修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法等

1 修習給付金の税務上の取扱いについて争いたい場合の流れ
(1) 所得税関係
① 修習給付金が必要経費を伴う雑所得であることを前提として,平成31年3月15日(金)の法定申告期限までに確定申告をする(所得税法120条1項柱書)。
・ 所得税の納税地は,原則として,確定申告書を提出する際の自分の住所地です(所得税法15条1号)から,自分の住所地を所轄する税務署長(国税通則法21条1項)に確定申告書を提出する必要があります。
・ 確定申告書は,国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」で作成できます。
・ 修習給付金が非課税所得であることを前提として確定申告をした場合,更正の請求の理由(国税通則法23条1項各号)がないため,更正の請求ができません。
・ 確定申告書を税務署に郵送した場合,発送した日を提出日とみなしてもらえます(国税通則法22条)。
② 平成31年3月15日(金)の法定申告期限が過ぎた直後,税務署長に対し,修習給付金は学資金として非課税所得に該当するし,少なくともより多くの必要経費を伴う雑所得であることを前提に,所得税及び復興特別所得税について更正の請求をする。
・ 松本寿一税理士事務所HP「所得税の更正の請求書 平成29年分」等の記載例が載っています。
・ 更正の請求書は,国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」で作成できます。
・ 更正の請求自体は,法定申告期限から5年以内であれば可能です(国税通則法23条1項)。
そのため,他の元司法修習生が提起した審査請求又は取消訴訟の結果を待った上で,更正の請求をすることもできます。
・ 法定申告期限内に更正の請求書を提出した場合,正しい計算に基づいて作成した新たな確定申告書を提出してくれと税務署にいわれるだけで終わるかもしれません(所得税基本通達120-4参照)。
③ 「更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知書」を税務署長が出した場合,税務署長に対する再調査の請求(国税通則法81条)で決定が覆ることはありえないと思われることにかんがみ,3か月以内に国税不服審判所長に対する審査請求をする(審査請求前置につき国税通則法115条1項)。
・ 国税不服審判所HP「不服申立手続等」が参考になります。
・ 国税不服審判所(昭和45年5月設置)は国税庁の「特別の機関」(国家行政組織法8条の3)であり,東京(霞が関)にある本部のほか,全国に12箇所の支部(札幌,仙台,関東信越,東京,金沢,名古屋,大阪,広島,高松,福岡,熊本,沖縄)及び7箇所の支所(新潟,長野,横浜,静岡,京都,神戸,岡山)があります(支部につき国税通則法78条3項参照)。
・ 審査請求は,正副各1通の審査請求書を原処分庁の管轄区域を管轄又は分掌する国税不服審判所の支部又は支所に提出することで行います(国税通則法施行規則12条1項参照)。
兵庫県内の税務署長が原処分庁である場合,大阪国税不服審判所神戸支所に審査請求書を提出することとなります。
・ 審査請求は,審査請求に係る処分をした税務署長を経由してすることもできます。この場合,審査請求書は原処分庁としての税務署長に提出すればいいです(国税通則法88条1項)。
・ 平成28年4月以降,白色申告者であっても直接,国税不服審判所長(国税通則法78条2項)に対する審査請求ができるようになりました。
・ 審査請求人は,担当審判官(主担当の審判官)との面談(「請求人面談」といいます。)ができますし,口頭意見陳述の申立て(国税通則法95条の2)をすれば,原処分庁の担当者が出席する場において,担当審判官の許可を得て,処分の内容や理由などについて原処分庁に質問することができます。
・ 国税不服審判所長は,担当審判官及び通常2人の参加審判官(国税通則法94条1項参照)の合議による議決(過半数の意見によることにつき国税通則法施行令36条)に基づき,法令解釈の統一性が確保されているか,文書表現は適正かなどの審査を行った上で,裁決を出します(国税通則法98条4項)。
ただし,権限の委任等を定める国税通則法113条・国税通則法施行令38条1項で明記されているわけではありませんが,内部的には,支部の首席国税審判官(国税通則法78条4項)に裁決権が委任されています。
・ 税務署長等は,国税不服審判所長の裁決を不服として訴訟を提起することはできません(国税通則法102条1項参照)し,国税不服審判所の裁決は,税務署長等が行った処分より審査請求人にとって不利益となることはありません(国税通則法98条3項ただし書)。
・ 国税不服審判所長は,国税庁長官通達に示された法令解釈と異なる解釈により裁決をすることができます(国税通則法99条参照)。
この場合,国税不服審判所長が自らその権限を行使することとなります(国税通則法施行令38条2項参照)。
・ 国税不服審判所長の裁決は,審査請求人に裁決書の謄本が送達された時にその効力が生じる(国税通則法98条3項)のであって,裁判所の判決と異なり言渡しはありませんから,ある日突然,裁決書が送られてきて結果を知ることとなります。
・ 国税庁HPの「平成29年度における審査請求の概要」によれば,国税不服審判所の平成29年度審査請求の処理状況は,全部認容が54件,一部認容が148件,棄却が1840件,却下が186件,取下げが247件であり,合計2475件です。
また,認容割合(全部認容又は一部認容の割合)は8.2%であり,1年以内処理件数割合は99.2%です。
④ 国税不服審判所長が棄却裁決(国税通則法98条2項)又は一部取消しの裁決(国税通則法98条3項)を出した場合,地方裁判所に対し,6か月以内に更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求訴訟を提起する。
・ この場合,被告は国であり,処分行政庁(行政事件訴訟法11条4項1号)は税務署長となり,法務大臣が被告の代表者となります(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(法務大臣権限法)1条)。
・ 国税不服審判所長に対する審査請求をした日の翌日から起算して3ヶ月を経過しても裁決が出ない場合,裁決が出る前であっても,取消訴訟を提起できます(国税通則法115条1項1号)。
・ 取消訴訟を提起した場合において,必要経費又は損金の額の存在その他これに類する自己に有利な事実につき課税処分の基礎とされた事実と異なる旨を主張しようとするときは,相手方当事者である国が当該課税処分の基礎となった事実を主張した日以後遅滞なくその異なる事実を具体的に主張し,併せてその事実を証明すべき証拠の申出をしなければなりません(国税通則法116条1項本文)。
また,申告納税の所得税にあっては,納税義務者においていったん申告書を提出した以上,その申告書に記載された所得金額が真実の所得金額に反するものであるとの主張・立証がない限り,その確定申告にかかる所得金額をもって正当なものと認められます(最高裁昭和39年2月7日判決)。
・ 国税庁HPの「平成29年度における訴訟の概要」によれば,平成29年度に終結した210件の訴訟につき,取下げ等が18件,却下が17件,棄却が154件,国の敗訴が21件(うち,一部敗訴が8件,全部敗訴が2件)であり,国の敗訴率は10%です。
(2) 住民税及び国民健康保険料関係
ア 住民税の課税標準は所得税の課税標準と連動しています(道府県民税につき地方税法32条2項,市町村民税につき地方税法313条2項)。
また,国民健康保険料の所得割額の賦課基準は住民税の課税標準と連動しています(国民健康保険法81条・国民健康保険法施行令29条の7第2項第4号及び同条第3項第4号)。
そのため,所得税について減額更正が認められた場合,これと連動して住民税及び国民健康保険料について減額の賦課決定がされますから,住民税及び国民健康保険料独自の不服申立て手続をとる必要は原則としてありません。
イ 住民税及び国民健康保険税に関する減額の賦課決定は過去5年分についてできる(地方税法17条の5第4項)ものの,国民健康保険料に関する減額の賦課決定は過去2年分についてしかできません(国民健康保険法110条の2)。
そのため,取消訴訟の請求認容判決を待っていたのであれば,平成33年7月を過ぎてしまう可能性が高いことにかんがみ,平成31年度国民健康保険料の賦課決定に対し,納入通知書等の受領日から3ヶ月以内に都道府県の国民健康保険審査会(国民健康保険法92条)に対する審査請求(国民健康保険法91条)をした方がいいかもしれません(審査請求前置につき国民健康保険法103条)。
ウ 所得税及び住民税の課税標準との関係で修習給付金が雑所得のままであるのに対し,国民健康保険料の所得割額の賦課基準との関係で修習給付金が非課税所得になるというのが理論上ありうるかどうかは不明です。

2 取消訴訟の管轄裁判所等
(1)  兵庫県内の税務署長が処分行政庁となる場合,以下の地方裁判所に取消訴訟を提起できます。
① 東京地裁
・ 被告となる国の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所です(行政事件訴訟法12条1項)。
・ 国の普通裁判籍は,訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まります(民事訴訟法4条6項)ところ,「訴訟について国を代表する官庁」は法務大臣です(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(法務大臣権限法)1条)。
そのため,国の普通裁判籍は東京都千代田区にあることとなります。
② 神戸地裁
・ 処分をした行政庁(兵庫県内の税務署長)の所在地を管轄する裁判所です(行政事件訴訟法12条1項)。
③ 大阪地裁
・ 原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所(原告が神戸市在住の場合,大阪高裁となります。)の所在地を管轄する地方裁判所です(行政事件訴訟法12条4項の「特定管轄裁判所」です。)。
(2) 取消訴訟は行政訴訟の一部であります(行政事件訴訟法3条2項参照)ところ,地裁支部は行政訴訟を取り扱っていません(地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則1条2項)。
そのため,地裁本庁に取消訴訟を提起する必要があります。
(3) 東京地裁に取消訴訟を提起した場合,2民,3民,38民又は51民に係属し,大阪地裁に取消訴訟を提起した場合,2民又は7民に係属し,神戸地裁に取消訴訟を提起した場合,2民に係属します。

3 修習給付金に関する司法研修所の公式見解が絶対ではないと思われること
(1)ア 司法修習生研修委託費(略称は「司法修習委託金」です。)は,弁護士会において司法修習生の弁護実務修習の指導に要する経費に充てることをその使途とするものです。
イ 予算の示達の場面において,司法研修所ひいては最高裁判所が,司法修習委託金を消費税の課税対象と考えていなかったようにもうかがえることは,司法修習委託金が消費税の課税対象となることを妨げるものではありません(大阪高裁平成24年3月16日判決。
また,東京高裁平成26年6月25日判決(平成26年度法務年鑑162頁ないし164頁)も,司法修習委託金は消費税の課税対象であると判断しています。
(2) 平成30年8月23日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「最高裁判所が修習給付金について必要経費として控除することができる経費があるかどうかを検討した際に作成し,又は取得した文書」は存在しません。
(3) 平成30年9月26日付の最高裁判所事務総長の理由説明書によれば,「司法研修所では,修習給付金のうち基本給付金及び住居給付金について,必要経費として控除することができる費用が存在するか検討したが,この検討内容については,文書を作成するほどの複雑な内容のものではなかったことから,文書を作成していない」とのことです。
(4) そのため,修習給付金に関する司法研修所の公式見解が絶対ではないと思います。

4 国税不服審判所及び税理士関係の資料
(1) 国税不服審判所関係の資料
① 国税不服審判所定員細則(平成25年7月現在)
② 国税不服審判所事務分掌規則(平成25年7月現在)
③ 国税不服審判所事務分掌細則(平成30年8月現在)
④ 国税不服審判所における行政文書の決裁委任及び発信者名義等の取扱規則(平成30年8月現在)
⑤ 担当審判官等の指定等(審査事務提要からの抜粋)
(2) 税理士関係の資料

① 税理士事務提要(平成25年6月現在)1/2及び2/2
② 税理士法事務取扱規程(平成25年7月現在)
③ 税理士法聴聞事務取扱規程(平成25年7月現在)

5 その他
(1) 東弁リブラ2009年2月号「租税争訟における弁護士の役割」が載っています。
(2) 全般的な話については,「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」を参照して下さい。

修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い

1 総論
(1) 司法修習生が修習専念義務を果たして修習給付金を支給してもらうために必要な経費(所得税法35条2項2号)は当然に存在すると思います。
(2) サラリーマン税金訴訟に関する最高裁大法廷昭和60年3月27日判決は,給与所得者において自ら負担する必要経費の額が一般に旧所得税法所定の給与所得控除の額を明らかに上回るものと認めることは困難であること等を理由として,給与所得者について必要経費の実額控除を認めず,給与所得控除による概算控除しか認めないことは,必要経費の実額控除が認められている事業所得者等との関係において憲法14条1項に違反しないと判示しています。
そのため,司法修習生において自ら負担する必要経費が存在するにもかかわらず,修習給付金について必要経費の控除を一切認めないことは,必要経費の実額控除が認められている他の雑所得者等との関係において憲法14条1項に違反すると思います。
(3) 国税庁において雑所得に該当すると判断された訓練・生活支援給付金につき,必要経費の有無については言及されていません。
(4) 平成30年7月9日付の国税庁長官心得の行政文書不開示決定通知書によれば,司法修習生に対する修習給付金に関する税務上の取扱いが書いてある文書は国税庁に存在しません。
(5) したがって,修習給付金について必要経費として控除することができる経費は存在しないとする司法研修所の公式見解は不当であると個人的に思います。

2 必要経費に関する一般論等
(1) 必要経費に関する一般論
ア 不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得の金額を計算する上で必要経費に算入できる金額は,一般論としては以下のとおりです(所得税法37条1項参照)。
① 総収入金額に対応する売上原価
② その総収入金額を得るために直接要した費用の額
・ ①及び②は個別対応の必要経費です。
③ その年に生じた販売費、一般管理費,その他業務上の費用の額
・ ③は期間対応の必要経費です。
・ 償却費以外の費用については,12月31日現在で債務の確定しているものに限られます。
イ 個人事業の場合,家事(生活)上の費用と事業上の経費とが混在していることが多いところ,事業又は業務上必要な経費は「必要経費」として,収入金額から控除されます。
しかし,例えば,以下に掲げる家事費や家事関連費等は所得の処分と考えられ,必要経費として控除することはできません(所得税法45条1項各号)。
① 家事費(所得税法45条1項1号・所得税法施行令96条)
・ 例えば,自己又は家族の生活費や交際費,医療費,住宅費です。
② 家事関連費(所得税法45条1項1号・所得税法施行令96条)(例外あり)
・ 例えば,店舗兼住宅に係る地代,家賃,火災保険料,水道光熱費です。
③ 租税公課(所得税法45条1項2号ないし5号・所得税法施行令97条)
・ 例えば,個人を対象として課税される所得税,住民税です。
④ 罰金及び科料並びに過料(所得税法45条1項6号)
⑤ 損害賠償金(生活上の損害賠償金,業務上の故意又は重大な過失による損害賠償金)(所得税法45条1項7号・所得税法施行令98条)
ウ 家事関連費について,所得税法では,家事関連費の主たる部分が不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分することができる場合,その部分に相当する経費に限り,必要経費に算入できるものとされており,区分できない場合,雑所得については必要経費に算入できません(所得税法45条1項1号・所得税法施行令96条1号)。
エ 青色申告者については,家事関連費のうち,その備付けの帳簿記録によって,その年分の不動産所得,事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額も必要経費に算入できます(所得税法施行令96条2号)ものの,雑所得についてこのような定めはありません。
オ 必要経費に関する一般論は,税大講本「所得税法」(平成30年度版)に基づいて記載しています。
(2) 所得税基本通達の条文
ア 所得税基本通達45-1(主たる部分の判定等)は以下のとおりです。
令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する。
イ 所得税基本通達45-2(業務の遂行上必要な部分)は以下のとおりです。
令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。
(3) 最高裁大法廷昭和60年3月27日判決の判示
サラリーマン税金訴訟に関する最高裁大法廷昭和60年3月27日判決が,「給与所得者が勤務に関連して費用の支出をする場合であつても、各自の性格その他の主観的事情を反映して支出形態、金額を異にし、収入金額との関連性が間接的かつ不明確とならざるを得ず、必要経費と家事上の経費又はこれに関連する経費との明瞭な区分が困難であるのが一般である。」とか,「各自の主観的事情や立証技術の巧拙によつてかえつて租税負担の不公平をもたらすおそれもなしとしない。」などと判示しているとおり,必要経費に該当する家事関連費の範囲を明確に判断するのは困難です。

3 必要経費に算入できそうな項目,及び給与所得者の特定支出控除
(1) 必要経費に算入できそうな項目
修習給付金に関する雑所得を計算する上で,必要経費に算入できる項目は以下のとおりと思います。
なお,括弧内の金額は,「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」に書いてある金額です。
ア 争いなく算入できそうな項目
① 実務修習地や司法研修所に赴くための旅費
・ そもそも非課税ともいえる項目です(所得税法9条1項4号参照)が,同額が旅費として支給されるため,課税関係は発生しません。
② 配属先の裁判所,検察庁及び法律事務所並びに司法研修所に通所するための日々の交通費
③ 導入修習,分野別実務修習,集合修習及び選択型実務修習に参加するための引越代
・ 大阪高裁管内のA班の71期司法修習生の場合,移転給付金は合計4回支給されます(1回あたり4万6500円(鉄道50km未満の場合)から14万1000円(鉄道2000km以上の場合)までです。)。
そして,移転給付金を超過する部分についても必要経費になると思います。
イ 算入できるかどうか微妙な項目
① 導入修習,実務修習及び集合修習における家賃
・ 少なくとも修習専念義務等を履行するために必要な家事関連費に該当すると思われますものの,修習専念義務等を守って修習給付金を得るために必要であり,かつ,その必要である家賃部分を明らかに区分することができるかどうかがよく分かりません。
ただし,実務修習地で新たに部屋を借りた場合,家賃の全部が修習給付金を得るために必要な費用といえるかもしれません。
② その他の交通費(日々の交通費込みで約0.9万円)
③ 情報通信費(約0.9万円)
④ 学習費(約1.0万円)
⑤ 書籍代(約0.8万円)
⑥ OA機器購入費(約1.2万円)
⑦ 勉強会参加費(約1.0万円)
・ ②ないし⑦の全部が,修習給付金を得るために必要な費用であるとはいえないと思います。
ウ 算入できなさそうな項目
① 食費(約4.0万円)
② 水道光熱費(約1.0万円)
③ 就職活動費(約1.1万円)
・ 法律事務所への就職活動は,修習給付金を得るために必要な費用ではないと思います。
④ 諸雑費(医療費,衣服費等)(約1.5万円)
⑤ 社会保険料(約1.6万円)
・ 社会保険料控除の対象になります(所得税法74条)。
⑥ 所得税・住民税等(約0.5万円)
⑦ 勉強会参加費を除く交際費(約1.7万円)
⑧ 奨学金返済費用(約0.6万円)
⑨ 教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。)(約1.5万円)
⑩ 理美容・嗜好品等(約1.4万円)
⑪ 自動車等関係費(約0.7万円)
⑫ 仕送り金(約0.3万円)
⑬ 家具家電・衣服購入費等(約1.9万円)
・ ⑤ないし⑬の費用(合計10.2万円)は,月額10万円の修習専念資金で対応することが想定されています。
エ 実務修習地で新たに部屋を借りた際の敷金,礼金,不動産仲介手数料,火災保険料,鍵交換費用等は平成29年12月までに支出されていると思いますから,平成30年中の雑所得に係る必要経費にはなりません。
(2) 給与所得者の特定支出控除
ア 給与所得者が以下の①ないし⑥の特定支出をした場合,給与等の支払者(例えば,勤務先)の証明を得ること等を条件に,その年の特定支出の額の合計額が,その年中の給与所得控除額の2分の1を超えた場合,確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができるという「給与所得者の特定支出控除」があります(昭和62年9月25日法律第96号による改正後の所得税法57条の2)。
例えば,給与収入が180万円である場合,給与所得控除額は180万円×40%=72万円ですから,①ないし⑥の特定支出のうち,36万円を超える部分の金額が,給与所得控除とは別に認められる必要経費となります。
① 通勤費
・ 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出です。
② 転居費
・ 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出です。
③ 研修費
・ 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出です。
④ 資格取得費
・ 職務に直接必要な資格を取得するための支出です。
・ 平成25年分以後は,弁護士,公認会計士,税理士等の資格取得費も特定支出の対象となります。
⑤ 帰宅旅費
・ 単身赴任等の場合で,その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出です。
⑥ 勤務必要経費(⑥の経費の上限は65万円です。)
・ (a)図書費(書籍,定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用),(b)衣服費(制服,事務服,作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用)及び(c)交際費等(交際費,接待費その他の費用で,給与等の支払者の得意先,仕入先その他職務上関係のある者に対する接待,供応,贈答その他これらに類する行為のための支出)です。
イ 修習給付金に関する必要経費を判断する際,給与所得者の特定支出控除に関する定めが考慮される可能性が高いと思います。

4 雑所得の場合,必要経費に関する領収書を残しておけば足りること
不動産所得,事業所得又は山林所得の場合,収支内訳書(所得税法施行規則47条の3第1項)を確定申告書に添付する必要があります(所得税法120条6項)し,平成26年1月1日以降の所得については,白色申告であっても記帳義務があります(所得税法232条1項)。
しかし,雑所得の場合,収支内訳書を確定申告書に添付する必要はありませんし,記帳義務はありませんから,税務調査に備えて必要経費に関する領収書を残しておけば足ります。

5 平成31年度の税金及び国民健康保険料は安くなること等
(1)ア 修習給付金について必要経費が存在することを前提に確定申告をした場合,雑所得の金額を相当減らせる結果,司法研修所の公式見解と比べると,平成31年度の税金及び国民健康保険料は安くなります。
イ 給与収入が180万円以下である場合,給与所得控除額は給与収入の40%(ただし,最低額は65万円)であること(所得税法28条3項1号)にかんがみ,修習給付金に関する必要経費率の目安は40%であるかも知れません。
(2) 平成30年度の神戸市の計算式を前提とした場合,1人世帯である場合の国民健康保険料(被保険者均等割額及び世帯別平等割額)は,雑所得の金額が83万円以下であれば2割軽減となり,60万5000円以下であれば5割軽減となり,33万円以下であれば7割軽減となります(国民健康保険法81条・国民健康保険法施行令29条の7第5項3号参照)。
(3) 後日の税務調査において修習給付金について必要経費が存在するとする主張が認められなかった場合,事後的に税金及び国民健康保険料が増えますから,リスクがないわけではありません。
しかし,ある程度の税金及び国民健康保険料は支払うわけですから,修習給付金が非課税所得であることを前提に雑所得が0円であるとして確定申告をした場合と比べると,税務調査を受ける可能性はかなり小さいと思います。
(4) 一人世帯において平成30年分の雑所得が57万円以下となる場合,平成31年7月から平成32年6月までの国民年金保険料について,住所地の市役所等又は年金事務所に国民年金保険料免除・納付猶予申請書を提出することで,全額免除を受けることができます(国民年金法90条1項1号・国民年金法施行令6条の7)。

6 その他
全般的な話については,「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」を参照して下さい。

修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い

1 非課税所得としての学資金等
①学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するものを除く。)(いわゆる「学資金」です。)及び②扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品は,社会政策的配慮(担税力)に基づき,非課税所得とされています(所得税法9条1項15号)。

2 修習給付金は,非課税所得としての学資金に該当する可能性があること等
(1)  学資金としての性質を有すると思われること
ア 修習給付金は,修習専念義務を負っている修習期間中の生活費及び教育費に充てるために国から支給される金員であって,非課税所得に該当する給付型奨学金と同じようなものといい得ますから,学資金としての性質を有すると思います。
イ 国税庁課税部審理室長は,厚生労働省職業能力開発局能力開発課長に対し,平成22年1月27日付の文書回答において,平成21年7月末に開始した緊急人材育成支援事業による職業訓練等を受講する者に支給される訓練・生活支援給付金(職業訓練の期間中,被扶養者を有しない者については月額10万円,被扶養者を有する者については月額12万円を支給するというもの)は,訓練期間中における生活保障や円滑な訓練受講に資するために支給されるものであること等にかんがみ,雑所得であると回答していますところ,金額規模への言及がありません。
そのため,国税庁としては,修習給付金は,司法修習期間中における生活保障や円滑な修習参加に資するために支給されるものであるとして,学資金としての性質を有しないと考えているのかもしれません。
(2) 金額規模等を理由に学資金から除外される理由はないと思われること
ア  司法研修所がある埼玉県の最低賃金871円(平成29年10月1日からの金額)で1週間について40時間(法定労働時間であることにつき労働基準法32条1項)働いた場合,871円×40時間×30日/7日=14万9314円となりますから,月額13万5000円の基本給付金は埼玉県の最低賃金を下回る金額です(厚生労働省HPに「地域別最低賃金の全国一覧」が載っています。)。
また,基本給付金の13万5000円という金額は,住居費の支出を伴わない68期司法修習生の平均的な生活費等を参考に設定された金額ですから,担税力がありません。
イ 住居給付金の3万5000円という金額は,生活保護制度における住宅扶助額の全国平均(平成27年の単身世帯につき3万4542円)等を参考に設定された金額ですし,司法修習生の配属場所である都道府県庁所在地及び東京都立川市における住宅扶助額の全国平均ですらありませんから,担税力がありません。
例えば,全国的に住宅扶助基準額が見直された平成27年7月1日以降の,神戸市の単身世帯の住宅扶助基準額は4万円です。
ウ 法科大学院の中には,成績優秀者に対し,授業料の全額又は半額相当額の奨学金等を支給しているところがありますところ,当該奨学金は学資金として非課税所得であると思います。
特に,甲南大学法科大学院は,A種特待生(入学試験にきわめて優秀な成績で合格した者)に対し,学費免除だけでなく,月額15万円もの給付金を支給しているみたいです(甲南大学法科大学院HP「学費・学費減免」参照)が,当該給付金も学資金として非課税所得であると思います。
エ 修習資金の貸与を受けなかった新65期ないし70期司法修習生が家賃を払って一人暮らしをしていた場合,両親等の扶養義務者から生活費及び教育費という趣旨で月額18万円以上の仕送りを受けていた事案がごく普通にあったと思われます。
そして,それらの仕送りについて贈与税が課税された事例があるとは思えないことからしても,月額18万円という金額規模は,扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品(非課税所得)と比べて特に大きいわけではありません。
オ 平成28年度税制改正において所得税法9条1項15号が改正されて「通常の給与に加算して受ける学資金」が非課税とされた結果,医学生等に対する修学等資金の債務免除益は,通常の給与に加算して受ける学資金に該当するものとしてすべて非課税となりました。
ところで,兵庫県医師養成制度を利用して兵庫医科大学に進学した場合,6年間で合計4480万円(うち,生活費は130万円×6年間=780万円)の貸付けを受けられますし,大学を卒業後,医師として9年間,兵庫県が指定するへき地の病院,診療所等において勤務した場合,貸与を受けた修学資金の返還を免除されます。
そのため,4480万円もの修学資金の返還免除に基づく債務免除益であっても,学資金として非課税となると思われます(医学生に対する6年間の奨学金1069万6800円の返還免除に基づく債務免除益が学資金として非課税となることにつき名古屋国税局の文書回答事例参照)。
カ そのため,修習給付金は,金額規模等を理由に学資金から除外される理由はないと思います。
キ 国税庁は,法務省との担当者協議において,修習給付金の金額規模等から,学資金と直ちに解するには難しい面があるのではないかという指摘をしていたみたいです。
そのため,国税庁としては,修習給付金は金額規模を理由として学資金に該当しないと考えているのかもしれません。
(3) 修習給付金は給与その他対価の性質を有するものではないこと
ア 最高裁昭和56年4月24日判決は,「給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。」と判示しています。
ところで,最高裁判所事務総局総務局が作成した裁判所法逐条解説(昭和44年6月30日発行)(法曹の養成に関するフォーラム第4回会議(平成23年8月4日開催)資料6に含まれています。)397頁には,「修習は、国に対する勤務ないし給付の性質をもつものではなく、むしろ自己の向上のためになされるものであるから、修習の対価として給与を受けるということは、意味をなさない。」と書いてあります。
つまり,最高裁判所は,現行65期で終了した給費制時代から,司法修習生の給料は役務の提供等の対価としての性質を有しないと説明していました。
そのため,修習給付金は給与その他対価の性質を有するものではないことになります。
イ 国税庁は,法務省との担当者協議において,「修習給付金は労務提供の対価ではなく(給与とは明らかに性質の異なるものと整理されている。),司法修習生の任用関係を雇用契約類似と整理することも容易ではない」という指摘をしていたみたいです。
(4) 小括
よって,修習給付金は,非課税所得としての学資金に該当する可能性があります。
(5) 裁判所法改正が望ましいこと
ア 平成21年7月末に開始した訓練・生活支援給付金は,平成23年10月以降,求職者支援制度に基づく職業訓練受講給付金となっています。
そして,職業訓練受講給付金の場合,租税その他の公課が禁止されています(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律(略称は「求職者支援法」です。)10条)から,非課税所得です。
イ 修習給付金についても,雇用保険を受給できない求職者に支給される職業訓練受講給付金(求職者支援法2条)と同様に,租税その他の公課を禁止する裁判所法改正が望ましいです。

3 修習給付金が非課税所得であると仮定した場合の,平成31年度の税金及び国民健康保険料の試算の合計等
(1) 修習給付金が非課税所得であることを前提に雑所得が0円であるとして確定申告をした場合,平成30年分所得税及び平成31年度の住民税は0円となります。
(2) 住民税非課税世帯となりますから,高額療養費支給制度における自己負担限度額(69歳以下の場合)が1ヶ月あたり3万5400円となります。
(3)ア 平成30年度の神戸市の計算式を前提とした場合,平成31年度の国民健康保険料は,医療分1万4600円,後期高齢者支援金分4730円の合計1万9330円となります(被保険者均等割額及び世帯別平等割額について7割軽減が適用されます。)。
神戸市HPからダウンロードできる国民健康保険料計算シート(エクセル)を使えば簡単に計算できます。
イ 修習給付金が非課税所得であるとしても,所得税又は住民税の確定申告をしなかった場合,市町村において所得の判定ができないため,被保険者均等割額及び世帯別平等割額について7割軽減が適用されません。
(4) 所得税の控除対象扶養親族から外れませんし,配偶者控除の適用があることとなります。
ただし,修習資金の貸与を受けた新65期ないし70期司法修習生の場合と同様に,健康保険及び厚生年金保険の扶養親族からは外れたままになります。
(5) 一人世帯である場合,平成31年7月から平成32年6月までの国民年金保険料について,住所地の市役所等又は年金事務所に国民年金保険料免除・納付猶予申請書を提出することで,全額免除を受けることができます。

4 注意書き
(1) 修習給付金が非課税所得であることを前提とした確定申告は大きなリスクを伴うこと
ア 後日の税務調査において修習給付金が非課税所得であるとする主張が認められなかった場合,所得税に対する5%又は10%の過少申告加算税(国税通則法65条)のほか,延滞税(国税通則法60条)又は延滞金(地方税法321条の2等及び国民健康保険法79条3項)を付加した税金及び国民健康保険料の支払を求められることとなります。
また,平成23年12月2日法律第114号による国税通則法改正により,税務署長による増額更正は法定申告期限から5年間可能となりました(国税通則法70条1項1号)から,平成30年分所得税の増額更正は平成36年3月まで可能です。
さらに,住民税の増額の賦課決定は原則として法定納期限から3年間可能であり(地方税法17条の5第1項),所得税について更正があった場合,法定納期限から5年間可能です(地方税法17条の6第3項1号)。
そして,平成31年度の税金を全く支払わず,かつ,平成31年度の国民健康保険料を2万円程度しか支払わない場合,税務調査を受ける可能性が否定できない点で,修習給付金が非課税所得であることを前提とした確定申告は大きなリスクを伴いますから,不服申立てにおいて主張した方が安全です。
イ 平成30年における,所得税に対する延滞税及び住民税に対する延滞金の利率は年8.9%(平成30年の特例基準割合1.6%+7.3%)です(租税特別措置法94条及び地方税法附則3条の2)。
ウ(ア) 平成27年度以降の国民健康保険料の賦課決定は,当該年度における最初の保険料の納期(通常は7月です。)の翌日から起算して2年を経過した日以後はすることができません(平成26年6月25日法律第83号による改正後の国民健康保険法110条の2)。
また,期間制限の特例を定める地方税法17条の6第3項に相当する条文は,国民健康保険法にはありません。
そのため,平成31年度国民健康保険料に関する増額又は減額の賦課決定は,平成33年7月までしかできません。
(イ) 税務署長が修習給付金について雑所得であるとして増額更正をした場合,国税不服審判所長に対する審査請求及び地方裁判所に対する取消訴訟が可能でありますところ,係争中である場合,国民健康保険料に関する増額の賦課決定はされないかもしれません。
そのため,増額の賦課決定がされないまま,国民健康保険料の賦課決定の期間制限が過ぎるかもしれません。
エ 申告納税方式による国税(国税通則法16条1項1号)に関して,納税申告書の提出があった場合に税務署長が行うのが更正(国税通則法24条)であり,納税申告書の提出がない場合に税務署長が行うのが決定(国税通則法25条)です。
賦課課税方式による国税(国税通則法16条1項2号)に関して税務署長が行うのが賦課決定(国税通則法32条)です。
(2) 国民健康保険について税方式が採用されている場合の取扱い
地方自治体によっては,国民健康保険について税方式が採用されています(国民健康保険法76条1項ただし書)。
この場合,国民健康保険税の増額の賦課決定は原則として法定納期限から3年間可能であり(地方税法17条の5第3項), 所得税について更正があった場合,法定納期限から5年間可能です(地方税法17条の6第3項1号)。
(3) 税金及び国民健康保険料は自己破産における非免責債権に該当すること
税金だけでなく,国民健康保険料も租税等の請求権(破産法97条4号)に該当します(国民健康保険法79条の2「法律で定める歳入」・地方自治法231条の3第3項「地方税の滞納処分の例」・地方税法331条6項「国税徴収法に規定する滞納処分の例」参照)。
そのため,税金及び国民健康保険料は自己破産における非免責債権に該当します(破産法253条1項1号)から,免責許可決定が確定したとしても支払う必要があります。

5 その他
全般的な話については,「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」を参照して下さい。

修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い

 

1 司法研修所の公式見解
(1) 司法研修所事務局が作成した「修習給付金案内」に含まれる「所得税等の取扱い」には以下の記載があります。
◎所得税・住民税
修習給付金のうち基本給付金及び住居給付金は,所得税法上の「雑所得」に該当するため,確定申告の対象となります。
特に,2年目(平成30年分)については,大多数の方が確定申告をしなければならないと予想されます。詳細は,税務署に問い合わせるなどして確認してください。
(注)(1) 源泉徴収は行われません。
(2) 必要経費として控除することができる経費はありません。
また,基本給付金及び住居給付金は,所得税のほか,住民税の課税対象になります。
詳細は,各市区町村のウェブサイトを参照するなどして確認してください。
(2) 司法研修所の公式見解によれば,修習給付金は雑所得に該当するだけでなく,必要経費として控除することができる経費は存在しないこととなります。
そのため,支給された基本給付金及び住居給付金の全額が雑所得となりますから,司法修習生に採用された年の翌年(71期司法修習生の場合,平成30年)については,所得税の控除対象扶養親族から外れますし,配偶者控除の適用はないこととなります。

2 平成30年中に支給される基本給付金及び住居給付金の合計
(1) 平成30年中に支給される基本給付金の金額
ア 71期司法修習生の場合,基本給付金は,初回の支給日は平成29年12月15日であり,2回目の支給日は平成30年1月15日であり,13回目の支給日(最後)は修習終了日である同年12月12日です。
そのため,平成30年中に支給される基本給付金は12回分となり,最後の支給分は日割り計算となります。
イ 平成30年中に支給される基本給付金は,
13万5000円×11回分
+13万5000円×16日/30日(13回目の支給分の日割り計算)
= 148万5000円+7万2000円
= 155万7000円であると思います。
ウ 修習終了日は毎年,二回試験の不合格発表日の翌日の水曜日となっています。
また,司法修習生の修習終了は,修習終了日に開催される最高裁判所裁判官会議(毎週水曜日開催)の報告事項になっています。
(2) 平成30年中に支給される住居給付金の金額
ア 大阪高裁管内のA班の71期司法修習生の場合,導入修習及び集合修習において通常は司法研修所の寮に居住しますところ,その期間(①平成29年11月27日~12月26日の1か月分,②平成30年8月14日~同月26日の日割り計算分及び③同月27日~9月26日の1か月分)については,実務修習地で空家賃を支払っていたとしても,住居給付金は支給されません。
そのため,実務修習地で部屋を借りている大阪高裁管内のA班の71期司法修習生の場合,2回目(事実上の初回)の支給日は平成30年2月15日となり,12回目(事実上の10回目)の支給日は修習終了日である同年12月12日となり,13回目(事実上の11回目)の支給日(最後)は平成31年1月15日となります。
イ 以上の事情を前提とした場合,平成30年中に支給される住居給付金は,
3万5000円×10回分
-3万5000円×13日/31日(9回目(事実上の8回目)となる平成30年9月18日の不支給分の日割り計算)
= 35万円-1万4677円
= 33万5323円であると思います。
(3) 平成30年に支給される基本給付金及び住居給付金の合計
155万7000円+33万5323円=189万2323円であり,この金額がそのまま雑所得の金額となります。

3 平成30年分所得税及び平成31年度住民税の試算の合計
(1) 生命保険料控除,社会保険料控除等が適用されず,基礎控除しか適用されないと仮定した場合の試算は以下のとおりです。
① 平成30年分所得税の試算
(189万2000円-38万円)×5%(所得税率)×1.021(復興特別所得税の加算)= 7万7187円→7万7100円
② 平成31年度住民税(神戸市在住の場合)の試算
(189万2000円-33万円)×10%(所得割)+5800円(均等割)
= 16万2000円
(2)ア 復興特別所得税は,平成25年分ないし平成49年分の所得税の2.1%です(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(復興財源確保法)13条)。
イ 所得税及び住民税では,課税標準額から1000円未満が切り捨てとなり,納税確定額から100円未満が切り捨てとなります(所得税につき国税通則法118条1項及び119条1項,住民税につき地方税法20条の4の2)。
ウ 個人住民税所得割の税率の内訳につき,平成29年度までは市民税が6%,県民税が4%でした。
また,平成29年度に政令指定都市に係る県費負担教職員の給与負担事務が道府県から政令指定都市へ事務移譲されたことに伴い(平成26年6月4日法律第51号による改正後の市町村立学校職員給与負担法1条及び2条参照),政令指定都市の場合,平成30年度からは市民税が8%,道府県民税が2%となりました(平成29年度は,経過措置として,個人住民税所得割のうち税率2%相当分が道府県から政令指定都市へ交付されました。)。
エ 5800円の均等割額の内訳は,神戸市の市民税が3500円であり,兵庫県の県民税が2300円です。
なお,個人住民税の均等割の標準税率は,市町村民税が3000円であり(地方税法310条),道府県民税が1000円です(地方税法38条)。
(3) 平成30年分所得税及び平成31年度住民税の試算の合計は,最大で23万9100円となります。
ただし,平成30年度の国民年金保険料,国民健康保険料等について社会保険料控除の適用を申請した場合,これよりも税金は安くなります。

4 平成31年度国民健康保険料の試算
(1)ア 国民健康保険料(介護分)の負担がない39歳以下の人が神戸市で1人世帯として国民健康保険に加入した場合,平成30年度算定用所得額は189万2000円-33万円=156万2000円となりますから,具体的な金額は以下のとおりとなります。
① 国民健康保険料(医療分)
156万2000円×8.17%(所得割額)+3万710円(被保険者均等割額)+2万1360円(世帯別平等割額)=17万9680円
② 国民健康保険料(後期高齢者支援金分)
156万2000円×3.11%(所得割額)+1万1670円(被保険者均等割額)+8110円(世帯別平等割額)-3870円(緩和措置)=6万4480円
イ 国民健康保険の算定用所得額を計算する場合,前年の総所得金額から控除されるのは基礎控除33万円(地方税法314条の2第2項)だけです(国民健康保険法81条・国民健康保険法施行令29条の7第2項第4号及び同条第3項第4号「基礎控除後の総所得金額等」参照)。
つまり,社会保険料控除等のその他の所得控除は適用されないということです。
(2) 平成30年度の神戸市の計算式を前提とした場合,平成31年度国民健康保険料は最大で24万4160円となります。

5 平成31年度の税金及び国民健康保険料の試算の合計
最大で23万9100円+24万4160円=48万3260円となります。

6 他の雑損失との損益通算は可能であること等
(1) 所得税法35条2項2号は,雑所得の金額について,「その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額」と定めています。
そのため,雑所得内で利益と損失がある場合には損益通算をすることができます。
(2) 修習給付金に基づく雑所得と,採点バイト等に基づく雑損失(バイト収入から書籍代等の必要経費を控除したことによる損失)との間で損益通算をすることはできます。
そのため,修習給付金に関する税金及び国民健康保険料を減らしたい場合,兼職許可を受けて採点バイト等を行い,雑損失を計上した方がいいかもしれません。
(3)ア 修習給付金に基づく雑所得と,事業的規模に至らない弁護士業務に基づく雑損失,つまり,弁護士登録費用に基づく雑損失との間で損益通算をすることができるかもしれません。
イ 弁護士登録をする場合,少なくとも以下の費用が必ず発生しますし,入会先の単位弁護士会ごとに別途,費用が発生します。
① 登録免許税6万円
・ 登録免許税法別表第一の「三十二 人の資格の登録若しくは認定又は技能証明」の「(三) 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第八条(弁護士の登録)の弁護士の登録」に基づくものです。
② 日弁連登録料1万円
・ 日弁連会則23条1項1号括弧書きに基づくものです。
③ 登録月の日弁連の会費
・ 平成30年6月以降,日弁連会費が6200円であり(日弁連会則95条2項),日弁連特別会費(日弁連会則95条の3)が4200円です。
ウ 大阪弁護士会で弁護士登録をする場合,大阪弁護士会の入会金として3万円,登録月の大阪弁護士会の会費として7000円を支払う必要があります(月額6000円の会館特別会費の徴収月を入会後3年を経過する月としてもらった場合)。
また,大阪弁護士会に入会してから4年以内に会館負担金会費40万円を支払う必要があります。
エ 東京弁護士会HP等に,弁護士登録時の必要費用等が詳しく書いてあります。
オ 弁護士会の会費は司法修習終了後の経過年数等によって異なります。
(4) 採点バイト等及び弁護士業務に基づく雑損失の計上については,税務調査(国税通則法74条の2ないし74条の13の2参照)で否認される可能性はあります。

7 その他
全般的な話については,「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」を参照して下さい。

修習給付金制度等に関する規則案についての司法研修所事務局長の説明

染谷武宣司法研修所事務局長は,平成29年7月12日の第33回司法修習委員会において以下の説明をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。

1 先般の通常国会において,法曹人材確保の充実・強化の推進等を図るために,司法修習生に対し修習給付金を支給する制度の創設などを行うことを内容とする裁判所法のー部を改正する法律が成立し,今年11月1日から施行されることになった。
これを受け,最高裁判所では,関連する最高裁判所規則の制定あるいは改正の作業を行ってきた。本日は,改正法と規則案の概要について御説明をし,現時点での規則案について御意見をお聞きしたい。

2(1) まず,裁判所法改正の概要から御説明する。今回の法改正は大きく分けて修習給付金制度の創設と司法修習生に対する懲戒に関する規定の整備の二つを内容とするものである。
(2)   修習給付金制度創設の目的,立法理由について,国会で答弁されたところを若干紹介すると,近年,法曹志望者が大幅に減少しており,新たな時代に対応した質の高い法曹を多数輩出してい〈ためにも,法曹志望者を確保していくということが喫緊の課題になっており,特に,法学部生に対する法曹志望に関するアンケート調査でも,貸与制も含めた法曹になるための経済的負担というところが不安要素のーつとして現れていて,平成27年6月の法曹養成制度改革推進会議決定においても,司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討することが求められたことから,今般,法曹人材確保の充実・強化の推進等を図るために修習給付金制度が創設されたということである。
(3) 修習給付金は,修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間において支給されるものである。
具体的には,司法修習生全員にー律に支給される基本給付金,自ら居住するために住宅を借り受けて家賃を支払っている場合に支給される住居給付金,修習に伴って住所又は居所を移転する必要が認められる場合に支給される移転給付金の3種類からなる。
これらの給付金の額は最高裁判所が定めるとされており,これから御説明する規則案で具体的な金額を定めているが,同金額は立法の立案過程の段階から念頭に置かれて議論が進んできたものであり,国会でもその旨答弁されたところである。
(4) なお,現行の貸与制については,この修習給付金制度の創設に伴い,貸与額を見直した上で併存させることになった。
また,裁判所法改正により,名称が従前の修習資金から修習専念資金と変更された。

3 続いて,懲戒に関する規定の整備について御説明する。
これは,品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない事由が認められる場合に,現在は罷免しか定められていないところ,これに加えて,修習の停止又は戒告の処分をすることができるようにするという内容である。
それらの処分に該当する事由等については最高裁判所が定めるとされており,これも後ほど規則案のところで御説明する。
今回の裁判所法改正に伴う最高裁判所規則の制定・改正としては,修習給付金関係で新規の規則を制定するほか,現行のニつの規則,貸与の関係の規則と司法修習生に関する規則をー部改正することとしている。

4(1) まず,司法修習生の修習給付金の給付に関する規則案から御説明する。
この規則は,修習給付金の額,支給要件,支給手続等を定めている。
現時点での具体的な条文案については,資料64を御覧いただきたい。
(2) 基本給付金の額については,2条1項のとおり,月額13万5000円を支給することとしている。
月額といっても,正確には,修習開始日から原則 1か月ずつの期間を取っていき,これを給付期間と呼び,このーつの給付期間ごとに13万5000円ということになる。
1か月に満たない最後の給付期間や,後ほど御説明する修習停止の期間については,その部分を控除して日割計算で支給額を計算することになる。
(3) 住居給付金については,4条2項で月額3万5000円を支給することとしている。
先ほど御説明した基本給付金と同様に,日割計算になる場合があるほか,4条3項各号にも日割計算になる期間が定められている。
特に,導入修習あるいは集合修習の期間中に司法研修所の寮あるいは自宅等に居住した場合には,この期間については.住居給付金は支給されないこととなる。
(4) 移転給付金については,10条,別表になるが,最高裁判所の定める路程,簡単にいえば距離に応じた定額を支給することとしており,具体的な支給額は別表で定めるという関係になる。
そして,具体的な距離の取り方については,採用時に住んでいた場所を管轄する地方裁判所と司法研修所との間,あるいは司法研修所と実務修習を行う地方裁判所との間を基準として計算することを予定している。
そして,住居給付金と移転給付金については,法律が定める要件を備えた司法修習生が届け出ると,これに基づいて支給されるという仕組になっている。

5 続いて,司法修習生に関する規則の一部改正案について御説明する。これは,法改正で司法修習生に対する懲戒に関する規定が整備されたことに伴い, 関連する最高裁判所規則を改正するというものである。
改正後の裁判所法6 8条が,成績不良,心身の故障等の事由による罷免を定めた1項と,司法修習生たるに適しない非行に当たる事由による罷免,修習の停止,戒告を規定した2項に分けられたことを受け,それぞれの事由を,司法修習生に関する規則,資料66の17条1項,2項で定めることとしている。
それに加え,新設される修習の停止について, 18条で,停止の期間を1 日以上20日以下とし,停止を命ぜられた司法修習生はその停止の期間中は修習をすることができず,また,修習給付金,具体的には基本給付金と住居給付金の給付を受けることができないと定めている。

6 最後に,司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則のー部改正について, 資料66を御覧いただきたい。
修習給付金制度の創設に伴い,現在23万円である貸与の基本額を月額10万円に変更すること,基本額からの増減については,扶養家族がある場合の2万5000円の加算のみ維持し,現行の貸与制における住居を賃借している場合の増額,基本額未満の貸与を廃止することとなる。
なお,住宅を借りている場合の加算は住居給付金で賄われることとなる。

7 以上が最高裁判所規則案の概要である。いずれの規則も改正裁判所法と同じく本年11月1日の施行を予定している。

同日の司法修習委員会議事録31頁には「修習給付金制度等に関する規則案については,委員会で議論した結果,現時点での規則案のとおり制定ないし改正することが相当である。」と書いてあります。
「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照してください。

司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等

1   司法修習生の給費制が実施されていた現行65期までの司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです(平成25年12月17日開催の第5回法曹養成制度改革顧問会議の資料3-1「司法修習生に対する支給等一覧」参照)。
① 月額20万4200円(新64期の場合)の給料,地域手当,扶養手当等を支給されており,給与所得として給与所得控除が適用されました。
② 裁判所共済組合の組合員として各種の給付を受けることができました。
③ 実務修習中,通勤手当,住居手当及び寒冷地手当を支給されていました。
④ 集合修習中,通勤手当,住居手当及び日額旅費を支給されていました。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員として,引き続き短期給付及び福祉事業を受けることができました(共済組合の任意継続組合員の意義につき,文部科学省共済組合HPの「退職後の医療」参照)。
(3)ア 裁判所共済組合への加入実績に基づき,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらえます。
  私のねんきん定期便によれば,59期徳島修習(1年6月の修習)(調整手当→地域手当は0%)で扶養手当をもらっていなかった私の場合,公務員厚生年金からの老齢厚生年金は年額2万7407円です。
イ 平成27年10月1日,共済年金は厚生年金に統合された結果,公務員厚生年金となりました(外部HPの「共済年金は厚生年金に統一されます」参照)。 
ウ 平成28年7月27日発表の平成27年簡易生命表の概況によれば, 平成27年現在,30歳男性の平均余命は51.46年であり(平均で81.46歳まで生きるということ。),30歳女性の平均余命は57.51年です(平均で87.51歳まで生きるということ。)。
  65歳から老齢厚生年金を受給できますから, 男性であれば平均で16.46年間,女性であれば平均で22.51年間,公務員厚生年金から老齢厚生年金を受給できることとなります。
エ 今後の年金の状況については,厚生労働省HPの「いっしょに検証!公的年金」にある,「財政検証結果レポート」(発表年は16年,21年及び26年)が非常に参考になります。

2 司法修習生の修習給付金が実施される71期以降の司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです。

① 月額13万5000円の基本給付金,月額3万5000円の住居給付金及び引越のための移転給付金は出ますものの,基本給付金及び住居給付金については雑所得として課税の対象となりますし,地域手当及び扶養手当はありません。
② 修習給付金は給与ではない点で裁判所共済組合の組合員となることはできません(国家公務員共済組合法2条1項1号・国家公務員共済組合法施行令2条2項4号「国及び行政執行法人から給与を受けない者」参照)から国民年金及び国民健康保険となります。
③ 実務修習中,通勤手当は出ませんから交通費は自腹になりますし,寒冷地手当は出ませんから寒冷地の実務修習地における暖房代等は自腹になります。
④ 集合修習中,通勤手当及び日額旅費は出ませんから交通費は自腹になります。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員となることはできません。
(3) 裁判所共済組合への加入実績がありませんから,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらうことはできません。

3 給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧等
(1) 平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料14(PDF77頁,末尾73頁)に,給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧表が載っています。 

(2)   新64期司法修習生の場合,毎月20万4200円の給与を支給されていたほか,諸手当として以下のものがありました。
① 扶養手当
   配偶者につき1万3000円,配偶者以外の扶養親族一人につき6500円等

② 住居手当
   家賃額に応じて2万7000円を限度に支給

③ 通勤手当
   交通機関等の利用者について一ヶ月あたり5万5000円を限度に支給

   自転車等の使用者について使用距離に応じて2000円~2万4500円を支給
④ 地域手当
   支給対象地域で修習を行う者について,給与月額等に,修習地の区分に応じた割合(3%~18%)を乗じて得た額を支給

⑤ 寒冷地手当
   支給対象地域で修習を行う者について,11月から3月までの間,修習地の区分等に応じて7360円~2万6380円を支給

⑥ 期末手当
   年間で,給与月額等の2.6月分を支給

⑦ 勤勉手当
   年間で,給与月額等の1.29月分を支給 


4 他の公的な研修制度の取扱い
   平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料15(PDF79頁,末尾75頁)によれば,他の公的な研修制度の取扱いは以下のとおりです。

① 防衛大学校
   陸上・海上・航空の各自衛隊の幹部自衛官となる者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は4年です。

② 防衛医科大学校
   医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は6年です。

③ 税務大学校
   税務職員に対する必要な研修等を目的としており,身分は税務職員であり,終了後は引き続き税務職員として勤務し,給与が支給され,期間は個々の研修によります。

④ 警察大学校
   上級幹部に対して必要な知識,技能,指導能力及び管理能力を習得させるための教養等を目的としており,身分は警察官であり,終了後は引き続き警察官として勤務し,給与が支給され,期間は個々の教養課程によります。

⑤ 航空大学校
    航空機の操縦士の教育訓練を目的としており,身分は学生(非公務員)であり,終了後は民間企業等への就職等であり,給与等の支給はなく,期間は2年です。


5 平成17年度決算検査報告における指摘
   最高裁判所ほか79裁判所は,会計検査院の平成17年度決算検査報告において,自動車等を使用して通勤する職員等に対する通勤手当の認定等を適切に行い、適正な支給額となるよう改善させられました(平成17年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項参照)。

6 「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。

月額3万5000円の住居給付金の根拠

1 平成29年3月22日の,井出庸生衆議院議員(民進党)に対する国会答弁資料7頁に以下の記載があることから,月額3万5000円の住居給付金は,生活保護法における単身世帯の住居扶助額に合わせたのだと思います。

・ 司法修習生が住宅を借り受け,家賃を支払っている場合には,住居給付金として月額3.5万円を支給することを予定。
   この金額は,法曹人材確保の充実・強化の推進を図るという制度の導入理由のほか,ほかの給付制度との比較(注),司法修習生の生活実態その他の諸般の事情を総合考慮して決定したものである。
(注)生活保護法における単身世帯の住居扶助額の全国平均は月額3万4,542円。
   なお,国家公務員については,一般職の職員の給与に関する法律に基づき,住居手当については,月額2万7,000円を上限として支給される。

2 生活保護の総合情報サイトに「各都道府県別住宅扶助上限額」(平成27年7月改正後のもの)が載っています。

3 「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。

月額13万5000円の基本給付金の根拠

1 平成29年3月22日の衆議院法務委員会における国会答弁資料(右側の写真データ参照)には,以下の趣旨の記載があります。
・ 日弁連が実施した第68期司法修習生の修習実態アンケート結果によれば,修習生の実務修習期間中の標準的な1か月の支出状況は,平均支出月額が約18万1000円であり,
・ このうち,住居費の支出を要しない自宅等からの通所者の平均支出月額が約13万5000円,
・ うち,アパートを借りるなどして住居費の支出を要する者の平均支出月額が約20万7000円となっている。

2 「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」には,13万5000円の基本給付金に関して,以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
(1) 日本弁護士連合会が第68期の司法修習生を対象に実施した「修習実態アンケート」によれば,以下のとおり,修習期間中に生活実費及び学資金として月額おおむね13.5万円程度の支出がされている。
(内訳)
① 生活実費(合計約9.4万円)
・ 食   費(約4.0万円)
・ 交 通 費(約0.9万円)
・ 情報通信費(約0.9万円)
・ 水道光熱費(約1.0万円)
・ 就職活動費(約1.1万円)
・ 諸雑費(医療費・衣服費等)(約1.5万円)
※ アンケートに回答した全ての司法修習生の平均値。なお,食費及び水道光熱費については,回答中75%を占める住居費支出のある司法修習生の平均値。
② 学資金(合計約4.0万円)
・ 学 習 費(約1.0万円)
・ 書 籍 代(約0.8万円)
・ OA機器購入費(約1.2万円)
・ 勉強会参加費(約1.0万円)
※ 学習費についてはアンケートに回答した全ての司法修習生の平均値。勉強会参加費は,アンケート結果の交際費(2.7万円)のうち,業務時間外に庁舎や会議室等で行う弁護士等との勉強会の参加費用として日弁連が推計した金額。書籍代及びOA機器購入費は,法曹に必要な能力の修得に資する関連書籍・判例集等やパソコン本体・周辺機器等の初期投資費用を月割で按分した金額として,日弁連が推計した金額
(2) 基本給付の額については,以上のような生活実費及び学習費等に関する司法修習生の生活実態(注1)のほか,法曹人材確保の充実・強化の推進等といった修習給付金制度の導入理由(注2),貸与制との連続性(注3),類似の給付・貸付制度(別紙「生活費等の給付・貸付制度」参照)との均衡等を総合考慮したうえで決定されたものである。
 
(注1)このほか,一般的な生活実態としては,総務省統計局が公表している平成27年度の「家計調査」によれば,単身世帯(全国の全世帯対象。ただし,学生の単身世帯等を除く。)の消費支出は合計約16.0万円(食費約4.0万円,住居費約2.0万円,水道・光熱費約1.2万円,交通・通信費約1.9万円,被服・履物費約0.7万円,諸雑費約1.4万円,教養娯楽費約1.8万円)となっている。
(注2)法曹人材確保の観点から,日本弁護士連合会は,司法修習生に対する給付額として,大学院卒者の平均給与額と同水準を要望していたところ,厚労省「平成28年賃金構造基本統計調査」によれば,大学院卒者の平均給与額は23万1400円(男女計・初任給)である。(注3)現行貸与制では,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金として,月額23万円(基本額)を司法修習生の希望者に貸与されている。後記2のとおり,修習給付金(基本給付額)と貸与額(基本額)を合わせた額は23.5万円となる予定である。

3 「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。

司法修習生の修習給付金の名称に関する説明

○修習給付金の名称に関する説明が書いてある,法務省が作成した「「修習給付金(仮称)」の名称について」の本文は以下のとおりです。
「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。

1 名称に「給付金」を用いる理由
   司法修習生に対して支給される渡し切りの金銭(修習給付金(仮称))の名称については,用例上,「手当」又は「給付金」を用いることが考えられる。このうち,「手当」については,一般的には,「労働・勤務などの報酬として与える金銭。また,基本的な給料などのほかに支給する金銭。」(広辞苑)を意味するものとされており,用例上も,「児童手当」など給与ではない支給金の名称に用いられる例もあるものの,「期末手当」「住居手当」など,基本的には本給に付随する給与の名称に用いられる例が多い。これに対し,「給付金」は,犯罪被害者等給付金(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律)や,「老齢年金生活者支援給付金」(年金生活者支援給付金の支給に関する法律)など,支給対象者の生活を支援する等の目的で無償で支給される金銭の名称として用いられる例が多く,反対に,給与の名称として用いられている例は見当たらない。

   司法修習生は,公務員ではなく,国に対して何らかの職務を行う立場にはなく,本改正法案により司法修習生に支給される渡し切りの金銭(修習給付金) は,(司法修習生の生活支援を通じて)修習専念義務を確保するために,修習資金の一部として支給されるものであり,司法修習生の給与として支給されるものではない。このような修習給付金の性格及び上記の用例によれば,修習給付金の名称に「給付金」を用いることにつき,用例上問題はないと考えられる。
   また,修習給付金の支給額については,現在,修習期間中の約1年間にわたり,月額10万円から20万円の範囲内の金額を支給する方向で調整が進められている。他の給付金制度としては,①雇用保険を受給できない求職者が公共職業訓練等を受講することを容易にするため,当該求職者に対し,訓練期間(概ね3月から1年)中,月額10万円を支給する職業訓練受講給付金制度(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律)や,②雇用保険に加入している育休取得中の者に対し,子が1歳(両親が取得する場合は1歳2か月)に達するまでの間,賃金の一定割合(50%ないし67%)の金額を支給する育児休業給付金制度(雇用保険法)等がある。
2 「修習給付金」の名称を用いる理由 
   法令上の「給付金」の名称については,犯罪被害者等給付金(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律),特定B型肝炎ウイルス感染者給付金(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法)のように,その支給の客体に着目した名称,職業訓練受講給付金(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律),育児休業給付金(雇用保険法)のように,支給対象者が置かれた状況に着目した名称のほか,老齢年金生活者支援給付金(年金生活者支援給付金の支給に関する法律),被害回復給付金(犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律)のように,その支給目的に着目した名称があると考えられる。
   本改正法案による給付金については,司法修習を実施している司法修習生に対して支給されるものであり,「修習資金」(本改正法案による改正前の裁判所法第67条の2)との平灰も考慮して,支給対象者が置かれた状況に着目して「修習給付金」との名称にした。

司法修習生の修習給付金の導入理由等

○修習給付金の導入理由等が書いてある,法務省が作成した「修習給付金(仮称)について」の本文は以下のとおりです。
「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。

1 制度内容 

   司法修習生全員に対し,修習給付金(仮称)を支給する制度を導入する。
   なお,現行の貸与制については,貸与額等を見直した上で,新設する上記制度と併存させる。

2 導入理由
(1)   司法修習生の修習専念義務を担保するための財政的措置の経緯 
   戦後,法曹三者を統一的に養成する司法修習制度の創設に伴い,司法修習生に対し国が給与を支給する制度(給費制)が導入された。
   その後,司法制度改革のー環として,新たな法曹養成制度の整備に伴い,平成16年,給費制に代えて,国が修習資金を無利息で貸与する制度 (貸与制)を導入する裁判所法改正法案が成立した。貸与制は,平成22年議員立法により,その施行がー年延期された後,新65期司法修習生(平成23年11月修習開始)から開始されている。加えて,最高裁判所において,第67期司法修習生(平成25年11月修習開始)から,分野別実務修習開始時における転居費用の支給,集合修習期間中に司法研修所内の寮への入寮を希望する者のうち通所圏内に住所を有しない者への入寮に関する配慮,兼業許可基準に関する運用の緩和の措置が実施されている。
(2)   貸与制導入時からの状況の変化
   平成16年裁判所法改正時の貸与制導入時には,その立法理由として,司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)において,「平成22年ころには司法試験の合格者数を3, 000人程度とすることを目指す」とされたことを前提に,①新たな法曹養成制度の整備に当たり,司法修習生の増加に実効的に対応できる制度とする必要があること,②新たな法曹養成制度の整備や日本司法支援センター(法テラス)の創設,裁判員制度の導入等,新たな財政負担を伴う司法制度改革の諸施策を進める上で,限りある財政資金をより効率的に活用し,司法制度全体に関して国民の理解が得られる合理的な国民負担(財政負担)を図る必要があること,③公務員ではなく公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは現行法上異例の制度であること等を考慮すれば,給費制の維持について国民の理解を得るのは困難であることが挙げられていた。
   しかしながら,①の点については,司法試験の年間合格者数3, 000人目標は現実性を欠くものとして「法曹養成制度改革の推進について」(平成25年7月16日法曹養成制度関係閣僚会議決定)において事実上撤回されており平成27年度の司法修習生数は1,787人と,給費制下の平成22年度(2, 124 人)よりも少なくなっている。
   また,②の点についても,司法制度改革関連予算については,貸与制創設当初には想定されていなかった上記3,000人目標の撤回や法科大学院の統廃合等(平成17年度のピーク時には74校あったが,平成28年5月現在,32 校が学生の募集を停止しており,学生の募集をしているのは42校のみ)を背景に平成22年度(567億円)をピークに減少傾向にあり,平成28年度予算では約450億円程度にまで減少している。
   このように,貸与制創設当初は想定されていなかった様々な事情を背景として,現時点では,貸与制導入時から大きな事情の変化が認められる。
   なお,③の点についても,導入予定の制度は,貸与制を前提とするものであり,給与を支給する給費制を復活させるものではなく,制度の連続性・整合性は維持されており,必ずしも妥当しない。

3 司法修習生に対する追加的な支援措置の必要性 
   司法修習生の貸与制の導入を1年延期する平成22年裁判所法改正後,法曹養成フオーラムにおいて法曹の所得調査が実施され,同調査結果等に基づき貸与制を基本とすることが決定された。しかしながら,本年3月,法務省が日弁連・最高裁の協力の下で実施した法曹の所得調査では,弁護士の所得が平成22年の調査時に比べ明らかに減少しており,特に,貸与制導入以降の新65期以降の若手弁護士の所得は,例えば,登録1年の弁護士の所得については58期(平成18年分)では平均値が690万円,中央値が600万円であったのに対し,67期(平成27年分)では平均値が327万円,中央値が317万円となるなど,所得の低い層が拡大している。このように,貸与制を基本とすることの前提とされた弁護士の経済状況についても大きな変化が認められており,現行のような貸与制をそのまま継続すれば,返済に窮する弁護士も出てくるおそれもあり,その安定的な運用に支障を来すおそれがある。
   また,法曹志望者数についても,法科大学院志願者数は平成16年当時は7万2,800人であったのが本年には僅か8, 278人に減少し,適性試験の志願者数も平成15年当時は5万9, 393人であったのが本年には僅か3, 535人に減少するなどしており,こうした傾向に歯止めをかけ,法曹志望者を確保することが喫緊の課題である。「経済財政運営と改革の基本方針2016(本年6月2日閣議決定)や「未来への投資を実現する経済対策」(本年8月2日閣議決定)も,「司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化等…を推進する」ことを求めている。
   法務省・文科省が共同で本年9月~10月に実施した法学部生に対するアンケートにおいても,「法曹等を志望するに当たって感じている不安や迷いは何ですか」という質間に対し,制度的な要因の中では最も多くの学生が「司法修習の1年間,貸与制の下で給与の支給を受けられない」ことを1位に挙げている。また,日弁連のアンケートによれば,68期司法修習生の回答者の約65%が司法試験や法曹を目指すに当たり,経済的不安を感じており,進路選択を迷ったと回答しており,進路選択に迷った者のうち約20%が司法修習の辞退を考えたことがあり,うち約71%がその理由として「貸与制に移行したことによる経済的不安」を挙げている。このような法曹志願者数の減少は,法曹の給源である法曹志願者や司法修習生の質の低下を招き,ひいては有為な法曹の減少につながりかねないものであるから,公共的・公益的使命を有する法曹の役割の重要性に鑑み,経済的不安による法曹志望の阻害要因の除去を図るため,司法修習生に対し,修習給付金(仮称)を支給することとし,併せて法曹の資格要件としての司法修習の確実な履践を担保し,その実効性の更なる確保を図るための方策を導入するとともに,司法修習を終えた者の公益性を高めるための措置を設けることとしたい。