研修所事務局長事務連絡)の本文は以下のとおりです。

1 身上報告書の取扱いについて 
   身上報告書に記載された司法修習生の個人情報は,各配属庁会の司法修習における司法修習生の指導,監督及び司法修習に関する各種事務手続に使用する目的で提出させているものであり,その情報の管理,使用に当たっては,上記の目的及び法の趣旨を踏まえた上で,外部との関係はもとより,司法修習生に対する関係でも慎重に取り扱ってください(各配属庁会において独自に司法修習生から提出させた書面についても同様。)。
2 弁護士会における司法修習生の個人情報(身上報告書を含む。)の提供について
(1) 司法修習生本人の同意が不要な場合
ア 司法研修所に対して,司法修習生の個人情報を提供するとき。
イ 弁護士会が選任した司法修習委員会を構成する弁護士及び個別指導担当弁護士に対して,司法修習生の個人情報を提供するとき。
(2) 司法修習生本人の同意が必要な場合
   選択型実務修習において,裁判所,検察庁及び弁護士会以外の修習先に対して,司法修習生の個人情報を提供するとき。

なお,提供する情報は,修習内容や修習先の事情等を踏まえ,氏名,性別にとどめるなど,必要最小限のものとしてください。

〇70期旭川修習の配置換えに際しては,配置換えされた3人の司法修習生の身上報告書が変更後の実務修習地に送付されました(①70期旭川修習の配置換えに関する旭川地裁の開示文書,及び②70期旭川修習の配置換えに関する最高裁判所の開示文書参照)。

73期身上報告書

法科大学院在学中の司法試験合格者,及び判事補任官の最年少記録等

1 法科大学院在学中の司法試験合格者
(1) 平成28年9月26日の第76回法科大学院特別委員会の配付資料2-9「平成28年司法試験最終学歴(出願時)別合格者一覧(予備合格者)」によれば,法科大学院2年在学中に予備試験に合格した人が76人(うち,東京大法科大学院が42人,京都大法科大学院が12人,慶応義塾大法科大学院が9人,中央大法科大学院及び一橋大法科大学院が4人)となっています。
法科大学院2年在学中に予備試験に合格した場合,法科大学院を中退していない限り,法科大学院3年在学中に司法試験を受けることとなりますから,このような人が,法科大学院在学中に司法試験に合格した人に該当すると思われます。
(2) 東京大法科大学院の入学者,在籍者,修了者及び司法試験合格者については,東京大学法科大学院HPの「法科大学院概要」にある「東京大学法学政治学研究科法曹養成専攻概要 別紙」に書いてあります。

2 判事補任官の最年少記録等
(1)  同資料2-9によれば,大学2年在学中に予備試験に合格した人が4人,大学3年在学中に予備試験に合格した人が16人,大学4年在学中に予備試験に合格した人が49人います。
(2) 満22歳で任官した点で判事補任官の最年少記録を達成した,平成6年3月3日生まれの69期の樋口瑠惟(ひぐちるい)判事補は3年生で予備試験に合格し,4年生で司法試験に合格し,司法修習生との兼職許可を得て4年生の11月に司法修習生となり,平成28年3月に東大法学部を卒業したと思います(東大法学部の卓越受賞者であり,卒業式で学位記を授与されたことにつき,東大法学部HPの「2015年度 東京大学法学部 学位記伝達式が実施されました。」参照)。
同人は3月3日生まれのため,同人の最年少記録を破るためには3月4日以降の生まれでないと無理ですが,大学3年生までに予備試験に合格する人が20人もいる現状からすれば,同人の最年少記録を破る人が出てくるかも知れません。

登記されていないことの証明書

0(1) 成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年6月14日法律第37 号)(略称は「成年後見制度適正化法」です。)が公布日に施行されたことに伴い,成年被後見人等であることが司法修習生採用の欠格事由から外れました。
   そのため,73期以降の司法修習生となる場合,「登記されていないことの証明書」を提出する必要がなくなりました。
(2) 例えば,令和元年度司法修習生採用選考要項(令和元年7月3日付)では,司法修習生の採用選考における提出書類として,「登記されていないことの証明書」は含まれていません。
(3) 「司法修習生の採用選考に関する公式文書」も参照してください。

1(1) 登記されていないことの証明書(後見登記等に関する法律4条1項・後見登記等に関する省令17条2項3号)の発行手続は,東京法務局後見登録課,全国の法務局・地方法務局(本局)の戸籍課の窓口で行っています。
登記されていないことの証明書を取得するためには,直接,法務局の担当窓口に行くか,東京法務局後見登録課宛に郵送で申請する必要があります。
(2)   東京法務局の場合,「〔処理期間〕申請書を受領してから発送するまで2~3日,したがいまして,申請書を郵送されてから証明書がお手元に届くまで約1週間~10日程度となっております。」(東京法務局HPの「登記されていないことの証明書の申請方法」参照)とのことです。
そのため,1週間以内に確実に取得するためには,全国の法務局・地方法務局(本局)の戸籍課の窓口に行って取得する必要があります。

2 大阪法務局本局の場合,2階の後見登記証明書発行窓口が担当しています(案内図につき大阪法務局HPの「大阪法務局(本局)」参照)。
また,窓口取扱時間は午前8時30分から午後5時15分までですし,土日祝日は業務を行っていません(大阪法務局HPの「窓口取扱時間等のご案内」参照)。

3 登記されていないことの証明書を窓口で取得する場合,運転免許証,健康保険証,パスポート等の,住所,氏名及び生年月日が分かる書類を提示する必要があります。

4(1) 「登記されていないことの証明申請書」には300円の収入印紙を貼付する必要があります。
(2)   「証明を受ける方」欄については,住所又は本籍のいずれかを申請書に記載すればいいです(後見登記等に関する省令17条2項4号「証明の対象となる者の氏名、出生の年月日及び住所又は本籍」参照)。
(3) 法務局HPの「登記されていないことの証明申請書」に,記載例が載っています。

5(1) 「登記されていないことの証明書」は,自筆した申請書の一部をスキャナーか何かでそのまま取り込んで,その取り込んだ部分を活用して作成されます。
(2) 行政書士こばやし事務所HPの「登記されていないことの証明書の申請」に,証明書を取得した際の体験談が載っています。

6(1) 「登記されていないことの証明書」は,弁護士登録をする際にも必要となります(弁護士法7条4号)。
(2) 弁護士登録に必要な書類については,第二東京弁護士会HPの「入会について」が参考になりますところ,そこでは,「後見登記等ファイルに登記されていないことの証明書」と書いてあります。
(3) 「弁護士登録制度」も参照して下さい。

外国人技能実習生と司法修習生との比較

1 外国人技能実習生の場合
(1) 外国人技能実習生は,入国直後の原則2か月間の講習期間が過ぎると,雇用関係の下,労働関係法令等が適用されます(外国人技能実習機構HPの「技能実習制度の仕組み(新制度の内容を含む。)」参照)から,賃金があります。
(2) 男女雇用機会均等法の適用もありますから,妊娠した場合でも解雇されることはありません。
(3) 公益財団法人国際研修協力機構(略称は「JITCO」です。)HPの「研修生・技能実習生の講習手当・研修手当・賃金情報について」によれば,平成21年度の調査では,技能実習生の全業種平均給与額は14.3万円でした。
(4) 平成29年11月1日施行の,外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(略称は「技能実習法」です。)により,技能実習制度の適正化及び技能実習制度の拡充がなされました(厚生労働省HPの「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の概要」参照)。
また,認可法人としての外国人技能実習機構(略称は「OTIT」です。)が,平成29年1月25日に設立登記され,同年3月1日,東京都港区に事務所を開設しました。
(5) 外国人技能実習生の労務管理については,公益財団法人国際研修協力機構HPの「外国人技能実習生労務管理ハンドブック」が詳しいです。

2 司法修習生の場合
(1)   司法修習生は,1年の修習期間中,労働者ではない点で労働関係法令等が適用されませんから,賃金はありません。
(2)   妊娠した場合,導入修習,集合修習といったそれぞれの修習単位について半分までの欠席しか認められていません(民間労働者の場合,産後6週間の女性の就業が禁止されていることにつき労働基準法65条2項ただし書参照)。
そのため,いったん罷免された上で,次年度の司法修習生として再採用される必要があります。
(3) 65期ないし70期の司法修習生は無給ですし,71期以降の司法修習生の修習給付金は13万5000円です。
(4) 平成29年11月1日施行の改正裁判所法68条1項は,最高裁判所は,司法修習生に成績不良,心身の故障その他のその修習を継続することが困難である事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは,最高裁判所の定めるところにより,その司法修習生を罷免できることが明記しました。
また,同法68条2項は,司法修習生に品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由として最高裁判所の定める事由があるときは,最高裁判所の定めるところにより,その司法修習生を罷免し,その修習の停止を命じ,又は戒告できることを明記しました。

3 アジア諸国の外国人労働者受入れ制度の概要
(1) 首相官邸HPの「アジア諸国の外国人労働者受入れ制度の概要」にあるとおりです。
(2) リンク先3頁には,以下の記載がありますから,平成29年司法試験論文式試験(公法系)第1問で出てきた「特定労務外国人」に近いです。
   シンガポールでは、外国人の家事労働者や介護労働者等に対する人権侵害や暴力などが深刻な社会問題となっており、外国人家事労働者の自殺者も多いと言われている。また、妊娠検査を義務づけ、妊娠した労働者の強制退去、シンガポール人との結婚を認めないなど、制度自体も人権上問題が多いとの批判が強い。

業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較

1 民間労働者の場合
(1)   「過労自殺の労災認定」を参照して下さい。
   労基署による過労自殺の労災認定は1億円前後の損害賠償責任の発生と直結している気がします。
(2)ア 全国健康保険協会の平成27年度現金給付受給者状況調査報告の「第一部 傷病手当金」には,「精神及び行動の障害は、平成7年は4.45%であったが、平成15年には10.14%と10%を超え,平成27年には27.51%と大幅に増加している。」と書いてあります。
イ 平成22年度以降のバックナンバーが全国健康保険協会(協会けんぽ)HPの「現金給付受給者状況調査」に掲載されています。
   現金給付受給者状況調査(平成28年度)は平成29年7月8日に掲載されました。
(3)ア 厚生労働省HPの「医療計画」に掲載されている「医療計画について」(平成24年3月30日付の厚生労働省医政局長通知)により,平成25年度から実施されている第6次医療計画において,精神疾患が既存の4疾病に追加されることとなりました。
イ 5疾病とは,がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病及び精神疾患のことです(医療法施行規則30条の28)(厚生労働省HPの「5疾病・5事業について」(平成28年10月7日付))。

2 司法修習生の場合
(1) 国家公務員災害補償の対象となる可能性があること等
ア 司法修習生には国家公務員災害補償法の適用があります(裁判所HPの「修習資金貸与FAQ~その他 貸与制に関連する事項~」)。
   そのため,司法修習が原因で心の病を発症したと最高裁判所事務総長(国家公務員災害補償法3条の実施機関です。)に認定してもらえた場合,裁判官及び裁判所職員の場合と同様に,同法に基づく補償(人事院HPの「国家公務員災害補償制度の仕組み」参照)があると思います。
イ 司法修習生に対する不合理な罷免は退職の強要に該当する可能性がありますところ,退職の強要は,労災認定の対象となる精神障害の発症原因です「過労自殺の労災認定」参照)。
(2) 公務災害の認定してくれなかった場合の不服申立方法等
ア   公務災害の認定に関する最高裁判所事務総長の措置に不服がある場合,最高裁判所に対して審査の申立てをすることができます。
   この場合,最高裁判所は,災害補償審査委員会の審理に付し,同委員会が作成した調書に基づき,審査の申立てを棄却するかどうかを判定します(人事院規則13-3(災害補償の実施に関する審査の申立て等)参照)。
イ ①平成15年3月3日に自殺した大阪高裁の裁判官の場合,公務災害が認められていませんし(外部HPの「「ある裁判官の自殺」に思う」参照),②42期の花村良一民事裁判上席教官は,平成28年9月29日に死亡しましたところ,死亡した月の出勤状況が分かる文書は存在しないことになっています平成28年11月4日付の司法行政文書不開示通知書平成28年12月2日付の最高裁判所事務総長の理由説明書及び平成28年度(最情)答申第42号(平成29年1月26日答申)参照)から,最高裁判所事務総長による認定はあまり期待できないかも知れません。
(3) 過失相殺なしの損害賠償責任と直結しているかもしれないこと
   精神障害の場合,業務災害の認定は安全配慮義務違反の認定,ひいては過失相殺なしの損害賠償責任に直結しています。
   そのため,裁判所職員の場合も同様に,公務災害の認定は裁判所の安全配慮義務違反の認定,ひいては過失相殺なしの損害賠償責任と直結しているかもしれません(明確な裁判例は確認できていません。)。
(4) 損害賠償請求訴訟に関する審理の経過及び予定は逐次,最高裁判所事務総局に報告されること
ア   仮に司法研修所の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟を提起した場合,「裁判所職員の事件処理上の違法行為を理由とする国家賠償請求事件及び告知事件の報告について」(平成16年7月1日付の最高裁判所民事局長,刑事局長,行政局長及び家庭局長通達)に基づき,審理の経過及び予定が逐次,最高裁判所事務総局に報告されます。
イ 最高裁昭和36年9月26日決定は以下の判示をしています。
   所論は、原審訴訟記録の表紙に、「報告事件」と朱書されていることは、憲法七六条三項、三二条、三一条に違反すると主張するが、かかることは下級審裁判官に対し何ら審理上の圧力を加えるものではないから、所論違憲の主張は結局すべて前提を欠くことに帰し、採用できない。(なお、右朱書がなされるに至つたのは、昭和三六年一月二三日附最高裁判所事務総長通達により、「刑事事件の事件報告に関する通達」が改正されたことに基くのであつて、司法行政事務処理上の参考資料を得るために外ならず、裁判に対し何等の圧力を加えるものでない。)
(5) 裁判所の責任者
   裁判所職員健康安全管理規程2条及び別表第一によれば,最高裁判所における健康安全管理総括者は事務総局人事局長(保健に係るもの)及び事務総局経理局長(安全保持に係るもの)であり,同規程3条及び別表第二によれば,司法研修所における健康管理者は司法研修所事務局総務課長であり,安全管理者は司法研修所事務局経理課長です。
(6) 公務災害の認定がされた場合の影響
   司法修習生の心の病に関して公務災害が認定された場合,過失相殺なしの損害賠償責任に直結し,最高裁判所事務総局人事局長等の責任問題に発展するかも知れませんが,他の司法修習生に特に不利益が発生することはないと思います。
(7) 自殺等の状況
ア 平成17年7月6日,鳥取地裁配属の59期司法修習生がマンションの13階から飛び降り自殺しました(2ちゃんねるの「【社会】27歳司法修習生,13階から飛び降り自殺・鳥取」参照)。
   そのため,司法修習生が心の病を発症する可能性は否定できません。
イ ハンドルネームが「黒猫」となっている55期の男性弁護士の場合,司法修習生の時代にうつ病を発症し,1年間,修習を休んだそうです(外部HPの「自分の昔のこと,その他いろいろ」参照)。
ウ 平成18年12月11日,大阪地検総務部の指導係検事が割腹自殺の未遂事件を起こしました(外部ブログの「大阪地検の検事が割腹自殺未遂?修習生の指導担当」参照)。
エ イソ弁が労働者に該当する場合(東弁リブラ平成17年4月号の「私って労働者?」参照),労基署の職権による成立手続及び労災保険料の認定手続を経ることで事後的に労災保険に加入できますから,労基署の過労自殺認定を通じてボス弁に1億円前後の損害賠償責任が発生するかも知れませんし,労災保険の費用徴収制度(労災保険法31条1項参照)に基づき,労災保険の給付に要した費用の100%又は40%を労基署から請求されるかも知れません(厚生労働省リーフレットの「労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度が強化されます」参照)。
   そのため,弁護士法人であれば,無限連帯責任を負う社員弁護士(弁護士法30条の15第1項参照)の破産につながるかも知れません。
オ 「弁護士の自殺者数の推移(平成18年以降)」も参照してください。

3 過労死等の公務災害補償状況
① 平成27年度過労死等の公務災害補償状況について(平成28年7月19日付)
   精神疾患等に関する事案の公務災害補償状況のうち,認定件数は一般行政職が4件,医療職が3件,公安職が1件です。
②   平成28年度過労死等の公務災害補償状況について(平成29年7月13日付)
   精神疾患等に関する事案の公務災害補償状況のうち,認定件数は一般行政職が3件,公安職が1件,医療職が1件です。
③ 平成29年度過労死等の公務災害補償状況について(平成30年7月19日付)
   精神疾患等に関する事案の公務災害補償状況のうち,認定件数は一般行政職が11件,公安職が1件です。

司法修習生の逮捕及び実名報道

1 第58期司法修習生の事例(対象者は同期と一緒に司法修習を終了しました。)
(1) 平成16年12月13日,東京地裁における裁判修習中に女性用トイレに侵入してビデオカメラを設置したということで,平成17年1月5日,第58期司法修習生が建造物侵入罪の容疑で逮捕され,実名報道されました(紀藤正樹弁護士ブログ「なんということでしょう!司法修習生逮捕:東京地裁の女子トイレ侵入,ビデオ設置」参照)。
(2)ア 言いたい放題ブログ「司法修習生のなぞの行動」によれば,平成17年1月26日に釈放されたときの記事は以下のとおりです(氏名及び年齢は伏せました。)。

逮捕の修習生釈放 「アリバイある」と弁護人
東京地検は26日、隠し撮り目的で東京地裁内の女性用トイレ内にビデオカメラを設置したとして建造物侵入の疑いで逮捕された○○○○・司法修習生(○○)を処分保留のまま釈放した。
○○修習生は今月5日、警視庁丸の内署に逮捕された。逮捕前、容疑を認める上申書を出していたが、間もなく否認に転じ「自分はビデオを置いていない」と主張。
26日記者会見した弁護人の伊東真弁護士らは、事件当夜に○○修習生がさいたま市のスーパーで買い物をしたレシートの時刻などから「アリバイがある」と説明。「今は明かせないが、真犯人に結び付く決定的証拠がある」と話した。
東京地検は「捜査を継続する」とした。
(共同通信) – 1月26日20時43分更新

イ 平成17年1月27日の毎日新聞朝刊によれば,当該司法修習生は,釈放後の記者会見において,「捜査官から『微罪処分も可能だ』と言われ,早くこの場を逃れたいという一心で(当初)犯行を認めてしまった。慎重に捜査していればこんなことにはならなかった。」と話しました。
(3)   当該司法修習生は嫌疑不十分ということで起訴されませんでしたが,その時期,46期の近藤裕之裁判官(「法務省出向中の裁判官の不祥事の取扱い」参照)は東京地裁判事でした。

2 第67期司法修習生の事例(対象者は同期と一緒に司法修習を終了しました。)
(1)   平成26年5月13日午後6時半頃,神戸地裁配属の司法修習生が,神戸電鉄の普通電車内で,通路の向かい側に座っていた女性のスカートや足の写真を数枚,撮影したということで,兵庫県迷惑防止条例違反の疑いにより現行犯逮捕され,実名報道されました。
(2) 秋篠宮家の眞子内親王(20歳になった平成23年10月23日に宝冠大綬章を授与されています。)が,純然たる一般人であった小室圭氏と一緒に電車に乗っていたときの写真が無断で撮影され,平成28年10月発売の週刊誌に掲載されました(外部HPの「【結婚速報】眞子様の婚約者小室圭の顔画像?週刊誌でスクープされた男性か?」参照)。
また,今井絵理子参議院議員が,神戸市議会議員の男性と一緒に新幹線で寝ていた時の写真が無断で撮影され,平成29年8月発売の週刊誌に掲載されました(外部HPの「【画像】橋本健市議の妻が『Mr.サンデー』で今井絵理子議員と夫に反論「去年8月に一方的に」「結婚生活破綻していない」」参照)。
週刊誌に写真を掲載するための無断撮影は全く問題とならないのになぜ,司法修習生の無断撮影が現行犯逮捕かつ実名報道の対象となるかは不明です。
(3) 最高裁平成17年11月10日判決の裁判要旨は以下のとおりです。
人はみだりに自己の容ぼう,姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し,ある者の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。
(4) 平成28年7月1日施行の改正兵庫県迷惑防止条例の条文ではありますが,同条例3条の2は,以下のとおりです(兵庫県警察HPの「「改正 兵庫県 迷惑防止条例」が平成28年7月1日から施行されます。」参照)。
通路の向かい側に座っていた女性を撮影したとしても,「人の通常衣服で隠されている身体又は下着」を撮影することはできないと思われますから,これがなぜ兵庫県迷惑防止条例違反に該当したのかはよく分かりません。

 (卑わいな行為等の禁止)
第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為 
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為  
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。

3 71期司法修習生の事例(対象者は同期と一緒に司法修習を終了しました。)
(1)   平成30年9月20日午前2時15分頃,福岡地裁配属(多分)の司法修習生が,酒に酔って叫びながら,駐車場で他人が所有するBMWのフロントワイパー1本を折って壊したということで,器物損壊罪の疑いにより福岡県警中央署に現行犯逮捕され,実名報道されました。
(2) RKB HP「ワイパー損壊か 司法修習生を逮捕」には「○○容疑者は、逮捕直後は「弁護士を呼んで欲しい」などと話し、その後の取り調べでは「酒を飲んでいたので覚えていない」と容疑を否認しています。」と書いてあります。
(3) 平成30年10月18日付で不起訴処分となりました。
(4)ア 平成30年12月20日付の司法行政文書不開示通知書によれば,現行犯逮捕された司法修習生が不起訴処分となったことに関して作成し,又は取得した文書は同年10月24日までに廃棄されました。
イ 平成31年1月23日付の理由説明書には「最高裁判所では,現行犯逮捕された司法修習生が不起訴処分となったことについて,報道機関から照会があり,それに対応するため,本件対象文書(事実関係の問合せへの応答に係る文書)を作成したが,対応終了後は,事務処理上使用することが予定されておらず,保有する必要もない短期保有文書であることから,事務処理上必要な期間が経過したため廃棄した。」と書いてあります。

司法修習生の欠席に関する地裁所長経験者の説明等

30期の山名学司法研修所長(前千葉地裁所長)は,平成26年6月4日の第28回司法修習委員会において以下の発言をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
1 司法研修所の所長としての立場ではなく,前任の千葉地裁の所長をやっていた経験から,裁判所の中での修習生の実情を少し紹介したい。
   学生気分が抜けきらないというのは,飲み会の席で話を聞いている時に感じることはあるが,合議をしたり,起案をしたり,法廷傍聴をしたりといった修習中にそのようなことを感じることはない。
2 就職が気になるという点は,気になっている修習生もいるとは思うが,裁判官室で色々と日常的に議論をしている際に,それが尾を引いて議論が活発にならないといったことはない。
   ただ,弁護士事務所の就職面談のための欠席承認申請というものは時折ある。この日に何故就職面談に行かなければならないのかというような疑問を持つことが裁判所の方からするとあるが,弁護士事務所の指定する日時なので,法廷傍聴の方が大事だから行くなというわけにもいかない。将来がかかっているので,ある程度大目に見て欠席を承認して事務所訪問をさせている。
   大きな目で見ると,就職状況に問題があって少し就職の方に気が行っていることが見えることはあるが,本筋として,修習で手を抜いているといった現象は,裁判所にいる時期には見かけないと理解している。

東弁リブラ2009年2月号「60年安保と三井三池争議の渦中,出会った本に肩を押されて」には以下の記載があります。
   実務修習中の1960 年が,いわゆる60 年安保の年である。修習生たちは毎日裁判所の玄関に集まって裁判所職員の人たちと一緒になってデモや集会に行った。文字通り毎日である。
   東京では裁判官たちがデモに参加している,と聞いたが,福岡の裁判官でデモに行った人はいなかったと思う。その代わり修習生たちが法廷傍聴も判決起案も全部パスしてデモに明け暮れていてもまったくお咎めなしであった。

司法修習生の罷免等に対する不服申立方法

1 公務員に対する懲戒処分が違法となる場合等
(1)ア   公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており,その判断は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法となります最高裁平成24年1月16日判決。なお,先例として,最高裁昭和52年12月20日判決最高裁平成2年1月18日判決参照)。
イ 最高裁昭和32年5月10日判決は,公務員に対する懲戒処分は,特別権力関係に基づく行政監督権の作用であると判示していました。
(2) 公務員に対する懲戒処分を争う方法については,あなたの弁護士HP「懲戒処分に対する取消訴訟の方法|懲戒処分が取消可能な条件と理由」が参考になります。


2 司法修習生の罷免に対する不服申立方法等に関する国会答弁

(1) 5期の大西勝也最高裁判所事務総局人事局長は,昭和56年12月21日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 司法修習生が罷免されました場合の不服申し立て方法といたしましては、まず問題がないと思われますのは、行政事件訴訟法に言っておりますいわゆる抗告訴訟の対象になるということで、訴訟の道があるというふうに解釈できるであろうというふうに思います。
   もう一つの、いま稲葉委員御指摘になりました行政不服審査法による不服の申し立ての関係につきましては、あるいはこれも法律解釈の問題でございまして、違う意見もあるいはあるかもしれませんけれども、一応行政不服審査法のたしか四条にできない場合のことが列挙してございまして、その中には研修所の研修生というようなものも入っておるわけでございます。それはそれといたしましても、修習生はそもそも国家公務員ではないというふうに考えられておりますことからいいましても、ちょっと行政不服審査法による不服の手続に乗っけることはできないのではないかというふうに私どもは考えております。要するに、行政事件訴訟法による訴訟によって救済ができるというふうに考えております。
② 修習生の罷免の問題について、確かにそういう問題(注:最高裁判所は、自分で処分していて、罷免していて、それが上がってくれば、罷免せずという判決をするわけないでしょうという問題)がございますが、これは単に修習生だけの問題ではございませんで、裁判所職員全体につきましての、最高裁判所が任命権を持っております職員に対する懲戒処分の問題でございますとか、その他いろいろ最高裁判所自体が行政上判定をいたしますものに対して訴訟が起こってくる、それの最終審がやはり最高裁判所であるという意味では、同じようなことがほかにもあるわけでございますが、最高裁判所としては、その行政権の主体として一定の行政目的を達成するために処分をいたします場合、それと訴訟が起こってきまして両方の当事者の言い分を聞きまして判決を下す、決定を下すという場合は、つまり別の次元に立って一応考えるということをやっておるつもりでございますし、憲法もそれを予想して両方を最高裁判所に与えておるというふうになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
(2) 34期の林道晴司法研修所事務局長は,平成18年1月24日の司法修習委員会(第10回)において,以下の発言をしています。
① 罷免事由の規定については,司法修習生の身分の得喪にかかわる事項であり,従前から,その適用に当たっては十分に調査をした上で,必要があれば当該司法修習生と面談するなどしてきたし,今後もこの規定の適用に当たっては,同じように事前調査,当該司法修習生からの事情及び意見の聴取等の手続をとって慎重に行っていく。
   罷免された司法修習生に罷免事由の有無等について不服があっても,不服申立手続を規定したものは存在しない。ただし,司法修習生の身分の得喪にかかわる事由であり,修習を続けることができなくなるという効果がある関係上,罷免の決定後に,例えば公務員法上の公平審理のような不服審査ないし再審査手続のようなものを設けるのか,あるいは罷免に処分性があることを前提とした行政訴訟の手続にゆだねるのかどうかが考えられる。司法修習生に対する罷免自体が最高裁の決定によっていることもあり,司法修習生の身分の特殊性ということもあるので,このような特質や性質を勘案しながら,不服申立手続につき検討を続けていきたいと考えている。現段階では,その検討の方向性を具体的に申し上げることはできないが,結論が出た段階で何らかの形で委員会に報告したい。
② 過去の先例については,記録の保存期間の関係があり全ては把握しきれなかった。ただし,過去には,例えば病気によって罷免された者については,その病気が治り修習に耐えられるということになれば,再度修習を開始することについては何ら問題がないため,再採用をした例は結構あるようだ。また,いわゆる非違行為を起こした司法修習生を罷免した後,社会的にも許される期間が経過したというようなことだと思うが,再採用して修習を終了したというケースもあるようだ。このように,従前は,罷免されても,再採用という形で対処してきた面がある。このようなことから,行政訴訟等が真剣に議論された形跡というのは,調査した限りでは確認できなかった。今後,司法修習生が増えると,残念ながら罷免が問題になる者も増えることも考えられる。一方,行政事件訴訟法等も改正され,その不服申立に関する規定が整備されつつあるという状況もある。司法修習生の身分の特殊性を踏まえつつ,不服申立手続の要否,そして必要とされる場合いかなる手続が妥当かといった点を検討し,早急にその結論を出していきたいと考えているところである。
③ 指摘のとおり,司法修習生についても非違行為の内容や程度に応じて厳重注意,注意,さらに事実上の注意というような形で非違行為に対処している。
   それらの措置をする前には,司法研修所で修習中の場合には同研修所において,実務修習中の場合には配属庁会において,事実関係等を調査し,その過程で司法修習生本人の言い分もしっかり聞いている。非違行為の内容や程度に応じて,まずそのような注意処分で対処できないかどうかを考えることになる。事案として特に多いのは交通違反である。また,残念ながら,酒を飲みながら暴言を吐いたとか,人に嫌な思いをさせたというような非違行為もある。たとえば,交通事故であれば,物損であるか人損であるのか,あるいは相手方と損害について話し合いがついているのかどうかといったことも勘案しながら,事案に応じて注意処分をしている。この注意処分によって対処している例が大多数だと思う。罷免規定を改正した後においても,まずは注意処分によって対処できる事案かどうかを検討することになるだろう。

3 最高裁判所行政不服審査委員会
(1)ア 平成28年4月1日,最高裁判所行政不服審査委員会が設置されました(裁判所HPの「最高裁判所行政不服審査委員会」参照)。
   そのため,司法修習生が最高裁判所の罷免処分に対して不服がある場合,最高裁判所に対する審査請求ができると思います最高裁判所行政不服審査委員会規則1条参照)。
イ 行政不服審査法に基づく審査請求をした場合の取扱いは,「行政不服審査法に基づく審査請求書の受付等に関する事務処理要領」(平成28年7月20日付)に書いてあります。
   ただし,平成29年3月21日付の司法行政文書不開示通知書によれば,司法修習生の兼職不許可及び罷免が,行政不服審査法の対象となるかどうかが分かる文書は存在しません。
ウ 「裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分」については,行政不服審査法2条(処分についての審査請求)及び3条(不作為についての審査請求)は適用されません(行政不服審査法7条1項2号)。
(2)ア 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の場合,不開示等に関する最高裁判所事務総長の判断を是正すべきとしたのは,司法大観は司法行政文書に該当すると判断した平成28年度(最情)答申第40号(平成28年12月21日答申)だけです(「裁判所の情報公開」参照)。
   そのため,最高裁判所に対する審査請求によって最高裁判所の判断が是正される可能性は極めて小さい気がします。
イ 最高裁判所に対する審査請求によって罷免処分を争ったものの,結果として最高裁判所の判断が是正されなかった場合,その後の再採用において不利益に斟酌されるかも知れません。
(3) 二回試験に不合格となったにもかかわらず,退職願を提出しなかった場合,「成績不良により修習を継続することが困難であるとき。」(司法修習生に関する規則18条2号)を理由として罷免されますところ,答案のつづりミス等の場合にまで2号に該当するというのは変な気がします。
   そのため,二回試験不合格により罷免された司法修習生が最高裁判所に対して審査請求をした場合,最高裁判所の罷免処分が是正される可能性がないわけではない気がします。
   しかし,仮に最高裁判所の罷免処分が是正されたとしても,司法修習生として兼業禁止等の義務が残るため許可がない限りアルバイト等ができない反面,修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間(裁判所法67条の2第1項)を経過している点で修習資金すら貸与してもらえませんから, 最高裁判所の罷免処分を争う実益はない気がします。

4 戒告,修習の停止及び罷免処分については,取消訴訟を提起できるかもしれないこと
(1) 法務省大臣官房訟務企画課が作成した「逐条解説 法務大臣権限法」(平成19年3月発行の第2版)116頁ないし118頁には,以下の趣旨の記載があります(取消訴訟は抗告訴訟の一種です(行政事件訴訟法3条2項))。
   そのため,司法修習生に対する戒告,修習の停止及び罷免処分については,取消訴訟を提起できるかもしれません。
○裁判所の機関の権限に属する事項の処分に係る抗告訴訟
裁判所には,裁判所法80条により職員の任免等の司法行政事務を所掌する権限が与えられているので,例えば,裁判所のした裁判官以外の裁判所職員に対する懲戒処分を不服として裁判所の長を処分行政庁とし国を被告とする抗告訴訟が提起された場合に,当該訴訟は,5条1項に規定する行政庁の処分に係る国を被告とする訴訟に該当するから,当該訴訟について,裁判所の長は,行政庁として所部の職員を代理人に指定し,又は弁護士を訴訟代理人に選任して追行させることができる。
   これらの訴訟についても,三権分立制度の趣旨から,本条の適用を消極に解する考え方がある。しかし,裁判官以外の裁判所職員に対する懲戒処分等は,その本来的権限である司法権の行使に係るものではないから,これに被告国を代表する法務大臣が関与することが直ちに三権分立の趣旨に反するとは言い難い。むしろ裁判所職員に対する懲戒処分等については,国公法の規定が準用され(裁判所職員臨時措置法),一般の国家公務員に対する懲戒処分等と共通の問題を有することを考慮すると,基本的には本条の適用を肯定した上で,実際上,法務大臣の関与の必要性,相当正当を個別具体的に検討するのが相当であると考えられる。
   この点に関する従前の訟務実務の取扱いとしては,例えば,裁判官以外の裁判所職員の懲戒処分等に係る訴訟について,訟務部局として実質的に関与したものは見あたらず,裁判所自らが弁護士を訴訟代理人に選任して追行しているのが通例と思われる(大阪高裁昭和40年3月22日判決・判時408号27ページ,東京高裁昭和55年10月29日判決・行裁集31巻10号2140ページ等)。この取扱いは,国会の機関を当事者とする訴訟についての訟務実務の取扱いをも考慮すると,司法行政事務を処理する裁判所自体が争訟ないし法律の専門組織であって,その機関を当事者とする訴訟の追行については,裁判所の自主的判断にゆだね,法務大臣の関与は差し控えるのが適当であるとする考え方によるものと思われる。
   なお,国有財産法や会計法,債権管理法等においては,財務大臣の総轄の下に,最高裁判所長官又はその委任を受けた者が,部局長等としてその所掌事務を処理するとされており,これらの者がその処理に係る処分についての国を被告とする抗告訴訟の処分行政庁となり得ることが想定される場合には,当該事務は司法権の行使とは関係がなく,また,被告国を代表する法務大臣として訴訟の統一的処理を確保する必要性が認められるから,当然に法務大臣権限法6条の適用があると解するのが相当である。
(2) 国家公務員の場合,審査請求に対する人事院の裁決を経た後でなければ,取消訴訟を提起することはできません(国家公務員法92条の2)。
司法修習生の場合,同法の準用があるかどうか分かりませんが,3ヶ月以内に(行政不服審査法18条1項),最高裁判所に対する審査請求を先にした方がいい気がします。
(3) ITmedia HPの「エリート集団の裁判所が,「ブラック企業」と呼ばれても仕方がない理由(2/5)」には,以下の記載があります。
   最高裁長官と事務総長の意を受けた最高裁判所事務総局人事局は、人事を一手に握っています。だから、いくらでも裁判官を支配することできるんですよ。人事局が「この裁判官、気に入らないなあ」と思ったら、その人は出世できません。例えば、本来なら東京高裁の裁判長になるような人でも「地方の高裁にとどめておく」「所長にするのも遅らせる」「所長にすらしない」などといった感じで、いくらでも可能です。

5 最高裁判所行政不服審査委員会を経由した場合,取消訴訟を提起できること
   平成29年10月25日付の最高裁判所の裁決書(裁判官のアパート経営に対するもの)7頁には「処分の違法を理由とする場合は,この裁決があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に,国を被告として(訴訟において国を代表する者は法務大臣となります。),処分の取消しの訴えを提起することができます。」と書いてあります。
   そのため,最高裁判所行政不服審査委員会を経由した場合,取消訴訟を提起できると思われます。

6 二回試験の不合格処分自体を争うことは無理と思われること
(1) 国家試験における合格,不合格の判定は学問又は技術上の知識,能力,意見等の優劣,当否の判断を内容とする行為であるから,その試験実施機関の最終判断に委せられるべきものであって,その判断の当否を審査し具体的に法令を適用して,その争いを解決調整できるものとはいえません(最高裁昭和41年2月8日判決参照)。
(2) 東京地裁平成29年1月17日判決の裁判要旨は以下のとおりです。
① 社会保険労務士試験不合格処分の取消訴訟は,国家試験の合否に係る処分の効力に関するものであって当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関するものであり,合格基準の策定過程に違法がある旨,社会保険労務士となるのに必要な知識及び能力の有無とは関係のない事柄が考慮された旨が主張されている本件においては,学問又は技術上の知識,能力,意見等の優劣,当否を本質的な争点とし,その争点に係る判断がその帰趨を左右する必要不可欠のものであるとはいえず,法律上の争訟に当たる。
② 社会保険労務士試験不合格処分の取消請求が,社会保険労務士試験において,いかなる手続によりいかなる合格基準を決定するかは,処分行政庁の広範で専門的かつ技術的な裁量に委ねられているものと解されるところ,当該社会保険労務士試験の合格基準につき特段不合理な点はうかがわれず,合格基準の策定について,処分行政庁が裁量権を濫用,逸脱したものとはいえないとして,棄却された事例
(3)   二回試験の合格基準の策定過程に違法があるとか,法曹三者となるのに必要な知識及び能力の有無とは関係のない事柄が考慮されたといった事情が二回試験にあると認めてもらうことは無理と思います。
そのため,二回試験の不合格処分自体を争うことは無理と思います。

7 行政訴訟に関する事件報告
(1) 平成27年3月26日付の最高裁判所事務総局行政局第一課長の書簡によれば,行政訴訟を提起したり,上訴したりした場合,その時点で,最高裁判所事務総局行政局第一課事件係に対して受理報告がされます。
   また,第一審の弁論終結時に原告に訴訟代理人が選任されている場合,第一審事件又は上訴事件が判決により全部終局した時点で,最高裁判所事務総局行政局第一課事件係に対して終局報告がされます。
(2) 平成26年3月25日付の最高裁判所事務総局行政局第一課長の書簡に基づき,行政事件,労働事件及び知財事件に関する事件報告が大幅に簡素化されました。

71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由

○71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由が書いてある,法務省が作成した「司法修習生に対する分限・懲戒的措置について」の本文は以下のとおりです。

1 分限的措置と懲戒的措置を法律上書き分ける理由
   現行裁判所法第68条は「最高裁判所は,司法修習生の行状がその品位を辱めるものと認めるときその他司法修習生について最高裁判所の定める事由があると認めるときは,その司法修習生を罷免することができる」と規定しており,法律上分限的措置(病気等による罷免)と懲戒的措置(修習の態度の不良等による罷免)につき書き分けていない(司法修習生に関する規則(最高裁判所規則第十五号)第17条及び第18条において書き分けている。)。
   本改正法では,修習手当の創設に伴い,懲戒的措置により罷免された場合に限り,司法修習生に対するその償還を義務付ける制度を設けることとしているほか,下記2のとおり,司法修習生に対する実効的かつ柔軟な規律確保等の方策として罷免以外の懲戒的措置(戒告,修習の停止)を設けることとしているため,法律上も分限的措置と懲戒的措置を書き分ける必要がある。
   そこで,裁判所法第昭条を二項に書き分けた上で,第1項において分限的措置としての罷免を,第2項において懲戒的措置としての罷免等を規定することとした。
2 罷免以外の懲戒的措置を設ける理由 
   現在,司法修習生につき司法修習生たるに適しない非行があった場合であっても,罷免以外の懲戒的措置は認められていない。
   したがって,現在では,司法修習生につき「罷免」することが適当とまではいい難い非行があった場合には懲戒的措置を課すことができず,司法研修所長又は配属庁会の長らが注意や指導をするに止まっているところであり,懲戒的措置として「罷免」以外の処分を設けることによって実効的かつ柔軟に司法修習生の規律確保を行うための方策が必要となっている。
   特に,修習給付金の創設に伴い,司法修習の確実な履践を担保することがより一層求められていることからも,司法修習生に対する懲戒的措置として「罷免」以外の懲戒的措置を新たに設けることで,司法修習生に課せられる規律を明確化する必要が生じている。
   そこで,司法修習生に対する懲戒的措置について,「退学」に対応する「罷免」に加え,「停学」に対応する「修習の停止」(司法修習生の身分は保有するが,一定期間修習をさせない処分)及び「戒告」(その責任を確認し,及びその将来を戒める処分)を設けることとする。
   なお,司法修習が司法制度の担い手たる法曹に必須の課程であり,修習内容も法曹に必要な能力等を養成するために高度に専門的であることなどに鑑み,司法修習生は修習期間中,修習に専念すべきものとされており,「修習の停止」を設けることにつき,かかる司法修習生の修習専念義務との関係が問題になる。
   「修習の停止」は,前記のとおり,司法修習生の身分は保有するが,ー定期間修習をさせない処分であり,その停止の期間については今後最高裁規則等で定められることになるが,その期間は短期間に止まることが予定されており,これによる当該司法修習生の司法修習の履践や法曹として活動を開始するに当たり必要な能力等の修得への影響は限定的である。かえって,これを反省・自戒の機会として,その後より一層司法修習に専念することが期待できるほか,当該司法修習生以外の周囲の司法修習生に対する教育的効果も期待できる。したがって,「修習の停止」は修習専念義務の趣旨と矛盾するものではなく,かえって修習専念義務の趣旨を貫徹することにつながる。
   また,防衛大学生及び防衛医科大学生についても,自衛隊の隊員(自衛隊法(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)第2条第5項)として職務専念義務(同法第60条・具体的には教育訓練を受ける義務)を負い,かつ修業年限が限定されている(防衛大学校については4年,防衛医科大学校については6年又は4年)にもかかわらず,自衛隊法上,退学・戒告と並んで停学の懲戒処分が設けられているところであり,修習専念義務を負い,かつ,修習期間(約1年)が限定されている司法修習生について裁判所法上「修習の停止」の処分を設けることについてはこの意味でも法制上特に問題はないと考えられる。