最高裁が出した,一票の格差に関する違憲状態の判決及び違憲判決の一覧

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1 総論
(1) 衆議院は参議院と比べて議員の任期が短く(憲法45条本文,46条対照),解散があります(憲法45条ただし書参照)から,参議院よりも一票の格差に関する許容範囲が狭いです。
(2)ア 違憲状態とは,一票の格差が憲法14条1項に違反する状態をいいます。
   違憲とは,一票の格差に関する違憲状態を是正するのに合理的期間を経過した場合をいいます。
イ 弁護士ドットコムニュース「<一票の格差判決>「違憲」と「違憲状態」の違いとは?弁護士がわかりやすく解説」が参考になります。
(3) 最高裁大法廷平成23年3月23日判決以降,一票の格差に関する判断基準が厳しくなりました。
   それ以前は概ね,衆議院の場合は最大格差が3.0倍を超え(最高裁大法廷平成5年1月20日判決参照),参議院の場合は最大格差が6.0倍を超えれば(最高裁大法廷平成8年9月11日判決参照),憲法に違反するといわれていました。

2 最高裁が出した,一票の格差に関する違憲状態の判決
(1) 衆議院議員総選挙に関するもの
①   最高裁大法廷平成 5年 1月20日判決(平成 2年 2月18日の総選挙に関するもの)(最大格差3.18倍)
②   最高裁大法廷平成23年 3月23日判決(平成21年 8月30日の総選挙に関するもの)(最大格差2.304倍)
③   最高裁大法廷平成25年11月20日判決(平成24年12月16日の総選挙に関するもの)(最大格差2.43倍)
④   最高裁大法廷平成27年11月25日判決(平成26年12月14日の総選挙に関するもの)(最大格差2.13倍)
(2) 参議院議員通常選挙に関するもの
①   最高裁大法廷平成 8年 9月11日判決(平成 4年 7月26日の通常選挙に関するもの)(最大格差6.59倍)
②   最高裁大法廷平成24年10月17日判決(平成22年 7月11日の通常選挙に関するもの)(最大格差5.00倍)
③   最高裁大法廷平成26年11月26日判決(平成25年 7月21日の通常選挙に関するもの)(最大格差4.77倍)

3 最高裁が出した,一票の格差に関する違憲判決
(1)   ①最高裁大法廷昭和51年4月14日判決(最大格差4.99倍)及び②最高裁大法廷昭和60年7月17日判決(最大格差4.40倍)だけであり,いずれも衆議院議員総選挙に関するものです。
(2) 公職選挙法219条1項前段は選挙訴訟への行政事件訴訟法31条1項の適用を排除しています。
   しかし,衆議院議員選挙が憲法14条1項に違反する議員定数配分規定に基づいて行われたことにより違法な場合であっても,選挙を無効とする結果余儀なくされる不都合を回避することを相当とする判示のような事情があるときは,いわゆる事情判決の制度の基礎に存するものと解すべき一般的な法の基本原則に従い,選挙無効の請求を棄却するとともに主文において当該選挙が違法である旨を宣言すべきであるとされています(最高裁大法廷昭和60年7月17日判決。いわゆる「事情判決の法理」です。)。

4 投票価値の平等に関する裁判の経緯
(1)ア 投票価値の平等に関する裁判は,当時司法修習生であった越山康弁護士(故人)が昭和37年の参議院議員選挙に関して提訴したことから始まりました。
   平成21年8月30日実施の衆議院議員総選挙以降,越山康弁護士のグループとは別に,全国の弁護士有志が投票価値の平等に関する裁判を提訴するようになりました(外部HPの「一人一票裁判とは?」参照)。
イ 現在,山口邦明弁護士らのグループ(越山康弁護士の系統です。)と,升永英俊弁護士,伊藤真弁護士,久保利英明弁護士らのグループが別々に,投票価値の平等に関する訴訟を行っています。
   例えば,平成28年7月24日実施の第24回参議院議員通常選挙における平成29年7月19日の口頭弁論期日では,午前中に山口邦明弁護士らのグループが弁論を行い,午後に升永英俊弁護士らのグループが弁論を行いました。
ウ 現代ビジネスHPの「「一票の格差」に数億円投入する「最強弁護士」の素顔」が参考になります。ただし,升永英俊弁護士に対するインタビュー記事でありますところ,プレミアム会員にならないと最初の方しか読めません。
(2)   自由と正義2018年12月号5頁及び6頁に以下の記載があります。
   2009年、私(注:筆者である升永英俊弁護士のこと。)は、久保利英明弁護士と共に,全国の各高裁で人口比例選挙(すなわち,一人一票)訴訟を提訴すべく、全国の有志の弁護士に参加を求め、以後今日まで、各地の有志弁護士が、一人一票訴訟に参加している。
   全国の全ての一人一票訴訟に参加している弁護士は、久保利英明弁護士、伊藤真弁護士、私の3名である。
   私どもは、2009~2018年の間に、国政総選挙ごとに、全国の全14の高裁・高裁支部に人口比例選挙裁判を提訴し続け(但し、2009年衆院選のみ、8の高裁・高裁支部に提訴)、92の高裁判決と6の最高裁大法廷判決(すなわち、5の「違憲状態」大法廷判決と1の「留保付合憲」大法廷判決(参院選))を得た。
   これらの92の高裁判決とは、2の違憲無効判決、20の違憲違法判決、46の違憲状態判決、12の留保付合憲判決、12の留保無しの合憲判決である。
   これらの92の高裁判決及び山口邦明弁護士ら及び金尾哲也弁護士ら提訴の高裁判決のうち、5の「違憲違法」判決及び3の「違憲無効」判決は、それぞれ、『憲法は人口比例選挙を要求している』旨判示した。

5 一票の格差是正に否定的な意見
(1) 一票の格差是正に否定的な意見として,以下のHPがあります。
① 現代ビジネスHPの「ニッポンの難題「一票の格差」の落とし穴〜是正は本当に必要ですか?」
② ハフポストHPの「一票の格差は本当に問題なのだろうか?」
③ BLOGOSの「「一票の格差」という欺瞞」
(2) 一票の格差是正は「地方切り捨て」につながりかねないといわれることがあります。


6 その他
(1) 経済同友会HP「投票価値の平等(「一票の格差」是正)実現Webサイト」What’s New!に,一票の格差に関する時系列の経緯が載っています。
(2) 国立国会図書館HPレファレンスに以下の記事が載っています。
① 「戦後主要政党の変遷と国会内勢力の推移」(平成26年6月号)
② 「参議院定数配分をめぐる近時の最高裁判例-最高裁平成26年11月26日大法廷判決を中心として-」(平成27年7月号)
(3) 国立国会図書館HP「調査と情報」に以下の記事が載っています。
① 主要国議会の解散制度(平成28年10月18日発行の923号)
② 衆議院及び参議院における一票の格差-近年の最高裁判所判決を踏まえて-(平成29年3月28日発行の953号)
③ 戦後の我が国における主要制度の変遷(平成31年2月28日発行の1043号)
(4) 総務省自治行政局選挙部管理課選挙管理官は,中央選挙管理会が管理する選挙に関する事務を行っています(総務省組織規則27条2項)。
(5) レファレンス平成26年6月号の「戦後主要政党の変遷と国会内勢力の推移」を見れば,昭和20年8月から平成25年までの,主要政党の国会内勢力の推移が分かります。