仮釈放に関する公式の許可基準

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1 総論
(1) 地方更生保護委員会は,仮釈放を許すべき旨の旨の刑事施設又は少年院の長からの申出又は職権に基づき,仮釈放の審理を開始します(更生保護法34条及び35条)。
(2) 地方更生保護委員会の委員が直接,受刑者である審理対象者と面接をするほか(更生保護法37条1項),必要に応じて被害者やその遺族,検察官等にも意見を聞くなどした上で(更生保護法37条及び38条),地方更生保護委員会は,3人の合議体の決定(更生保護法23条1項1号)をもって,仮釈放を許す処分をします(更生保護法39条)。
(3)ア 仮釈放について定める刑法28条は以下のとおりです。
   懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。
イ 刑法28条の「行政官庁」は,地方更生保護委員会です。
(4)ア 犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則(略称は「社会内処遇規則」です。)28条は以下のとおりです。
   法第三十九条第一項に規定する仮釈放を許す処分は、懲役又は禁錮の刑の執行のため刑事施設又は少年院に収容されている者について、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めるときにするものとする。ただし、社会の感情がこれを是認すると認められないときは、この限りでない。
イ 社会内処遇規則28条は,仮釈放を許可する条件は以下の4つであると定めています。
① 悔悟の情及び改善更生の意欲があること
② 再び犯罪をするおそれがないこと
③ 保護観察に付することが改善更生のために相当であること
④ 社会の感情が仮釈放を是認すること
(5) 無期刑受刑者に対する仮釈放制度の改善を求める日弁連意見書(2010年12月17日付)には以下の記載があります。
① 「悔悟の情」は有罪の自認が前提とされており,刑事裁判において公訴事実を否認し,かつ,それを維持して判決確定後も再審請求をしている場合などは「改悛の状なし」と認定される傾向にあるといえる。
② 釈放後の帰住先があることは,上記要件に加えて刑事施設の長が仮釈放の申出をする場合の前提として必要とされている。
③ 国際基準によって求められているのは,当該受刑者が安全に社会復帰できる状態となっているか否かである。そのためには,本人が罪を認め悔い改めることを内容とする「悔悟の情」は不要であり,また,罪の重大さに見合った十分な期間服役したことに加えて,「社会の感情」を考慮することも相当ではない。したがって,本来,「円滑な社会復帰が見込まれる場合」には仮釈放が認められるべきであり,かつ,規則ではなく刑法において具体的な基準が明らかにされるべきである。

2 刑事施設の長又は少年院の長が仮釈放を許すべき旨の申出をするかどうかの審査基準
   社会内処遇規則28条に定める基準を具体化した,犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する事務の運用について(平成20年5月9日付の法務省矯正局長及び保護局長の依命通達)8頁及び9頁によれば,刑事施設の長又は少年院の長は,保有する情報の範囲内において,それぞれ当該アからオまでに定める事項を考慮するものとされています。
ア 規則第28条本文における悔悟の情があるかどうかの判断
   申出に係る刑を言い渡される理由となった犯罪の被害の実情についての認識, 当該犯罪を悔いる気持ち及び当該犯罪に至った自己の問題性についての認識の表れと認められる言動の有無及び内容その他の事項
イ 規則第28条本文における改善更生の意欲があるかどうかの判断 次に掲げる事項その他の事項
(ア) 被害者等に対する慰謝の措置の有無及び内容並びに当該措置の計画及び準備の有無及び内容
(イ) 刑事施設における矯正処遇又は少年院における矯正教育への取組の状況
(ウ) 反則行為又は紀律に違反する行為の有無及び内容その他の刑事施設又は少年院における生活態度
(エ) 釈放後の生活の計画の有無及び内容その他の健全な生活を確保するための行動の有無及び内容
ウ 規則第28条本文における再び犯罪をするおそれがないかどうかの判断 次に掲げる事項その他の事項
(ア) 性格,年齢,経歴及び心身の状況
(イ) 申出に係る刑を言い渡される理由となった犯罪の罪質,動機,態様,結果及び社会に与えた影響
(ウ) 刑事施設における矯正処遇の経過及び効果又は少年院における矯正教育の経過及び成績の推移
(エ) 釈放後の生活環境
(オ) 保護観察において予定される処遇の内容及び効果
(カ) 悔悟の情及び改善更生の意欲の程度
エ 規則第28条本文における保護観察に付することが改善更生のために相当であるかどうかの判断 次に掲げる事項その他の事項
(ア) 刑事施設又は少年院において予定される処遇の内容及び効果
(イ) アからウまでに定める事項
オ 社会の感情が仮釈放を是認するかどうかの判断 次に掲げる事項その他の事項
(ア) 被害者等の感情
(イ) (ア)に掲げるもののほか,収容期間及び仮釈放を許すかどうかに関する関係人及び地域社会の住民の感情
(ウ) 裁判官又は検察官から表明されている意見
(エ) アからエまでに定める事項

3 社会内処遇規則28条に定める基準に該当するかどうかを判断するに当たっての留意事項
   犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する事務の運用について(平成20年5月9日付の法務省矯正局長及び保護局長の依命通達)15頁ないし19頁によれば,社会内処遇規則28条に定める基準に該当するかどうかを判断するに当たっての留意事項は以下のとおりです。
(1) 規則第28条に定める基準に該当するかどうかを判断するに当たっては,次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 規則第28条は,悔悟の情及び改善更生の意欲があると認められること,再び犯罪をするおそれがないと認められること,保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められること並びに社会の感情が仮釈放を是認すると認められることの4つの要件を掲げており,仮釈放を許すにはこれらのいずれもが満たされることが必要であるとされていること。
イ アの4つの要件のうち,悔悟の情及び改善更生の意欲があると認められることは,仮釈放を許すことの中心的な要件であり, これが認められるかどうかが,他の要件に先立って,判断されるべきであること。
ウ 悔悟の情及び改善更生の意欲があると認められる審理対象者について,再び犯罪をするおそれがないと認められるかどうかが判断されるべきであること。この場合において,悔悟の情及び改善更生の意欲があると認められることは,通常,再び犯罪をするおそれがないことを推認させることになるが,審理対象者の性格,年齢,経歴,心身の状況その他の事情を考慮したときに,なおこれが認められるかどうかが判断されるべきであること。
エ 保護観察に付することが改善更生のために相当であることは,仮釈放を許すことの包括的な要件であると考えられ,悔悟の情及び改善更生の意欲があり,再び犯罪をするおそれがないと認められる審理対象者について, これが認められるかどうかが判断されるべきであること。 この場合において,悔悟の情及び改善更生の意欲があり,再び犯罪をするおそれがないと認められることは,通常,保護観察に付することが改善更生のために相当であることを推認させることになるが,総合的かつ最終的に実質的相当性を判断する観点から,なおこれが認められるかどうかが判断されるべきであること。
オ 社会の感情が仮釈放を是認するかどうかは,悔悟の情及び改善更生の意欲があり,再び犯罪をするおそれがなく,かつ,保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められる審理対象者について判断されるべきであること。 この場合において,悔悟の情及び改善更生の意欲があり,再び犯罪をするおそれがなく,かつ,保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められることは,通常,社会の感情が仮釈放を是認することを推認させるが,なおも仮釈放を許すことが刑罰制度の原理及び機能を害しないかどうかを最終的に改めて確認する観点から,なおこれが認められるかどうかが判断されるべきであること。
(2)  (1)のイにより悔悟の情及び改善更生の意欲があるかどうかを判断するに当たっては,次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 悔悟の情があると認められるためには,審理対象者が審理に係る刑を言い渡される理由となった犯罪による被害の実情及び当該犯罪に至った自己の問題性を正しく認識していることを前提とし,その上で悔いる気持ちが認められることが必要であること。
イ アの悔いる気持ちが特に強く認められるときは,その旨の評価をすること。
ウ アに掲げる事項を考慮するに当たっては,面接における審理対象者による悔悟を表す発言及び申告票又は6の(3)のエの書面(以下「申告票等」 という。 )に記載された悔悟を表す文言のみならず,審理に係る刑を言い渡される理由となった犯罪による被害の実情についての認識, 当該犯罪に至った自己の問題性についての認識及び当該犯罪を悔いる気持ちの表れと認められる言動その他の事項を考慮し, 当該悔悟を表す発言又は文言が真しな気持ちに基づくものであるかどうかを証明することとなる客観的事実を把握すべきであること。
エ 改善更生の意欲があると認められるためには,審理対象者が審理に係る刑を言い渡される理由となった犯罪による被害者等に対してどのように償うべきかを正しく認識し,かつ,償いをする気持ちがあることを前提とし,その上で再び犯罪をしないためにどのような生活を送るべきかを正しく認識し,かつ,過去の生活を改め健全な生活を送る気持ちが認められることが必要であること。
オ エの償いをする気持ち又は過去の生活を改め健全な生活を送る気持ちが特に強く認められるときは,その旨の評価をすること。
カ エに掲げる事項を考慮するに当たっては,次に掲げる事項その他の事項を考慮し,客観的事実を把握すべきであること。
(ア) 被害者等に対する慰謝の措置の有無及び内容並びに当該措置の計画及び準備の有無及び内容
(イ) 刑事施設における矯正処遇又は少年院における矯正教育への取組の状況
(ウ) 反則行為又は紀律に違反する行為の有無及び内容その他の刑事施設又は少年院における生活態度
(エ) 釈放後の生活の計画の有無及び内容その他の健全な生活を確保するための行動の有無及び内容
(3) (1)のウにより再び犯罪をするおそれがないかどうかを判断するに当たっては,次に掲げる事項に留意するものとする。
ア  「再び犯罪をするおそれ」には,仮釈放中の再犯のおそれ及び仮釈放期間経過後の再犯のおそれが含まれるところ,前者の意味での再犯のおそれについては,何らかの犯罪をするおそれが合理的に想定し得ない程度に至っていなければならないのに対し,後者の意味での再犯のおそれについては,再犯のおそれが相当程度現実的でなければ, この意味での再犯のおそれはないと認められるものであると考えられること。
イ 悔悟の情及び改善更生の意欲が特に強く認められたときは,再び犯罪をするおそれがないことを示すものとして,一定の評価をすること。
ウ 次に掲げる事項その他の事項を考慮すべきであること。
(ア) 性格,年齢,経歴及び心身の状況
(イ) 審理に係る刑を言い渡される理由となった犯罪の罪質,動機,態様,結果及び社会に与えた影響
(ウ) 刑事施設における矯正処遇の経過及び効果又は少年院における矯正教育の経過及び成績の推移
(エ) 釈放後の生活環境
(オ) 保護観察において予定される処遇の内容及び効果
(カ) 悔悟の情及び改善更生の意欲の程度
(4) (1)のエにより保護観察に付することが改善更生のために相当であるかどうかの判断に当たっては,次に掲げる事項その他の事項を考慮するものとする。
ア 刑事施設又は少年院において予定される処遇の内容及び効果
イ (2)のウ及び力並びに(3)のウに掲げる事項
(5) (1)のオにより社会の感情が仮釈放を是認するかどうかを判断するに当たっては,次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 被害者等や地域社会の住民の具体的な感情は,重要な考慮要素となるものの, 「社会の感情」 とは,それらの感情そのものではなく,刑罰制度の原理・機能という観点から見た抽象的・観念的なものであることに留意して判断を行うこと。
イ 次に掲げる事項その他の事項を考慮すべきであること。
(ア) 被害者等の感情
(イ) (ア)に掲げるもののほか,収容期間及び仮釈放を許すかどうかに関する関係人及び地域社会の住民の感情
(ウ) 裁判官又は検察官から表明されている意見
(エ)  (2)のウ及び力, (3)のウ並びに(4)のアに掲げる事項