恩赦の効果

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目次
1 総論
2 大赦(恩赦法3条)
3 特赦(恩赦法4条及び5条)
4 減刑(恩赦法6条及び7条)
5 刑の執行の免除(恩赦法8条)
6 復権(恩赦法9条及び10条)
7 恩赦法に基づく復権を得た場合,犯罪経歴証明書に記載される前科ではなくなること
8 入管法所定の上陸拒否事由との関係
9 大赦令及び復権令が出た昭和天皇崩御に伴う恩赦における,検察庁の内部事務

1 総論
(1) 有罪の言渡に基く既成の効果は、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除又は復権によつて変更されることはありません(恩赦法11条)。
(2) 恩赦は刑事事件の有罪判決を対象とするものですから,恩赦によって交通違反の違反点数が消滅してゴールド免許を取得できるようになったり,運転免許の取消し又は停止が救済されたりすることはありません。
(3) 個別恩赦は,天皇の認証があった日に効力が生じます(前科登録と犯歴事務(五訂版)159頁)。
(4) 以下の外部記事が非常に参考になります。
① 法務省HPの「現行の恩赦制度」
② 国立国会図書館HPの「恩赦制度の概要」

2 大赦(恩赦法3条)
(1) 有罪の言渡しを受けた者についてはその言渡しの効力を失わせるものであり(恩赦法3条1号),まだ有罪の言渡しを受けない者については公訴権を消滅させるものです(恩赦法3条2号)。
(2) 起訴されている犯罪について大赦があった場合,裁判所は免訴判決を下します(刑訴法337条3号)。
(3) 大赦の対象となった場合,有罪の言渡しを受けた者は, もはや刑の執行を受けることがなくなるばかりでなく,有罪の言渡しを受けたため法令の定めるところによって喪失し,又は停止されている資格も回復することになります。

3 特赦(恩赦法4条及び5条)
(1)   有罪の言渡しの効力を失わせるものをいいます。
(2) 特赦が行われた場合,その者に対する有罪の言渡しの効力が失われますから,その者は,大赦になった場合と同様, もはや刑の執行を受けることがなくなるばかりでなく,有罪の言渡しを受けたため法令の定めるところによって喪失し,又は停止されている資格も回復することとなります。

4 減刑(恩赦法6条及び7条)
(1)ア 言渡しを受けた刑を減軽し,又は刑の執行を減軽するものをいいます。
イ 例えば,たとえば懲役5年を懲役4年に短縮し,又は懲役3年,5年間執行猶予を懲役2年,4年間執行猶予に変更するといったものをいいます。
(2) ①政令恩赦に基づく一般減刑(恩赦法7条1項),及び②個別恩赦に基づく特別減刑(恩赦法7条2項)があります。
(3) 刑の執行猶予の言渡しを受けてまだ猶予の期間を経過しない者に対しては,刑を減軽する減刑のみを行うものとし,また,これとともに猶予の期間を短縮することができます(恩赦法7条3項及び4項)。
(4) 刑を減軽し,又はこれとともに執行猶予の期間を短縮する減刑が行われた場合,宣告刑自体が変更されますから,刑の執行終了日や執行猶予期間満了日に変動を生じます。
   また,刑の時効期間(刑法32条),刑の言渡しの効力の消滅期間(同法34条の2)の起算日,資格の喪失又は停止を規定した法令の適用にも変動を生じ,喪失し又は停止されている資格の回復が早まる結果となります。

5 刑の執行の免除(恩赦法8条)
(1) 確定した刑の執行を将来に向かって全部免除するものをいいます。
(2) 刑の執行猶予の言渡しを受けた人は対象外です(恩赦法8条ただし書)。
(3) 刑の執行の免除は,有罪の言渡しを受けたことによって喪失し又は停止されている資格を回復させる効力はなく,その資格回復がなされるためには,更に恩赦法による復権が行われる必要があります。
   ただし,刑の言渡しの効力の消滅期間(刑法34条の2)の起算日及び満了日が早まるから,間接的には資格回復を早める効果があります。
(4) 実務上,刑の執行の免除は,主として無期刑仮釈放者が更生したと認められる場合に,保護観察を終了させる措置として行われています。

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 復権(恩赦法9条及び10条)
(1) 刑の執行を終了した人等に対し,法令の定めにより喪失し,又は停止されている資格を回復させるものをいい,社会的活動の障害を取り除くために行われます。
(2) ①政令恩赦に基づく一般復権,及び②個別恩赦に基づく特別復権があります。
(3) 以下の人が復権の対象となった場合,選挙権及び被選挙権を回復します(選挙権及び被選挙権の欠格事由につき,総務省HPの「選挙権と被選挙権」参照)。
① 公職にある間に犯した収賄罪により刑に処せられ,実刑期間経過後5年間(被選挙権は10年間)を経過しない人(公職選挙法11条1項4号及び11条の2)
② 公職選挙法等に定める選挙に関する犯罪により,選挙権及び被選挙権が停止されている人(公職選挙法11条2項及び252条)
③ 政治資金規正法に定める犯罪により選挙権及び被選挙権が停止されている人(政治資金規正法28条)
(4) 恩赦法による復権によっては,単に一旦喪失した資格を回復するにとどまり,有罪の言渡しに基づく既成の効果が復権によって変更されるものではありません。
   そのため,裁判所が,刑の量定にあたって,復権した公職選挙法違反の前科を参酌することは憲法14条及び39条に違反しません(最高裁昭和39年12月15日判決)。
(5)ア 恩赦法による復権を得ていない場合であっても,再び罰金以上の刑に処せられていない限り,懲役刑若しくは禁固刑の終了から10年,又は罰金刑の終了から5年が経過した時点で,刑の言渡しが効力を失う(刑法34条の2第1項)結果,資格を回復することとなります。
イ 前科調書作成のために検察庁が管理している犯歴の抹消は,有罪の判決を受けた人が死亡した時点で行われています(犯歴事務規程18条参照)。
(6) 復権を得たとしても,自動車運転免許の停止のような行政処分は資格回復の対象とならず、反則行為により付された点数(道路交通法施行令別表第2)が消滅することもありません(「恩赦制度の概要」7頁)。

7 恩赦法に基づく復権を得た場合,犯罪経歴証明書に記載される前科ではなくなること
(1) 警察庁HPに掲載されている「犯罪経歴証明書発給要綱について(通達)」には以下の記載があります。
5 警察本部長は、4の回答により申請者が犯罪経歴を有しないことを確認した場合には別記様式第2号の証明書を、申請者が犯罪経歴を有することを確認した場合には別記様式第3号の証明書を作成して申請者に交付するものとする。
6 5の確認において、次の(1)から(7)までのいずれかの場合に該当する申請者は、当該(1)から(7)までに規定する犯罪については犯罪経歴を有しないものとみなす。
(1) 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過しているとき。
(2) 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられられないで10年を経過しているとき。
(3) 罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過しているとき。
(4) 恩赦法(昭和22年法律第20号)の規定により大赦若しくは特赦を受け、又は復権を得たとき。
(5) 道路交通法(昭和35年法律第105号)第125条第1項に規定する反則行為に該当する行為を行った場合であって、同条第2項各号のいずれにも該当しないとき。
(6) 少年法(昭和23年法律第168号)第60条の規定により刑の言渡しを受けなかったものとみなされたとき。
(7) 刑の言渡しを受けた後に当該刑が廃止されたとき。
(2) 恩赦法に基づく復権を得た場合,禁錮以上の刑について10年が経過する前,及び罰金以下の刑について5年が経過する前であっても,犯罪経歴証明書に記載される前科ではないこととなります。
   ただし,この場合,犯罪経歴証明書発給申請書(別記様式第1号)の注記欄にあるとおり,同申請書と一緒に,特赦状,復権状等を提出する必要があります。

8 入管法所定の上陸拒否事由との関係
(1) 出入国管理及び難民認定法(略称は「入管法」です。)5条1項4号は「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。」を上陸拒否事由としています。
(2) 「刑に処せられた」とは,歴史的事実として刑に処せられたことをいうのであって,刑の確定があれば足り,刑の執行を受けたか否か,刑の執行を終えているか否かを問いません。
また,「刑に処せられたことのある者」には、執行猶予期間中の者、執行猶予期間を無事経過した者(刑法(明治四十年法律第四十五号)第二十七条)、刑法の規定により刑の言渡しの効力が消滅した者(同法第三十四条の二)及び恩赦法(昭和二十二年法律第二十号)の規定により刑の言渡しの効力が消滅した者(同法第三条及び第五条)も含まれます出入国管理及び難民認定法逐条解説(改訂第四版)208頁)。

9 大赦令及び復権令が出た昭和天皇崩御に伴う恩赦における,検察庁の内部事務
   この点に関して,前科登録と犯歴事務(五訂版)186頁には以下の記載があります。
   昭和64年1月7日昭和天皇の崩御に際会し,平成元年2月13日政令第27号をもって「大赦令」が, 同第28号をもって「復権令」が公布され, また, 同日法務省令第4号をもって「特赦,減刑又は刑の執行の免除の出願に関する臨時特例に関する省令」が公布され, これらの政令及び省令は同月24日からそれぞれ施行された。
   この度の恩赦に該当する者は,個別上申に基づく特別恩赦該当者を除き,大赦令該当者28,300人,復権令該当者10,964,000人にのぼったといわれている。恩赦令の施行後,検察庁では,大赦令及び復権令に該当する者を一人一人調査した上,捜査中の事件の大赦令該当者については不起訴処分の手続公判係属中の事件の大赦令該当者については免訴(刑訴法337条3号)又は刑の分離決定(刑法52条,刑訴法350条)の手続,刑未執行の大赦令該当者については刑の執行不能決定の手続がそれぞれとられ, また,有罪の裁判が確定している大赦令該当者又は復権令該当者については,判決原本へのその旨の付記(恩赦法14条, 同規則13条, 14条),赦免又は復権証明申立人に対するその旨の証明(同規則15条),恩赦該当者に対する赦免又は復権の通知,犯歴用電子計算機又は犯歴票への恩赦事項の登録市区町村長に対する恩赦事項の通知等の事務手続が進められたが,その事務最が極めて膨大であるため,当面の措置として,大赦令該当者,公職選挙法違反事件により公民権停止中の復権令該当者,赦免又は復権証明の申立人に対するその旨の証明など,速やかな事務処理を要すると認める案件について優先事務処理が行われた。