元号の改定に伴う訟廷事務及び執行官事務の取扱い

第1 元号の改定に伴う訟廷事務の取扱い
元号の改定に伴う訟廷事務の取扱いについて(平成31年2月5日付の最高裁判所総務局第三課長の事務連絡)の本文は以下のとおりです。
1 新元号は,元号を改める政令が施行される日から使用する。
2 事件関係の帳簿及び諸票(以下「帳簿諸票」という。)等の備付けについては,元号の改定に伴って別冊とする必要はない。
3 帳簿諸票等の記載については,次のとおりとする。
(1) 新元号の初年度の表示は,「元年」とする。
(2) 事件番号等の年度の初めから登載順に通し番号を記載するとされている番号は,司法年度の終期(12月31日)まで従前の番号に連続する番号を記載する。例えば,地方裁判所に備え付けられた民事・行政第一審事件簿において元号の改定前最後に登載された通常訴訟事件の事件番号が100号である場合,元号の改定後最初に登載される通常訴訟事件は,次のように表示されることとなる。
(新元号)元年(ワ)第101号
4 3の(1)にかかわらず,業務系システムの仕様により新元号の初年度の表示が「1年」となるものについては,これを「元年」と訂正等する必要はない。

第2 元号の改定に伴う執行官事務の取扱い
元号の改定に伴う執行官事務の取扱いについて(平成31年2月5日付の最高裁判所民事局第三課長の事務連絡)の本文は以下のとおりです。
1 新元号は,元号を改める政令が施行される日から使用する。
2 事件関係の帳簿及び物品保管票(以下「帳簿等」という。)の備付けについては,元号の改定に伴って別冊とする必要はない。
3 帳簿等の記載については,次のとおりとする。
(1) 新元号の初年度の表示は,「元年」とする。
(2) 事件番号等の年度の初めから登載順に通し番号を記載するとされている番号は,司法年度の終期(12月31日)まで従前の番号に連続する番号を記載する。例えば,執行官室に備え付けられた強制執行等事件簿において元号の改定・前最後に登載された金銭債権についての動産に対する強制執行事件の事件番号が100号である場合,元号の改定後最初に登載される金銭債権についての動産に対する強制執行事件は,次のように表示されることとなる。
(新元号)元年(執イ)第101号
4 3の(1)にかかわらず,業務系システムの仕様により新元号の初年度の表示が「1年」となるものについては, これを「元年」と訂正等する必要はない。

最高裁判所裁判官国民審査制度の合憲性に関する最高裁判所の判決

目次
第1 最高裁大法廷昭和27年2月20日判決(全員一致)
第2 最高裁昭和35年4月14日判決(全員一致)
第3 最高裁昭和40年9月10日判決(全員一致。ただし,補足意見あり)
第4 最高裁昭和47年7月20日判決(全員一致)
第5 最高裁昭和47年7月25日判決(全員一致)
第6 最高裁平成31年3月12日判決(全員一致)
* ナンバリング及び改行を行った上で,以下のとおり掲載しています。

第1 最高裁大法廷昭和27年2月20日判決(全員一致)
1(1) 最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質において所謂解職の制度と見ることが出来る。
   それ故本来ならば罷免を可とする投票が有権者の総数の過半数に達した場合に罷免されるものとしてもよかったのである。

(2) それを憲法は投票数の過半数とした処が他の解職の制度と異るけれどもそのため解職の制度でないものとする趣旨と解することは出来ない。只罷免を可とする投票数との比較の標準を投票の総数に採っただけのことであって、根本の性質はどこ迄も解職の制度である。このことは憲法79条3項の規定にあらわれている。
同条2項の字句だけを見ると一見そうでない様にも見えるけれども、これを3項の字句と照し会せて見ると、国民が罷免すべきか否かを決定する趣旨であって、所論の様に任命そのものを完成させるか否かを審査するものでないこと明瞭である。この趣旨は一回審査投票をした後更に10年を経て再び審査をすることに見ても明であろう。

2(1)  一回の投票によって完成された任命を再び完成させるなどということは考えられない。
論旨では期限満了後の再任であるというけれども、期限がきれた後の再任ならば再び天皇又は内閣の任命行為がなければならない。
国民の投票だけで任命することは出来ない。最高裁判所裁判官は天皇又は内閣が任命すること憲法6条及び79条の明定する処だからである。
なお論旨では憲法78条の規定を云為するけれども、79条の罷免は裁判官弾劾法の規定する事由がなくても、国民が裁判官の人格識見能力等各種の方面について審査し、罷免しなければならないと思うときは罷免の投票をするのであって、78条とは異るものである。
しかのみならず一つ事項を別の人により、又別の方法によって二重に審査することも少しも差支ないことであるから、79条の存するが故に78条は解職の制度でないということは出来ない。
最高裁判所裁判官国民審査法(以下単に法と書く)は右の趣旨に従って出来たものであって、憲法の趣旨に合し、少しも違憲の処はない。

(2)  かくの如く解職の制度であるから、積極的に罷免を可とするものと、そうでないものとの2つに分かれるのであって、前者が後者より多数であるか否かを知らんとするものである。
論旨にいう様な罷免する方がいいか悪いかわからない者は、積極的に「罷免を可とするもの」に属しないこと勿論だから、そういう者の投票は前記後者の方に入るのが当然である。
それ故法が連記投票にして、特に罷免すべきものと思う裁判官にだけ×印をつけ、それ以外の裁判官については何も記さずに投票させ、×印のないものを「罷免を可としない投票」(この用語は正確でない、前記の様に「積極的に罷免する意思を有する者でない」という消極的のものであって、「罷免しないことを可とする」という積極的の意味を持つものではない、以下仮りに白票と名づける)の数に算えたのは前記の趣旨に従ったものであり、憲法の規定する国民審査制度の趣旨に合するものである。
罷免する方がいいか悪いかわからない者は、積極的に「罷免を可とする」という意思を持たないこと勿論だから、かかる者の投票に対し「罷免を可とするものではない」との効果を発生せしめることは、何等意思に反する効果を発生せしめるものではない。解職制度の精神からいえば寧ろ意思に合する効果を生ぜしめるものといって差支ないのである。
それ故論旨のいう様に思想の自由や良心の自由を制限するものでないこと勿論である。

3 最高裁判所の長たる裁判官は内閣の指名により天皇が、他の裁判官は内閣が任命するのであって、その任命行為によって任命は完了するのである。このことは憲法6条及び79条の明に規定する処であり、此等の規定は単純明瞭で何等の制限も条件もない。所論の様に、国民の投票ある迄は任命は完了せず、投票によって初めて完了するのだという様な趣旨はこれを窺うべき何等の字句も存在しない。
それ故裁判官は内閣が全責任を以て適当の人物を選任して、指名又は任命すべきものであるが、若し内閣が不適当な人物を選任した場合には、国民がその審査権によって罷免をするのである。この場合においても、飽く迄罷免であって選任行為自体に関係するものではない。国民が裁判官の任命を審査するということは右の如き意味でいうのである。
 それ故何等かの理由で罷免をしようと思う者が罷免の投票をするので、特に右の様な理由を持たない者は総て(罷免した方がいいか悪いかわからない者でも)内閣が全責任を以てする選定に信頼して前記白票を投ずればいいのであり、又そうすべきものなのである(若しそうでなく、わからない者が総て棄権する様なことになると、極く少数の者の偏見或は個人的憎悪等による罷免投票によって適当な裁判官が罷免されるに至る虞があり、国家最高機関の一である最高裁判所が極めて少数者の意思によって容易に破壊される危険が多分に存するのである)。これが国民審査制度の本質である。
それ故所論の様に法が連記の制度を採ったため、2、3名の裁判官だけに×印の投票をしようと思う者が、他の裁判官については当然白票を投ずるの止むなきに至ったとしても、それは寧ろ前に書いた様な国民審査の制度の精神に合し、憲法の趣旨に適するものである。決して憲法の保障する自由を不当に侵害するなどというべきものではない。

4  総ての投票制度において、棄権はなるべく避けなければならないものであるが、殊に裁判官国民審査の制度は前記の様な次第で棄権を出来るだけ少なくする必要があるのである。
そして普通の選挙制度においては、投票者が何人を選出すべきかを決するのであるから、誰を選んでいいかわからない者は良心的に棄権せざるを得なくなるということも考えられるのであるが、裁判官国民審査の場合は、投票者が直接裁判官を選ぶのではなく、内閣がこれを選定するのであり、国民は只或る裁判官が罷免されなければならないと思う場合にその裁判官に罷免の投票をするだけで、その他については内閣の選定にまかす建前であるから、通常の選挙の場合における所謂良心的棄権という様なことも考慮しないでいいわけである。
 又投票紙に「棄権」という文字を書いてもそれは余事記入にならず、有効の投票と解すべきものであるとの論があるけれども現行法の下では無理と思う。
原判決は措辞において多少異る処があるけれども、結局本判決と同趣旨に出たもので正当であり論旨は理由なきに帰する。

5 裁判官の取扱つた事件に関する裁判上の意見を具体的に表示せず、ただ事件名のみを記載しても、毫も国民審査法施行令第二六条の条件に反するものではない。
原判決は結局右と同旨に出でたものであるから、何等所論の違法はなく、論旨は理由がない。

第2 最高裁昭和35年4月14日判決(全員一致)
所論原判決の判断、すなわち要するに、憲法七九条二項所定の最高裁判所裁判官国民審査は、一種の解職投票制度であつて、裁判官任命の適否を審査決定
する制度でない旨、並びに、国民審査における問題は、罷免を可とするとの投票が多数をしめるかどうかであつて、同審査において審査人に対して求められる投票は罷免を可とする投票か可とする投票でない投票かのいずれかであつて、国民審査法二九条、三二条、三三条などに「罷免を可としない投票」とは後者を意味し、後者の投票をしようとする審査人は、なんらの記入をしないで投票することにしたのは、国民審査の憲法上の性質に合致する旨の各判断は、いずれも正当であつて、これと同一趣旨である所論引用の当裁判所大法廷判例(民事判例集六巻二号一二二頁以下)を変更すべきものとは認められない。

第3 最高裁昭和40年9月10日判決(全員一致。ただし,補足意見あり)
1 全員一致の多数意見
最高裁判所裁判官についても、その罷免の事由は憲法七八条所定のものに限定され、従つて同法七九条二項はその解職についての定めではなくして、右裁

判官の任命行為の審査を規定したものでなければならないとし、同条三項にいう罷免を、任命を否とする審査の結果を解除条件の成就とする任命行為の失効とみる所論は首肯しがたく、前示大法廷判決を変更する要は認められない。

2 裁判官奥野健一の補足意見
① 憲法七九条二項は「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議院総選挙の際国民の審査に付し……」と規定しているのであるから、国民の審査の対象は、任命自体であると解するのが最も素直な解釈であると思う。
また、その後十年を経過した後行われる国民審査の対象も、当該裁判官の任命後の裁判において示した意見、職務遂行の実績その他の事項を考慮して、更にその任命の適否を審査するものと考える。
かくの如くにして憲法は、司法の最高の地位にある最高裁判所の裁判官の任命について、広く国民の審査に付して、民意を反映せしめ、もつて、司法裁判が国民の信託に由来するものであるとの民主主義の原理に即応せしめんとするものであると解する。
② そして、裁判官の任命を審査するとは、当然その裁判官が果して最高裁判所の裁判官として適任であるか否かを審査することであつて、審査人である国民が審査の結果、その裁判官を不適任と判断したときは、当該裁判官について罷免を可とする投票を行い、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は罷免されるのである。(同法同条三項。)
 すなわち、憲法は罷免を可とする投票が有効投票の多数(過半数)を占めるに至つたときに限り、当該裁判官は罷面されるものとしているのであるから、積極的に罷免を可とする旨の投票以外の投票は、これを罷免投票の数に算入しない趣旨であること明らかであり、従つて、必ずしも罷免投票と積極的な信任投票を要求しているものと解さなければならないものではない。最高裁判所裁判官国民審査法は、右憲法の趣旨に反するものではないから、違憲ではない。

第4 最高裁昭和47年7月20日判決(全員一致)
1 最高裁判所の裁判官は、天皇または内閣によつて任命されるものであつて、その任命行為によつて任命が完了すること、憲法七九条による国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度と見ることのできるものであること(昭和二四年(オ)第三三二号同二七年二月二〇日大法廷判決・民集六巻二号一二二頁)、そして、国民審査において投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、解除条件の成就により当該裁判官の任命が失効すると解すべきでないこと(昭和三九年(行ツ)第一〇七号同四〇年九月一〇日第二小法廷判決・裁判集民事八〇号二七五頁)は、すでに当裁判所の判例とするところである。
論旨は、任命自体の審査と任命後の解職とを峻別したうえ、憲法七九条による国民審査は、任命自体について行なわれなければならない旨を強調するけれども、「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付」されるのであつて(憲法七九条二項)、この任命後最初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもつものということもでき、右の審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら、所論のように、最高裁判所の裁判官の任命に国民の意思を反映せしめるという趣旨が失われることにはならない。
2 原判決は、本件において、衆議院議員選挙の投票所と国民審査の投票所との入口および出口が同一で、しかも一カ所ずつしか設けられていなかつたとはいえ、選挙の投票をした者が、(一)審査の投票をしないで場外に出ることを妨げられるような強制措置が講ぜられた事実、(二)審査の投票用紙の受領を強制された事実、(三)審査の投票用紙を投票函に投入することを強制された事実は、なんら認められないとするのである。
しかる以上、本件審査において、身体の自由、表現の自由の侵犯はないとした原判決は相当である。
3 原判決は、投票用紙に連記された裁判官の一部につき審査人が棄権しようとするときは、投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に棄権の意思を表示し、あるいはその氏名を抹消する等して投票することにより、棄権することが認められる旨を判示するが、かかる解釈をとることは、最高裁判所裁判官国民審査法二二条一項の規定に照らして困難であり、原判決の判断は、この点において違法たるを免れない。
しかしながら、投票用紙に連記された裁判官数名のうち、その一部についてのみ×印の投票をしようとする者が、その他の裁判官については当然白票(積極的に罷免を可とするものでない投票)を投ずるの止むなきに至つたとしても、なんら憲法の保障する自由を侵害するものでないことは、当裁判所の判例とするところ(前記大法廷判決参照)であつて、原判決は、その結論において相当である。
4 罷免を可とする積極的な意思を有する×印の投票以外のものを、すべて「罷免を可としない投票」として取り扱うことが、なんら所論憲法一九条、二一条に反するものでないことは、当裁判所の判例とするところである(前記大法廷判決参照)。
また、本件審査が身体の自由を侵害した旨の論旨の理由のないことは、第二点につき説示したとおりである。

第5 最高裁昭和47年7月25日判決(全員一致)
1 最高裁判所の裁判官は、天皇または内閣によつて任命されるものであつて、その任命行為によつて任命が完了すること、憲法七九条による国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度であること、そして、国民審査において投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、解除条件の成就により当該裁判官の任命が失効する旨の所論の採用し難いことは、すでに当裁判所の判例とするところである(昭和二四年(オ)第三三二号同二七年二月二〇日大法廷判決・民集六巻二号一二二頁昭和三九年(行ツ)第一〇七号同四〇年九月一〇日第二小法廷判決・裁判集民事八〇号二七五頁)。
論旨は、任命自体の審査と任命後の解職とを峻別したうえ、憲法七九条による国民審査は、任命自体について行なわれなければならない旨を強調するけれども、「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付」されるのであつて(憲法七九条二項)、この任命後最初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもつものということもでき、右の審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら、所論のように、最高裁判所の裁判官の任命に国民の意思を反映させるという趣旨が失われることにはならない。

2 所論のような投票所の施設は、むしろ投票人の便宜のためのものにすぎない。そして、具体的に本件において、衆議院議員選挙の投票をした者が、(一)国民審査の投票をしないで場外に出ることを妨げるような強制措置が講ぜられたとか、(二)審査の投票用紙の受領を強制されたとか、(三)審査の投票用紙を投票箱に投入することを強制されたとかの事実は、なんら上告人らの原審において主張せず、したがつてまた原審の確定しないところであり、選挙の投票をした者が審査の投票所を通過することになつていたからといつて、出頭を強制されたことにならないことは、いうまでもないところである。

3 審査の投票用紙に連記された裁判官数名のうち、その一部についてのみ×印の投票をしようとする者が、その他の裁判官については当然白票(積極的に罷免を可とするものでない投票)を投ずるの止むなきに至つたとしても、なんら憲法の保障する自由を侵害するものでないことは、当裁判所の判例とするところであつて(前記大法廷判決参照)、原判決理由二の(三)の判示は相当である。

4 罷免を可とする積極的な意思を有する×印の投票以外のものを、すべて「罷免を可としない投票」として取り扱うことが、なんら所論憲法一九条、二一条に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするところであり(前記大法廷判決参照)、本件審査が同法一三条に違反する旨の論旨がその前提を欠くことは、第二点につき説示したところからしても明らかである。

第6 最高裁平成31年3月12日判決(全員一致)
1 国民審査法36条の審査無効訴訟は,行政事件訴訟法5条に定める民衆訴訟として,法律に定める場合において法律に定める者に限り提起することができるものであるところ(同法42条),国民審査法37条1項は上記の審査無効訴訟において主張し得る審査無効の原因を「この法律又はこれに基いて発する命令に違反することがあるとき」と規定している。
これは,主として審査に関する事務の任にある機関が審査の管理執行の手続に関する明文の規定に違反することがあるとき又は直接そのような明文の規定は存在しないが憲法において定められた最高裁判所裁判官の解職の制度である国民審査制度の基本理念が著しく阻害されるときを指すものと解されるところ,年齢満18歳及び満19歳の日本国民につき衆議院議員の選挙権を有するとしている本件規定が違憲である旨の主張が,上記のような無効原因に当たることをいうものとはいえない。
2 以上によれば,国民審査法36条の審査無効訴訟において,審査人が,同法37条1項所定の審査無効の原因として,年齢満18歳及び満19歳の日本国民につき衆議院議員の選挙権を有するとしている本件規定の違憲を主張し得るものとはいえない。
論旨は採用することができず,所論はその前提を欠くものといわざるを得ない。

最高裁判所発足時の裁判官任命諮問委員会,及び最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案等

第1 最高裁判所発足時の裁判官任命諮問委員会
1(1)ア 裁判官任命諮問委員会(制定時の裁判所法39条4項及び5項のほか,裁判官任命諮問委員会規程(昭和22年6月17日政令第83号))は,昭和22年7月28日,最高裁判所の裁判官候補者として30名を答申し,昭和22年8月4日,その中の15人が最高裁判所裁判官に任命されました。
イ 裁判官任命諮問委員会の構成は,衆議院議長1人,参議院議長1人,全国の裁判官から互選された者4人,全国の検察官等から互選された検察官1人,全国の弁護士から互選された弁護士4人,法律学教授2人,学識経験者2人の合計15人でした(裁判官任命諮問委員会規程3条)。
(2)   裁判官任命諮問委員会は,昭和23年1月1日,裁判所法の一部を改正する法律(昭和23年1月1日法律第1号)により廃止されました。
同委員会の廃止は,憲法上内閣の責任の帰趨を明確にするものであるとされました。
2 裁判官任命諮問委員会に関する経緯は,首相官邸HPの「第36回司法制度改革審議会文書3「裁判官任命諮問委員会について(審議会事務局)」」が非常に参考になります。
昭和22年7月28日付で最高裁判所の裁判官候補者とされた30名の氏名も載っています。
3 「日本の最高裁判所 判決と人・制度の考察」314頁及び315頁によれば,裁判官任命諮問委員会設置に当たっての,昭和22年6月5日の片山内閣談話は以下のとおりです(文中にある「休戚」(きゅうせき)は,「喜びと悲しみ」という意味です。)。
新憲法に規定された新しい裁判制度確立の為め、いよいよ最高裁判所の建設に着手する。(中略)新憲法は最高裁判所に法令審査権をも含む広汎にして最高の裁判権を与え、これを憲法の番人たる地位に置き、全下級裁判所を率いて国民の権利自由を確保する神聖なる使命を完うさせようとして居る。よき最高裁判所の構成こそは真に国家百年の大計である。従ってその構成は各界の最高権威者を網羅する絢燗多彩な良識の結集体たることを期待して居るのである。故にこの最高裁判所の裁判官の選定は単に一内閣の仕事でなくて国家的大事業であり、国民の休戚に関すること、国会における総理大臣の選定に優るとも劣らない。従って政府はこの神聖なる事業が公正にして明朗、いわゆるガラス張りの中で最も民主的に行われることを期待(する)。(中略)
   国民は、この選定がいかに行われるかについて深い関心をもって、これを見守り、適切な批判を怠ってはならない。(中略)最高の知識と人格とを網羅する最高裁判所の建設こそは、国民に課せられた偉大な責務である。

第2 最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案等
1 昭和30年代の動き
(1) 昭和32年に国会に提出された裁判所法等の一部を改正する法律案(第26回国会閣法第89号)では,最高裁判所長官の指名及び最高裁判所判事の任命については,裁判官任命諮問審議会(内閣の諮問機関:裁判官,検察官,弁護士及び学識経験者から構成)への諮問を経て行うとされていました。
同法案は第28回国会まで継続審査されたものの,昭和33年4月25日の衆議院の解散(通称は話し合い解散)により廃案となりました。
イ 改正理由は,内閣が最高裁判所長官の指名又は最高裁判所判事の任命を行うに際し,その人選について一層慎重を期するようにする必要があるとのことでした。
(2) 昭和32年の改正法案の内容は,衆議院HPの「「裁判所法の一部を改正する法律案」(第26回国会 内閣提出第89号)(昭和32年)の主な内容」が非常に参考になります。
2 昭和50年代の動き
(1) 昭和50年代に4回,最高裁判官裁判官任命諮問委員会設置法案が国会に提出されたものの,成立に至りませんでした(首相官邸HPの「過去に提出された最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案の概略」参照)。
(2)   これらの法案では,候補者の氏名も含めて,委員会の答申内容は公表することが予定されていました。
3 日弁連作成の法律案
日弁連は,平成15年6月20日,最高裁判所裁判官任命諮問委員会の設置を求める意見書を公表し,最高裁判所裁判官任命諮問委員会の設置に関する法律案3条4項では,「委員会は,答申に際し,答申の趣旨及び理由を公表しなければならない。」と規定されていたものの,同法律案の提出に至りませんでした。
4 最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案に関する参考人の発言
最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案に関する参考人として招致された,天野憲治弁護士は,昭和50年6月12日の参議院法務委員会において以下の意見を述べています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① ただいま御指名を受けました弁護士の天野でございます。佐々木、安永両議員の発議にかかる最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案につきまして、日本弁護士連合会を代表いたしまして、参考人として意見を述べさせていただきます。
  まず、結論を申し上げますと、この法案には全面的に賛成いたします。かかる法案が議員立法案として今国会に提出されましたことにつきまして、日弁連といたしまして提案者に対し深く感謝いたしますとともに、本法案が速やかに審議、可決されますことを心から念願している次第であります。
(中略)

②   最高裁判所の裁判官の指名と任命に当たり諮問委員会を設置すべきだという要望は、いま日弁連等において叫ばれている司法の独立の危機問題が発生する以前から、これは制度上の問題として論議されてきたものでありますことは、先ほど申し上げましたとおりでございます。諸外国の立法例を見ましても、最高裁の裁判官の指名ないし任命が内閣の専権にゆだねられているというような国は、私は浅学でありますが、ほとんど見受けられないのであります。少なくとも民主主義国家と言われる諸外国におきましては、最高裁判所の裁判官を任命する場合には、任命権者の独断と恣意を抑え、任命権者と被任命権者、任命される者との政治的、思想的結合を排除するために、また、任命された者の任命した者に対する個人的心理的傾斜を防止するために、任命権の行使に対する民主的なチェックが行われるようにきわめて慎重な手続的保障が制度化されております。ところが、わが国の場合にはそのような手続上の保障が全くないのでありまして、これは法の不備であり欠陥であると考えられます。
(中略)

③   悪いことに、現行制度のもとにおきましては、国民は最高裁判所の裁判官の指名あるいは任命されたその経過、事情について、全く知るすべを持たないのであります。したがって、国民がその裁判官の任命の適否について何か色目で見た、疑惑を抱いたといっても、その国民をいたずらに非難することは当たらないのであります。国民がその指名あるいは任命の適否について疑惑を抱いたことの当否は、ともかくとします。その疑惑は間違った疑惑かもしれません。その当否はともかくといたしまして、いやしくも国民があるいはその一部がその指名または任命に対して疑惑を持っている以上、その裁判官の裁判についてこれを色目で見るのもやむを得ないところでありますし、裁判の権威が失墜されるという結果が招来されるおそれが多分にあります。
(中略)
④ それから、その次に問題になりまするのは答申の点でございまするが、これは国民審査が現在十分機能を発揮しないのは、任命の事情が国民に全然わからないというためだと思います。もちろんその制度自体の不備もございまするけれども、根本的な理由は、任命事情が国民に全然わからない。片山内閣のときは答申をした場合に氏名だけを公表するということになっておりますが、それでは任命事情がよくわからぬので、このたびの諮問委員会におきましては、答申をしたその理由を国民が納得できるように公表するということにすれば国民審査が自主的に機能を発揮するのではないかということで、答申の理由を公表するということにしたわけでございます。こういうことにすることによって、任命制度とそのうらはらになる国民審査とが有機的に一体な制度として機能を発揮できるということでこういう制度を考えたわけでございまするが、そのとおり本法案にも入っておりまするので、この点は、松本先生はどうも御反対のようでございまするけれども、一つの重要な意義がある規定だと思っております。
5 宮川光治弁護士(平成20年9月3日から平成24年2月27日までの最高裁判所判事)の,自由と正義2013年6月号23頁における記載
最高裁誕生時における任命諮問委員会の委員の人選に関しては「醜い政治的動き」があり,判事人選の結果も問題がないではなかったことはすでに歴史家が明らかにしている。委員会構想に限らず,任命過程が政治的色彩を帯びる危険を回避できる制度改革案はなかなか見い出しにくい。

第3 その他
以下の記事も参照してください。
① 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
② 日弁連推薦以外の弁護士が最高裁判所判事に就任した事例
③ 最高裁判所裁判官国民審査

最高裁判所裁判官国民審査に関する内閣の答弁書

1 平成21年2月17日付の,衆議院議員鈴木宗男君提出最高裁判所裁判官に対する国民審査に関する質問に対する答弁書は以下のとおりです。
一について
   総務省においては、従来より、衆議院議員総選挙に際し、最高裁判所裁判官国民審査(以下「国民審査」という。)の投票方法のほか、その意義、目的等についても、啓発用パンフレット、ホームページなどの広報媒体を活用した啓発を行い、制度の周知徹底に努めているところである。
二について
   お尋ねについては、国民審査のための国民の判断材料の一つとして、最高裁判所裁判官国民審査法(昭和二十二年法律第百三十六号)第五十三条の規定に基づき、審査に付される裁判官の氏名、生年月日及び経歴並びに最高裁判所において関与した主要な裁判その他審査に関し参考となるべき事項を掲載した審査公報が、都道府県の選挙管理委員会から国民審査ごとに発行されているところである。
三について
   お尋ねについては、二についてで述べた審査公報による基本的な情報のほか、国民が普段から目にする最高裁判所の裁判官や裁判に関する日頃の報道等も併せて判断材料とされることにより、最高裁判所裁判官がその職責にふさわしい者であるか否かについて適切に判断されているものと考えている。
四について
   審査公報には二についてで述べた事項が掲載されることとなっているが、これに加えて御指摘のような「それぞれの「最高裁裁判官」の経歴や過去の業績」等を御指摘のような方法により重ねて都道府県の選挙管理委員会等が示すことについては、これによりどの程度の費用対効果が期待されるのか、また、衆議院議員総選挙の選挙運動と同時期に実施されることにより国民に混乱を生じさせないか等の観点から、慎重に検討する必要があると考えている。

2 平成21年2月27月付の, 衆議院議員鈴木宗男君提出最高裁判所裁判官に対する国民審査に関する再質問に対する答弁書は以下のとおりです。
一について
最高裁判所裁判官国民審査(以下「国民審査」という。)については、従来より、衆議院議員総選挙と併せ、その啓発を行ってきたところであり、国民にも広く認識されているものと考えている。
二について
お尋ねについては、例えば、第二十回国民審査における審査公報では、国民審査に付される裁判官の信条、心構え、趣味などが掲載されている。
三について
国民審査は、内閣の意思に基づき、既に天皇又は内閣によって任命された最高裁判所裁判官を罷免すべきか否かを国民が決定する制度であるから、最高裁判所裁判官がその職責にふさわしい者であるか否かについて国民が判断するに当たっては、都道府県の選挙管理委員会が発行する審査公報による基本的な情報のほか、国民が普段から目にする最高裁判所の裁判官や裁判に関する日頃の報道等も併せて判断材料とされるものと考えている。
なお、このようなことから、審査公報をもって「果たしてどれだけの国民が、右答弁にある様に「最高裁裁判官」がその職責にふさわしい者であるか否かについて適切な判断を下せているか」について把握することは困難である。
四について
第二十回国民審査における審査公報発行費の決算額は、四億四千八百十七万六千五百二十三円である。
五について
審査公報は、これまで国民審査ごとに発行されているところであり、国民審査のための国民の判断材料の一つとして定着し、活用されているものと考えている。
六について
国民審査については、都道府県の選挙管理委員会が発行する審査公報による基本的な情報のほか、国民が普段から目にする最高裁判所の裁判官や裁判に関する日頃の報道等も併せて判断材料とされることにより、最高裁判所裁判官がその職責にふさわしい者であるか否かについて適切に判断されているものと考えていることから、総務省として御指摘について具体的な検討を行ったことはない。
七について
先の答弁書(平成二十一年二月十七日内閣衆質一七一第一〇六号)四についてでお答えしたとおりである。

3 平成21年3月13日付の,衆議院議員鈴木宗男君提出最高裁判所裁判官に対する国民審査に関する第三回質問に対する答弁書は以下のとおりです。

一及び三について
最高裁判所裁判官国民審査(以下「国民審査」という。)については、都道府県の選挙管理委員会が発行する審査公報による基本的な情報のほか、国民が普段から目にする最高裁判所の裁判官や裁判に関する日頃の報道等も併せて判断材料とされることにより、最高裁判所裁判官がその職責にふさわしい者であるか否かについて適切に判断されているものと考えている。
このようなことから、現時点において、総務省として、御指摘の「経歴放送等の方法により、より国民に「最高裁裁判官」についての情報を提供すること」について具体的な検討を行うことは考えていない。
二について
国民審査については、従来より、その意義、目的等についても啓発を行ってきたところであり、その趣旨は国民にも広く認識されているものと考えており、「現行の「国民審査」は形骸化したものでしかないのではないか」との御指摘は当たらないものと考えている。

最高裁判所裁判官等は襲撃の対象となるおそれが高いこと等

1 「最高裁判所長官室の写真」,「最高裁判所判事室の写真」及び「最高裁判所首席調査官室の写真」は不開示情報に当たるとした,平成29年度(最情)答申第27号(平成29年8月7日答申)には以下の記載があります(改行及びナンバリングを追加しました。)。
① 本件各対象文書を見分した結果によれば,本件各対象文書は,最高裁判所庁舎の耐震改修工事について施工業者が作成した報告書の抜粋であり,本件不開示部分のうち個人の氏名及び押印部分は,施工業者の現場代理人の氏名及び押印であること,その余の部分は,最高裁判所長官室,最高裁判所判事室及び最高裁判所首席調査官室の写真並びにその撮影場所であることが認められる。
② まず,本件不開示部分のうち個人の氏名及び押印部分につき検討すると,その記載内容からすれば,上記部分は法5条1号に規定する個人識別情報と認められ,同号イからハまでに相当する事情は認められない。
③ また,本件不開示部分のうちその余の部分については,その記載等の内容からすれば,上記部分を公にすると,最高裁判所長官室,最高裁判所判事室及び最高裁判所首席調査官室の位置及び構造が明らかになるものと認められる。
そうすると,最高裁判所長官及び最高裁判所判事は,裁判所の業務に係る意思決定において極めて重要な役割を担っており,最高裁判所首席調査官は,最高裁判所の裁判所調査官の事務を総括していることから,いずれも襲撃の対象となるおそれが高く,上記各室は極めて高度なセキュリティが要請されるという最高裁判所事務総長の上記説明が不合理とはいえず,上記部分を公にすることにより,庁舎管理事務及び警備事務に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
この点について,苦情申出人は,日本女性法律家協会のホームページに掲載された写真を挙げて,最高裁判所判事室の写真が公表されたと主張するが,当該ホームページに掲載されている写真は,最高裁判所判事を被写体とし,背景として最高裁判所判事室のごく一部が写っているにすぎないものであるから,本件の結論には影響しない。
④ したがって,本件不開示部分は,法5条1号及び6号に規定する不開示情報に相当する。

2 昭和62年5月3日放送のNHK特集「最高裁判所」では,最高裁判所の建物内部が放送されたみたいです放送ライブラリーHP「NHK特集 最高裁判所」参照)。

3 東弁リブラ2016年12月号「前最高裁判事に訊く-山浦善樹会員」には,以下の記載があります(改行及びナンバリングを追加しました。)。現職の最高裁判所判事が夜に自分の法律事務所に行って黙々と後片付けの作業をしていたそうです。
①   平成24年1月の閣議で就任が決まり,法律事務所は「閉鎖」と決まりました。それからが大変でした。弁護士登録取消・事務所閉鎖ですから,事務員の解雇,事務所の契約解約,備品の廃棄,内装など原状回復工事,敷金返還交渉も全部ひとりでやりました。
   書籍の一部は判事室に持ち込みましたが,ほかは蔵書印があったので古書にも出せず(最高裁判事の古書と特定できるので),一部はロースクールの学生に,残りは破棄です。3月に就任して,昼は最高裁判事として仕事をし,夜は事務所に行き黙々と作業をし(笑),5月連休前にやっと片付きました。
② なかでも大変だったのは,依頼者に対するお詫びと事件の引継ぎでした。突然,私の都合で辞めるので,これは債務不履行で,ひたすらお詫びしました。
 ほとんどの依頼者は祝福してくれましたが,新聞報道から40日以内に廃業・事務所閉鎖という急な話で,迷惑をかけたことも事実です。そこで,何人かの知り合いの弁護士を紹介して引き継ぎました。
 訴訟事件は約30 件あったので,弁護士を紹介するため1日に2,3人の割合であちこちの法律事務所に連れて行きました。保管中の遺言も多数あり,これも遺言者に返しました。
   ……いまから思うと,40日の間に,弁護士としての自分と山浦法律事務所の葬儀(笑)を,一人でやったような按配でした。

閣議

1 総論
(1) 内閣は,行政権の行使について,全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項,内閣法1条2項)。
(2) 内閣は,国会の指名に基づいて任命された首長たる内閣総理大臣及び内閣総理大臣により任命された国務大臣によって,組織されています(憲法66条1項,内閣法2条1項)。
(3)ア 閣議は,内閣総理大臣及び国務大臣により構成され,内閣官房副長官3人(うち,政務担当が2人,事務担当が1人)及び内閣法制局長官が陪席します。
イ 国務大臣は原則として14人である(内閣法2条2項本文)ものの,復興庁が廃止されるまでは,最大で19人です(内閣法附則3項)。
(4)ア 内閣は,閣議によって職権を行います(内閣法4条1項)。
イ 内閣総理大臣は,閣議にかけて決定した方針に基づいて,行政各部を指揮監督します(内閣法6条)し,行政各部の処分又は命令を中止させることができます(内閣法8条)。
ウ 内閣総理大臣は,少なくとも,内閣の明示の意思に反しない限り,行政各部に対し,随時,その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導,助言等の指示を与える権限を有します(最高裁大法廷平成7年2月22日判決)。

2 閣議の運営
(1) 閣議は,内閣総理大臣が議長として主宰し(内閣法4条2項),内閣官房長官が議事進行を行います。
(2) 内閣官房副長官(政務担当)が閣議案件の内容を説明します。
(3) 内閣官房副長官(事務担当)及び内閣法制局長官が,閣議運営を補助し,必要に応じて行政・法令に関する補足説明を行います。
(4) 閣議案件の決裁(閣議書への署名)等が終わった後,閣僚懇談会が開催されます。

3 閣議の種類
(1) 閣議には以下のものがあります。
① 定例閣議
・ 毎週,火曜日及び金曜日に開催されるものです。
② 臨時閣議
・ 臨時に開催されるものです。
③ 持ち回り閣議
・ 内閣総務官が閣議書及び矢立(やたて)を持ち回り,それぞれの閣僚の署名を集めることによって閣議を成立させるものです。
(2) 定例閣議及び臨時閣議は,国会閉会中は総理大臣官邸閣議室で開催され,国会開会中は国会議事堂内の院内閣議室で開催されます。
(3) 首相官邸HPの「4階・5階」に以下の部屋の写真が載っています。
① 4階の閣僚応接室
・ 総理を中心に閣僚がコの字型に並んで座っている場面がテレビで放映されている部屋です。
② 4階の閣議室
・ 首相官邸の場合,閣僚応接室の奥にあります。
・ 以前の首相官邸の場合,閣議テーブルは楕円形でしたが,現在の首相官邸の場合,直径5.2メートルの閣議テーブルは円形です。
③ 4階の特別応接室
・ 首脳会談等の少人数の会議や,総理のお客様との応対等に利用されています。
④ 4階の大会議室
・ 正面の壁に取り込まれた「大型スクリーン」で画像情報を用いての会議が可能になっています。
(4) 首相官邸HPの「閣議室~官邸の二階にある大臣応接室と閣議室~」に,以前の首相官邸の閣議室が載っています。

4 閣議における意思決定
(1) 閣議における意思決定は,以下のいずれかの形式により行います。
① 閣議決定
・ 憲法又は法律により内閣の意思決定が必要とされる事項,及び法令上規定がない場合でも特に重要な事項について行われます。
② 閣議了解
・ 各府省所管に属する事項で他府省にも関係するなどその及ぼす影響にかんがみ,閣議において意思決定しておく必要のある事項について行われます。
③ 閣議口頭了解
・ 関係閣僚会議の設置や独立行政法人などの人事に関することなどで,閣議書を作成せず口頭で了解する事項について行われます。
・ 内閣官房HPの「各種本部・会議等の活動情報」に,関係閣僚会議等へのリンクが貼られています。
(2) 閣議の議決は,多数決の方式等を採用せず,全員一致によることとされています。
これは,「内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う」(内閣法第1条第2項)ことに基づくものです。
(3)ア 閣議決定及び閣議了解は,いずれも内閣の意思決定である点においてその効力に違いはありません。
イ 閣議報告は,各主管の大臣がそれぞれの所管事項について閣議に報告するものであり,内閣の意思決定ではありません。

5 法令上規定がない場合でも特に重要な事項
(1) 法令上規定がない場合でも特に重要な事項としては,以下のものがあります。
① 政府声明
② 内閣総理大臣談話
③ 国会における内閣総理大臣の演説案
④ 各府省の事務次官,局長等の内閣の承認を要する人事
(2) 政府声明の例は以下のとおりです。
・ 平成24年11月16日付の政府声明(衆議院の解散)
・ 平成26年11月20日付の政府声明(衆議院の解散)
・ 平成29年 9月28日付の政府声明(衆議院の解散)
(3) 内閣総理大臣談話の例は以下のとおりです。
・ 平成 7年 8月15日付の談話(いわゆる「戦後50年談話」)
・ 平成17年 8月15日付の談話(いわゆる「戦後60年談話」)
・ 平成27年 8月14日付の談話(いわゆる「戦後70年談話」)
・ 平成31年 4月 1日付の談話(新しい元号「令和」について)
(4) 国会における内閣総理大臣の演説としては以下のものがあります。
① 施政方針演説
・ 通常国会の冒頭で行います。
② 所信表明演説
・ 臨時国会及び特別国会の冒頭で行います。

6 開示対象の閣議関係資料
(1) 内閣官房に対する開示請求があった場合における,開示対象の閣議関係資料は以下のとおりです。
① 閣議案件表
② 閣議配布資料(閣議決定案(法律案等))
③ 閣議書(閣議決裁書)
④ 閣議発言要旨(あらかじめ提出のあった者)
⑤ 御署名原本(条約,法律,政令の公布等の際の御名・御璽の文書)
(2)ア 平成26年4月1日以降,閣議及び閣僚懇談会の議事録の作成及び公開が開始しました(内閣官房HPの「閣議等の議事録の作成及び公表について」参照)。
イ 首相官邸HPの「閣議」に,定例閣議案件,臨時閣議案件及び持ち周り閣議案件が載っています。

7 閣議書
(1) 首相官邸HPの「内閣制度と歴代内閣」に以下の記載があります。
閣議書に閣僚の意思を表わす花押を毛筆で書くことが内閣制度創始以来の慣習となっている。花押は、別名「書き判」とも言われ、その形が花文様に似ていることから「花押」と呼ばれている。広く使われている花押は、そもそも中国の明時代に流行した形が、江戸時代初期に伝えられたもので、先ず天と地の両線(上下の二線)を横に引き、この天地の中間に自分で考えた文字を簡単な形にして作成している。
(2) 以下の閣議書を掲載しています。
① 最高裁判所長官任命の閣議書
② 最高裁判所判事任命の閣議書
③ 衆議院解散の閣議書(平成29年9月28日付)

8 閣議の説明をしている公式HP
閣議の説明をしている公式HPは以下のとおりです。
① 首相官邸HPの「内閣制度と歴代内閣」
② 内閣官房HPの「閣議の概要について」,及び「閣議及び閣僚懇談会について」
③ 衆議院議員金田誠一君提出閣議に関する質問に対する答弁書(平成12年7月14日付)

9 閣僚懇談会
(1) 閣僚懇談会は、法令上の根拠はないが、通常、閣議に引き続いて行われ、各大臣がその所管に拘わらず国務大臣としての立場から、自由で忌憚のない意見交換を行う場であり、閣僚給与の一部返納のような申合せを除いては、原則として意思決定を目的としません。
(2) Wikipediaの「閣議(日本)」には以下の記載があります。
首相が入院したために、閣議を開催できない状態で首相臨時代理を指定しないまま定例閣議の時間を迎えた第1次安倍内閣末期の場合、定例閣議に代わる閣僚懇談会が閣議の議事進行役の内閣官房長官が主導する形で行われ、全閣僚が閣議書に署名した後で首相が入院先の病院で決裁する「持ち回り閣議」の手法をとっていた。

法務総合研究所

1 法務総合研究所の組織及び所在地
(1) 法務総合研究所(略称は「法総研」です。)には,以下の七部があります(法務総合研究所組織規則3条)。
① 総務企画部
② 研究部
③ 研修第一部
④ 研修第二部
⑤ 研修第三部
⑥ 国際連合研修協力部
⑦ 国際協力部
(2) 法務総合研究所のパンフレットによれば,それぞれの所在地は以下のとおりです。
① 総務企画部,研修第一部,研修第二部及び研修第三部は,法務本省が入居している赤れんが棟(東京都千代田区)にあります。
② 研究部は,法務省浦安総合センター(千葉県浦安市)にあります。
③ 国際連合研修協力部(国連アジア極東犯罪防止研修所)(略称はアジ研又はUNAFEI(ユナフェイ))及び国際協力部は,国際法務総合センター(東京都昭島市)にあります。

2 法務総合研究所の各部の所掌事務等
(1)ア   研究部は刑事政策全般に関する総合的な調査・研究を行っており,調査・研究の対象は,検察,刑事裁判,矯正及び更生保護となっており(法務総合研究所組織規則11条),毎年,犯罪白書を作成しています。
イ   研修第一部は法律実務家研究等を行っています(法務総合研究所組織規則12条)。
ウ   研修第二部は検事,副検事,検察事務官及び保護観察官に対する各種の研修を行っています(法務総合研究所組織規則13条)。
エ   研修第三部は法務局職員,入国審査官,入国警備官に対する各種の研修を行っています(法務総合研究所組織規則14条)。
オ   国際連合研修協力部は国連アジア極東犯罪防止研修所(略称はUNAFEI=ユナフェイ)の運営を行っています(法務総合研究所組織規則15条)。
カ   国際協力部は法務省が行う国際協力の一環として,関係機関と協力してアジア諸国に対する基本法令の起草・改正,司法制度の整備,法曹人材の育成への支援などの法整備支援活動を行っています(法務総合研究所組織規則16条)。
(2)  59期の飯島暁裁判官は法務総合研究所研修第三部教官でしたから,法務局職員,入国審査官,入国警備官に対する各種の研修を担当していたことになります。

3 法務総合研究所教官
(1) 平成27年7月21日現在,研修第一部には研修第一部長を含めて7人の教官がいて,研修第二部には研修第二部長を含めて9人の教官がいて,研修第三部には研修第三部長を含めて8人の教官がいて,国際連合研修協力部には国際連合研修協力部長を含めて10人の教官がいて,国際協力部には国際協力部長を含めて11人の教官がいました。
(2) 裁判官出身の教官は,研修第三部に1人,国際連合研修協力部に1人,国際協力部に2人いました。
(3)ア 法務総合研究所教官職員名簿を以下のとおり掲載しています。
① 平成28年8月5日時点の名簿
② 平成30年4月13日時点の名簿
イ   平成28年8月5日時点の名簿につき,裁判官出身の教官は,59期の飯島暁研修第三部教官,新60期の平野望国際連合研修協力部教官,新60期の東尾和幸国際協力部教官及び新62期の湯川亮国際協力部教官の4人でした。
(4)ア 法務総合研究所教官は,少年院や少年鑑別所などに勤務する法務教官とは異なります。
イ 
全国の刑務所,少年刑務所,拘置所,少年院,少年鑑別所等に勤務する矯正職員に対する研修は,法務省矯正研修所(〒183-0057 東京都府中市晴見町2-8)が担当しています(法務省HPの「法務省 矯正研修所」参照)。

4 法務総合研究所の沿革
文部科学省HPの「法務総合研究所(法務省)」に以下の記載があります。
昭和22年5月3日現行憲法が施行され、裁判所が司法省から分離独立しましたが、このときにそれまで判事、検事及び司法官試補の研究・研修機関で司法省に設置されていた「司法研修所」(昭和14年7月6日司法研究所として設置され、その後、昭和21年5月15日司法研修所と改称)が最高裁判所に設置の「司法研修所」と司法省に設置の「司法省研修所」に分割されました。後者が「法務総合研究所」の前身です。
 司法省研修所は、検察官、検察事務官、司法事務官等司法大臣所部の職員に対する研修及び司法に関する研究を行うものとされ、その後、司法省が法務庁、法務府と名称を変更したことに伴い、「法務庁研修所」(昭和23年2月15日)、「法務府研修所」(昭和24年6月1日)と改称されました。そして、同27年8月に現在の法務省に改組された際、それまで幹部検察官を対象として別に設置されていた「検察研究所」(昭和25年4月1日)を統合して「法務研修所」が設立されました。
 法務研修所は、法務大臣所部の職員に対する研修及び法務に関する専門的研究を行うことを目的としましたが、更に同30年代に入り、少年犯罪の激増・凶悪化など犯罪現象の量的・質的変化に対応し得る総合的科学的な刑事政策研究の必要性が痛感され、刑事政策の専門的な研究部門を加えて組織・機構を整備拡充することとなり、同34年4月「法務総合研究所」として発足するに至っています。
 その後、同36年6月に国際連合との協定により、国際連合と日本国政府との共同運営の形態で「アジア極東犯罪防止研修所」が我が国に設置され、日本政府機関としてこれに協力するために国際連合研修協力部が新たに設立されました。
 平成7年4月には、法務総合研究所部内の意見をくみ取るとともに、官房、関係部局と連携し、法務総合研究所における研修・研究ニーズを的確にとらえ、21世紀の法務省にふさわしい研修・研究の在り方を総合的な視点から企画立案し実施準備を進める部署として総務企画部が新設されました。
 さらに、平成13年4月には、アジア諸国を始めとする発展途上国の要請にこたえて、民商事法分野における法整備支援を実施する部署として国際協力部が新設されて今日に至っています。

弁護士となる資格

0 総論
   日弁連HPの「弁護士の資格・登録」に詳しい説明が載っています。1 原則
(1)   弁護士となる資格を得るには,原則として,司法試験に合格し,司法研修所において司法修習を受け,修習終了時に行われる二回試験に合格して修習を終えなければなりません(弁護士法4条)。
(2) 二回試験については,「二回試験(司法修習生考試)」を参照してください。

2 例外
(1)   例外として以下の場合にも弁護士となる資格が認められます。
① 最高裁判所の裁判官の職にあった者(弁護士法6条)
② 司法試験合格後,5年以上裁判所調査官,裁判所事務官,国会議員等特定の法律に関係する職にあり,かつ,日弁連が実施する研修の課程を修了したと法務大臣が認定した者(弁護士法5条1号)
③ 司法試験合格後,5年以上法律学の教授又は准教授の職にあり,かつ,上記法務大臣の認定があった者(弁護士法5条1号)
④ 司法試験合格後,7年以上民間において又は公務員として法律に関係する職務に従事し,かつ,上記法務大臣の認定があった者(弁護士法5条2号)
⑤ 5年以上特任検事の職にあった者で,かつ,上記法務大臣の認定があった者(弁護士法5条3号)
(2) ②ないし⑤に関する弁護士資格認定制度(弁護士法5条の2ないし5条の6)については,「平成16年4月1日創設の,弁護士資格認定制度」を参照してください。

3 欠格事由
(1)   弁護士となる資格を有している場合であっても,以下のいずれかに該当する場合,弁護士となる資格が認められません(弁護士法7条)。
① 禁固以上の刑に処せられた者
② 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
③ 懲戒処分により、弁護士・外国法事務弁護士であって除名され、弁理士・税理士であって業務を禁止され、公認会計士であって登録を抹消され、又は公務員であって免職され、その処分を受けた日から3年を経過しない者
④ 成年被後見人又は被保佐人
⑤ 破産者であって復権を得ない者
(2) 以下の記事も参照してください。
① 弁護士の懲戒
② 分限裁判及び罷免判決の実例

弁護士登録番号と修習期の対応関係

50期 25761~
51期 26427~
52期 27091~
53期 27748~
54期 28497~
55期 29408~
56期 30348~
57期 31381~
58期 32581~
59期 33724~
60期 35165~(新60期は36445~)
61期 37429~(新61期は38015~)
62期 39704~(新62期は40052~)
63期 41985~(新63期は42206~)
64期 44085~(新64期は44264~)
65期 46237~
66期 48314~
67期 50339~
68期 52212~
69期 53898~
70期 55618~
71期 57151~

最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿

1 最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿のうち,以下の時点のものを掲載しています。
① 平成28年4月 7日現在の名簿
② 平成29年4月19日現在の名簿
③ 平成30年4月17日現在の名簿

2  高裁長官・地家裁所長等名簿には,最高裁判所の事務総長,司法研修所長及び首席調査官,高等裁判所長官,地方裁判所所長及び家庭裁判所長の氏名,修習期,任命年月日及び定年年月日が書いてあります。

寺田逸郎最高裁判所長官の就任に伴う写真取材の要領

平成26年3月20日付の最高裁判所事務総局広報課の文書によれば,寺田逸郎最高裁判所長官の就任に伴う写真取材の要領は以下のとおりでした。
なお,文中の図面は省略しています。

1 日時
   4月1日(火)午後8時00分

2 場所
   最高裁判所大応接室

3 取材方法
(1) カメラは1社につき1台です。
(2) 撮影は,スチルカメラ及びビデオカメラともに,長官の着席後1分間,談話発表の間及び記者会見の第1問の部分に限り行うことができます。
(3) 録音は,談話発表の間及び記者会見の第1問の部分に限り行うことができます。
(4) 撮影位置は,別紙図面に表示したとおりです。
なお,長官の着席後1分間は,スチルカメラに限り記者席前部(別紙図面に網線で表示した部分)から撮影することができますが,1分間経過後はその場から退出し,以後は記者席の両側又は後部から撮影してください。
(5) 大応接室以外での撮影は,一切できません。
(6) 三脚を使用することはできますが,脚立は使用しないでください。
(7) 取材中及び取材後に退室する際は,静粛かつ円滑に行われるよう広報課員の指示に従ってください。
(8) 取材に当たっては広報課員の指示に従ってください。

4 集合時刻等
(1) 取材カメラマンは,午後7時30分までに記者会室(1階)にお集まりください。広報課員が記者会見場に案内します。
(2) ビデオカメラは,午後7時55分までにセットアップしてください。
(3) カメラマン及びその補助者等は,必ず自社腕章を着用してください。
(4) 当日は,新最高裁長官,新最高裁判事の順で記者会見が行われる予定ですので,長官の記者会見における撮影が終了した後は,カメラ,マイク等を会見場に残したままいったん記者会見場から退出し,広報課員の指示に従って待機してください。

5 その他
   車両は必ず社旗を付け,当庁東門から出入りし,駐車は北玄関広場を使用してください。

* Youtube動画に「適正迅速な解決に努める寺田新最高裁長官が就任」が載っています。

明治憲法時代の親任官,勅任官,控訴院及び検事局

1 親任官
(1) 明治憲法時代の親任官は大体,現在の認証官に大体,対応しています。
   ただし,司法関係の親任官ポストは,司法大臣,大審院長及び検事総長だけでした。
(2) 大審院長及び検事総長の定年は65歳でした。
ただし,判事の場合,控訴院又は大審院の総会決議により,検事の場合,司法大臣の決定により,さらに3年間在職することができました(裁判所構成法74条の2及び80条の2)。
(3) 皇室儀制令(大正15年10月21日皇室令第7号)29条に基づく宮中席次によれば,親任官である大審院長は第11ですから,第10の陸軍大将,海軍大将及び枢密顧問と,第12の貴族院議長及び衆議院議長の間でした。
2 勅任官
(1)ア  司法関係の勅任官ポストは,司法省の次官及び局長,大審院部長判事,控訴院長及び地裁所長,並びに控訴院検事長及び地裁検事正だけでした(外部HPの「主要戦前官吏官僚ポスト表」参照)。
   それぞれのポストの序列は,外部HPの「大正・昭和戦前期における幹部裁判官のキャリアパス分析」が分かりやすいです。
イ 狭義の勅任官は高等官1等及び高等官2等の総称であり,広義の勅任官はこれらに親任官を含んだ総称でした。
ウ 狭義の勅任官は現在の指定職に大体,対応しています。
(2) 大審院長以外の裁判官,及び検事総長以外の検事の定年は63歳でしたが,判事の場合,控訴院又は大審院の総会決議により,検事の場合,司法大臣の決定により,さらに3年間在職することができました(裁判所構成法74条の及び80条の2)。
(3)ア 日本の歴史学講座HP「主要戦前官吏官僚ポスト」によれば,大審院部長判事は高等官1等又は高等官2等であり,大審院判事は高等官1等ないし高等官7等でした。ただし,大審院判事の等級に開きがありすぎる気がしますから,正しいかどうか不明です。
イ 高等官3等ないし高等官9等の総称は奏任官でした。

3 控訴院
(1) 控訴院は,現在の高等裁判所に相当する裁判所です。
(2) 函館控訴院ノ移転ニ関スル法律(大正10年4月8日法律第51号)及び大正10年12月6日勅令453号に基づき,大正10年12月15日,函館控訴院が札幌控訴院となりました。
(3) 昭和20年8月1日公布の勅令第443号に基づき,昭和20年8月15日,長崎控訴院が福岡控訴院となり,高松控訴院(昭和21年1月10日廃止)が設置されました(高松控訴院につき,高松高検HPの「高松高等検察庁の沿革」参照)。

4 検事局
(1) 明治憲法時代は大審院以下の各裁判所に対応して,大審院検事局,控訴院検事局,地方裁判所検事局及び区裁判所検事局が付置されていました(裁判所構成法6条参照)。

(2)   裁判所と検事局が分化していませんでしたから,戦後でいう判検交流は普通に行われていた人事でした。

5 参考となるHP
(1) 親任官,勅任官及び奏任官の区別につき,日本近現代史研究HP「官僚について」が参考になります。
(2) 国立国会図書館HPの「レファレンス」につき,平成31年2月号に「アメリカが見た明治憲法体制の進化と後退―政党内閣期から2.26事件まで―」が載っています。
(3) 「司法官採用に関する戦前の制度」も参照してください。

親任式及び認証官任命式

1 総論
(1) 皇居での親任式及び認証官任命式は発令日に行われます。
 
2 親任式
(1)   内閣総理大臣及び最高裁判所長官は,皇居での親任式によって任命されます。
なお,内閣総理大臣は国会の指名に基づいて任命され(憲法6条1項),最高裁判所長官は内閣の指名に基づいて任命されます(憲法6条2項)。
(2) 最高裁判所長官に関する親任式の場合,天皇から任命する旨のお言葉があった後,内閣総理大臣から官記(任命書)が伝達されます(宮内庁HPの「親任式」参照)。
(3) 外部ブログの「きょうのへいか」「親任式」に,これまでの親任式に関する官報の記事が記載されています。

3 認証官任命式
(1)   最高裁判所判事及び高等裁判所長官は,任免につき天皇の認証(憲法7条5号)を必要とする点で「認証官」といわれ,皇居での認証官任命式によって任命されます。
(2) 認証官任官者は,内閣総理大臣から辞令書を受け,その際,天皇からお言葉があるのが慣例です(宮内庁HPの「認証官任命式」参照)。
(3) 平成27年10月7日の認証官任命式(国務大臣)の様子が,衆議院議員河野太郎のHPの「国務大臣認証式」に書いてあります。
(4) 外部ブログの「きょうのへいか」「認証官任命式」に,これまでの認証官任命式に関する官報の記事が記載されています。
(5) 認証官は以下のとおりです。
① 一般の行政機関
 国務大臣,副大臣,内閣官房副長官,人事官,検査官,公正取引委員会委員長,原子力規制委員会委員長
② 宮内庁
 宮内庁長官,侍従長
③ 外務省
 特命全権大使,特命全権公使
④ 裁判所
 最高裁判所判事,高等裁判所長官
⑤ 検察庁
 検事総長,次長検事,検事長
(6) 日本証券経済研究所(JSRI)HPに掲載されている「司法制度について 最高裁判所を中心に」(平成30年5月10日開催の講演録の要旨。講師は大橋正春 元最高裁判所判事)の末尾57頁及び58頁には以下の記載があります。ただし,資料は掲載されていません。
(任命・認証の手続き)
最高裁長官は天皇陛下から任命され、最高裁判事は天皇陛下から認証を受けます。資料8ページの左側の写真は長官の任命式、右側の写真は判事の認証式のものです。
 任命式や認証式に臨むに当たっては、事前に宮内庁の担当者から説明と注意があります。慣れないことであり、また緊張する結果、思わぬ対応をする人も出てくるようです。これは、最高裁裁判官のことではありませんが、「天皇陛下からお言葉をかけられても返事をしないように」と事前に注意を受けていたにもかかわらず、天皇陛下から「ご苦労さまです。」と言われて、思わず「がんばります」と答えた人もいたようです。あるいは、天皇陛下から短いお言葉があった後、もっと続くのではないかと思い、しばらく天皇陛下とにらめっこしていた人もいたようです。

4 認証官任命式が遅れた事例
(1) 平成28年1月実施予定の認証式
平成28年2月22日就任の広島高裁長官及び仙台高裁長官の場合,同年1月26日から同月30日までのフィリピン訪問(宮内庁HPの「天皇・皇族の外国ご訪問一覧表(平成21年~平成31年)」参照)など多忙な天皇の予定の調整が付かなかったため,前任者の退任から約1ヶ月間,認証式が実施されませんでした(産経ニュースの「1ヶ月の空席…認証式経て,仙台・広島両高裁長官の人事発令」参照)。
(2) 平成29年1月実施予定の認証式
ア 山口厚最高裁判所判事及び小林昭彦福岡高裁長官の人事は当初,平成29年1月27日に発令される予定でした。
しかし,同日に認証式が実施できなかったため,発令が2月6日となりました。
イ 平成29年1月13日付の,山口厚最高裁判所判事及び小林昭彦福岡高裁長官任命の閣議書を掲載しています。
山口厚最高裁判事は東大法学部3年生で司法試験に合格したことが分かります。

5 以下の記事も参照してください。
① 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)
② 判事5号以上の裁判官の給料と,指定職以上の国家公務員の給料との比較

最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明

1 内閣答弁書の説明
内閣は,平成21年5月22日付の「衆議院議員鈴木宗男君提出最高裁判所裁判官の指名等に関する質問に対する答弁書」において以下の答弁をしています(読みやすいようにナンバリングを変えています。)。
① 最高裁判所の裁判官の任命資格については、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第四十一条第一項において、「識見の高い、法律の素養のある年齢四十年以上の者」と規定されており、これを踏まえ、最高裁判所の裁判官にふさわしい人物を指名し又は任命している。
② 「司法試験」については、司法試験法(昭和二十四年法律第百四十号)第一条第一項において、「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする」と規定されている。
  「法曹資格」については、一般的には、裁判官、検察官及び弁護士となる資格という意味で用いられているものと承知している。
③ 過去十年間に最高裁判所の裁判官に任命された者で、司法試験に合格していないもの又は司法試験に合格していても司法修習を終了していないものは六人であり、これらの者の主な前職は、京都大学教授、特命全権大使(アイルランド国駐箚)、内閣法制局長官、東北大学教授、労働省女性局長及び外務事務次官である。
④ 「天下り」とは、一般的には、各府省で退職後の幹部職員を企業、団体等に再就職させることをいうものと考えている。
⑤ 最高裁判所の裁判官の指名又は任命に当たっては、裁判所法第四十一条第一項に規定する任命資格を満たし、最高裁判所の裁判官にふさわしい人物を選考しており、「「最高裁裁判官」の身分が行政官の天下り先となっているとも受け止められる」ことはないものと考える。
⑥ 過去十年間に高等裁判所又は地方裁判所の裁判官に任命された者で、司法試験に合格していないもの又は司法試験に合格していても司法修習を終了していないものはいない。

2 内閣官房の説明

内閣官房は,我が国の国政上の重要事項や内閣の重要政策に関する企画,立案及び総合調整,情報の収集及び分析,危機管理等をつかさどる機関であります(最高裁平成30年1月19日判決)ところ,平成14年7月5日の司法制度改革推進本部顧問会議(第5回)の資料4「最高裁裁判官の任命について」には以下の記載があります。

◎最高裁裁判官の任命について
○ 最高裁裁判官の任命は、最高裁長官の意見を聞いたうえで、内閣として閣議決定する。
○ 最高裁長官に意見を聞くのは、最高裁の運営の実情を踏まえたものとなるよう人事の万全を期すため慣例として行っている。
○ 最高裁長官の意見は、一般的には、出身分野、候補者複数名と最適任候補者に関するものである。
○ 候補者については、(ア)主として裁判官、弁護士、検察官の場合は、最高裁長官から複数候補者について提示を受け、(イ)行政、外交を含む学識経験者については、原則内閣官房で候補者を選考し、いずれの場合も内閣総理大臣の判断を仰いだうえで閣議決定する。
○ その際、最高裁裁判官は国民審査をうける重い地位であることに鑑み、極力客観的かつ公正な見地から人選している。

○ 現在の最高裁裁判官の出身分野は、最高裁の使命、扱っている事件の内容などを総合的に勘案した結果のもの。
※ 現在の最高裁裁判官の15 人の出身分野
裁判官6(民事5、刑事1)、弁護士4、学識者5(大学教授1、検察官2、行政官1、外交官1
※最高裁裁判官の法律上の任命資格〔裁判所法 41 条〕
・ 識見の高い、法律の素養のある40 歳以上の者。15 人のうち少なくとも10 人は、
① 高裁長官又は判事を10 年以上
② 高裁長官、判事、簡裁判事、検察官、弁護士、法律学の教授等で、通算20 年以上
※ 最高裁の使命→憲法判断、法令解釈の統一
※ 平成12 年度;新規受理件数 約6,400 件(うち民事事件 約4,500 件。刑事事件 約1,900 件。)、大法廷事件(憲法判断・判例変更)8 件。
○ 以上について、内定後官房長官記者会見で、可能な範囲で選考過程、選考理由を明らかにする。
   なお、候補者を含め具体的な人選の過程は公表しない。

3 最高裁判所人事局長経験者の説明
「一歩前へ出る司法」(著者は泉徳治 元最高裁判所人事局長・元最高裁判所判事)157頁ないし159頁に以下の記載がありますから,引用します。

渡辺 最高裁判事を経験された先生方の回想録などを読みますと,最高裁判事への就任の打診はいろいろな形で行われるようですが,先生の場合はどのように打診されたのですか。

泉 最高裁判事は内閣が任命します。内閣は,最高裁判事の任命にあたっては,最高裁長官の意見を聴くという慣行があります。首相が最高裁長官に直に会って意見を聴きます。ただし,任命権はあくまでも内閣にありますから,最高裁長官としても複数の候補者を挙げて,優先順位を付けて意見を述べるということをしております。そして,歴代内閣は,最高裁長官の意見を尊重してきたと思います。内閣の任命権と司法の独立を調和させるという考えから,こういう慣行ができてきたのだと思います。新聞の「首相の動静」欄に,首相が最高裁長官に会ったということが書かれていれば,だいたいがこの意見具申です。そこで,首相からこの候補者を任命しようという意向が示されると,最高裁長官が候補者に内定を伝えるという運びになります。人事局長が長官に代わって内定を伝えることもあります。私の場合,山口繁長官が官邸から戻られてから私に電話で内定を伝えてこられました。それまでは,意向打診等の話は何もありませんでした。

山元 先生が電話をしてお願いできませんか,と候補者の方にいわれたこともあったのですね。

泉 人事局長のときに,長官の指示で電話をしたことが何度かありました。長官が官邸から帰ってきてから電話をしておりました。相手が内部の裁判官だと,長官が直々に電話をするということもあります。

山元 受けられた方のリアクションも千差万別だったのでしょうか。

泉 最高裁から内定を伝えるのは裁判官と弁護士です。大体は,ありがたくお受けしますということだったと思います。検察官の場合は,法務省が候補者を最高裁に推薦してきますし,本人への内定の通知も法務省がしております。行政官と学者の場合は,内閣が直接人選しますので,最高裁は関与しません。ただし,行政官と学者の場合も,最高裁長官が首相に会って,内閣の人選に最高裁として異存がないということを伝えます。また,学者については,内閣の意向で,人選の段階から最高裁が意見を述べたり,本人への内示も最高裁が行うということはあります。ケース・バイ・ケースです。
   弁護士の場合は,日弁連が最高裁長官に複数の候補者を推薦してきます。最高裁長官は,その中からある程度人数を絞って内閣に推薦しております。日弁連には最高裁判所裁判官推薦諮問委員会があります。以前は,委員会が自ら候補者を選んでいたようです。そのため,東京の三弁護士会と大阪弁護士会から選ばれる,例外的に神戸,名古屋の弁護士会から選ばれる,これらの弁護士会の幹部の意向が反映させることがあったようです。また,最高裁長官が日弁連の推薦にない弁護士を内閣に推薦するということもあったと,野村二郎「最高裁全裁判官」(三省堂,1986年)などに書かれております。ところが,中坊公平さんが1990年に日弁連会長になってから,広く全国から候補者を募集するというようになりました。現在では,弁護士会および会員が候補者を推薦できる,会員が推薦するときは50人以上の推薦人を要するとなっております。その中から委員会が面接などで日弁連として推薦する候補者とその順位を決めて日弁連会長に答申する。日弁連会長は,委員会の答申に基づいて候補者を最高裁長官に推薦するという手順になっております。

   本人への内定の連絡が終わってから,閣議決定があり,内閣から報道発表されます。内閣の任命ですから,最高裁が報道機関に話すということは一切ありません。

4 最高裁判所事務総局の説明(ナンバリングを追加しています。)
(1) 平成28年度(最情)答申第10号(平成28年4月27日答申)の記載
ア 最高裁判所裁判官のうち,最高裁判所長官は,内閣の指名に基づき天皇が任命し(憲法6条2項),その他の裁判官である最高裁判所判事は,内閣が任命する(憲法79条1項)とされているところ,法律上,内閣において最高裁判所や最高裁判所長官の意見を聴くこととはされておらず,また,最高裁判所において日本弁護士連合会,法務省等に推薦を依頼することともされていない。したがって,本件各開示申出文書の存在が法律上推認されるということはできない。
  しかし,最高裁判所の職員の説明によれば,内閣は,最高裁判所裁判官を任命等するに際し,慣例として最高裁判所長官の意見を聴くこととなっている。また,当委員会庶務に調査させたところ,このような慣行の存在については首相官邸のホームページにおいても公表されていることが確認された。したがって,最高裁判所裁判官の任命等について,最高裁判所長官は,意見を述べることになっており,その際に何らかの書面が作成される可能性は否定できない。 
   もっとも,このことについて,最高裁判所の職員は,内閣に対してどのような意見を述べるか,推薦依頼をするかなどについては,最高裁判所長官がその都度決めることであり,これらをどのような方法によって行うかを含め一切の事柄が,そのときどきの最高裁判所長官の判断に委ねられているから,最高裁判所事務総局としては,その立場上どのような文書を授受するかを定めた文書は作成していない旨を説明する。最高裁判所長官が内閣に対して述べる意見が,最高裁判所裁判官の任命等という高度な人事に関する事柄を対象としていることや,その意見が慣例として述べられているにすぎないことからすると,意見を述べるための準備行為等について,最高裁判所事務総局が組織として何らの定めも設けていないことは,不自然なこととはいえない。 
   また,日本弁護士連合会は,「日本弁護士連合会が推薦する最高裁判所裁判官候補者の選考に関する運用基準」を定め,同会が推薦する最高裁判所裁判官候補者の選考のために最高裁判所裁判官推薦諮問委員会を設置しているが,上記運用基準にも,誰に対して推薦をするのか,推薦に当たってどのような書面を作成するのかなどについての定めはなく,同基準の存在をもって,本件各開示申出文書の存在を推認することもできない。 
   そうすると,他に本件各開示申出文書の存在をうかがわせる事情が見当たらないことからしても,本件各開示申出文書は作成し,又は取得していないとする最高裁判所事務総長の説明は合理的であるといえ,最高裁判所において,本件各開示申出文書は保有していないと認められる。
イ 本件各開示申出対象文書は,①最高裁が日弁連に対し,新任の最高裁判事の推薦を依頼する際,どのような文書を授受することになっているかが分かる文書,及び②最高裁が法務省又は検察庁に対し,新任の最高裁判事の推薦を依頼する際,どのような文書を授受することになっているかが分かる文書です。
(2) 平成29年度(最情)答申第54号(平成29年12月22日答申)の記載
ア 口頭説明の結果によれば,最高裁判所長官は,最高裁判所判事の任命等につき,内閣から意見を求められる慣例があるが,内閣に対する最高裁判所判事の後任候補者の提示等については,どのような方法によって行うかを含む一切の事柄が,そのときどきの最高裁判所長官の判断に委ねられているとのことである。
この説明を踏まえて検討すれば,最高裁判所判事の任命という高度な人事について,その具体的手続の一端が明らかになると,第三者が不当な働き掛けを試みるおそれが生じるなど,今後の人事に対して適切でない影響を与えて,適正な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められるから,本件開示申出文書が存在するか否かは,法5条6号に規定する不開示情報に相当する。
したがって,本件開示申出文書について,その存否を答えるだけで法5条6号に規定する情報に相当する不開示情報を開示することになるとした原判断は,妥当である。

イ 本件開示申出文書は,特定の最高裁判所判事の後任について最高裁判所が内閣に対して提示した候補者の人数及び日本弁護士連合会からの推薦の有無が分かる文書です。
(3) 平成30年度(最情)答申第54号(平成30年12月21日答申)の記載
ア ①   別紙記載1の文書について,最高裁判所事務総長の上記説明によれば,事務総局における決裁は審査公報の原稿を送付することを対象とするものであり,原稿の内容等については判事に一任されているので,当該文書は作成し,又は取得していないとのことである。本件開示申出の内容に照らして検討すれば,このような説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において別紙記載1の文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
   したがって,最高裁判所において別紙記載1の文書を保有していないと認められる。
② 別紙記載2の文書について,苦情申出人は,対象文書の存否を答えるべきである旨を主張する。しかし,別紙記載2の文書の存否を答える場合には,特定の最高裁判所判事について本件開示申出に係る身上調査資料が存在するか否かが明らかになることからすれば,法5条6号に規定する不開示情報に相当する特定の最高裁判所判事の人事の具体的手続に関する情報を開示することになるので,文書の存否を答えることができないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。
   したがって,別紙記載2の文書について,存否を答えるだけで法5条6号に規定する情報に相当する不開示情報を開示することになるとした原判断は,妥当である。

イ 別紙記載1の文書は「別件の開示申出に対して開示された特定の文書の記載内容について,間違いないとの確認・検査の上での是認と思料される。何と照合されたか,原資料名とその原本。」であり,別紙記載2の文書は「特定の最高裁判所判事の身上調査資料」です。
また,特定の最高裁判所判事というのは,学校法人加計学園の監事をしていた木澤克之最高裁判所判事のことと思います。

5 法曹制度検討会における,最高裁判所裁判官人事に関する議論
第12回(平成14年11月12日)ないし第14回(平成14年12月10日)の法曹制度検討会における各委員の発言内容をまとめた,「最高裁裁判官の選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置」について(議事整理メモ)には,以下の記載があります。
○選任された最高裁裁判官についての説明の在り方などについての意見
・ 選任過程の透明化もさることながら、選任された裁判官が、国民の目から見て納得できる人かどうかが重要である。実際に選任された裁判官が、信頼に値すると判断できるような十分な説明をして欲しい。最高裁の裁判官はいわば公人であるから、プライバシーを多少犠牲にするくらいの覚悟があってしかるべきである。(第12回・中川委員)
・ 新たに行われるようになった内閣官房長官の記者会見による説明については、透明化という面で足りるのか、という感じを受ける。また、記者会見の内容がマスコミ報道の中で詳しく述べられているかというと必ずしもそうではない。だれが最高裁の裁判官に任命されることになったかということと、その人の経歴だけが報道されているのが実態であり、国民が、任命に関する透明化された情報を知ることができないという現状が続いているのではないか。(第13回・松尾委員)
・ 内閣として選任過程をどこまで説明できるかということになるが、個人のプライバシーのことも考慮する必要はあるが、最大限の努力をする必要がある。それとともに、国民審査においても、対象となる裁判官についての、これまでよりも一歩も二歩も踏み出した情報提供が可能であり、現状では、そのような側面からの改善が望ましい。(第13回・小貫委員)

6 最高裁判所裁判官人事に関する滝井繁男 元最高裁判所判事のインタビュー記事
坂田宏のペイジ「(インタビュー)最高裁人事という「慣習」」(2014年4月17日05時00分)(発言者は滝井繁男 元最高裁判所判事・元大阪弁護士会会長となっています。)には,以下の発言があります。

① 最高裁の竹崎博允(ひろのぶ)長官が辞任し、後任に寺田逸郎(いつろう)最高裁判事が就任しました。最高裁の意向に沿った、「順当な人事」ということでいいのでしょうか。
   「最高裁長官は、内閣の指名に基づいて天皇が任命すると、憲法に定められています。内閣には、この指名について説明責任があります。しかし、内閣は今回も、なぜこの人を起用したのか、どういうプロセスを経て選んだのかを、全く明らかにしていません。長官以外の最高裁判事は内閣が任命します。長官や判事の人事に、米国ほどではなくても、国会が何らかの形で関わることで透明化を図る必要があります
② 米国の連邦最高裁の判事はどうやって任命されるのですか。
   「大統領が上院の同意を得て任命します。上院の司法委員会では、銃規制や妊娠中絶など、政党間で激しく対立する問題についてどう考えるか、徹底的に質問されます。判事候補に対する聴聞は一大政治イベントになり、メディアでも大きく報道されます。上院の同意が得られなかったなどで、任命されなかった人は過去に27人もいます。大統領と上院が共に選任プロセスに関わる仕組みなのです。政争の場と化するという弊害もありますが、手続きの透明化という観点では優れています」
③ 最高裁の判事や長官の選任を透明化するには、どうすればいいでしょうか。
   「最も簡単なのは、長官や判事が選任された後、なぜその人を選んだのか、国会で首相らに質問して説明を求めることです。国会がつくった法律や政府の行為を無効にできる権限を持ち、国民生活に重要な影響力を持つ最高裁判事らの選任に、国会はもっと関心を持ち、内閣に説明責任を果たすよう迫るべきです。また、カナダで2006年以来行われているように、新任の最高裁判事を議会の委員会に呼んで聴聞するということも検討に値します。その聴聞会は紳士的で、内閣の任命を覆すものではなく、国民に新任判事をお披露目することが主眼のようです」
④    「最高裁判事についての国民の関心の低さは深刻です。三権の長の一人である最高裁長官の名前さえ、一般国民ならまだしも、法科大学院の学生でもほとんど知らない最高裁の判事や長官の任命過程について厳しく追及しない国会やメディアの責任もあるかもしれませんが、国民審査の活性化に向けた議論を始めなければならないと思います

7 以下の記事も参照してください。
① 最高裁判所発足時の裁判官任命諮問委員会,及び最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案等
② 日弁連推薦以外の弁護士が最高裁判所判事に就任した事例
③ 最高裁判所裁判官国民審査

裁判官の記録紛失に基づく分限裁判

1 裁判官の記録紛失に基づく分限裁判の実例
高輪1期以降の裁判官の記録紛失に基づく分限裁判は以下のとおりです。
① 大阪高裁昭和55年7月17日決定(戒告)が取り扱った事例
昭和55年5月23日午後5時ころ,担当の単独事件である民事第一審訴訟事件記録2冊を,自宅において判決起案のため黒色手提げ鞄に入れて退庁し,同じ民事部所属の裁判官2名とともに飲酒をしたのち,帰宅のため午後8時過ぎころ阪神電鉄梅田駅から乗車し,途中,同僚と分れて一人で甲子園駅で下車し,休憩の後,甲子園球場に立ち寄り,再び阪神電鉄で西宮駅に至り下車し,徒歩で翌5月24日午前2時ころ西宮市の宿舎に帰宅したが,その間,右事件記録2冊を黒色手提げ鞄とともに紛失したものであって,その後,関係各方面に照会する等鋭意調査したが,発見されなかった事例
② 大阪高裁昭和58年3月11日決定(戒告)が取り扱った事例
昭和58年1月27日,大阪地裁の配属部係属中の事件である民事第一審訴訟事件記録3冊を自宅において調査,判決起案するため,ビニール製手提鞄及び同ショルダーバッグに入れて自家用普通乗用自動車に積み,これを運転して池田市の自宅への帰途,同日午後5時少し前ころ,ゴルフ練習のため豊中市所在のゴルフセンターに立ち寄ったが,助手席に右手提鞄とシヨルダーバッグを重ねて置き,その上に折りたたんだ上衣を置いたままの状態で右自動車を同ゴルフセンターの無人無料の青空駐車場に駐車させたまま,午後5時ころから午後6時半ころまで同ゴルフセンターの練習場でゴルフの練習をしていたため,その間に何人かに右手提鞄及びショルダーバッグ等を窃取されて,在中の前記記録3冊を紛失したものであって,その後大阪府豊中警察署の派出所に盗難被害を届け出て鋭意捜索に努めたが,右の記録が発見されなかった事例
③ 東京高裁昭和58年12月6日決定(戒告)が取り扱った事例
昭和58年9月30日午後8時ごろ,東京地方裁判所民事第11部に係属中で自分が担当している地位保全等仮処分申請事件の事件記録2冊を,自宅において決定書起案のため通勤用の茶色手提げかばんに入れて退庁したが,帰宅途中国電有楽町駅付近の居酒屋に立ち寄って飲酒し,その後の行動についての記憶がつまびらかでないほどに深酔いした結果,同夜右事件記録2冊を手提げかばんとともに紛失し,その後関係各方面の協力を得て調査を尽くしたが,発見されなかった事例
④ 東京高裁平成5年3月5日決定(戒告)が取り扱った事例
平成5年1月14日夜,東京地方裁判所に係属中で自分が担当している事件の記録合計4冊を自宅で判決書起案をするために所持して帰宅する途中,電車内で眠り込んだ結果,右記録4冊を紛失した事例
⑤ 東京高裁平成12年12月7日決定(戒告)が取り扱った事例
平成12年8月22日午後9時ころ,前橋家庭裁判所に係属している少年保護事件の決定書を起案するために,同事件の記録1冊を革製手提げ鞄に入れて退庁し,午後9時27分前橋駅発上野駅行きの普通電車に乗り込んだが,車内で眠り込んだ結果,右鞄とともに右記録1冊を紛失し,関係各方面においても調査を尽くしたが,右記録一冊が発見されなかった事例

2 伊藤達也名古屋地裁判事補の記録紛失に基づく分限裁判は未だに実施されていないと思われること等
(1) 過去の実例では,裁判官の記録紛失に基づく分限裁判は,裁判官が記録を紛失してから5ヶ月以内に行われています。
(2)ア 66期の伊藤達也名古屋地裁判事補は,平成30年9月29日,名古屋市内で友人の裁判官らと飲酒した帰りにタクシーに乗り,記録の入ったキャリーバッグをトランクに置き忘れました(日経新聞HPの「裁判記録、タクシーに置き忘れ紛失 名古屋地裁の裁判官 」参照)。
イ 平成31年4月20日現在,伊藤達也名古屋地裁判事補の記録紛失に基づく分限裁判は未だに実施されていないと思われます。
(3) 平成31年3月8日付の名古屋地裁の司法行政文書不開示通知書によれば,「伊藤達也判事補が平成30年9月29日又は同月30日にタクシーに乗車した結果,民事事件の記録等を紛失したことに関して作成し,又は取得した文書」は,全体として不開示情報に該当するそうです。
(4) 寺西判事補事件に関する最高裁大法廷平成10年12月1日決定は,「裁判官の場合には、強い身分保障の下、懲戒は裁判によってのみ行われることとされているから、懲戒権者のし意的な解釈により表現の自由が事実上制約されるという事態は予想し難い」と判示しています。

3 46期の岡口基一東京高裁判事は,平成30年5月17日頃,勤務時間外に,訴訟において犬の所有権が認められた当事者(もとの飼い主)の感情を傷つけるツイートをした結果,最高裁大法廷平成30年10月17日決定により,戒告されました(「岡口基一裁判官に対する分限裁判」参照)。

4 以下の記事も参照してください。
① 分限裁判及び罷免判決の実例
② 柳本つとむ裁判官に関する情報,及び過去の分限裁判における最高裁判所大法廷決定の判示内容