裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場

1 裁判所関係者に対する叙勲の相場
(1) 総論
ア 勲章制定の件(明治8年4月10日太政官布告第54号)「勲章の授与基準(平成15年5月20日閣議決定)」等に基づき,平成15年秋の叙勲以降,①最高裁判所長官経験者に対しては桐花大綬章又は旭日大綬章が授与され,②最高裁判所判事経験者に対しては旭日大綬章が授与され,③下級裁判所裁判官経験者に対しては瑞宝章が授与されるようになり,④宝冠章は一般の叙勲では授与されなくなりました。
イ 平成15年秋の叙勲以降でも,裁判官としての功績及び弁護士としての功績の両方が考慮されて,旭日重光章又は旭日中綬章が授与されている人もいます。
ウ 平成15年春の叙勲までは,同じ勲等の場合,旭日章,宝冠章,瑞宝章の順番で序列になっていたほか,宝冠章は,女性に対してだけ授与されていました。
(2) 下級裁判所裁判官に対する叙勲の具体的な相場
ア(ア) 高裁長官を経験した後,公害等調整委員会委員長又は情報公開・個人情報保護審査会会長を経験した場合,瑞宝大綬章又は瑞宝重光章が授与されます。
なお,叙勲の実例はまだありませんが,人事院総裁及び国家公務員倫理審査会会長についても同様であると思います。
(イ) それ以外の高裁長官経験者に対しては常に瑞宝重光章が授与されます
イ 高裁本庁の部総括判事経験者に対しては原則として瑞宝重光章が授与されます。
高裁支部の部総括判事経験者に対しては瑞宝中綬章が授与されます。
ウ 大規模地家裁所長(東京地裁,横浜地裁,さいたま地裁,千葉地裁,大阪地裁,京都地裁,神戸地裁,名古屋地裁及び福岡地裁の所長,並びに東京家裁及び大阪家裁の所長)の経験者に対しては常に瑞宝重光章が授与されます。
それ以外の地家裁所長の経験者に対しては原則として瑞宝中綬章が授与されます。
エ 地家裁本庁の部総括判事経験者に対しては原則として瑞宝中綬章が授与されます。
地家裁支部の部総括判事経験者に対しては原則として瑞宝小綬章が授与されます。
オ 地家裁本庁の判事をしている間に死亡退官した場合,原則として瑞宝小綬章が授与されます。
(3) 裁判官以外の裁判所職員に対する叙勲の具体的な相場
ア ①簡裁判事経験者に対しては瑞宝小綬章が授与され,②裁判所の一般職経験者に対しては瑞宝中綬章又は瑞宝小綬章が授与され,③裁判所の技官経験者に対しては,瑞宝単光章が授与され,④調停委員経験者に対しては瑞宝双光章又は瑞宝単光章が授与されています。
イ 瑞宝中綬章を授与される裁判所の一般職経験者としては,最高裁訟廷首席書記官,最高裁大法廷首席書記官,最高裁家庭審議官,東京高裁事務局次長及び大阪高裁事務局次長となります。
なお,叙勲の実例はまだありませんが,平成30年7月1日に裁判所の一般職向けに増設された最高裁判所事務総局審議官についても同様であると思います。
ウ 瑞宝小綬章を授与される裁判所の一般職経験者としては,①最高裁の小法廷首席書記官,事務総局の局の課長,司法研修所事務局次長,裁判所職員総合研修所事務局長,最高裁判所図書館副館長,②高裁の事務局長,民事又は刑事の首次席書記官,③地裁の事務局長,民事又は刑事の首席書記官,④家裁の事務局長,首席書記官,首席家裁調査官となります。

エ 瑞宝単光章を授与される裁判所の技官経験者としては,最高裁車庫長,高裁車庫長,地家裁車庫長,民事又は刑事の廷吏長,守衛長となります。

2 弁護士に対する叙勲の相場 
(1) 弁護士の場合,日弁連会長経験者に対しては旭日重光章が授与され,日弁連副会長経験者に対しては旭日中綬章が授与され,日弁連事務総長,日弁連常務理事,日弁連理事又は司法研修所弁護教官の経験者に対しては旭日小綬章が授与されています。
(2) 日弁連事務総長経験者に旭日小綬章が授与された事例としては,平成17年春の叙勲及び平成18年春の叙勲があります。
ただし,平成7年秋の叙勲では,日弁連事務総長経験者に対し,勲三等瑞宝章が授与されました。

3 弁護士の叙勲に否定的な意見
東京弁護士会期成会HPに掲載されている,東京弁護士会として叙勲受章会員のお祝い会は開催するべきではないという趣旨の,平成28年7月11日付の意見書に以下の記載があります。
① 現状の叙勲制度は,日弁連正副会長・理事など限定された役職者等を対象にしたものであり,表彰されるべき者としては限定的といえる。
② 現在の叙勲対象者の決定システムは,日弁連の依頼により,当会が,慣行に基づく対象候補者に受章の意思確認を行い,叙勲を受章する旨の意思を示した会員を報告するというものに過ぎない。
③ 叙勲制度に対しては多様な意見があり,当会においても,叙勲受章の候補者推薦について辞退する会員が少なからずいるという状況がある。

 調停委員に対する褒章
内閣府HPの「勲章・褒章制度の概要」には「会社経営、各種団体での活動等を通じて、産業の振興、社会福祉の増進等に優れた業績を挙げた方又は国や地方公共団体から依頼されて行われる公共の事務(保護司、民生・児童委員、調停委員等の事務)に尽力した方を対象とする藍綬褒章があります。」と書いてあります。

5 報道機関への情報提供の内容
平成29年度(行情)答申第463号(平成30年2月15日答申)には以下の記載があります。
当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,内閣府賞勲局においては,特定個人が叙勲を受けた際,受章者の賞賜,功労概要(功労名等),主要経歴(最終経歴等),氏名及び現住所のうちの都道府県及び市区町村のみを一定期間ウェブサイト等で公表しているほか,報道機関への情報提供も行っているとのことであった。
そこで,報道機関への情報提供について,当審査会事務局職員をして更に諮問庁に確認させたところ,内閣府賞勲局においては,報道機関に対し,上記のウェブサイト等で公表している情報のほか,受章者の本籍地(都道府県のみ)及び詳細な住所が記載された受章者名簿を,報道解禁日の前に一定期間提供しているが,当該受章者名簿を報道機関に配布する際に,個人情報の取扱いに関し,飽くまでも取材等の参考資料として取材の便宜を図るために提供するものである旨を口頭で説明して,報道機関の了承を得た上で配布しており,受章者名簿に記載された受章者個人の情報について,その全てを公にすることを前提に提供しているものではないとのことであった。
この点,受章者の本籍地(都道府県名のみ)及び詳細な住所は,通常他人に知られたくない機微な情報に当たることに照らせば,当該情報提供の取扱いに関する上記の諮問庁の説明について特段不自然,不合理な点はないことからすると,上記のような報道機関への情報提供をもって直ちに,受章者の本籍地(都道府県名のみ)及び詳細な住所につき,法5条1号ただし書イに該当する事情があるとまではいえない。

6 勲章の褫奪(ちだつ)
(1) 懲役刑に処せられたり,3年以上の禁錮刑に処せられたりした場合,勲章を褫奪(剥奪と同じ意味です。)されます(勲章褫奪令1条1項本文)。
(2) 執行猶予付きの判決を受けたり,3年未満の禁錮刑に処せられたりした場合,勲章を褫奪されることがあります(勲章褫奪令2条1項)。
(3) 逮捕・勾留されたり,労役場に留置されたりした場合,その期間については勲章を佩用(はいよう)することができません(勲章褫奪令3条前段)。
(4)ア 平成27年秋の叙勲において通産行政事務功労により瑞宝重光章を受賞し,平成31年4月19日に池袋暴走事故(3歳の女児及びその母親が死亡)を起こした飯塚幸三 元通産省工業技術院長の場合,逮捕されませんでした。
そのため,過失運転致死傷罪による有罪判決が確定するまでの間,瑞宝重光章を佩用し続けることができると思います。
イ livedoor NEWS「池袋の暴走事故で男を逮捕せず 弁護士「警察は後悔している」と憶測」(令和元年6月14日付)が載っています。

7 「勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)」も参照してください。

8 その他
(1) 以下の文書を掲載しています。
① 平成26年春の中綬章等勲章伝達式及び受章者夫妻との懇談会
② 平成26年秋の中綬章等勲章伝達式及び受章者夫妻との懇談会
(2) 憲法7条7号の「栄典」は,勲章,褒章等を意味しています(昭和50年6月5日の衆議院決算委員会における秋山進総理府賞勲局長の答弁)。

9 外部HP
(2) 内閣府賞勲局HPの「栄転に関する資料集」に,受賞者の集計など,関係法令(政令,内閣府令,内閣府告示,閣議決定・閣議了解・内閣総理大臣決定など)が載っています。
(3) 宮内庁HPの「勲章親授式」に,大綬章等勲章親授式及び文化勲章親授式の説明が載っています。
(4) 国立国会図書館HPの「調査と情報」(2014年刊行分)No.829「勲章・褒章制度」が参考になります。
(5) exciteニュース「ナンセンスすぎる春秋の叙勲・勲章、呆れた内幕…受賞者の7割は公務員、功績無関係」(平成28年3月8日付)が載っています。