岡口基一裁判官に関する各種文書が不開示又は不存在となっていること

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第1 不開示となっている文書
1 特定の裁判官が,私的にツイートした内容に関し,第三者から抗議がなされた事実の有無
・ 平成30年4月23日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「平成29年12月,東京高裁が岡口基一裁判官のツイートに関する抗議を受けた際に作成し,又は取得した文書」の存否を明らかにできない理由として以下の記載があります。
(3) 最高裁判所の考え方及びその理由
ア 本件開示申出に係る文書は,特定の裁判官が抗議を受けた際に作成又は取得した文書であるところ, 当該文書の存否を明らかにすると,「特定の裁判官が,私的にツイートした内容に関し,第三者から抗議がなされた事実の有無」という個人に関する情報が公になり, この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
イ 本件抗議に関する報道は,原判断庁等が取材に応じた結果として,報道機関の責任において報道されたにとどまるものであって,裁判所として公表したものではないため,慣行として公にされている情報に該当しない。(法第5条第1号イ,平成29年度(情)答申第2号参照)
ウ よって,裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱記第5に基づき, 当該文書の存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。

2 下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意の有無
・ 平成29年度(情)答申第2号(平成29年4月28日答申)には以下の記載があります。
(1) 本件注意は,下級裁判所事務処理規則21条に基づくものであり,同条は,「高等裁判所長官(略)は,所属の裁判所の監督に服する裁判所職員に対し,事務の取扱及び行状について注意を与えることができる。」と規定している。
上記の最高裁判所事務総長の説明及び口頭説明の結果を踏まえるならば,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,事務の取扱いや行状についての改善を目的として行うものであって,懲戒処分のような制裁的実質を含んだ処分とは異なるものであると判断される。
   そして,裁判官については,憲法上その独立が強く保障されており,懲戒処分も,裁判官分限法に基づく分限裁判によって行われることとされていて(裁判所法48条,49条参照),下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意がされたとしても,そのことにより,当該裁判官に具体的な不利益が課されることは,予定されていない。また,裁判官の懲戒である分限裁判が確定したときは,官報に掲載して公告されることとされている(裁判官の分限事件手続規則9条)のに対し,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,公表が予定されていない。
   下級裁判所事務処理規則21条に基づく裁判官に対する注意が上記のような性質のものであることからすると,その運用自体が裁判官の個人的事情に関わる機微なものであるというべきであり,その手続きについては,当該裁判官の行状等の改善に対する実効性を確保する目的で,適切な時期に効果的な形でされるべきであるという観点等から慎重であるべきものと認められる。
   したがって,司法行政手続の中でその運用においてどのような手続がとられるのか,文書が作成されるのか,作成されるとしてどのような文書が作成,管理,保存されるのかなどについて,本来,これを公にすると,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意という人事管理に係る事務に関与する判断権者及び職員に対し,文書の作成,管理,保存について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
   そうすると,本件については,本件対象文書の存否を答えるだけで,上記のような人事管理に係る事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を開示することになるというべきであり,当該情報は,法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する情報であるから,原判断においては,取扱要綱記第5に基づき,本件対象文書の存否を明らかにしないで不開示とすべきであったと認められる。
(2)   この点について,苦情申出人は,本件注意が報道されているから支障はない旨主張し,最高裁判所事務総長も,本件注意が公表された旨説明している。
   しかし,口頭説明の結果によれば,本件注意に関する報道は,東京高等裁判所が取材に応じた結果として,報道機関の責任において当該報道がされたにとどまるのであって,裁判所として公表したものではないことが認められる。上記(1)のとおり,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,公表することが予定されていないことその他の上記(1)に記載した注意の性質からすると,上記説明は合理的である。
   そうすると,本件注意が報道されたことは,本件対象文書の存否を答えるべきでないとする上記(1)の判断を左右するものではない。

3 東京高裁長官等と岡口基一東京高裁判事との間の会話の有無
・ 平成30年10月27日付の理由説明書には,「平成30年5月24日午前11時頃から午前12時頃までに行われた,東京高裁長官,東京高裁事務局長及び岡口基一東京高裁判事との間の会話に関する①会話の録音データを反訳した文書,及び②録音反訳のために外部業者に支払った費用が分かる文書」の存否を明らかにできない理由として以下の記載があります。
(3) 最高裁判所の考え方及びその理由
ア 本件開示申出に係る文書は,特定の日時において東京高等裁判所長官等と特定の裁判官との会話を録音したデータの反訳文書及び当該反訳書面の作成に係る費用に関する文書であるところ, 当該文書の存否を明らかにすると,特定の日時において東京高等裁判所長官等と特定の裁判官が会話をしたという個人に関する情報が公となり, この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。

イ 東京高等裁判所長官等が東京高等裁判所に所属する裁判官と会話をする目的は様々あり得るものであって,必ずしも人事管理のためだけに行われるものとは言えないものの,その会話の内容次第では人事管理に関するものとなり得る性質を有するものである。
   したがって,東京高等裁判所長官等が,特定の日時において特定の裁判官と会話をしたことの有無を明らかにすると,特定の裁判官に対する人事管理上の指導方法及びその時期等について明らかとなる可能性があり,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある(法第5条第6号二)。
ウ よって,裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱記第5に基づき, 当該文書の存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。

4 東京高裁が「分限裁判の記録」と題するブログに関して作成し,又は取得した文書
・ 平成30年10月27日付の理由説明書には,「東京高裁が,岡口基一裁判官が管理している「分限裁判の記録」 と題するブログに関して作成し,又は取得した文書」の存否を明らかにできない理由として以下の記載があります。
(3) 最高裁判所の考え方及びその理由
ア 本件開示申出に係る文書は,特定の裁判官が管理するブログに関して作成し,又は取得した文書であるところ, 当該文書の存否を明らかにすると,特定の裁判官がブログを管理しているという個人に関する情報が公になり, この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。

 当該文書は,裁判官の私的領域における言動についての文書であるところ,そのような文書を作成し,又は取得する目的及び方法等は様々あり得るものであって,必ずしも人事管理のためだけに保有するものとは言えないものの,私的領域における言動については,その内容次第では裁判所の信用失墜につながり得ることから,人事上の措置等に関する文書となり得る性質を有するものである。
   当該文書の存否を明らかにすると,人事上の措置等の必要性から作成,取得,管理,保存される文書の存否や内容を推認ないし憶測させることになり,人事管理に係る事務に関与する判断権者等に対し,文書の作成,取得,管理,保存について好ましくない影響を生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある(法第5条第6号二) 。
ウ よって,裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱記第5に基づき, 当該文書の存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。

5 「裁判官のツイート内容を印刷した文書」は不開示情報であること
・ 平成30年10月3日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
(3) 最高裁判所の考え方及びその理由
本件対象文書である「裁判官のツイート内容を印刷した文書」は,裁判官の私的領域における言動についての文書であるところ,そのような文書を作成・取得する目的や方法等は様々であり得るものであって,必ずしも人事管理のためだけに保有するものとはいえないものの,裁判官という自己の身分を明らかにした上での私的領域における言動については,その内容次第では裁判所又は裁判官の信用の失墜につながり得ることから,人事上の措置等に関係する文書となり得る性質を有するものである。
そのような性質を有する文書の存否を明らかにすると,人事上の措置の必要性から作成,取得,管理,保存される文書の存否や内容を推認ないし憶測させることになり,人事管理に係る事務に関与する判断権者及び職員に対し,文書の作成,取得,管理,保存について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある(法第5条第6号二)。
よって,裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱記第5に基づき,当該文書の存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。

6 平成30年9月11日の岡口基一裁判官の審問期日に関して作成し,又は取得した文書
・ 平成31年1月15日付の理由説明書には以下の記載があります。
(3) 最高裁判所の考え方及びその理由
本件開示申出に対して,最高裁判所内で対象となる司法行政文書を探索したところ,該当する文書が存在したものの,同文書は,裁判体の指示に基づき,本件分限裁判の審問期日を滞りなく進行していくために作成された司法行政文書であった。一般的に,裁判事務に関与する職員は,裁判の期日を適正に遂行するため,裁判の運営に関する裁判体の判断及び指示の内容や留意すべき事項を的確に把握した上で,その事務を行う必要があり,その際に組織共用文書を作成することがあるところ, 当該文書は,裁判の運営に関する裁判体の判断等の内容を推知させるものであり,特に,非公開手続である本件分限裁判の審問期日において,その機密性は高い。
本件対象文書を開示することは,非公開手続である本件分限裁判の審問期日の運営に関し,裁判体がした具体的な判断や職員に対する指示の内容等を対外的に示すことになるため, これにより,今後の適正な裁判事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある。よって,本件対象文書に記載された情報は,文書の標題部分やその枚数等を含め,全体として行政機関情報公開法第5条第6号に規定する不開示情報に該当する。
なお,開示申出人が開示を求める文書として例示している「NHKその他のマスコミの傍聴要請を拒否した際に作成し,又は取得した文書」に該当する司法行政文書は,最高裁判所内での探索の結果,存在していなかった。
したがって,原判断は相当である。

7 岡口基一裁判官の分限事件を担当した最高裁判所調査官の氏名が分かる文書の「備考」欄
・ 平成31年2月21日付の理由説明書には以下の記載があります。
(3) 最高裁判所の考え方及びその理由
ア 本件対象文書の備考欄は,裁判所が当該事件の進行管理を適切に行うために必要となる記載がされるものであるところ,同欄に記載された情報は, 当該事件が終局した後も,そのまま表示されることから,事件の係属中,終局後を問わず, 当該情報を開示して事件の進行等に関する内容が明らかとなることにより,適切な裁判事務の遂行に支障を来すおそれがある平成30年度(最情)答申第35号参照) 。
 よって,本件対象文書中の備考欄に関する情報は,記載の有無も含め,行政機関情報公開法第5条第6号に規定する不開示情報に相当すると考えられる。
イ したがって,原判断は相当である。

第2 不存在となっている文書
1 東京高等裁判所が平成28年6月21日付けで特定の裁判官を口頭注意処分した際に作成した文書
・ 平成29年度(情)答申第1号(平成29年4月28日答申)には,東京高等裁判所が平成28年6月21日付けで特定の裁判官を口頭注意処分した際に作成した文書(文中の「本件開示申出文書」)が存在しない理由として下記の記載があります。

   最高裁判所事務総長は,東京高等裁判所において,本件開示申出文書は作成し,又は取得していないと説明するから,その合理性について検討する。
(1)   本件注意は,下級裁判所事務処理規則21条に基づくものであるところ,同条は,「高等裁判所長官(略)は,所属の裁判所の監督に服する裁判所職員に対し,事務の取扱及び行状について注意を与えることができる。」と規定している。
   上記の最高裁判所事務総長の説明及び口頭説明の結果を踏まえるならば,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,事務の取扱いや行状についての改善を目的として行うものであって,懲戒処分のような制裁的な効果を伴わない措置であると解される。そして,同条によれば,その主体は,高等裁判所においては,高等裁判所長官とされており,専ら高等裁判所長官の責任において,注意の要否やその態様等を決することが予定されている。
   また,下級裁判所事務処理規則21条には,注意の方法等についての規定はなく,他に,注意の方法や文書の作成の要否等に関する定めも見当たらない。
   そうすると,高等裁判所長官が下級裁判所事務処理規則21条に基づく口頭注意に係る意思決定を行うに際し,文書の作成が必ず求められるものではないものと認められる。
(2)   そして,本件注意は,憲法及び裁判所法により身分が保障された裁判官に対するものであることや,当該裁判官の特定の行状に関してその改善を求める内容のものであって,当該裁判官個人の私的な事柄に関するものであること等を考慮すると,本件注意の意思決定の過程において文書が作成されなかったとしても,不合理とはいえず,他に本件開示申出文書が存在することをうかがわせる事情はない。
したがって,東京高等裁判所において,本件開示申出文書を作成し,又は取得していないとする最高裁判所事務総長の説明は,合理的であり,東京高等裁判所において,これを保有していないものと認められる。
・ 「特定の裁判官がツイッターに投稿した件に関して東京高等裁判所が作成した全文書」については,その全部が不開示情報に相当します(平成30年度(情)答申第22号(平成31年3月15日答申))。

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 「岡口基一裁判官に対する分限裁判」「分娩裁判及び罷免判決の実例」も参照してください。