保釈中の被告人が罪証隠滅に成功した事例等に関する文書は存否応答拒否の対象となること

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第1 「保釈中の被告人が保釈保証金を没収されることなく罪証隠滅に成功した事例に関する文書」については存否応答拒否になるとした,令和元年5月の法務大臣の理由説明書には以下の記載があります。
1 本件対象文書について
具体的な事件に関し,当該事件を担当する地方検察庁等から法務大臣に対して報告がなされた場合の文書には,例えば,刑事関係報告規程(昭和62年法務省刑総訓秘第28号)第2条及び同規程別冊第1事件報告一覧表に基づく事件報告によるものがある。
同規程による事件報告の対象となるのは,特定の罪名の事件や,特定の身分を有する者の事件等のほか,犯罪捜査上参考となる事件や公判遂行上参考となる事件とされている。
2 存否応答拒否について
本件開示請求は, 「保釈中の被告人が保釈保証金を没取されることなく罪証隠滅
に成功した事例に関して法務省が作成し,又は取得した文書(直近の事例に関するもの)」であるが,特定の具体的かつ詳細な状況を前提とした事案について,法務省において把握しているか否かを明らかにすることは,検察庁において,そのような事案として把握しているか否か,また当該事案を刑事関係報告規程等に基づき犯罪捜査や公判遂行上参考になるものなどとして,法務省が把握すべき事件であると認めたか否かという事実の有無を明らかにする結果を生じさせるものと認められる。
当該文書が存在することを明らかにした場合,本件請求に係る内容が相当限定的なものであることも踏まえると,例えば,既iこ報道されている情報や公開の法廷等で明らかにされている情報等.(保釈保証金の没取の有無や当該被告人の罪証隠滅等の行動等)と結び付けて理解されることで,特定の事件において保釈中の被告人による罪証隠滅行為について,検察庁が, 「成功した」もので,法務省に報告すべき事件と評価していることが明らかとなる結果,当該罪証隠滅行為は実効的であるなどとの評価,誤解,憶測等を招くおそれがある。
他方,当該文書が存在しないことを明らかにした場合,例えば,被告人による罪証隠滅行為が行われたことを個人的に把握している者において,検察庁が当該罪証隠滅行為を把握していないなどと考え,当該罪証隠滅行為は検察に露見することなくなし得るものという評価,誤解,憶測等を招くおそれがあり, さらには,それらが世間一般に拡散するおそれもある。
そして, これらの評価,誤解,憶測等を招いた結果,現に保釈中の被告人や被疑者による罪証隠滅行為を誘発するとともに,それらの手口の巧妙化が進むおそれがある。
いったん罪証隠滅行為が行われれば,捜査機関の証拠収集活動や公判立証への影響はきわめて大きく,請求に係る文書の存否情報は, これを公にすることにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められ,法第5条第4号の不開示情報に該当するものと認められる。
したがって,請求に係る文書の存否情報を回答するだけで,法第5条第4号の不開示情報を開示することとなるため,法第8条による存否応答拒否により対応することが相当であると考えられる。

第2 「保釈中の被告人が事件関係人に接触した結果,事件関係人の供述を自己に有利に変更して無罪判決を獲得した事例に関する文書」については存否応答拒否になるとした,令和元年5月の法務大臣の理由説明書には以下の記載があります。
1 本件対象文書について
具体的な事件に関し,当該事件を担当する地方検察庁等から法務大臣に対して報告がなされた場合の文書には,例えば,刑事関係報告規程(昭和62年法務省刑総訓秘第28号)第2条及び同規程別冊第1事件報告一覧表に基づく事件報告によるものがある。
同規程による事件報告の対象となるのは,特定の罪名の事件や,特定の身分を有する者の事件等のほか,犯罪捜査上参考となる事件や公判遂行上参考となる事件とされている。
2 存否応答拒否について
本件開示請求は, 「保釈中の被告人が事件関係人に接触した結果,事件関係人の供述を自己に有利に変更して無罪判決を獲得した事例に関して法務省が作成し,又は取得した文書(直近の事例に関するもの)」であるが,特定の具体的かつ詳細な状況を前提とした事案について,法務省において把握しているか否かを明らかにすることは,検察庁において,そのような事案として把握しているか否か,当該事案を刑事関係報告規程等に基づき,犯罪捜査や公判遂行上参考になるものなどとして,法務省が把握すべき事件であると認めたか否かという事実の有無を明らかにする結果を生じさせるものと認められる。
当該文書が存在することを明らかにした場合,本件請求に係る内容が相当限定的なものであることも踏まえると,例えば,既に報道されている情報や公開の法廷等で明らかにされた情報等(被告人による事件関係人への接触の有無,無罪判決の理由で指摘された事件関係人の供述状況等)と結び付けて理解されることで,無罪判決は,保釈中の被告人が事件関係人に接触し,同人の供述を被告人に有利に変更させたことで得られたものであるとして,検察庁において認識され,法務省に報告すべき事件と評価しているなどという評価,誤解,憶測等を招くおそれがある。
他方,当該文書が存在しないことを明らかにした場合,例えば,被告人による事件関係人への接触やその際の供述変更の働きかけを個人的に把握している者において,無罪判決の理由は被告人による事件関係人への接触やその際の働きかけにあるが,検察庁が当該接触や働きかけを把握していないなどと考え, これらの行為は検察庁に露見することなくなし得るものという評価,誤解,憶測等を招くおそれがあり, さらには,それらが世間一般に拡散するおそれもある。
そして, これらの評価,誤解,憶測等を招いた結果,現に保釈中の被告人や被疑者による事件関係人への接触行為,事件関係人に対する供述変更の働きかけを誘発するとともに,それらの手口の巧妙化が進むおそれがある。
いったんこのような行為が行われれば,捜査機関の証拠収集活動や公判立証への影響はきわめて大きく,請求に係る文書の存否情報は,これを公にすることにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められ,法第5条第4号の不開示情報に該当するものと認められる。
したがって,請求に係る文書の存否情報を回答するだけで,法第5条第4号の不開示情報を開示することとなるため,法第8条による存否応答拒否により対応することが相当であると考えられる。

*1 東京地検次席検事は,平成31年3月8日の定例記者会見で,東京地裁が会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告(64)の保釈にあたって決めた監視カメラの設置など約10項目の条件について「実効性がない」との見解を示しました(産経ニュースHPの「ゴーン被告保釈条件 地検次席が地裁決定に異例の批判「実効性ない」」(平成31年3月8日付)参照)。
*2 平成31年3月の保釈決定で出された,カルロス・ゴーンの保釈条件は以下のとおりです(BLOGOSの「保釈条件について」参照)。
1 被告人は、東京都***に居住しなければならない。
  住居を変更する必要ができたときは、書面で裁判所に申し出て許可を受けなければならない。
2 召喚を受けたときは、必ず定められた日時に出頭しなければならない(出頭できない正当な理由があれば、前もって、その理由を明らかにして、届け出なければならない。)
3 逃げ隠れしたり、証拠隠滅と思われるような行為をしてはならない。
4 3日以上の旅行をする場合には、前もって、裁判所に申し出て、許可を受けなければならない。
5 海外渡航をしてはならない。
6 被告人は、所持する旅券すべてを弁護人に預けなければならない。
7 被告人は、第一審の判決宣告に至るまでの間、本邦における在留期間を更新し又は在留資格を取得できるように努め、弁護人を介して、その経過及び結果を裁判所に報告しなければならない。
8 被告人は、グレゴリー ルイス ケリー、大沼敏明、西川廣人、ヘマント クマール ナダナサバパシー、真野力、小坂厚夫、ハーリド、ジュファリ(Khaled Juffali)、ジル ノルマンその他の本件事件関係者及び罪体に関する弁護人請求の証人(証人請求予定者を含む。)に対し、直接又は弁護人を除く他の者を介して、面接、通信、電話等による一切の接触をしてはならない。
9 被告人は、弁護人が上記制限住居の玄関に監視カメラ(24時間作動するもの)を設置して録画し、かつその画像を①マイクロSDカード又はビデオレコーダー及びUSBメモリーに保存すること、その録画画像(毎月末日までの分)を翌月15日までに裁判所に提出することを、妨げてはならない。
10 被告人は、弁護人から提供される携帯電話1台(番号***)のみを使用し、それ以外の携帯電話機、スマートフォンなどの通信機器を使用してはならない。被告人は、使用を許可された上記携帯電話機の通話履歴明細を保存しておかなければならない。
11 被告人は、弁護士法人法律事務所ヒロナカから提供されるパーソナルコンピューター(機種名***、製造番号***)のみを、平日午前9時から午後5時までの間、同事務所内(東京都千代田区***)において使用し、それ以外の日時・場所で、パーソナルコンピューターを使用してはならない。被告人は、使用を許可された上記パーソナルコンピューターのインターネットのログ記録を保存しておかなければならない。
12 被告人は、制限住居の内外を問わず、面会した相手の氏名(ただし、被告人の妻、弁護人、弁護士法人法律事務所ヒロナカの事務員を除く)、日時・場所を記録しておかなければならない。
13 被告人は、弁護人を介して、10項の通話履歴明細(毎月末日までの分)を翌月末日までに、11項のインターネットのログ記録(毎月末日までの分)及び12項の面会記録(毎月末日までの分)を翌月15日までに、それぞれ裁判所に提出しなければならない。
14 被告人は日産自動車株式会社の株主総会、取締役会その他の会合に出席する場合には、前もって、裁判所に申し出て、許可を受けなければならない。
15 本件につき公判期日の召喚状、保釈許可決定謄本等裁判所から郵便で送達された書類については、保釈制限住居で受領すべきはもちろんのこと、不在時に配達された場合には、すみやかに集配局に出頭する等の方法により、必ず受領しなければならない。